2016年

10月

25日

経営者:編集長インタビュー 岩崎高治 ライフコーポレーション社長

◇売上高8000億円へ 買い物を楽しく

 

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 日本に数ある食品スーパーの中で、どのような戦略を持っていますか。

 岩崎 首都圏と近畿圏の人口密集地に出店しており、店舗数は261に上ります。店から1キロメートル圏内にお住まいの方、通勤・通学される方、病院や介護施設の入通所者など、全てのお客様にお越しいただく店を目指して商品をそろえています。特定の所得層をターゲットにするのではなく、本マグロもメバチマグロもキハダマグロもそろえ、高価な和牛もお手ごろな豪州牛もそろえています。

── 会社の経営状況を教えてください。

 岩崎 2016年2月期は売上高6299億円、経常利益は129億円でした。これに対して経営戦略では「21年度に400店舗、売上高8000億円、経常利益200億円」を目標にしています。出店ペースは少し足りないものの、売上高、経常利益とも達成へ向けて良いペースで進捗(しんちょく)しています。

── 足元の消費動向をどう見ますか。

 岩崎 マスコミでは、年明けから「景気が悪くなっている」と言われていますが、成長余地はあると考えています。経験上、消費は厚生労働省が発表する現金給与総額とリンクしており、今年の賃金は減少していないからです。過去2年間は4~5%伸長していましたので、伸びが鈍化したようにも見えます。しかし、昨年の3~9月はプレミアム商品券効果で消費が伸び、今年はその反動も影響しています。また、デフレだった10年ごろは97~98%と前年同期比割れでした。伸び率が小さくなったとは言え、デフレに戻ったわけではないと考えています。

── 近年、改装を加速していますね。

 岩崎 中期経営計画(15年度から3カ年)で、改装投資に200億円を充てると定めており、15年度は70億円を費やしました。年数が経過した店舗、食品売り場が狭い店舗を中心に改装を実施しています。水産物やパンの売り場を対面にするなど、お客様に従業員との会話を楽しんでいただけるレイアウトに変更しています。食品スーパーとして「お手ごろ」「おいしい」「便利」なのは当たり前で、買い物に来て楽しいと思っていただける空間を目指します。近年、コンビニエンスストアが総菜や生鮮食品を強化しており、食品スーパーの領域に進出してきています。「買い物を楽しく」というコンセプトは、コンビニとの差別化になり、来店動機につながると考えています。

── 改装で気を付けている点は。

 岩崎 地域のお客様の声を聞くことです。2年前、西京極店(京都府)の近くに競合他社が大型店を出店しました。当社は、店舗面積ではかなわない上に、安売り攻勢も得策ではない。そこで、徹底的にお客様の声を聞いた改装にしようと決断しました。たとえば、若いお母さんから「駐輪場の路面がでこぼこで、子どもや荷物を乗せようとすると、自転車が不安定になる」との声が寄せられました。また、女性用トイレの個室で、荷物を掛けるフックの位置が高すぎる、というご意見もありました。これらの声に応えた改装を行った結果、西京極店は改装前よりお客様の数が増えました。

 

  ◇衣料品取り扱いが強み

 

── 各社が衣料品部門で苦戦する中で、ライフには衣料品や台所用品などの日用雑貨の売り場もあります。

 岩崎 確かに、ユニクロなどの衣料品専門店の存在感は増しています。しかし、当社を長く愛用してくださっているシニア層には衣料品が好評で、当社が差別化できる分野だと考えています。ある店舗で、食料品売り場拡張のために衣料品売り場を狭くしたところ「衣料品があるから、いつもライフに行っていたのに」とお叱りの声をいただきました。当社には、食料品とともに日用品・衣料品を1カ所で購入できる強みがあります。衣料品の取り扱いをやめる企業もありますが、当社はむしろ強化していきます。

── 地域スーパー同士が資本・業務提携する動きが加速しています。

 岩崎 日本には食品スーパーが300社以上あります。英国は4社の寡占ですが、日本ではそこまでの寡占化は起きないでしょう。地域によって好みがまったく違うからです。当社でも、首都圏と近畿圏で品ぞろえを変えています。しかし、電子マネーや会計などのシステム投資、物品の調達、プライベートブランド(PB)の開発には規模の利益が必要です。また、後継者問題や地方の人口減少もあり、今後流通再編は進むと予想されます。

── 三菱商事から、流通業界へ転職した経歴を持っています。

 岩崎 商社に入社後、海外メーカーにも出向したので、3業種目ということになりますが、小売りが一番おもしろいと感じています。地域のライフラインを担っているという実感があります。東日本大震災の時に首都圏でも物資が不足し、計画停電も行われた中、お客様が「ライフが開いていて助かった。ありがとう」と言ってくださった表情は今でも忘れられません。また、小売業にはチームで仕事を作り上げる充実感があります。商社は一人で仕事をすることも珍しくありません。しかし、今は店舗戦略、人事管理、商品開発と、皆で力を合わせて一つの目標に向かっています。達成できた時の充実感は何物にも代え難いです。

 (構成=種市房子・編集部)

 

  ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 三菱商事勤務時代の30歳で清水信次前社長(現・会長)と出会い、33歳で当社に出向し、39歳で社長になりました。こんなに長く在籍して、まさか社長になるとは思いもしませんでした。

Q 「私を変えた本」は

A 「日本スーパーマーケット創論」(安土敏)。社長就任の06年に、サミット元社長が出版した本です。

Q 休日の過ごし方

A ジム、読書。土曜日曜のどちらかは店舗に足を運んでいます。

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 ■人物略歴

  ◇いわさき・たかはる

 東京都出身、慶応義塾高校(横浜市)、慶応大学経済学部卒業。1989年三菱商事入社。99年ライフコーポレーション取締役就任。専務取締役を経て2006年から現職。50歳。

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事業内容:スーパーマーケットチェーン運営

 本社所在地:大阪市淀川区(大阪本社)、東京都台東区(東京本社)

 設立:1956年

 資本金:100億円

 従業員数:2万4052人(パート含む、2016年2月現在)

 業績(16年2月期)

  売上高:6299億円

  営業利益:128億円 

 

(『週刊エコノミスト』2016年10月25日号<10月17日発売>4~5ページより転載)