2016年

11月

08日

特集 家は中古が一番 これだけは気をつけろ!その2 インスペクション

◇住宅の欠陥確認に不可欠

 

矢部 智仁(住宅不動産取引支援機構常務理事)

 

 

中古住宅を購入する際、既存住宅現況検査(インスペクション)が重要だ。中古住宅の売買を終えた後に瑕疵(かし=欠陥)が見つかった場合、売り主が瑕疵担保責任を負うのは一般的に3カ月(個人間売買)と短い期間となる。場合によっては、瑕疵担保が免責となる場合もある。

 

住宅建築構造に詳しくない買い主が、自ら瑕疵の有無を確認するのは難しい。そこで国は、仲介業者が売り主や買い主にインスペクションの意向確認を2018年度までに義務づけるよう宅建業法を改正した。

 

 ◇2018年度までに義務付け

 

インスペクションでは、住宅に精通したインスペクターが、屋根、外壁、室内、小屋裏、床下などの劣化状況、瑕疵の有無を調査する。物件の経年劣化の程度を測るものではないことに注意が必要だ。その調査結果に基づき、改修すべき箇所を指摘する。改修時期、かかる費用の目安などを算出し、買い主にアドバイスを行う場合もある。

 

検査項目や検査手法は、国土交通省がガイドラインを策定している。調査費用は1軒当たり6万~12万円程度。買い主が物件購入の意思を示した際に実施することができる。

 

ただ、あっせんや意向確認が仲介業者にまだ義務づけられていないため、現状は売り主がインスペクションに応じないこともある。この場合、瑕疵担保責任のリスクを減らすため、こうした業者との取引は打ち切るのが無難だ。

 

 ◇専門家の選定が重要

 

また、インスペクターは現状、国家資格ではない。調査能力の差は診断結果を左右する。インスペクターが瑕疵を見落とした場合、その責任分担について、法整備は未定だ。トラブルを未然に防ぐためにも、インスペクターの選定は重要だ。

 

業者は、民間団体が行う講座を受講して取得できる住宅診断士(ホームインスペクター)の有資格者、または国交省が策定した「既存住宅インスペクション・ガイドライン」に準拠した建築士のみが取得できる既存住宅現況検査技術者に頼みたい。

 

 ◇あとから欠陥が見つかったら・・・保険も活用

 

また、建築士によるインスペクションとセットで加入する「中古住宅売買かし保険」(既存住宅売買瑕疵保険)は、瑕疵担保リスクの軽減にもつながる。保険の対象は、基礎や柱など構造耐力上主要な部分や、雨水の浸入を防止する部分などで、個人間売買タイプの場合、保険期間は5年または1年。引き渡し後に物件の対象部分に瑕疵が見つかった場合、改修費用をまかなうことができる。保険料は、保険を引き受ける会社と提携している登録検査機関により異なるが、10万円前後となっている。

 

全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)が16年3月に実施したアンケート調査では、回収数2000サンプルのうち、インスペクションを知っていると答えたのは、全体の27・7%にとどまった。一方、同調査で、インスペクションを知っている人のうち、住宅購入検討者(593サンプル)でインスペクションを利用したいと答えたのは56%にのぼった。

 

中古住宅市場が拡大するなか、インスペクションのニーズは今後、高まっていくと予想される。買い手だけでなく、売り手にも利点となるような制度拡充が求められる。

 

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 <主な12の検査項目>

 ◇構造耐力上主要な部分に係るもの

  1. バルコニーのひび割れ、劣化
  2. 外壁のひび割れ、欠損、はがれ、サッシの周囲の隙間、開閉不良
  3. 柱およびはりの劣化、傾斜
  4. 土台のひび割れ、劣化
  5. 基礎のひび割れ、欠損、劣化
  6. 床の著しい沈み、傾斜
  7. 壁の傾斜

 ◇雨水の浸入を防止する部分に係るもの

  8. 屋根のひび割れ、劣化、はがれ
  9. 軒裏のシーリング材の破断や欠損、軒裏天井の雨漏りの跡
  10.小屋裏の劣化状況
  11.内壁と天井の雨漏りの跡


 ◇給排水管

  12. 給排水管の漏れや詰まり

 

(出所)住宅不動産取引支援機構ホームページ

 

 

(『週刊エコノミスト』2016年11月8日号<10月31日発売>33ページより転載)

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この記事の掲載号

定価:620円(税込み)

発売日:2016年10月31日