2016年

12月

06日

【EconomistView】:奥村組「30年を経過した免震装置で十分な性能を確認」2016年12月6日号

社業として社会に貢献でき、恵まれた仕事をさせていただいていると話す奥村社長
社業として社会に貢献でき、恵まれた仕事をさせていただいていると話す奥村社長

◇奥村組・奥村太加典社長

◇「既存建物の免震化も可能とする優れた免震技術で社会に貢献する」

 

今年5月に3カ年の中期経営計画を発表し、基本方針に建設事業の生産力向上とブランド力アップを掲げた奥村組。その推進の主体となる技術開発拠点「奥村組技術研究所」(茨城県つくば市)で、竣工30年の免震建物による実証実験が行われた。社業を通じてさらに社会貢献したいという奥村太加典社長に話を聞いた。

 

免震に対する社会の関心がまだ低かった1980年代初頭、「地震大国日本では、絶対必要な技術になる」という信念のもと免震の研究を開始した奥村組。86年には、人工的に建物をまるごと振動させられる日本初の実用免震ビル、奥村組技術研究所管理棟を竣工させるなど、30年以上にわたり免震建物と免震装置に関する実証データを蓄積してきた。

 

今回の実験は、総重量約2500㌧の管理棟全体を油圧ジャッキで水平方向に10㌢スライドさせ、一気にジャッキを解放して建物を自由振動させて、揺れの周期や振幅などのデータを測定・分析するもの。その結果、免震装置に使われている積層ゴムの水平剛性は竣工時に対して約9%高くなり、設計時に想定した剛性増加率の許容範囲内に十分おさまっており、剛性変化の傾向も予測の範囲内で推移し、建物が設計どおりの免震性能を有していることが確認された

研究所内の三次元振動台を使った地震体験。中央の免震装置には揺れが伝わりにくい
研究所内の三次元振動台を使った地震体験。中央の免震装置には揺れが伝わりにくい

その一方、この30年、パイオニアとしての苦労も多く、「劣化しやすいイメージのあるゴムで、重い建物が支えられることを理解していただくのが大変でした。実験データなどを示してご説明するのですが、なかなか免震構造を採用していただけなかったのです」と奥村社長は振り返る。大きな転機になったのが阪神・淡路大震災だ。免震に対する注目が高まり、奥村組にも免震関連の実験依頼が急増したという。

 

耐震構造が建物を堅牢にして強度を高めるのに対し、免震構造は地震の揺れを建物に伝わりにくくしている。「繰り返す地震も一回ごとに揺れを逃がすのでダメージが蓄積されません。建物自体がしなやかに動くことで強さを発揮するわけです。BCP(事業継続計画)の観点からも有効といえます」

 

30年の実績は優れた設計技術にも表れ、積層ゴムの性能向上に加え、金属製転がり支承を利用した高性能免震建物や、既存の建物を使用しながら免震化できる免震レトロフィット、コンピュータルームなど重要な部屋を守る免震床、文化財などを個別に守る免震台をはじめ、高度な技術を開発している。

今回、設計どおりの免震性能が確認された、ゴムと鋼板を重ね合わせた積層ゴム支承
今回、設計どおりの免震性能が確認された、ゴムと鋼板を重ね合わせた積層ゴム支承

奥村社長は「免震建物を増やすことで、救える命、守れる幸せがたくさんありますから、これからも社業を通じて社会に貢献していきたいと思います」と熱く語る。

 

*奥村組の免震への取り組みは特設サイト「免震WEB」(http://www.menshin-okumura.com/)で紹介されている