2016年

10月

18日

【さまよう石油再編】時代錯誤 高度化法に見る産業政策の限界 2016年10月18日号

◇国際競争には全面自由化が不可欠

 

石川和男

(NPO社会保障経済研究所代表、元経済産業省官僚)

 

 現在進められているJXホールディングスと東燃ゼネラル石油、出光興産と昭和シェル石油の2組を巡る石油元売り業界の再編は、2009年に施行された「エネルギー供給構造高度化法」によって進んだ側面もある。

 高度化法の正式名称は「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」。電気やガス、石油事業者といったエネルギー供給事業者に対して、太陽光、風力などの再生可能エネルギー、原子力などの非化石エネルギー源の利用や、化石エネルギー原料の有効な利用を促進するために必要な措置を講じることを求めるもので、エネルギーの安定的かつ適切な供給の確保を図ることを目的としている。
 経済産業省は10年7月、高度化法に基づき、石油元売り各社に対して、比較的廉価な重質油をガソリンなど付加価値の高い製品に精製する「重質油分解装置」の装備率について、14年3月末を期限とした目標値を設定した(1次告示)。この装備率は、原油を最初に処理する「常圧蒸留装置」の処理能力に対する「重質油分解装置」の処理能力の割合。つまり、製油所全体の原油処理能力を分母とし、高度な装置を分子とするものだ。目標の達成のためには、石油精製能力全体を下げるか、高度分解による精製能力を上げるかの二つの方法があるが、需要の減少で厳しい経営環境に置かれていた石油元売り各社にとっては事実上、設備の破棄を求められたと言える。
 1次告示を受け、各社は設備の破棄を進めた結果、原油処理能力は高度化法が施行された09年8月の日量約486万バレルから14年4月には約20%減の同約395万バレルにまで低下。製油所数も28カ所から23カ所に減少した。
 14年1月には税制優遇などで企業の事業再編を後押しする「産業競争力強化法」が施行された。経産省は同6月、同法に基づき初めて石油業界に関する市場調査を実施し、需要減少により今後「過剰供給に陥る恐れが大きい」と指摘。高度化法に基づき、原油処理設備の削減か高性能化をするよう求めた。
 さらに経産省は14年7月、17年3月末を期限とした新たな目標を設定(2次告示)。2次告示でも1次告示と同様に装置の装備率が基準となったが、分子は高度な「重油質分解装置」だけに限定せず、標準的な装置も含めた「残油処理装置」とした。分母は1次告示と同様に常圧蒸留装置としたが、実際に設備を破棄しない「公称能力の削減」も認めることになった。
 また、異なる企業グループが連携して装置を削減した場合は、任意の割合で案分することを認めた。この規定は1次告示にはなかったもので、明らかに製油所の統合や共同運営、さらには業界再編を促すものと言える。経産省は2次告示の期限が切れる来年4月以降、新たな目標を定めた3次告示を設定する可能性がある。

 

◇経産官僚を「悪用」

 

 官主導による業界再編には「功罪」の両面がある。
 まず「功」としては、業界だけでは各社の利害があって進まない再編を、中立の立場である官が後押しして進められることが挙げられる。業界内では言いにくいことも、官主導で行えば各社が納得することも多いだろう。
 一方「罪」は、結局仕事をするのは民間ということだ。官僚はビジネスの現場を知らず、ルールをつくるのが役割。理想を掲げて将来像を描くことはできるが、結局それを実行するのは民間だ。
 筆者は1989~07年に通商産業省・経産省でエネルギー政策や消費者政策、中小企業政策などに従事した。……

 

(『週刊エコノミスト』2016年10月18日号<10月11日発売>38~40ページより転載)