2017年

8月

01日

第51回 福島後の未来:加速する若手の「原子力離れ」 安全の維持向上へ人材確保を=芦田高規

◇あしだ・たかき  1981年京都府生まれ。名古屋大学大学院工学研究科修了。2007年に三菱総合研究所に入社し、科学技術や原子力に関する調査研究などに従事。
◇あしだ・たかき  1981年京都府生まれ。名古屋大学大学院工学研究科修了。2007年に三菱総合研究所に入社し、科学技術や原子力に関する調査研究などに従事。

芦田高規(三菱総合研究所研究員)

 

 東京電力福島第1原発の事故以降、国民の「原子力離れ」が止まらない。中でも若者の原子力離れが福島原発事故を基点にいっそう加速していることに強い危機感を抱いている。

 

 原子力史上、類を見ない事故を起こした福島原発の廃炉作業では次々と難題が噴出し、周辺地域での除染作業は今も続く。また東電柏崎刈羽原発など各原発は早期再稼働を目指しているが、原子力規制委員会の審査が一進一退の状況となるケースもあり、再稼働の動きは鈍い。海外ではベトナムで原発新設計画が頓挫し、東芝子会社の米原子炉メーカー「ウェスチングハウス社」が経営破綻するなど、原子力事業に明るい話題が見えない。

 

  加えて、福島原発事故による原子力に対するネガティブなイメージが国民世論に定着しつつある。世間は廃炉や除染といった事業までも後ろ向きのものと捉え、廃棄物、廃炉の「廃」や「廃れる」という言葉の負のイメージが原子力全体を印象づけてしまっているかのようだ。

 

 しかし、廃炉や廃棄物処理など長期にわたる原子力関連の事業を安全かつ着実に進めていくには、人材が重要であるのは言うまでもない。それにもかかわらず、国内の大学では、原子力関係の学科を志望する学生は減少しており、影響は原子力関連産業への就職希望者の減少傾向に表れている。

 

 例えば、日本原子力産業協会と関西原子力懇談会が主催する合同企業説明会に参加した企業は、2010年度は65社、参加学生数は1903人だったのに対し、福島事故後の12年度には参加企業は34社、学生数は388人へと激減した。16年3月に開かれた説明会の参加企業数は55社と回復傾向にあるが、参加学生数は337人と減少が続く。

 

 理由として、国の原子力政策の曖昧さに加え、将来への見通しが不透明なため、若者が興味や関心を持てないのであろう。今や、原子力事業をけん引しているのは1980~90年代にプラント建設に携わった50代以上のシニア世代が中心だ。このまま若者が敬遠する状態が続けば、原子力を担う人材はいずれ払底する。

 

 原子力事業においては、原子力発電の利用や活用の賛否にかかわらず、安全こそが最優先であり、その思いは共有できるだろう。

 

 そのためには高度な専門知識を備え、現場の技術的問題を解決していくことができる人材が多く活躍していくことが求められる。国家的な難事業に対し、関係者すべてが持続的に取り組んでいくことが重要だ。そのためには、中長期的な視点で人材を確保し、育成しなければならない。

 

 特に、将来的に事業をけん引する若者の確保が急務だ。中国やインドなど近隣のアジア諸国では、原子力発電プラントの新設ラッシュが続いている。世界を見渡せば、福島の事故後も原子力発電の需要は大きく減退しているわけではなく、むしろ新設プラントは増加している。原子力の安全を確保し、万一事故が起きた際に実効性のある原子力防災体制を確立させるためにも、日本が技術先進国であり続けるためにも、原子力に携わる人材の確保と育成が必要だ。

 

 ◇原子力産業の領域は広い

 

 今後、原子力分野における人材の確保を進めるにあたってのカギは何か。

 

 その一つは原子力産業がカバーする領域の広さを周知することだろう。原子力は放射線という特有の専門性を持つ一方、機械や化学、金属など多岐にわたる分野の専門性が求められる「横断型」の産業だ。その意味で原子力は総合工学といえる。

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2017年

7月

18日

第50回 福島後の未来:津波の危険を見過ごした原子力行政の変わらぬ本質=鎮目宰司

◇しずめ・さいじ  1973年生まれ、千葉県出身。96年立教大学卒、共同通信入社。佐賀支局などを経て2004年に科学部。原子力や地震防災、福島事故をめぐる訴訟の取材を担当する。15~16年に『科学』(岩波書店)で「漂流する責任:原子力発電をめぐる力学を追う」を連載。
◇しずめ・さいじ  1973年生まれ、千葉県出身。96年立教大学卒、共同通信入社。佐賀支局などを経て2004年に科学部。原子力や地震防災、福島事故をめぐる訴訟の取材を担当する。15~16年に『科学』(岩波書店)で「漂流する責任:原子力発電をめぐる力学を追う」を連載。

鎮目宰司(共同通信科学部記者)

 

日本の原子力規制行政は、東京電力福島第1原発事故の本質を正面から反省し、教訓としようと真剣に考えているのだろうか。

 

 事故前から大津波の危険は各方面で指摘されていた。原子力安全・保安院も東電も認識してはいたが、対策には踏み切らなかった。規制当局が電力会社の不利益になるような判断をするには、裁判で争っても負けないだけの確証を必要とした。

 

 事故後、保安院などを解体して発足した原子力規制委員会に、国民は「安全以外の何も優先しない」姿勢を貫くことを期待した。だが、本質的な問題点は解消しきってはいないように思える。事故やトラブルが起きると、慌てて傷口にばんそうこうを貼るような弥縫策(びほうさく)を繰り返すという不幸な歴史の延長上にある。

福島第1原発に向かって来襲し、高さ10メートルの堤防を乗り越えた津波。5号機南側ののり面から東京電力社員が撮影した=2011年3月11日午後撮影(東電提供)
福島第1原発に向かって来襲し、高さ10メートルの堤防を乗り越えた津波。5号機南側ののり面から東京電力社員が撮影した=2011年3月11日午後撮影(東電提供)
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2017年

7月

11日

第49回 福島後の未来:日本の電力を救うデジタルグリッド 再生可能エネの大量導入は可能だ=阿部力也

◇あべ・りきや  1953年福島県生まれ。東京大学工学部電子工学科卒、電源開発入社。九州大学博士(工学)。米国電力研究所客員研究員、J-POWER上席研究員を経て、2008年より現職。
◇あべ・りきや  1953年福島県生まれ。東京大学工学部電子工学科卒、電源開発入社。九州大学博士(工学)。米国電力研究所客員研究員、J-POWER上席研究員を経て、2008年より現職。

阿部力也(東京大学大学院技術経営戦略学専攻特任教授)

 

 2011年3月11日に東日本大震災が発生し、未曽有の規模の大停電が起こった。火力や原子力はじめ、水力や変電所の停止を含めると、およそ3000万キロワットの電源が関東、東北地方で失われたと見ている。その結果、東京電力と東北電力管内では合計約850万世帯の停電が発生。業務用、産業用の電力も失われた。その後も輪番停電などが行われ、長期にわたり大きな混乱をきたした。

 

 現代社会において電気は、エネルギーの供給源としてだけではなく、情報通信や交通、金融など、あらゆる分野の基盤を担っている。東日本大震災の経験により、そうした電力システムの重要性が強く示唆された。そのため、現在は電源の信頼性の強化、系統の増強といった電力システムを強化するさまざまな対策が検討され始めている。

 

 しかし一方で、電力システムは今までとはまるで違う局面を迎え始めた。設備価格の低下が引き金となり、再生可能エネルギーの導入量が大幅に増加しているのだ。世界では太陽光発電の累積導入量がここ6年間、年率50%弱で拡大している。再エネは増え続けると見るしかないであろう。

 

 日本でも、太陽光発電の導入容量が3100万キロワットに達し、震災時に喪失した3000万キロワットを超えた。すなわち、日本全体が曇天になると、震災時規模の電源喪失が起こることを意味する。これは大問題である。

 

 出力が変動する再エネの大量導入には、現在検討されている送電線の増強などの対策では対処しきれず、今までと「別次元」の電力システム改革が行われなければならない。筆者は「デジタルグリッド」という新しい電力システムがその答えになると考えている。

 

 デジタルグリッドとは、一言でいえば、既存の送配電網(系統)の末端に接続された中小の系統「セル」の集合体である。このセルは系統と電力のやり取りをしながら、周波数については系統と同期しない特徴を持っている。以下ではなぜ、このデジタルグリッドが再エネの大量導入につながるのかを、震災時の状況を再確認しながら説明していこう。

 

 ◇停電を防いだ電気のバルブ

 

 震災時、関東最南西の神奈川県においてすら、多くの需要家が停電した。しかし、静岡県や長野県を含め、西日本で関東の停電の影響を受けたところはない。なぜか。

 

 関東の停電の影響は、日本列島を東西に分断する周波数変換所でせき止められたからである。

 

 周波数変換所は50ヘルツの東日本と、60ヘルツの西日本をつなぐ「電気のバルブ」のようなものだ。異なる周波数間でも意図すれば電気が流せるが、勝手には流れない。震災時にはこのバルブが関所になって影響が伝播(でんぱ)しなかった。

 

 つまり、周波数が同期しない、いわば「非同期連系装置」を、もっと小型化したものを電力系統の随所に置けば、周波数などの影響を装置がある場所でストップさせ、連鎖的な停電を防ぐことができる。

 

 筆者が開発した「デジタルグリッドルーター(DGR)」は、この非同期連系装置を小型化したものだ。

 

 前述のセルの中には、このDGRや発電機、蓄電池などが設置される。既存の送配電網にトラブルなどがあり、電力系統が停電しても、セルは周波数の影響を受けないため停電せず、セル内の発電設備と蓄電池で電気を利用し続けられる。

 

 このセルは、再エネの導入にも貢献する。セル内では、電力の周波数を調整できる機能がある。例えば、セル内に設置された太陽光発電設備の発電量が増えた場合、既存の送電網に流したりして調整する。これにより火力発電所の燃料消費量を減らすことができる。一方、天候が不順になって電力不足となれば、既存の送配電網から電力を調達する。

 

 デジタルグリッドは既存の系統とも共存するシステムなのだ。

 

 今までの系統に、こうした自立性の高いセルがいくつも接続するようになれば、送電線増強もそれほど必要なく、再エネも大量に導入することができるようになる。

 

 なお、セルの大きさはさまざまで、電力需要が50キロワットのものから、数十万の人々が住む50万キロワットのものも考えられる。セルの中に、セルがある入れ子構造も可能だ。

 

 デジタルグリッドは市場取引を通じて同時同量を達成する。それが具体的にどう機能するのか、詳しく説明していこう。

 

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2017年

6月

20日

第48回 福島後の未来:発電施設導入の総合評価で消費者の負担適正化を=荻本和彦 

1956年福岡県生まれ。東京大学工学部電気電子工学科卒業。79年に電源開発(Jパワー)に入社し、直流送電、電力系統解析、太陽光発電・風力発電などの技術研究開発、技術戦略などに従事。2008年から東京大学生産技術研究所エネルギー工学連携研究センター特任教授。
1956年福岡県生まれ。東京大学工学部電気電子工学科卒業。79年に電源開発(Jパワー)に入社し、直流送電、電力系統解析、太陽光発電・風力発電などの技術研究開発、技術戦略などに従事。2008年から東京大学生産技術研究所エネルギー工学連携研究センター特任教授。

荻本和彦・東京大学生産技術研究所特任教授

 

日本のエネルギー政策は残念ながら、消費者に恩恵をもたらす(1)安価なこと(2)安定的なこと(3)持続可能であること──という三つの原点がなおざりにされがちだ。というのも、政策を決定する場でエネルギー供給側の影響力が強すぎ、消費者の本当の利益を代表できる議論が少ないからだ。この三つの原点を踏まえないと結局、消費者は電気料金や賦課金などで過剰な負担を強いられる。

 

 消費者側が適切な負担でエネルギーを得るための方策はあるのか。

 

 

 インテグレーションスタディー(新たな発電施設と運用対策導入に関する総合評価)を用いれば、三つの原点から離れることなく、電源導入による社会全体のコスト負担や影響を解析できる。インテグレーションスタディーとは、発電した電気が消費者に届けられるまでに必要なあらゆるコストや安定供給の影響を導き出す考え方だ。ある電源を導入する場合、土地代などを含めた設置コストのほか、その地域の送電系統網への新たな投資額など、発電事業者の負担だけでなく社会全体での負担も試算する。

 

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2017年

5月

30日

第47回 福島後の未来:福島第2の電源復旧で死闘 保安検査官と現場の10日間=宮嶋巌

宮下明男氏による鉛筆書きの復旧工程案
宮下明男氏による鉛筆書きの復旧工程案

宮嶋巌・月刊『FACTA』編集長

 

原子力発電所の安全性向上へ、原子炉等規制法(炉規法)の改正法案が4月7日に成立し、原発施設の保安検査体制が大きく変わった。原子力規制委員会(NRA)は原発再稼働を認める前に検査制度を見直すべきだったが、そこに手をつけられなかったのは「トラウマ」を引きずっていたからだ。

 3・11当日、福島第1(1F)には、7人の原子力保安検査官がいた。5人が免振重要棟に残ったが、翌12日午後、1号機が爆発すると、全員が1Fから退避。同夜、検査官がいなくなったことに激怒した海江田万里経産相が「現場で注水状況を確認せよ」と命じたため、13日午前に4人が免振重要棟に戻った。

 

 

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2017年

5月

09日

第46回 福島後の未来:日本の原発政策 北朝鮮の脅威を直視せよ=村沢義久 2017年5月2・9日号

◇むらさわ・よしひさ  1948年徳島県生まれ。東京大学大学院工学系研究科修了。スタンフォード大学MBA。米国系コンサルティング会社日本代表、ゴールドマン・サックス証券バイスプレジデントなどを経て、2005年から10年まで東京大学特任教授。13年4月から16年3月まで立命館大学大学院客員教授。
◇むらさわ・よしひさ  1948年徳島県生まれ。東京大学大学院工学系研究科修了。スタンフォード大学MBA。米国系コンサルティング会社日本代表、ゴールドマン・サックス証券バイスプレジデントなどを経て、2005年から10年まで東京大学特任教授。13年4月から16年3月まで立命館大学大学院客員教授。

村沢義久(環境経営コンサルタント)

北朝鮮情勢がにわかに緊迫している。米海軍当局は4月8日、原子力空母カール・ビンソンを中心とする第1空母打撃群を朝鮮半島近海に派遣したことを明らかにした。このため韓国内では「米軍が4月27日に北朝鮮を空爆する」とのうわさまで飛び出した。

 

 今回の危機の原因は、北朝鮮が昨年来ミサイル発射を続けていることだ。トランプ大統領就任後初めて発射した2月12日以来、異常な頻度で続けており、4月16日午前にも弾道ミサイル1発を発射した。北朝鮮の一連の挑発行為に対し、米国は「あらゆる選択肢を検討する」とし、先制武力行使の可能性も示唆した。

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2017年

4月

11日

第45回 福島後の未来:原発集積地の進化 明るい柏崎計画=AKK=枝廣淳子 2017年4月11日号

◇えだひろ・じゅんこ  1962年京都市生まれ。東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。『不都合な真実』(アル・ゴア著)の翻訳をはじめ、環境問題に関する講演、執筆多数。幸せ経済社会研究所所長、NGOジャパン・フォー・サステナビリティ代表。
◇えだひろ・じゅんこ  1962年京都市生まれ。東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。『不都合な真実』(アル・ゴア著)の翻訳をはじめ、環境問題に関する講演、執筆多数。幸せ経済社会研究所所長、NGOジャパン・フォー・サステナビリティ代表。

枝廣淳子・東京都市大学環境学部教授

 

 

 世界最大の原子力発電所集積地である柏崎市。私は、原発誘致時から町を二分していた「原発推進」「原発反対」を超えて自分たちの町の未来を考えていこうと、3年間にわたる「明日の柏崎づくり事業」の手伝いをしてきた。今、柏崎では原発の賛否を超えた、地域の事業者たちの未来を見据えた取り組み「明るい柏崎計画=AKK」が始まっている。

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2017年

2月

21日

第44回 福島後の未来:漂流する原子力政策 再構築の道をさぐる=橘川武郎

◇きっかわ・たけお  1951年、和歌山県旧椒村(現有田市)生まれ。東京大学経済学部卒、同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。経済学博士。東大、一橋大学大学院教授などを経て現職。2030年の電源構成を議論する経済産業省の有識者会議で委員を務めた。
◇きっかわ・たけお  1951年、和歌山県旧椒村(現有田市)生まれ。東京大学経済学部卒、同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。経済学博士。東大、一橋大学大学院教授などを経て現職。2030年の電源構成を議論する経済産業省の有識者会議で委員を務めた。

橘川武郎・東京理科大学イノベーション研究科教授

 

 本誌2017年2月7日号の特集「電気代は税金となった」の第1部「ずさんな原発事故処理」で、週刊エコノミスト編集部は、福島第1原子力発電所事故後に東京電力の法的整理が見送られた理由について、ある電力関係者の「東電がなくなれば、国策として原子力事業を進めてきた国が批判の対象となる。それを避けるために、東電を存続させる必要があった」という声を紹介している(同号22ページ)。

 

 

 この声は、ずばり正鵠(せいこく)を射ている。日本の原子力事業は「国策民営」方式で進められてきた。福島第1原発事故後、事故を起こした当事者の東電が、福島の被災住民に土下座して謝罪するのは当然のことだ。

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2017年

1月

31日

第43回 福島後の未来 今西章・『創・省・蓄エネルギー時報』編集次長=2017年1月31日号

◇いまにし・あきら  1975年群馬県太田市生まれ。慶応義塾大学文学部卒。IT系出版社の書籍編集者や経済誌編集記者などを経て2010年からエネルギージャーナル社勤務。日本環境ジャーナリストの会理事
◇いまにし・あきら  1975年群馬県太田市生まれ。慶応義塾大学文学部卒。IT系出版社の書籍編集者や経済誌編集記者などを経て2010年からエネルギージャーナル社勤務。日本環境ジャーナリストの会理事

◇世界の電力投資の7割が再生エネ

◇環境金融が旧態の化石燃料を駆逐

 

再生可能エネルギーの導入が世界中で急拡大している。

 

 国際エネルギー機関(IEA)が2016年9月にまとめた世界のエネルギー投資に関する調査結果によれば、15年の再生エネに対する投資額は3130億ドル(約36兆円)に達した。石炭火力や原子力などを含めた発電設備全体への投資のうち、再生エネの割合は7割を占める。原発への投資額210億ドル(約2兆4000億円)の実に15倍だ。

 

 今や再生エネが世界のエネルギーの主役と言える状況だ。

 

 

 これに対し、日本は世界の潮流から取り残されている。15年の投資額は362億ドル(約4兆1000億円)と中国、米国に次ぎ世界3位だったものの、17年4月に予定される再生エネの固定価格買い取り制度(FIT)の大幅な変更が再生エネ、特に太陽光発電の拡大機運に水を差すことになりそうだ。

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2016年

12月

27日

第42回福島後の未来をつくる 篠田航一/宮川裕章・毎日新聞記者=2016年12月27日号

篠田航一/1997年毎日新聞入社。2011年からベルリン特派員、15年から青森支局次長
篠田航一/1997年毎日新聞入社。2011年からベルリン特派員、15年から青森支局次長
宮川裕章/97年毎日新聞入社。11年からパリ特派員、15年外信部、16年経済部。
宮川裕章/97年毎日新聞入社。11年からパリ特派員、15年外信部、16年経済部。

◇独仏の「選択」から学ぶ

◇反対派も推進派も抱える課題

 

 

ドイツ人は、論理や理屈を重視する人たちだ。筆者(篠田)は東日本大震災直後の2011年4月から4年間、ベルリン特派員としてドイツで仕事をした。この年、ドイツは国内17基の原発のうち老朽化していた8基を緊急停止し、22年までの全原発停止を盛り込んだ改正原子力法を成立させる。

 

その論理は明快だ。彼らの議論は、濃淡はあるものの、結局は「原発にはリスクがある」の1点に集約される。「事故やテロが起きたら、そのリスクをドイツは背負い切れない」という理屈だ。

 

 だが「論理的」なはずの彼らも、実際に原発から脱却しようとする過程では単純に白黒をつけられない現実に悩んでいる。


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2016年

11月

08日

第41回 福島後の未来をつくる:福田良輔 中部大学客員教授=2016年11月8日号

 ◇ふくだ りょうすけ

1945年岡山県津山市生まれ。東京大学工学部電子工学科卒。住友電気工業では常務執行役員として研究統括。退社後、エネルギー・環境技術および中山間地域の活性化に向けて精力的に活動中。工学博士。

 ◇中山間地域の切り札「空圧電池」

 ◇日本全体の電力は1億キロワットで十分

 

 山地の多い日本は、「中山間地域」と呼ぶ地域が国土の70%を占める。中山間地域とは、平野の端から山間地にかけてを指す。地域の産業は農林業が中心だが、農林業従事者の高齢化や後継者不足などから過疎化が進行し、衰退が著しい。

 一方で中山間地域には、木材資源や放棄田畑など、再生可能エネルギー施設を設置するうえで必要な資源や土地が豊富にあり、しかも安く手に入れることができる。

 そこで私は神戸製鋼所グループなどと協力して「山麓フロンティア研究会」を設立。こうした中山間地域のメリットを生かして、再生エネルギーを活用した地域振興のための取り組みを進めている。


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2016年

10月

04日

第40回 福島後の未来をつくる:本間龍 著述家=2016年10月4日号

 ◇ほんま・りゅう

 1962年生まれ。博報堂で約18年間営業を担当。2006年に退職後、在職中の損金補てんにまつわる詐欺容疑で逮捕・起訴。出所後に服役経験をつづった書籍を上梓。著書に『電通と原発報道』(亜紀書房)、『原発プロパガンダ』(岩波新書)など。

 ◇メディアを支配してきた原発プロパガンダからの脱却

 

 私は2006年に退職するまで18年、大手広告代理店の博報堂で営業職を務めてきた。スポンサー企業と接して業務を受注し、集金の責任まで負う部門だ。出身母体である広告業界は、原発の「安全神話」を国民に刷り込み、日本の原発推進に大きな役割を果たしてきた。現場のやり取りを経験した身にとって、メディアと原発を推進する電力会社や関連企業・団体との癒着の構造は手に取るように理解できた。

 しかし、事故から数年が経過しても、メディアや広告業界が過去を全く反省しない実態を目の当たりにした。さらに電力会社はいま安倍晋三内閣の政策にのっとって再稼働への準備を着々と進めている。東京電力福島第1原子力発電所の事故により、いまなお故郷に帰れない人は10万人に及ぶ。原発はいったん事故が起これば数十万、数百万単位の人生を台無しにしてしまう。その発電システムを存続させていく合理的な理由が果たしてどこにあるのか。


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2016年

9月

06日

第39回 福島後の未来をつくる:小西雅子 WWFジャパン気候変動・エネルギープロジェクトリーダー=2016年9月6日号

 ◇こにし・まさこ

 1958年兵庫県神戸市生まれ。ハーバード大学院・環境公共政策学修士課程修了。中部日本放送アナウンサーなどを経て2005年9月から現職。日本気象予報士会副会長。近著に『地球温暖化は解決できるのか』(岩波ジュニア新書)。

 ◇現状の送電インフラ活用で

 ◇全電源の50%再エネも可能

 

 未曽有の被害をもたらした東京電力福島第1原子力発電所事故は、筆舌に尽くしがたい災禍であったが、それをきっかけとして日本は再生可能エネルギー導入に本格的に取り組み、全量固定価格買い取り制度(FIT)の導入や、これまでなしえなかった既得権へ切り込んでの電力自由化や、地域間連系線の運用ルールの見直しなどが進みつつある。日本においても技術的にも経済的にも早期に再エネの大量導入が可能であることが明白になりつつある。

 ◇原発前提の出力制御

 

 再エネの導入が、欧州や米国、中国などの再エネ先進国に比べて遅れた日本では、いまだ時代遅れの主張が聞かれる時がある。


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2016年

8月

16日

第38回 福島後の未来をつくる:枝廣淳子 東京都市大学環境学部教授=2016年8月9・16日合併号

 ◇えだひろ・じゅんこ

 1962年京都府京都市生まれ。東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。『不都合な真実』(アル・ゴア著)の翻訳をはじめ、環境問題に関する講演、執筆多数。幸せ経済社会研究所所長、NGOジャパン・フォー・サステナビリティ代表。

 ◇未来に向けた柏崎の挑戦

 ◇原発賛否を超える対話

 

2016年7月10日、第24回参議院議員通常選挙で自由民主党が大勝する一方、鹿児島県知事選では国内で唯一稼働する九州電力川内原子力発電所を「停止して点検するよう九電に申し入れる」との公約を掲げた三反園訓(みたぞのさとし)氏が当選。自民党は参院選でも大勝したことから、国レベルで原発再稼働を加速させる。しかし地域レベルをみると、消えることのない声なき「反対」の声に、動きの取れない状態が続くだろう。

 ◇原発再稼働をめぐる四つの問題点

 

 原発再稼働に関しては多くの問題点がある。一つは、あいまいな原発の「地元」の定義、二つ目は不明瞭な再稼働の判断責任、三つ目は日本では核廃棄物の最終処分地も処分方法もまだ決まっていないこと、そして国民議論が不在の国のエネルギー政策の問題だ。


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2016年

7月

05日

第37回 福島後の未来をつくる:本間照光 青山学院大学名誉教授=2016年7月5日特大号

 ◇ほんま・てるみつ

 1948年生まれ。小樽商科大卒。専門は保険論、社会保障論。2016年3月まで青山学院大教授。著書に『社会科学としての保険論』『保険の社会学』『階層化する労働と生活』など。

 ◇加害者に甘い原賠法見直し

 ◇災害対策としての位置付けが必要

 

 原発事故発生時の電力会社の責任を定めた「原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)」の見直しが進んでいる。原賠法は事故の過失・無過失にかかわらず、事故を起こした電力会社に上限なく賠償責任を負わせる「無過失責任主義」「無限責任」が原則だ。

 しかし、改定にあたっては、電力会社の賠償責任の免除(免責)や有限責任化を目指す流れが強まっている。このままでは、被害者や国民は犠牲を強いられ、加害者=電力会社を守る構図になりかねない。

 

 ◇崩れた「建前」

 

 原賠法の改定に向けた議論は、内閣府原子力委員会に設けられた「原子力損害賠償制度専門部会」で進められている。専門部会は学識者やジャーナリスト、財界・原発事業者ら25人で構成され、2015年5月から10回の会合を重ねてきた。


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2016年

6月

07日

第36回 福島後の未来をつくる:トーマス・コーベリエル 自然エネルギー財団理事長 2016年6月7日特大号

 ◇トーマス・コーベリエル

 1961年スウェーデン生まれ。スウェーデン・チャルマース工科大学教授。2008年から11年までスウェーデン・エネルギー庁長官を務めた。任期半ばで、自然エネルギー財団理事長就任のため退職。

 ◇自然エネの産業自立に必要な送電網の中立運用と監視

 

 東京電力福島第1原子力発電所事故(福島原発事故)から5年がたち、世界のすべての国で電力分野に急速な変革が起きている。日本は自然エネルギーによる電気の固定価格買い取り制度(FIT)により、まず太陽光発電の導入が先行して進んだ。残念ながら風力発電や地熱発電などの自然エネルギー分野の導入は進んでいない。なかでも日本は地熱発電の導入ポテンシャルが世界3位と膨大な地熱資源量を誇る有数の国であるにもかかわらず活用できていない。

 ただ、FITの買い取り価格は2016年度になっても、欧米、アジア諸国と比べても優遇された価格となっていることから、風力発電や地熱発電などの導入が今後加速していくことを期待している。


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2016年

5月

31日

第35回 福島後の未来をつくる:原発裁判が問う科学と司法の関係 2016年5月31日号

 ◇ますだ・じゅん

 1950年島根県生まれ。73年司法試験合格、74年京都大学法学部卒。同年農林水産省に入省。77年東京地裁判事補、最高裁判所事務総局総務局付、福岡地裁判事、東京地裁判事、法務省参事官、東京高裁判事を経て97年退官。2004年に現職。

 ◇仮処分は科学技術の判断に不向き

 

升田純

(中央大学法科大学院教授・弁護士)

 

 原子力発電所の稼働を差し止める仮処分が裁判所から相次ぎ出され、司法と原発の関係に対する関心が高まっている。

 この1年の間になされた決定を次に挙げよう。

(1)高浜原発3、4号機の運転差し止めを認めた福井地裁の決定(2015年4月14日)

(2)その異議審で仮処分を取り消し同原発の再稼働を認めた福井地裁の決定(15年12月24日)

(3)高浜原発3、4号機の運転差し止めを認めた大津地裁の決定(16年3月9日)

(4)大飯原発3、4号機の運転差し止めを求める申し立てを却下した福井地裁の決定(15年12月24日)

(5)川内原発1、2号機の運転差し止めを求める申し立てを却下した鹿児島地裁の決定(15年4月22日)

(6)その抗告審でさらに申し立てを棄却した福岡高裁宮崎支部の決定(16年4月6日)

 短期間のうちに、それぞれ内容の大きく異なる決定が出されている。


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2016年

5月

17日

第34回 福島後の未来をつくる:磯部達 みやまスマートエネルギー代表取締役 2016年5月17日号

 ◇いそべ・たつし

 1959年大津市生まれ、1981年同志社大学卒業後、松下電工(現パナソニック)に入社。サイアム松下(タイ)取締役、住建事業戦略部長、システム設備事業統括部長などを経て、2015年3月、みやまスマートエネルギー代表取締役に就任。

 ◇地域エネ構築し地方創生

 ◇自営送電線も構築する

 

 みやまスマートエネルギーは福岡県南部に位置する人口4万人のみやま市が、電気工事業等を手掛ける九州スマートコミュニティ、筑邦銀行と共同出資し、2015年2月に設立した電力会社である。社員は6人、資本金は2000万円で、市が55%、九州スマートコミュニティが40%、筑邦銀行が5%出資している。

 広大な筑後平野の東に位置するみやま市は、日照に恵まれた地域特性を環境政策に生かそうと、太陽光発電設備の普及に積極的に取り組んできた。市は家庭向けには太陽光導入補助事業を実施。現在、市内約1万4000世帯の9%に当たる1200世帯が太陽光パネルを設置している。また、市は民間事業者などと共同で市有地に5000キロワットの太陽光発電設備を設置し、売電事業も行っている。


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2016年

4月

26日

第33回 福島後の未来をつくる:エイモリー・B・ロビンス ロッキーマウンテン研究所共同創設者・チーフサイエンティスト 2016年4月26日号

 ◇エイモリー・B・ロビンス

1947年米国ワシントンDC生まれ。物理学者。米ハーバード大学などで学び、英オックスフォード大学では特別研究員も務める。2009年にはタイム誌が選ぶ「世界で最も影響力のある100人」、またフォーリン・ポリシー誌が選ぶ「世界の頭脳100人」に選ばれる。

 ◇日本もできる「新しい火の創造」

 ◇米中では数百兆円の経済効果試算

 

 東京電力福島第1原子力発電所事故から5年たった。日本では国内の原発がすべて停止しても、省エネルギーの改善と再生可能エネルギーの普及拡大などにより不足の電力を埋め合わせることができた。

 海外をみると、ドイツは福島原発事故後に8基の原発を即時停止して、停止した分の電力を再生エネだけで賄い、さらに電力輸出も行っている。日本の福島原発事故の教訓は、原発がなくても電力は足りると分かったことだ。そして今後の5年間で、省エネ効率のさらなる改善や再生エネ導入を加速させることで、日本の原発再稼働は必要ないことを明確にしなければならない。原発を再稼働しても経済的にも社会的な採算性に合わないことが明らかとなるのだ。実際に欧米では原発の不採算性が証明されている。


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2016年

4月

12日

第32回 福島後の未来をつくる:寿楽浩太 東京電機大学助教 2016年4月12日特大号

 ◇じゅらく・こうた

1980年千葉県千葉市生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。博士(学際情報学)。東京大学大学院工学系研究科特任助教を経て2012年から現職。専門は科学技術社会学。13年から経済産業省の放射性廃棄物WG委員。

 ◇隘路に入り込む核のごみ処分

 ◇地道な社会的合意形成が必要

 

原発論議でしばしば論点になるのが核のごみの処分だ。専門的には高レベル放射性廃棄物(HLW : High Level RadioactiveWaste)の処分と呼ばれる問題である。政府と電力業界は現在、HLWを地下深くに埋設して最終処分する(「地層処分」と呼ばれる)「処分場の候補地を探す調査を受け入れる地域」を国内で探している。

 3段階で行われる調査には20年程度かかるとされ、その結果、不適と判断されることも十分にありうるから、言ってみれば現在はまだ候補地の候補地探しの段階だ。このプロセスは2002年に始められたが、今日まで調査を受け入れる地域は現れていない。

 


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2016年

4月

05日

第31回 福島後の未来をつくる:大林ミカ 自然エネルギー財団事業局長 2016年4月5日号

 ◇おおばやし・みか

 1964年大分県中津市生まれ。環境エネルギー政策研究所副所長や駐日英国大使館、国際再生可能エネルギー機関(アブダビ)勤務などを経て、2011年8月より自然エネルギー財団の設立に参加し現職。

 ◇志半ばの電力システム改革だが自然エネはまだまだ普及する

 

 東京電力福島第1原子力発電所事故(福島原発事故)から5年を経ているが、日本のエネルギー問題は混沌(こんとん)としている。政府は2015年7月に、30年の電源構成を決定した。原子力比率は20~22%、石炭火力は26%という、旧態依然とした構成だ。福島事故は収束していないにもかかわらず、原発の再稼働が進められ、稼働後に九州電力が免震重要棟を撤回するなど、電力会社の信義違反が起きている。ほかの先進国では、原子力が高コストで停滞し、石炭への投資の撤退が始まる一方で、自然エネルギーが飛躍的に拡大し、存在感を増している。昨年15年の世界の風力・太陽光発電の導入はそれぞれ6000万㌔㍗程度、合わせて1億2000万㌔㍗以上にもなる。風力の設備容量はすでに原子力を超え、太陽光も、もうすぐ超えることだろう。この背景にあるのは、自然エネルギーのコストが低減し続けているという事実だ。そして、このような世界的な趨勢(すうせい)から、日本は取り残されてしまっている。


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2016年

3月

29日

第30回 福島後の未来をつくる:宮野廣 法政大学大学院デザイン工学研究科客員教授 2016年3月29日特大号

 ◇みやの・ひろし

1948年石川県生まれ。慶応義塾大学工学部卒。東芝に入社し、原子力事業部原子炉システム設計部長、原子力技師長、東芝エンジニアリング取締役などを経て現職。日本原子力学会福島第1原子力発電所廃炉検討委員会委員長などを務める。

 ◇責任範囲が不明確な原子力規制委

 ◇求められる評価対象と体制の拡充

 

 福島第1原発事故を受けて設置された原子力規制委員会は2014年2月、原発の安全性を確保するための新規制基準を定めた。新基準では地震や津波のほか、竜巻や火山の噴火、森林火災といった災害への対応を強化。非常事態に備え、電源や冷却装置など可搬式機器の設置も新たに義務づけた。

 だが、その新基準も踏み込み不足だ。重要なのは、個々の自然災害に対してどう対処するかではなく、発電システムとしての機能をいかに保つかだ。同時に、「想定外」の事象にどう備えるかも重要になる。継続してフォローしていく必要がある。


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2016年

3月

22日

第29回 福島後の未来をつくる:遠藤典子 慶應義塾大学大学院特任教授 2016年3月22日号

 ◇えんどう・のりこ

1968年福岡市生まれ。京都大学大学院エネルギー科学研究科博士課程修了。博士(エネルギー科学)。経済誌副編集長、エネルギー・公共政策などの研究事業、教育活動に従事。2014年5月より総合資源エネルギー調査会原子力小委員会委員。著書に『原子力損害賠償制度の研究』(岩波書店)。

 ◇原発維持に必要なリプレース

 ◇公益電源として透明性確立を

 

 原子力規制委員会により新規制基準への適合が認められた九州電力川内原子力発電所1・2号機が再稼働し、四国電力伊方原発3号機、関西電力高浜原発3・4号機もまもなくこれに続く。電力会社が想定していた時期から大きく後れを取りながらも、再稼働は今後、順次進むだろう。もっとも、再稼働による平常化が原発政策における中長期的課題の解決をするものでは決してない。

 政府が2015年7月に決定した30年のエネルギーミックス(電源構成)では、「ベースロード電源」としての原発比率を20~22%とした。

 新規制基準どおり原則40年運転とした場合、30年の原発比率は13%となる。設置認可を終え建設中の中国電力島根原発3号機、電源開発の大間原発の2炉を加えても15%に過ぎず、20~22%には遠く及ばない。つまり政府方針の原発比率を維持するためには、40年超えの運転かリプレース(新炉建て替え)が必至となる。しかし世論への配慮か、政府は今のところその選択肢すら明示していない。


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2016年

3月

15日

第28回 福島後の未来をつくる:中田俊彦 東北大学大学院教授 2016年3月15日号

 ◇なかた・としひこ

 1960年神奈川県生まれ。東北大学大学院工学研究科修士課程修了。東北大学工学博士。電力中央研究所、東北大学工学部助教授、米国ローレンス・リバモア国立研究所研究員などを経て現職。政府復興推進委員会委員などを務める。

 ◇25兆円の熱を捨てている日本

 ◇地域に合うシステムを欧州に学べ

 

 東日本大震災後のエネルギーシステムのあり方を考えるうえでは、日本のエネルギー利用の現状を把握するため、エネルギーフローの全体を俯瞰(ふかん)することが重要だ。

 まずは供給側の無駄。IEA(国際エネルギー機関)などの統計データによると、2013年の1年間に日本で供給されたエネルギー量は19・0EJ(エクサジュール。エクサは10の18乗、1カロリー=4・186ジュール)。部門別に見ると、産業部門に3・43EJ、業務部門に2・81EJ、家庭部門に1・92EJ、運輸部門に3・07EJのエネルギーが供給された(下図)。しかし、各部門で有効に利用されたのは6・34EJのみで、全体の60%にあたる11・5EJが熱として廃棄された。全需要家の年間エネルギー支払総額は41・9兆円なので、25兆円が無駄に捨てられた。その内訳は4・54EJが発電部門、2・58EJが自動車など運輸部門、1・33EJが産業部門、1・35EJが業務部門、0・77EJが家庭──などからの廃熱だ。発電効率の低さと、自動車の燃費の低さが多くの熱を廃棄する要因だ。


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2016年

3月

08日

第27回 福島後の未来をつくる:近藤洋介 衆議院議員 2016年3月8日特大号

 ◇こんどう・ようすけ

 1965年米国生まれ。慶応義塾大学法学部卒業。日本経済新聞記者を経て2003年から衆議院議員(5期目)。経済産業大臣政務官、経済産業副大臣、民主党役員室長を歴任し、16年1月から民主党政策調査会長代理・ネクスト経済産業大臣を務める。

 ◇先送りされたままの賠償制度再構築と非常事故対応

 

東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所事故(福島原発事故)から、まもなく5年を迎えようとしている。原発が再稼働する中で、安倍晋三首相官邸と政府のエネルギー関係者が、あえて無視しようとしている現実がある。それは、原発に安全神話は成り立たない、という教訓だ。「事故を前提とした体制の整備」はいまだ不十分である。原発の再稼働が現実化した今、体制立て直しに向けた政治の責任は重い。

「想定外」とされた福島原発事故により、日本は原発政策の全面的な見直しを迫られた。原発の安全神話は崩壊し、国内にあるすべての原発が停止。経済産業省の傘下にあった原子力安全・保安院は解体し、原子力規制委員会による新たな安全基準が定められた。厳格な審査に合格した原発のみが再稼働を認められる仕組みに変わった。


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2016年

3月

01日

第26回 福島後の未来をつくる:竹内敬ニ 朝日新聞編集委員 2016年3月1日号

 ◇たけうち・けいじ

1952年岡山県生まれ。京都大学工学部修士課程修了。80年に朝日新聞社に入社し、科学部、ロンドン特派員、論説委員などを務めた。長い間、朝日新聞の社説でも原子力政策を担当。著書に『電力の社会史─何が東京電力を生んだのか』(朝日選書)。

2011年の東京電力福島第1原発事故(福島原発事故)が日本のエネルギー政策に突きつけた課題は三つにまとめられる。①原発への依存を減らす、②自然(再生可能)エネルギーを大きく増やす、③電力自由化を進める──だ。

 三つは密接に関係しており、同時に進めないとうまくいかない。福島原発事故後、民主党政権はこれらについてかなり積極的に取り組んだ。当時原発が次々に止まり、日本社会はほぼ原発なしで動いていた。原発を一から見直す好機だった。

 まさに日本のエネルギー政策の大転換が期待された。しかし、事故から5年、今は落胆の気持ちが強い。

 

 ◇政策転換に必要な政治力

 

 最大のテーマである原子力について、民主党政権は国民的な議論を組織した。それを受け12年9月、「革新的エネルギー・環境戦略」を発表。核心は30年代に原発ゼロをめざす。世間をあっといわせた。原発依存一辺倒だった戦後の政策からみれば、脱原発はコペルニクス的な大転換だった。


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2016年

2月

23日

第25回 福島後の未来をつくる:清水敦史 チャレナジー代表取締役CEO 2016年2月23日特大号

 ◇しみず・あつし

 1979年岡山県生まれ。東京大学大学院修士課程を修了。キーエンスで自動制御機器の研究開発に従事。独力で垂直軸型マグナス風力発電機を発明し、2014年3月の第1回テックプラングランプリ最優秀賞を受賞。同年10月にチャレナジーを設立。

 ◇台風のエネルギーを発電に

 ◇プロペラがない新型風力

 

 風力発電ベンチャー、チャレナジーは東京墨田区の町工場の一角に拠点を構えている。チャレナジーを起業したきっかけは、東京電力福島第1原子力発電所事故だ。福島原発事故前まではエネルギー分野とは無関係で、大阪市でセンサー技術を研究していた。福島原発事故直後のニュースを目の当たりにし、1979年の米国スリーマイル島原発事故や86年の旧ソビエト連邦のチェルノブイリ原発事故級の事故が日本の福島県で発生した事実に愕然(がくぜん)とした。同時に原発事故は今後も世界のどこかで必ず起きるとも感じた。


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2016年

2月

16日

第24回 福島後の未来をつくる:鈴木達治郎 長崎大学核兵器廃絶研究センター長・教授 2016年2月16日号

 ◇すずき・たつじろう

 1951年大阪府生まれ。米国マサチューセッツ工科大学(MIT)修士課程修了。東京大学工学博士。米MITエネルギー環境政策研究センターなどを経て、2010~14年に政府原子力委員会委員長代理。14年長崎大学教授。15年同大学核兵器廃絶研究センター長。

 ◇行き詰まった核燃料サイクル

 ◇現状打破に直接処分を可能へ

 

 日本の原子力政策の要といわれる核燃料サイクルは、1957年の開発当初から変わらない目標であった。その前提となるのが、夢の原子炉といわれる高速増殖炉の実用化であり、そのために必要な全量再処理、すなわちすべての使用済み燃料を再処理することが基本政策となった。

 しかし、開発開始から60年近くたち、原子力と核燃料サイクルを取り巻く情勢は大きく変わった。今や、核燃料サイクル、その中核となる高速増殖炉の開発は完全に行き詰まった。ウラン価格が上昇し、プルトニウム燃料が経済的であれば、燃え残ったウランとプルトニウムをリサイクルする「プルサーマル」への期待もあったが、80年代以降、再処理コストの高騰、ウラン価格の低迷が続き、プルトニウム・リサイクル経済の見通しは大きくしぼんだ。今や、再処理路線はリサイクルをしない通常のウラン燃料より割高な路線であることが明らかだ。


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2016年

2月

09日

第23回 福島後の未来をつくる:吉田文和 愛知学院大学教授 2016年2月9日号

 ◇よしだ・ふみかず

1950年兵庫県尼崎市生まれ。京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。92年に北海道大学経済学部教授、2000年より同大学大学院経済学研究科教授。15年より現職、北海道大学名誉教授。近著に『ドイツの挑戦』(日本評論社)。

 ◇ドイツが進める脱原発

 ◇きっかけは福島原発事故

 

吉田文和

(愛知学院大学教授)

 

ドイツによる難民受け入れと脱原発の決定は歴史に残る決定であり、ドイツの挑戦である。これらは、政治的指導者であるアンゲラ・メルケル首相の決断によるところが大きいが、そこに至る過程でのドイツ国内における長い経過と世論形成が重要であった。とくに日本との関係では、ドイツの脱原発の最終決定のきっかけは東京電力福島第1原子力発電所事故(福島原発事故)であり、新幹線が3分おきに事故を起こさずに走行する高度に組織されたハイテク国家日本で起きたのだから、ドイツでも原発事故は起こりうる、と考えたのである。

 福島原発事故から5年近くたつなかで、日本の原発ゼロは2年続き、原発なしでも日本の電力が十分賄えることが明らかになった。しかし電気料金の値上げと二酸化炭素(CO2)排出量増加などに対処するという理由で、原発の再稼働が進められている。


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2016年

2月

02日

第22回 福島後の未来をつくる:窪田秀雄 テピア総合研究所主席研究員 2016年2月2日特大号

 ◇くぼた・ひでお

1953年、神奈川県生まれ。東海大学大学院工学研究科卒。日本原子力産業会議を経て2006年、日本テピア入社。中国を中心に世界の原子力をウオッチしている。編著に『中国原子力ハンドブック』など。

 ◇事故の教訓を生かし中国原発と協力する道

 

窪田秀雄

(テピア総合研究所主席研究員)

 

これからは中国を抜きにして世界の原子力産業を語れない。中国の原子力発電所は運転中、建設中を合わせてまだ55基に過ぎないが、筆者の調査では計画中は274基にも及ぶ。中国の原発は国産化が基本方針とはいえ、その市場規模は、日本を含めて各国の原子力機器・部品企業にとって無視することはできない。とくに日本は、今後数十年内に隣国に数百基の原発が林立する現実を正面から見据える必要がある。

 中国による次世代原子炉への取り組みも、他の国の追随を許さない。次世代原子炉の中で最も進んでいる高温ガス炉(HTGR)は、技術的には日本のほうが進んでいるとの指摘もあるが、実証炉、実用炉の建設によって日中の立場が逆転することは確実だ。


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2016年

1月

26日

第21回 福島後の未来をつくる:原田達朗 九州大学炭素資源国際教育研究センター教授 2016年1月26日号

 ◇はらだ・たつろう

1963年生まれ。九州大学工学部卒、同大学大学院総合理工学研究科博士課程修了。工学博士。九州電力、電源開発などを経て2014年より現職。炭素資源の高度利用技術、電力取引、CO2国際トレードなどを研究。

 ◇需給調整の地域化が再エネ普及後押し

 ◇太陽光に合わせた「受け身」の消費を

 

原田達朗

(九州大学炭素資源国際教育研究センター教授)

 

2015年11月から12月にかけ、フランス・パリで国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が開催された。厳しい交渉の末、関係各国は20年以降の地球温暖化対策に関する新たな枠組み「パリ協定」を採択。目標達成の義務化は見送られたものの、産業革命前からの気温上昇を2度C未満に抑える、1・5度C未満になるよう努力することで合意した。

 このCOP21の開催に当たり、日本は温室効果ガスを30年までに13年比26%削減する目標を国際連合に提出した。13年度の日本の二酸化炭素(CO2)総排出量は約13・11億トンなので、30年までに約3・41億トンのCO2排出を抑制する目標だ。これは1997年の京都議定書採択時に示した削減量である0・69億トン(90年比6%削減)の約5倍に当たる野心的な数字と言えるだろう。


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2016年

1月

19日

第20回 福島後の未来をつくる:佐藤弥右衛門 会津電力社長 2016年1月19日号

 ◇さとう やうえもん

1951年、福島県喜多方市で200年以上続く造り酒屋・大和川酒造店の長男として生まれる。東京農業大学短期醸造科卒業後、大和川酒造店入社。2013年8月、会津電力を設立し社長に就任。現在、全国ご当地エネルギー協会・代表理事も務める。

 ◇地方市町村が目覚めるべき「エネルギー自治」とは

 

佐藤弥右衛門

(会津電力社長)

 

東日本大震災後の2011年7月に、福島県の南会津地方が洪水に襲われた。大雨により只見川上流の田子倉ダムなどが決壊する危険があったため、ダムの水門を全開にして水を放出したところ流域が一気に暴れて、国道252号線やJR只見線は寸断され、田畑が流され、死亡者も出た。

 ダムを所有するのは東京電力、Jパワー(電源開発)、東北電力。ダムは1940~50年代に建造され、老朽化が進んでいて危険だ。決壊すれば会津平野は甚大な被害を受ける。ところが、電力会社や自治体は、ダムの水をどれくらい放出したら、どのくらいの水位になるのかというハザードマップすら持っていなかった。

 


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2016年

1月

12日

第19回 福島後の未来をつくる:大島堅一 立命館大学教授 2016年1月12日特大号

 ◇おおしま・けんいち

 1967年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。経済学博士。2008年より現職。12年に「原発のコスト─エネルギー転換への視点」(岩波新書)で第12回大佛次郎論壇賞を受賞。京都市地球温暖化対策推進委員会委員などを務める。

 ◇石炭火力は使えなくなる

 ◇「パリ協定」踏まえ戦略立て直し

 

大島堅一

(立命館大学教授)

 

 パリで開催された気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で、気温上昇幅を2度未満、しかもできるだけ低く抑えることを目標にした「パリ協定」が2015年12月12日に採択された。合意内容には、気温上昇幅を1・5度未満にする努力目標も含まれている。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書に照らせば、これを実現するには、50年までに世界の温室効果ガスの毎年の純排出量を半減させ、今世紀末には、ほぼゼロないしマイナスにしなければならない(表)。

 温室効果ガスのほとんどは、言うまでもなく化石燃料から排出される二酸化炭素(CO2)である。このCO2排出をゼロにするということは、化石燃料の消費を劇的に減らすことを意味している。そうなると、化石燃料はこれまでのように希少な資源ではなくなる。むしろ、環境容量に比べて多すぎる資源量、ストックとして存在してはいても、ごく一部しか使用できない資源ということになる。

 


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2016年

1月

05日

第18回 福島後の未来をつくる:飯田哲也 環境エネルギー政策研究所所長 2015年12月29日・2016年1月5日合併号

 ◇いいだ・てつなり

 1959年山口県生まれ。京都大学修士(原子核工学)。東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。日本総合研究所、ルンド大学(スウェーデン)を経て、2000年から現職。

 ◇日本のエネルギーコンセプトを刷新し地方発で次世代の知性を育てよう

 

飯田哲也

(認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所 所長)

 

 日本のエネルギー政策は、時代ごとの政策的な課題を真正面から議論せずに次の時代にツケを回してきた結果、「五つの宿題」を残した古いエネルギー状況にとどまっていた。その状況で、2011年3月11日の福島原発事故に遭遇してしまった。他方、海外ではエネルギー大変革が急速に進んでおり、相対的に見ると日本の立ち遅れは途方もなく、しかも大混乱している。

 こうした時こそ、原則に立ち返ってエネルギーコンセプトを刷新し、着実な改善を重ねるために新しいエネルギー知性を地方発で育てることが必要と考える。


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2015年

12月

22日

第17回 福島後の未来をつくる:秋元圭吾 地球環境産業技術研究機構(RITE)主席研究員 2015年12月22日特大号

 ◇あきもと・けいご

1970年富山県生まれ。横浜国立大学工学部卒。同大学院博士課程(後期)修了。地球環境産業技術研究機構システム研究グループリーダー・主席研究員。総合資源エネルギー調査会基本政策分科会、産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会委員などを務める。

 ◇電力自由化の落とし穴

 ◇原発政策を英国から学ぶ

 

秋元圭吾

(公益財団法人地球環境産業技術研究機構<RITE>主席研究員)

 

 政府は、2015年7月に30年の日本のエネルギー需給構造の姿を示す長期エネルギー需給見通しを決定し、それに基づいた30年の温室効果ガス排出削減目標を国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)に提出した。安全性、経済性、エネルギー安定供給・安全保障、環境の「S+3E」のバランスを考慮して決定したものであり、電源構成比率など、よいバランスだと評価している。しかし、経済成長率を毎年1・7%とする見通しにもかかわらず、オフィス、商業施設などの業務部門や家庭部門での省電力は相当大きく見込まれている。電力需要全体でも通常の見通しに比べ17%もの省電力を見込んでいる。温室効果ガス排出削減目標の13年度比26%削減はこの省電力に大きく依拠しており、相当厳しい目標といえる。

 


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2015年

12月

15日

第16回 福島後の未来をつくる:貝塚泉 資源総合システム調査事業部長 2015年12月15日号

 ◇かいづか・いずみ

1962年生まれ。東京都立大学(現首都大学東京)卒。2003年に太陽光発電事業のコンサルティング企業である資源総合システムに入社。海外部長を経て、09年6月より現職。科学技術振興機構(JST)・革新的エネルギー研究開発拠点形成事業諮問委員なども務めている。

 ◇太陽光発電コストはまだ下がる

 ◇導入拡大と負担抑制の両立は可能


貝塚泉

(資源総合システム調査事業部長)


2012年7月に開始された再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)により、国内での太陽光発電の導入が大きく進展している。国際エネルギー機関・太陽光発電システム研究開発プログラム(IEA PVPS)によれば日本の14年の太陽光発電システムの導入量は前年比40%増の9・74ギガ㍗だ。図に示すように10・64ギガ㍗を導入した中国に次ぎ世界2位の導入量となった。14年末時点での累積導入量は23・4ギガ㍗となり、ドイツ、中国に次いで世界3位となった。

 太陽光発電だけでなく、再生エネの導入は世界各国で拡大しており、14年に世界で新設された発電容量の約半数を占め、石炭火力発電に次いで大きな電源となっている。


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2015年

12月

08日

第15回 福島後の未来をつくる:村沢義久 立命館大学大学院客員教授 2015年12月8日特大号

 ◇むらさわ よしひさ

1948年徳島県生まれ。東京大学大学院工学系研究科修了。スタンフォード大学MBA。アメリカ系コンサルティング会社日本代表、ゴールドマン・サックス証券バイスプレジデントなどを経て、2005年から10年まで東京大学特任教授。13年より現職。

 ◇現実的な減原発に必要なポリティカルキャピタルの視点


村沢義久

(立命館大学大学院客員教授)


 9月10日、九州電力川内1号機が営業運転を開始し、2013年9月以来続いていた「原発ゼロ」の状態が2年ぶりに終わった。川内2号機も、11月半ばの営業運転を目指している。10月26日には愛媛県の中村時広知事が、四国電力伊方3号機の再稼働を承認。四電は、来年春の再稼働を目指すと言う。

 しかし、これで、日本が原発時代に逆戻りかと言うと、そうではない。原発を取り巻く状況は複雑。「必要ない」と「必要」が交錯する。


 ◇原発なしのふた夏


 原発が必要と考える人たちは、「原発なしでは電力が不足する」と言う。


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2015年

12月

01日

第14回 福島後の未来をつくる:伴英幸 原子力資料情報室共同代表 2015年12月1日号

 ◇ばん ひでゆき

1951年三重県四日市市生まれ。早稲田大学卒業。生活協同組合専従を経て、89年脱原発法制定運動の事務局スタッフ。90年原子力資料情報室スタッフとなる。95年同事務局長。98年同共同代表。

 ◇地方自治体は原発リスクを認め事故が起きた時の覚悟に目覚めよ


伴英幸

(原子力資料情報室共同代表)


 東京電力福島第1原子力発電所事故が起こったにもかかわらず、原発を立地している地方自治体は一部を除いて政府に責任を依存する体質を変えていない。

 原子力規制委員会設置の前に原発を審査していた原子力安全・保安院の時代では、審査合格は経済産業大臣が行うことから、原発の安全に対する責任は政府が負ってくれると住民も立地自治体も思っていた。

 事故のリスクは昔からゼロでないのだから、ある意味では幻想なのだが立地自治体はどっぷりと原発安全神話に浸っていたのだ。しかし、福島原発事故により、この構図は完全に崩れた。原発の許認可権者は経産大臣から原子力規制委員長に移った。そして、新たな規制基準に合格しても原子力規制委員長が言うように、それは原発の安全を保証したものではない。原発立地に絶対の安全がないと明言しているわけだ。


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2015年

11月

24日

第13回 福島後の未来をつくる:山地憲治 公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)理事・研究所長 2015年11月24日特大号

 ◇やまじ けんじ

1950年香川県坂出市生まれ。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。77年電力中央研究所に入所、94年東京大学大学院工学系研究科電気工学専攻(現電気系工学専攻)教授。2010年4月より(公財)地球環境産業技術研究機構(RITE)理事・研究所長。東京大学名誉教授。

 ◇温暖化対策の切り札CCS

 ◇カギはCO2の有効活用


山地憲治

(公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)理事・研究所長)


 東京電力福島第1原子力発電所事故後、CO2削減に向けて世間の注目は再生可能エネルギーと原子力の扱いに集中しているようだが、エネルギー政策をより長期的かつグローバルな視点からとらえると、CO2を回収、貯留できるCCSの技術がキーワードとなる。

 経済性確保の視点からは、今後も化石燃料、なかでも石炭の活用が重要だ。石炭火力は日本はもちろん、世界的に見ても重要な電源であり、特に中国やインドなど多くの途上国においては50%を超えるシェアを占める。一方、石炭は化石燃料のなかでも発熱量当たりのCO2発生量が最も大きく、地球温暖化対策においては悪者扱いされている。CCSは化石燃料活用と温暖化対策を両立させる「切り札」と言える。


 ◇国際機関の高い評価


 CCSは、工場や発電所で発生するCO2を分離回収し、地下や海底下に封じ込める技術だ。


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2015年

11月

17日

第12回 福島後の未来をつくる:柏木孝夫 東京工業大学特命教授・名誉教授 2015年11月17日号

 ◇かしわぎ たかお

東京工業大学工学部卒。同大学大学院博士課程修了。東京工業大学大学院教授、先進エネルギー国際研究センター長を歴任。経済産業省総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会長などエネルギー政策の立案に携わる。

 ◇規制改革で大規模電源は縮小へ

 ◇小売り自由化で家庭も売電参入へ


柏木孝夫

(東京工業大学特命教授・名誉教授)


 東日本大震災を経て電力システム改革が本格的に進み始めた。2016年4月に始まる電力小売り全面自由化、今後に控える発送電分離、電力料金規制撤廃など一連の改革が進むことで、日本の電力システムは一変する。

 特に重視されるのが、エネルギー自給率の向上、電力コストの低減、二酸化炭素(CO2)の削減だ。日本のエネルギー自給率は約6%。先進国でここまで低いのは日本だけだ。これを東日本大震災前を上回る25%まで高める必要がある。同時に発電コストを抑えつつ、CO2排出量は国際的にも遜色ない水準まで低減する必要がある。

 そのためには、電力需給を効率的に制御し、分散型で送電ロスをなくして、省エネの拡大で電力コストを抑える必要がある。


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2015年

11月

10日

第11回 福島後の未来をつくる:石川和男 NPO社会保障経済研究所代表 2015年11月10日号

 ◇いしかわ かずお

1965年福岡県生まれ。東京大学工学部卒。89年通商産業省(現経済産業省)入省、電力・ガス改革などに携わる。2007年に経産省を退官。東京女子医科大学特任教授や東京財団上席研究員を経て11年9月から現職。

 ◇福島第2原発の正しい「やめさせ方」

 ◇再稼動後の全収益を復興と再エネへ


石川和男

(NPO社会保障経済研究所代表)



 東京電力・福島第1原子力発電所のことは、2011年3月11日の東日本大震災における大津波被災での事故以降、何らか報道されなかった日はない。

 その日、福島第1原発(全6基)では、1~3号機は運転中、4~6号機は定期検査のため停止中だったが、14時46分に発生した大地震を受けて運転中の3基はすべて自動停止。その後、非常用ディーゼル発電機が起動し、原子炉の安全維持に必要な電源が確保されたが、さらにその後に襲来した大津波によって1~4号機へ供給する冷却電源を喪失し、冷却機能が失われた。

 これにより原子炉の圧力容器内の水は蒸発し続け、水面から露出した燃料棒の表面温度が放射線エネルギーの熱変換で生じた崩壊熱により上昇したため、燃料棒の表面が圧力容器内の水蒸気と反応して大量の水素が発生。


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2015年

11月

03日

第10回 福島後の未来をつくる:大野輝之 自然エネルギー財団常務理事 2015年11月3日特大号

 ◇おおの てるゆき

1953年神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒。98年より東京都の環境行政を担当。ディーゼル車排ガス対策、「温室効果ガスの総量削減と排出量取引制度」の導入など都の環境政策を推進。2010年7月から3年間、東京都環境局長。13年11月より現職。


 ◇世界に逆行する石炭火力乱発

 ◇省エネと自然エネルギーが未来を開く


大野輝之

(自然エネルギー財団常務理事)


 日本のエネルギー政策は残念ながら、東京電力福島第1原子力発電所事故の教訓を生かす点でも、世界で進む脱炭素化の流れを反映する点でも、まったく不十分と言わざるを得ない。東日本大震災から4年半、日本では福島原発事故の深刻な体験から、いかに安全で安心なエネルギーを確保するのか、さまざまな視点で議論されてきたにもかかわらずだ。しかし現場を見ると日本でも省エネルギーと自然エネルギー拡大が進み、安全かつ低炭素なエネルギーへの転換が進んでいる。

 世界を見ると、異常気象の影響が深刻化するなかで、気候変動対策強化のためにエネルギー起源のCO2削減をめざす政策転換が進んでいる。


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2015年

10月

27日

第9回 福島後の未来をつくる:高橋洋 都留文科大学教授 2015年10月27日号

 ◇たかはし ひろし

東京大学法学部卒。米タフツ大学フレッチャー大学院修了。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。ソニーや富士通総研を経て、2015年4月より現職。学術博士。専門はエネルギー政策論、電力システム改革論。

 ◇激しい競争こそ電力の革命を起こす

 ◇欧米で急成長する新サービス


高橋 洋

(都留文科大学教授)


 アベノミクスは第2ステージに入るとのことだが、第1ステージの時から最も重要な「本丸」は成長戦略だと言われてきた。その鍵は、イノベーションだ。では、イノベーションとは何か? 経済学者のヨーゼフ・シュンペーターによれば、イノベーションとは「生産手段の非連続的な新結合」であるという(『経済発展の理論』)。日本では「技術革新」などと訳され、技術面を中心に語られることが多いが、シュンペーターは新結合として五つの形態を挙げている。すなわち、①新しい財貨、②新しい生産方法、③新しい販路、④新しい供給源、⑤新しい組織──である(表)。本稿で議論したいのは、電力分野においてこのようなイノベーションを起こすためにどうしたらよいかということである。



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2015年

10月

20日

第8回 福島後の未来をつくる:吉岡斉 九州大学教授 2015年10月20日特大号

 ◇よしおか・ひとし  1953年富山県生まれ。76年東京大学理学部物理学科卒業。94年九州大学大学院比較社会文化研究科教授(2000年より研究院教授)。11年から12年にかけて政府の東京電力福島原発における事故調査・検証委員会(政府事故調)委員を務める。
 ◇よしおか・ひとし  1953年富山県生まれ。76年東京大学理学部物理学科卒業。94年九州大学大学院比較社会文化研究科教授(2000年より研究院教授)。11年から12年にかけて政府の東京電力福島原発における事故調査・検証委員会(政府事故調)委員を務める。

 

◇原子力発電は「介護」から「終息」

◇地域産業転換に向けた交付金創設を



吉岡斉(九州大学教授)


「ターミナルケア政策」とは、今まで進めてきた事業など社会活動を、重大な社会的損失を与えずに終息させる政策である。「ターミナルケア」は、もともと「終末期医療」という意味の介護業界の言葉だ。原子力発電においては回復の望みのない事業に対して、損失を最小限に抑えながら終息させるため、重点的な支援を行うことである。

 

 

 

 ◇原発廃止への軟着陸に必須 


 国際社会や日本社会は絶えず変化しており、新しく台頭する事業もあれば、滅びゆく事業もある。事業廃止の際には、事業者・関係者に損失が発生する。事業廃止の原因が事業者の自己責任に帰せられる場合は自業自得である。

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2015年

10月

13日

第7回 福島後の未来をつくる:中上英俊 住環境計画研究所会長 2015年10月13日号


◇秘められた日本の省エネ余力

◇自由化と利用者の意識がカギ


中上英俊(住環境計画研究所会長)


 日本の「省エネルギー法」の正式名称が「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」となっていることをご存じだろうか。これほど省エネの本質を表す名称になっているのは世界でも日本だけである。

 省エネの推進とは、エネルギーがどのように使われているかを精査し、非合理的な使われ方を是正していくことに他ならない。

 多くの人は、日本全体のエネルギー使用実態をとらえた統計データが存在したうえで省エネの議論が進められているとお考えではないか。しかし、日本には産業、運輸、民生の各部門別にエネルギー使用の実態を精査した経年的な統計は存在しない。

 

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2015年

10月

06日

第6回 福島後の未来をつくる:澤昭裕 21世紀政策研究所研究主幹 2015年10月6日号

◇さわ・あきひろ
 1957年大阪府生まれ。81年一橋大学経済学部卒業、通商産業省入省。資源エネルギー庁資源燃料部政策課長などを経て2007年5月から21世紀政策研究所研究主幹。11年4月から国際環境経済研究所所長。

◇原子力の不確実性と官民分担

政府は真正面から議論すべきだ


澤 昭裕

21世紀政策研究所研究主幹


 政府は今年7月、2030年の望ましい「電源構成(ベストミックス案)」を決め、再生可能エネルギーが22~24%、原子力が20~22%、火力発電が56%(LNG27%、石炭26%、石油3%)と示した。
 この数値のバランスは、エネルギー政策の目標である「自給率」「電力コスト」「温室効果ガス削減」の三つそれぞれについて、設定された数量目標の同時達成に必要な組み合わせとして提示されたものである。


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2015年

9月

29日

第5回 福島後の未来をつくる:高村ゆかり 名古屋大学教授 2015年9月29日号

 ◇たかむら・ゆかり

 1964年島根県安来市生まれ。京都大学法学部卒。一橋大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。龍谷大学教授などを経て2011年から現職。専門は国際法、環境法。2030年の電源構成を議論する経済産業省の有識者会議で委員を務めた。

 ◇原発稼働と無関係に必要な再生エネ

 ◇変動性の大きさは欠点ではなく特質


高村ゆかり

(名古屋大学教授)


 原子力発電所の稼働について、「原則40年」と定めた原子炉等規制法のルールを順守すれば、建設中の原発3基を除く既存の原発43基は2050年には全て運転を終えることとなる。

 原発の稼働には、新規制基準に基づく原子力規制委員会の厳しい審査をパスし、地元の同意を得る必要もある。そのために必要な費用を考えると、電力会社の経営判断として、この40年を待たずに原発の稼働を止めることだってあり得る。



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2015年

9月

21日

第4回 福島後の未来をつくる:田中伸男・笹川平和財団理事長 2015年9月22日特大号

 ◇たなか・のぶお

 1950年生まれ。東京大学経済学部卒。73年通商産業省入省。経済協力開発機構(OECD)科学技術産業局長などを経て、2007年9月~11年8月、国際エネルギー機関(IEA)事務局長を務める。

◇核のゴミ処理のための統合型高速炉

◇全電源喪失でも停止すると実証済み

田中 伸男(笹川平和財団理事長)

 

現在、日本の原子力はさまざまな問題を抱えている。3・11後の大きな課題として、福島第1原発の原子炉に溶け落ちた燃料を取り出し、それを処理しなくてはならないが、その処理方法も、処理する場所も全くメドが立っていない。

 そもそも日本の原子力政策は、原発から出る使用済み燃料を再処理して残ったウランを回収し、さらに原子炉内でウラン燃料から生成されたプルトニウムを抽出し、それらをウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料に加工して高速増殖炉で使うという道筋を描いていた。

 高速増殖炉は投入した以上のプルトニウムを生成することができる夢の原子炉とされたが、二つ目の炉である「もんじゅ」で事故や隠蔽(いんぺい)行為が発覚し、いまも稼働のメドが立っていない。そのため、やむなくMOX燃料を全国各地の原発で再利用する軽水炉サイクル(プルサーマル)へと転じた。

 


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2015年

9月

15日

第3回 福島後の未来をつくる:河野太郎 衆議院議員 2015年9月15日特大号

 ◇こうの・たろう

 1963年、神奈川県平塚市出身。米ジョージタウン大学卒業後、86年富士ゼロックス入社。日本端子を経て96年、衆院選初当選。神奈川15区で現在7期目。2014年9月から自民党行政改革推進本部長


◇必要なくなった核燃再処理工場

◇青森県と向き合う首相の決断を


河野太郎(衆議院議員)


 日本原燃が来年3月、青森県六ケ所村に建設を進める使用済み核燃料の再処理工場を完成させると言っている。もともと1997年に完成予定だったのが、相次ぐトラブルによって竣工が22回遅れ、建設費も当初の7600億円から約3倍へと膨れ上がったいわくつきの施設だ。しかも、もし今回、再処理工場が完成しても、この工場を稼働させる必要がそもそもない。プルトニウムを使用する高速増殖炉の商用化が、これも当初は1980年代と言われていたにもかかわらず、いまだメドが立っていないからだ。


 ウラン燃料が原子炉で燃えてできた使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、これを高速増殖炉という特別の原子炉に入れて燃やすと、理論的には投入した以上のプルトニウムを取り出すことができる。これが「核燃料サイクル」と呼ばれる我が国の原子力政策だが、もはや核燃料サイクルは国民にとってまったくメリットがない。それにもかかわらず、政府が昨年4月に閣議決定したエネルギー基本計画では、再処理政策を堅持することをうたっている。


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2015年

9月

08日

第2回 福島後の未来をつくる:橘川武郎 東京理科大学大学院教授 2015年9月8日号

◇最新鋭の原子炉導入と再エネ比率30%への拡大を


橘川武郎(東京理科大学大学院教授)


 東京電力福島第1原子力発電所事故を機に浮かび上がった日本のエネルギー問題を解決するためには、「S+3E」を進めて乗り切るしかない。政府は2014年4月、「Safety」(安全性)、「Economic Efficiency」(経済効率性)、「Environment」(環境適合性)、「Energy Security」(安定供給)をバランスよく実現するとした「エネルギー基本計画」を閣議決定しているが、その政策をさらに進化させるべきである。


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