2016年

10月

18日

経営者:編集長インタビュー 出澤剛 LINE社長 2016年10月18日号

◇LINEで何でもできる世界をつくる

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

── 今年7月に上場を果たしました。
出澤 2011年6月にスマートフォン向けコミュニケーションアプリ(メッセンジャー)の「LINE」を提供し始めて5年がたち、成長戦略、収益性、組織力の三つに自信がついたところで上場しました。

日本には6200万人の利用者がおり、LINEはインフラ化しつつある自負があります。上場することで、会社の透明性が増し、より安心して利用してもらいたいと思っています。

── 米国の「ワッツアップ」や中国の「ウィーチャット」など他のメッセンジャーとの違いは。
出澤 米国のメッセンジャーは、コミュニケーションに特化し、他の機能をなるべくそぎ落としています。一方、LINEは、メッセージのやりとりを中心として、ゲームをしたり音楽が聴けたりする多機能型サービスを展開しています。
 海外でも事業展開をしていますが、各国のニーズをくみ取り、現地で使いやすい形にしています。たとえば、LINEを使ってタクシーを呼ぶ配車サービスは、バイクが多いインドネシアではバイクが中心です。渋滞が激しいタイでは、ランチを届けてほしいというニーズがあったので、LINEから宅配サービスを頼めます。
── 日本でLINEアプリがヒットした秘訣(ひけつ)は。
出澤 スマートフォンに特化したメッセンジャーのニーズがあり、いち早く対応できたからだと思います。パソコンを使ったインターネットサービスを振り返った時、最初に掲示板などコミュニケーションサービスがはやりました。スマホでも同じことが起こるだろうと考え、10年秋くらいから集中的にサービスを開発しました。
── 収益構造は。
出澤 広告、ゲーム、LINE上でのチャットで利用できるステッカー(スタンプ)の3本柱です。15年はゲームの収益が最も大きかったのですが、16年4~6月期で、広告の収益が一番になりました。
── 広告収益が伸びた理由は。
出澤 今年6月から本格展開したタイムラインへの広告掲載が好調だからです。これまでは、企業がLINEに公式アカウントをつくって、そのフォロワーに商品情報などを送っていました。しかし、このモデルでは、まず利用者が企業アカウントを能動的にフォローしてくれないと情報を届けることはできません。
 一方、タイムラインはLINE利用者全員が見るページなので、より多くの利用者に広告を見てもらえます。さらに、利用者の性別と年齢から、広告効果が高そうな属性の人のタイムラインにだけ広告を出すこともできます。
── 上場による調達資金の用途は。
出澤 LINEを通じて何でもできる世界、「スマートポータル」の実現に向けた投資をします。スマホで最も利用されているアプリは世界共通で、メッセンジャーです。利用者は、使い慣れているメッセンジャーをポータル(入り口)として、タクシーを呼んだり、ニュースを読んだりしたいのです。
── 他にスマートポータルでできることとは。
出澤 例えば、日本でコールセンターのサービスをLINEに置き換えようという動きが出ています。旅行代理店や不動産会社、銀行などへの問い合わせがチャットでできれば、電車の中など場所を選ぶ必要もなくなります。
 企業にとっても、LINEは画面を複数立ち上げれば同時並行で対応できるので、1対1の電話応対よりも1人が処理できる件数が増えます。ホームページのアドレスや画像を送ることができますし、LINEでのやりとりをそのままログ(記録)として引き継ぎ作業に使えます。
 LINEを導入したコールセンターの事業者が求人を出したところ、通常より5倍の応募がきました。働く側も電話よりLINEで問い合わせられる方が良いようです。

 ◇決済事業に期待

── 海外展開は。
出澤 現在は、日本、台湾、タイ、インドネシアの4カ国に事業を集中しています。メッセンジャーの利用者は多くの人とコミュニケーションを取りたいので、利用者数が多いメッセンジャーを選びます。そして、ある国で特定のメッセンジャーがトップシェアを握ると、それをひっくり返すのは難しいです。投資の効率性を考え、現在はこの4カ国に事業を集中させています。
── 今後の成長の核は。
出澤 決済事業がこれから大きくなっていくと思います。14年12月から「LINE Pay」というモバイル送金・決済サービスを行っています。LINE Pay口座にクレジットカードの登録や銀行口座などからチャージすることで、Eコマース(電子商取引)での決済やLINEの有料コンテンツの購入に利用できます。LINE Pay口座間での送金は無料で、友人同士で飲み会の清算をしたり、仕送りをしたりできます。
 今年3月からは、JCBと提携し、「LINE Pay カード」というデビットカードを発行しはじめました。国内外のJCB加盟店で利用できます。100円ごとに2ポイントと、2%のLINEポイントが付くので、一度使った人はメリットを感じて使い続けてくれます。カードの発行数、取扱高ともに伸びています。
(構成=金井暁子・編集部)

 ◇横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 33歳の時にライブドア事件が起き、その後、社長に就任しました。事件後もネット事業のコアメンバーは残っており、皆、再建に燃えていました。その後NHNジャパンの取締役になり、濃い30代でした。
Q 「私を変えた本」は
A 司馬遼太郎の『国盗り物語』。中学生の時に読んで、歴史が好きになりました。
Q 休日の過ごし方
A 土曜日は妻が仕事をしているので、0歳と3歳の娘を公園に連れて行ったりしています。
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 ■人物略歴
 ◇いでざわ・たけし
 長野県出身。長野県野沢北高校、早稲田大学卒業。2001年ライブドアの前身オン・ザ・エッヂに入社。07年ライブドア社長、12年同社を買収したNHNジャパン(現在LINE)取締役。15年4月より現職。43歳。
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事業内容:コミュニケーションアプリ「LINE」、ポータルサイト「Livedoor」などを運営
本社所在地:東京都渋谷区
設立:2000年9月
資本金:125億円
従業員数:1114人(単体)
業績(2015年12月期・連結)
 売上収益:1206億円
 営業利益:-95億円

 

(『週刊エコノミスト』2016年10月18日号<10月11日発売>4~5ページより転載)