2016年

10月

25日

【セブン&アイHD】H2Oに百貨店譲渡=長野勇太

会見に臨む井阪社長 Bloomberg
会見に臨む井阪社長 Bloomberg

◇ヨーカ堂に切り込めるか

長野勇太(ジャーナリスト)

 セブン&アイ・ホールディングス(HD)が10月6日、阪急百貨店や阪神百貨店などを展開するエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングと資本業務提携することを発表した。

 両社は資本業務提携によって、H2Oの発行済み株式総数の3%に相当する約57億円分(10月5日時点)の株式を持ち合う方針。セブン&アイHDは、そごう神戸店(神戸市)、西武高槻店(大阪府高槻市)、そごう西神店(神戸市)をH2Oに譲渡する。セブン&アイHDは、H2Oとの提携を通じて「苦戦の続く百貨店事業での資源再配分の実現を目指す」としている。
 同社の百貨店事業は、競争激化や消費低迷の影響で営業利益率が悪化し、再生が急務の状況だ。すでに百貨店のそごう・西武は、今年8月には350人の希望退職の募集を開始した。H2Oへの譲渡を決めた以外でも、地方の不採算店を譲渡していく。
 今回発表した資本業務提携は、2017~19年度の中期経営計画の一環だ。井阪隆一社長は「『選択と集中』」という新しい軸を経営判断に入れなくてはならない」と6日の会見で力説した。
 25年間にわたり君臨してきた鈴木敏文前会長の求心力は、グループの要だった。鈴木前会長は、06年にそごうと西武百貨店を運営するミレニアムリテイリングを傘下に収め、百貨店事業進出を主導した。だが同時に、鈴木氏の存在がそごう・西武の改革の壁となっていたことは否定できない。

◇低い営業利益率

 井阪体制にとって、百貨店事業以上の課題が、総合スーパーのイトーヨーカドーやショッピングセンターのアリオを運営する子会社イトーヨーカ堂の立て直しだ。だが、今回の案は抜本的な改革とはほど遠く、「創業家の伊藤順朗(じゅんろう)取締役に井阪社長らがちゅうちょしたのではないか」との臆測も飛ぶ。
 コンビニエンスストア「セブン─イレブン」の日本における営業利益率は、16年度上期で5・5%だった。だが、イトーヨーカ堂の営業利益率はマイナス0・5%だ。ショッピングセンター「アリオ」の営業利益率は約2%にとどまる。
 イトーヨーカドーについては、16年度初めの182店から、20年度末には142店まで減らす方針だ。ただ、具体的な店舗名はまだ明らかにしていない。
 また、アリオのテナントは、ベビー用品店「アカチャンホンポ」などセブン&アイグループの店舗を経営改善するだけでなく、これまでよりも、他社の店舗を積極的に誘致する。この手法は、ライバルであるイオングループに近い。セブン&アイHDは「優良テナントの誘致で(アリオの)営業利益率3%は達成可能」と説明した。
 すでにヨーカ堂の社内からは「赤字幅は着実に減らしている。スーパーばかりが悪いのか」といった不満の声がもれる。構造改革案の公表に先立ち、セブン&アイHDは9月30日、16年度下期でヨーカドーの衣料品の値下げ販売が、110億円規模の減益要因になると発表した。衣料品の在庫率はすでに下がっており、値引き攻勢ではこれ以上の利益率改善が期待できない。今後、井阪社長がヨーカ堂の改革を加速できるかに注目が集まる。 (了)