2016年

11月

15日

大野直竹 大和ハウス工業社長 2016年11月15日号

◇「戸建ての心」で顧客と長い付き合いをする

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 現在の主力事業は何ですか。

大野 もともとは戸建てを中心に出発しましたが、今では、賃貸住宅・商業施設・事業施設の建設・運営をするコア3事業が連結売上高の6割以上を占めるようになりました。しかし、「戸建ての心」は忘れていません。戸建ての特性は、「顧客の夢を我々が預かる」こと。建物の完成後も、何十年も顧客とお付き合いします。この「戸建ての心」を持って、賃貸住宅・商業施設・事業施設を展開しています。

 

── どのように「戸建ての心」を生かしているのですか。

大野 たとえば、賃貸住宅はどんなに大きなものでも2~3年で完成します。しかし、オーナーは住宅を貸して家賃収入を得ることが目的ですから、我々の役割は建物の完成で終わるわけではありません。オーナーには賃貸事業がうまくいくかが最大の関心事です。そのため、たとえば、入居者からアンケートをとって、どのように建物を評価しているかを検証しながら次の商品開発に生かしています。これは戸建てメーカーでなければなかなかできない発想です。

 

── オーナーにはどう対応していますか。

大野 当社はオーナー会を作って、建物の完成後も経営がうまくいっているかをチェックします。仮に部屋が空いてしまった場合は、募集を掛け、空き部屋がゼロになるまでお付き合いします。オーナー会は全国に2万人の会員がいますが、時々「大和ハウスほど面倒見が良い会社はない」と言ってくれます。我々としては大変うれしい言葉です。

 

── 商業施設はどのような経緯で始めたのですか。

大野 今から40年ほど前、創業者の石橋信夫が、自動車社会の到来で消費者が車で商業施設に行って買い物をする時代になることを予想し、事業をスタートしました。最初は土地を購入して建物を造るやり方でしたが、それでは創業間もない企業は資金負担できません。そこで、道路沿いに土地を持っている地主と、店を持ちたいテナントを仲介する仲人の役をしていきました。我々が地主から建物の建設を請け負い、テナントには毎月の賃料を払ってもらう。地主は自分の土地を売ることなく、資産として運用できます。

 

── どんな会社がテナントですか。

大野 有名なところでは、「ユニクロ」のファーストリテイリングの郊外店舗の8割は当社が手がけています。紳士服の青山商事やコンビニエンスストア、ドラッグストアと非常に多くの顧客がいます。「とにかく長いお付き合いをする」ことが基本です。

 

── テレビコマーシャルで「物流施設の大和ハウス」というイメージも定着しています。

大野 物流施設などが主体の、新たな手法を用いた事業施設は15年前から開始しました。食材を加工できる食品物流倉庫やeコマースで即日配送に対応する物流倉庫と、倉庫の役割はどんどんと変化しています。当社の強みは、相場より少し低い賃料を提供しながら、テナントと長期契約を結んでいることです。テナントの8割は長期です。我々のやり方が正しいと思ったのは、2008年のリーマン・ショックの時。圧倒的な業界ナンバーワンの外資系企業が経営破綻しました。しかし、当社のテナントは長期契約でしかも優良企業ばかりなので影響は最小限でした。

 

 ◇売り上げ目標は前倒しで

 

── リーマン・ショック前の営業利益は900億円弱でしたが、16年3月期は2400億円強です。

大野 商業施設、事業施設などは時代を先取りしていたと思っています。私は営業本部副本部長、本部長を経て社長になりましたが、就任する1年前から、事業拡大へ手応えを感じていました。まず、地方での営業をかなり重視しました。関連事業も賃貸住宅・商業施設・事業施設のコア3事業を助けるような形で伸びてきました。人事もさまざまなことを考え手を打っています。

 

── 18年度を最終年度とする中期経営計画が始まりました。

大野 消費税率の10%への引き上げを前提に計画を組んだので、今では、少し保守的な目標ではないかと思います。政府・日銀の低金利政策も追い風となり、18年度の目標売上高3兆7000億円は、前倒しで達成したいです。コア3事業とその周辺事業で伸ばしていきます。たとえば、当社の建設した賃貸住宅を管理している大和リビングは、インターネット配信などの付帯ビジネスによって売り上げを伸ばすことができます。

 

── 米住宅会社スタンレー・マーチンの買収を発表しました。海外展開はどうですか。

大野 最終年度に2000億円を目指しています。国内での人員配置で手いっぱいで、海外への人材の供給が足りないなか、がんばってもらっています。今までは中国の分譲マンション開発が中心でしたが、これからは米国での賃貸住宅事業や、東南アジアでの事業用のレンタル工場やレンタル倉庫などを伸ばしていきたいと考えています。

 

── 社内でのコミュニケーションをどのようにとっているのですか。

大野 私は営業本部の副本部長と本部長を合わせて7年ほど務めました。当社には全部で80以上の支店がありますが、そのほとんどの支店長とはツーカーの間柄です。だから、何か問題があった時は、コミュニケーションが電話1本で可能です。支店に出かけると、社員たちと酒を酌み交わします。とにかく、現場の声を聞くことがものすごく大事です。これは、「戸建ての心」を持つこととも通じます。

(構成=稲留正英・編集部)

 

 ◇横顔

Q 社長業とは

A 世の中をしっかり見ながら明確な考えを持ち、自分自身に収れんしていく存在です。

Q 「私を変えた本」は

A 司馬遼太郎の『坂の上の雲』。『ノルウェイの森』の村上春樹も好きです。

Q 休日の過ごし方

A 映画や野球、芝居を見たりと、できるだけストレスのかからない過ごし方をしています。

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 ■人物略歴

 ◇おおの・なおたけ

 愛知県出身。愛知県東海高校、慶応義塾大学卒業。1971年大和ハウス工業入社。2000年取締役、07年副社長を経て、11年4月より現職。68歳。

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事業内容:戸建て・賃貸住宅、商業・事業施設の建設・運営

本社所在地:大阪市北区

創業:1955年

資本金:1617億円

従業員数:3万9736人(2016年6月末現在・連結)

業績(16年3月期・連結)

 売上高:3兆1929億円

 営業利益:2431億円

 

週刊エコノミスト 2016年11月15日号

特別定価:670円(税込み)

発売日:2016年11月7日

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