2016年

10月

11日

【踊る経済統計】プロの視点 所得 2016年10月11日特大号

 

 ◇就業者数の変化に注目

 ◇総賃金は2~3%増

 

青木大樹

(UBS証券シニアエコノミスト)

 

 所得を示す統計は、消費・内需の先行きを見る上で非常に重要だ。しかし、その実体がつかみにくいと投資家からはしばしば批判を聞く。代表的な所得統計は、厚生労働省から公表される「毎月勤労統計調査」(毎勤調査)だ。決まって支給される給与やボーナスなどの特別賞与など詳細について、産業別・企業規模別に示されている。

 毎勤調査には、投資家が誤解しやすいことがある。賃金の合計として公表される現金給与総額は、1人当たり平均だ。毎勤調査を見ただけでは、就業者数の変化を含めた全体の賃金上昇を把握できない。昨今、女性・高齢者の労働参加率が急上昇し始めている。彼らは主にパートタイマーとして雇用されているため、1人当たりの賃金上昇率として計算すると、その伸びは0・5~1%と緩やかなペースにとどまってしまう。

 ところが、就業者数は前年比で1~2%拡大している。1人当たりの賃金上昇率に就業者数の伸び率を加えた、企業が就業者に支払う賃金の総額(名目総賃金)の伸び率を見ると、前年比2~3%程度の強い伸び率となっている(図)。

 消費は2四半期連続でプラスの伸び率が続くなど、就業者数の拡大により意外に底堅い。毎勤調査では1人当たり平均の賃金だけでなく、就業者数の拡大を考慮した総賃金の数値も公表し、むしろこちらを主要値とすべきだろう。

 また、各産業別にも就業者数の変化を含めた総賃金が示されている。それぞれの産業について、企業から労働者へどの程度分配が行われているかをより迅速につかめる。

 

 ◇サンプルにも問題

 

 毎勤調査のもう一つの大きな問題は、サンプル(調査対象)の入れ替えから生じるボーナスの誤差が大きいことだ。現行、大企業のサンプルを入れ替える1月のみ新旧両方のサンプルから賃金を計算して調整し、入れ替えによる調査結果への影響を最小限にとどめている。

 ところが、………