2016年

11月

08日

福田三千男 アダストリア会長兼最高経営責任者(CEO) 2016年11月8日号

◇「カジュアル衣料のR&Dを強化」

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 アダストリアは、グローバルワークやローリーズファームなど、17のカジュアル衣料ブランドを、国内外に約1300店舗展開している。売上高は、2000年上場時の100億円から、16年2月期通期は2000億円と、低迷する小売業界で急成長を遂げている。

 

── 創業は1953年と、長い歴史があります。

福田 当社は、父が創業した「福田屋洋服店」で紳士服販売から始め、これまで環境の変化に応じて、メンズカジュアル、ジーンズカジュアル、ファッションカジュアルチェーンへとビジネスモデルを変えてきました。規模が拡大するにつれ、競合との差別化や店舗運営など、現在まで苦難の連続でした。現在の市場に進出したのは、92年にローリーズファームの展開を開始してからです。

 

── ローリーズファームの展開でも苦戦しましたか。

福田 最初は全く売れず、大苦戦しました。単品のヒット作を狙った商品作りをしていたため、お客様へのコーディネート提案などが難しく、なかなか大きな売り上げにつながらなかった。ブランドのストーリーがなかったことがその原因でした。

 

── どう打開しましたか。

福田 当時、一番売れ行きが良かった福岡店で、流行に敏感な社員を集めて「何が着たいか」徹底的に追求しました。パンツの丈の長さから幅まで細かくこだわり、そうして生まれたオリジナルジーンズは、あっという間に15万本以上を売り上げる大ヒット商品となりました。

 この経験から、「ストアブランド(小売業者独自のブランド)」の重要性に気付きました。「お客様に勧められるもの」「自分が着たいもの」を理念に商品を企画し、ローリーズファームを当社独自のストアブランドとして育てていきました。

 

 ◇誇り持てる商品作る

 

── 14年2月期までに純利益は5期連続で減少していました。

福田 当社はこれまで、企画・生産などの商品作りを全て外部の業者に委託して、仕入れた商品を販売する受託生産(OEM)供給体制でやってきました。しかし、株価が何十倍になった頃から、競合他社が次々とまねをしてOEMに移行し始めたのです。同じような商品が出回り、市場は同質化して価格競争となってしまいました。

 

── どうしましたか。

福田 10年に、一部のブランドや商品を企画から生産、販売まで一貫して自社で行う製造小売り(SPA)体制に仕組みを変える「チェンジ宣言」を行いました。13年には、取引先の一つで、生産機能を持つ「ナチュラルナイン」と、雑貨の小売りに強い「トリニティアーツ」を買収。同年、それまでの「ポイント」から、これらの会社を「アダストリアホールディングス(HD)」として経営統合し、競合と差別化できるよう、それぞれの機能を連携させ、商品力強化に取り組みました。

 ただ、それまで企画・生産を業者に頼りきりだったため、すぐにはうまくいかず、作っても売れない時期もあり、それまでにたまった不良在庫を処分したことで、14年は最終赤字となってしまいました。

 

── その後は。

福田 現在の自社生産比率は4割まで上昇し、一連の改革効果が実を結び、16年2月期にV字回復しました。社員にとっても、お客様から反響を頂き、自信を持って商品を勧められることはうれしいことです。一番重要なのは、社員が誇りを持って売れる商品があるかどうかですから。

 

── 15年に、HD体制を解消して1社に統合したのはなぜですか。

福田 商品力を高めるためには、企画・生産・販売、各機能の一体感が不可欠でした。それぞれの企業文化を尊重してHD体制としましたが、やはり各機能が垂直に連携しなければうまくいかないと思いました。「利益」も「お客様」も、立場によって見方も意味も異なります。皆が一つの目標を持ち、言葉を一つにすることが必要でした。

 

── 次の3カ年に向けた目標は。

福田 18年2月期までの中期経営計画目標である営業利益148億円は、初年度に達成しました。次の3カ年では、既存事業の年率成長率を5%以上とすることを目標にしています。具体的な数値目標はあえて設定していません。人間は大体、達成できそうな数字を言いますし、目標数値よりも1~2割増しで達成できてしまうものです。大きく成長するために、17年はできそうもないことを考えなければなりません。また、SPA体制も更に強化していきます。この仕組みなくして成長はありません。

 

── 海外展開は。

福田 既に海外進出はしていますが、現在、「なぜ進出するのか」という「意味」が不透明です。意味をしっかりと理解せず、「なんとなく」進出すれば必ず失敗します。過去、シンガポールに進出した時は大失敗しました。まさしく攻める「意味」が欠けていた。現在、この部分を深く追求しているところです。

 

── 通期の見通しは。

福田 17年2月期通期は、純利益予想を上方修正し、過去最高益を更新する見通しです。9月から、デザイナーやパタンナーなどのマネジメント人材を集結させ、商品企画や情報収集、発信機能の強化を行う研究開発(R&D)室を新設しました。今後は、R&D室の向上など、成長事業のための投資に力を入れていく予定です。

(構成=荒木宏香・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A ポイントを始めた頃で、一番苦しかった時期です。失敗の連続で、毎日お金の心配をしていました。

 

Q 「私を変えた本」は

A 片平秀貴著『パワー・ブランドの本質―企業とステークホルダーを結合させる「第五の経営資源」』です。消費者のことを知り、理解しなければ、物も作れないのだということを学びました。

 

Q 休日の過ごし方

A 大体本を読むか、クラシック音楽を聴いています。

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 ■人物略歴

 ◇ふくだ・みちお

 茨城県出身。茨城県立水戸第一高校、同志社大学商学部卒業後、1969年紳士服メーカーに入社。71年、家業の福田屋洋服店に入社し、93年に社長就任。15年6月から現職。70歳。

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事業内容:衣料品・雑貨等の企画・製造・販売

本社所在地:東京都千代田区

設立:1953年

資本金:26億6000万円

従業員数:4686人

業績(2016年2月期・連結)

 売上高:2000億3800万円

 営業利益:160億円

 

(『週刊エコノミスト』2016年11月8日号<10月31日発売>4~5ページより転載)

この記事の掲載号

定価:620円(税込み)

発売日:2016年10月31日

週刊エコノミスト 2016年11月8日号

 

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