2016年

11月

29日

経営者:編集長インタビュー 落合寛司 西武信用金庫理事長 2016年11月29日特大号

落合 寛司 西武信用金庫理事長

 

◇「雨の日に傘貸す」協同組織金融機関目指す

 

Interviewer 金山 隆一(本誌編集長)

── 西武信金はどのような金融機関ですか。

落合 「利用者保護」が基本理念である協同組織金融機関の働きを最大限に追求した、コンサルティング機能を持つ金融機関です。顧客の課題を徹底的に解決します。

 

── なぜ、「コンサル」なんですか。

落合 日本は今、二つの大きな変革期にあります。まず、世界経済の主役が先進国から新興国に変わりました。二つめは少子高齢化です。このような変革期は、これをチャンスにできる企業と、ピンチにする企業がはっきりと分かれます。だから、コンサルが必要です。 

── 具体的にはどのように課題解決を支援しているのですか。

落合 例えば、中小企業の半分が海外進出で失敗しています。そこで、当金庫は、ベトナムの工業団地に出資をしています。団地には、進出した中小企業へのコンサル機能があり、材料の購入や現地社員の採用などについてアドバイスします。また、人材のマッチングもしています。一例を挙げると、中小企業にベトナム人の留学生を紹介し、3年間徹底的に教育したうえでベトナムに社長候補として送り込んでもらいます。

 

── 国内向けは。

落合 取引先を紹介するビジネスマッチングが一番多いです。年間6500件紹介しています。企業が一番欲しいのは売り上げです。だから、紹介すると、多くの顧客は元気になります。また、変革期ですから、企業はビジネスモデルを変える必要があるので、その支援をしています。ただ、経営者には、「自分で変えないでください」と話しています。

 

── なぜですか。

落合 会社を良くしようと一生懸命努力した結果が、今ですから。だから、第三者の専門家に見てもらうのです。当金庫は、東京大学や中小企業診断協会など外部の組織と連携し、3万人のネットワークがあります。ゴルフのフォームと同様、欠点や長所は第三者が一番よく分かります。

 

── 不動産賃貸向けの融資も前年比17%増と大きく伸びています。

落合 地域を活性化するためです。これから、不動産は「持たざる」時代に入ると考えています。少子高齢化で東京などの一部都市を除いて、日本の不動産価格は下がるでしょう。不動産は賃貸が中心になる。だから、遊休不動産を持っている人に、賃貸物件用の貸し出しをしています。

 これは、資産管理対策にもなります。日本の相続税率は世界最高の55%です。何もしなければ、保有不動産の半分以上が税金に消えます。だから、例えば、八百屋の店舗の上に賃貸物件を作ってもらいます。家賃が入れば、本業も強化できます。

 

◇「ブティック」目指した

 

── 業績はどうですか。

落合 2016年3月期は、貸出金が1232億円増えましたが、今年

度は1600億円伸びそうです。預貸率は昨年度は76%ですが、今年度は現時点で78%。なぜなら、顧客が元気だからです。元気になれば食欲が出るように、企業もお金が必要になります。不良債権も減ります。昨年度の不良債権比率は1・74%と、業界平均の6%の3分の1以下です。前期の当期利益は74億円ですが、日本で初めて正常債権に42億円の引当金を積んだので、それを除くと、実質的に110億円強になります。

 

── 正常債権になぜ、引当金を積んだのですか。

落合 顧客を潰さないためです。リーマン・ショックのような大きな経済変動が訪れると、中小企業はすぐ赤字になります。債務超過になると「破綻懸念先」に分類され、貸し出しが実行できなくなる。ですが、あらかじめ、引当金を計上していれば、いざというときにお金が貸せる。要は「雨の日に傘を貸す」真の協同組織金融機関を目指すための体制を作っているのです。

 

── なぜ、ほかの金融機関はまねができないのですか。

落合 我々は「百貨店」ではなく、「ブティック」を目指しました。メガバンクが一番不得意なのは、顧客の戸別訪問など、手間がかかることです。しかし、非効率な戸別訪問もコンサルにより付加価値を高めると「効率」に変わります。ただ、そうは言っても、これを運営する従業員が元気でないと、実現できないので、人事制度を改革しました。

 

── それは、いつからですか。

落合 私が理事長に就任した2010年以降です。徹底的に個人の潜在能力を生かす体制にしました。まず、年齢による定年を無くしました。60歳を過ぎても、昇進や昇格は今までと全く同じで、自分が能力の限界を感じるまで勤められます。中途採用も年齢の制限はありません。これまで採用した人の最高齢は70歳です。他の金融機関で肩たたきにあった55歳くらいの人も結構入庫しています。今、どんどん出店しているので、この人たちは1〜2年で支店長になります。また、新人も支店長のポストを目指して立候補し、社内の試験に合格すると、いきなり支店長になれます。

 

── ITを活用した金融サービスの「フィンテック」の取り組みは。

落合 決済サービスを提供するベンチャー企業の「コイニー」(東京・渋谷区)と業務提携しました。スマホでクレジットカード決済ができるので、これを、地域の商店街に導入しようと考えています。2020年に東京でオリンピックがあるのですから、商店街に免税店があってもよいはずです。

 

◇横 顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 金融業に必要なコンサル業務を職場内や顧客に提供する仕組み作りに努力していました。

Q 「私を変えた本」は

A 本ではないですが、小学校の時、同級生の女の子の死をきっかけに、二度と無い今を真剣に生きようと考えました。「前向きな心」が大好きな言葉です。

Q 休日の過ごし方

A ガーデニングをしています。面倒を見ればすぐに結果が出るのが好きです。

(構成=稲留正英・編集部)

 

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 ■人物略歴

おちあい かんじ

神奈川県出身。神奈川県立津久井高校、亜細亜大学卒業。1973年西武信用金庫入庫。2002年常勤理事、05年専務理事を経て、10年6月より現職。66歳。

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事業内容: 金融業

本店所在地:東京都中野区

設立: 1969年6月

資本金:1173億円(2016年3月期・連結)

従業員数:1192人(9月30日時点)

業績(2015年度)

 経常収益:317億円

 

 当期利益:74億円