2017年

11月

28日

健康データで医療費削減目指す 谷田千里 タニタ社長

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 創業当初から体重計を作っていたのですか。

 

谷田 1923年にできた前身の会社は健康とは全く逆の商品、たばこのケースを作っていました。その後44年に祖父(故・五八士・元会長)がOEM(相手先ブランドによる受託生産)でトースターなどを作り、59年に体重計の製造を始めました。「ヘルスメーター」と銘打って売り始めたのは当社が最初です。祖父は体重計の普及を図り、商標は取らなかったようです。体脂肪計などでも同じように商標は登録していません。

 

── 体脂肪計の開発の経緯は。

 

谷田 日本初のデジタル表示式ヘルスメーターを作ったことが体脂肪計の開発につながりました。父(大輔・前会長)が社長だった92年に世界初の「乗るだけで測れる」体脂肪計として発売し、爆発的にヒットしました。その後、筋肉量など体の中身を測れる世界初の業務用「体組成計」へと発展し、現在は売上高の約5割を占めるメインとなっています。

 

── 競合も多いですが、強みは。

 

谷田 原点のものづくりに力を入れていることでしょうか。秋田と中国・東莞の自社工場で作っています。体脂肪計を開発した後も「もっとうまくできる方法を」と探っていました。その間に計測の技術が発達して体の水分量や内臓脂肪、推定骨量など体の構成が分かるようになりました。そこで「もう一つ上のものが出せる」として生まれたのが、世界初の体組成計です。重量センサーなどの考え方が生かせる血圧計、どの程度体を動かしたかの消費カロリーを計測する「活動量計」、アルコール度数計などを作っています。

 

── 常に技術革新を考えるDNAが流れている。

 

谷田 父が社長だった時代は「世界初を目指そう」という目標を理念に掲げていました。2008年に私が社長に就任してからは掲げていませんが、「面白いものを作ろう」という社風は今でも流れています。

 

 ◇レシピ本は542万部

 

── レシピ本『体脂肪計タニタの社員食堂』は「カロリー控えめながらも食事が楽しめる」と評判を呼び、一世を風靡(ふうび)しました。

 

谷田 09年に本社の社員食堂がテレビ番組で紹介されたのがきっかけです。売れるとは思っていませんでしたが、10年に1作目を発行し、シリーズ4冊で累計542万部です。30万部で大ヒットといわれる中で、今までとは比較にならないほどブランドが広がりました。

 

── レストランも展開しています。

 

谷田 タニタ食堂の屋号を付けているのは10店舗。メニューを出しているものを含めると約30店舗です。

 

── まさに特需ですね。

 

谷田 社内ではレシピ本のロイヤルティーの比率を上げようという声もありましたが、変えませんでした。当時は体脂肪計のブームが終わり、売り上げが落ちてきた時期で、改革を進めていました。基盤を作らなければならない時期に一時的な「バブル」で会社が踊らされるのを防ぎたかった。ロイヤルティーを上げて赤字の補填(ほてん)に使っていたら、ダメになっていたかもしれません。その分、出版元は工夫して宣伝してくれたのでうまくいったと思います。

 

── 今、力を入れていることは。

 

谷田 個人の体重などをチェックし、これを基に健康指導などを行う「タニタ健康プログラム」を展開しています。企業や自治体などを対象に、機器やデータ、健康指導のノウハウなどを含めた仕組みを買ってもらうビジネスです。具体的には従業員や住民には活動量計を配り、体重や血圧を測る計測スポットなどで個人のデータをオンラインで結びます。データは個人で確認できるほか、指導にも役立てます。

 

── 企業も行政も医療費の負担に頭を悩ませています。

 

谷田 父は体組成計や血圧計などで得たデータの活用を先読みして、個人向けの健康データを管理する子会社を作っていましたが、業績は芳しくありませんでした。そこで09年、この会社を活用し、対象を企業や自治体向けに変えて使いやすいものを作ろうと、開発を始めました。本社の社員約200人を対象に歩数計や体組成計などから得た個人の健康データを管理して「見える化」を進めるとともに、データを基に専門スタッフが改善指導などをする仕組みを作りました。

 

 取り組みの結果、適正な体重の社員が約5%増加し、社内での医療費が導入前より1割弱減りました。

 

── 1割とはすごいです。

 

谷田 プロジェクトの成功を基に健康プログラムとして改良し、毎年改定を重ねています。約100の企業や自治体で導入されています。

 

 国も健康経営を政策として進めており、厚生労働白書にも、メタボリック症候群の解消事例や、健康寿命延伸の取り組みとして2度取り上げられました。

 

 ◇実績持って世界へ

 

── この先、どんな会社にしたいですか。

 

谷田 社員食堂のおかげで「健康についてはタニタに相談すればいい」というイメージが広がりました。このイメージを維持しつつ、健康データを活用した医療費の削減をはじめ、日本の社会保障費の適切化、健康を図りたい。そのためにもプログラムを全国に導入してもらえたら、と思います。そして実績を持って世界に攻めていきたいですね。

(構成=米江貴史・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 米国の販売会社にいました。それまでは正しい理論を盾に仕事をしていましたが、人心掌握が大切だと気づかされました。正しいことばかりを言っていても人は聞いてくれない。コミュニケーションをとり、自分の立場を理解してもらった方が仕事はしやすいと思います。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 『金持ち父さん貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ著)です。家や車などを持つことが大切だと思っていましたが、価値概念が全てなくなりました。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 会社と自宅の掃除をしています。

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 ■人物略歴

 ◇たにだ・せんり

 1972年生まれ。大阪府出身。立教高校(埼玉県)、佐賀大学理工学部卒業。船井総合研究所を経て、2001年にタニタ入社。05年米国販売会社のタニタアメリカINC取締役、07年タニタ取締役を経て、08年から現職。45歳。

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事業内容:家庭用・業務用計量器などの製造・販売

本社所在地:東京都板橋区

設立:1944年

資本金:5100万円

従業員数:グループ1200人(2017年3月末)

業績(17年3月期、連結)

 売上高:158億円

 営業利益:非公表

2017年

11月

21日

ケーブル網やデータセンターに回帰 庄司哲也 NTTコミュニケーションズ社長

Interviewer 金山 隆一(本誌編集長)

 

── 現在の経営環境は。

 

庄司 1999年に当社がNTTの子会社として誕生してから18年がたち、通信業界を巡る競争関係は変わっています。当社を含めた通信企業が展開するネットワークの上で、グーグルやアマゾンなどのIT(情報技術)サービスが展開されており、米国のシリコンバレーを中心に急成長するIT企業が増えています。

 こうしたなかで、我々は原点に戻って、ネットワーク網やデータセンターなど物理的なインフラを持つ強みを生かしています。

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2017年

11月

14日

野菜の国産化と厨房の自動化を追求 米浜和英 リンガーハット会長兼CEO

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 2017年2月期決算では最終(当期)利益が3年連続で過去最高と業績が好調です。

 

米浜 健康志向や安全・安心という意識が高まる中で、国産野菜を使って手ごろな価格で長崎ちゃんぽんを提供していることが受けているのではないかと思っています。

 

 05年に日本マクドナルド出身の八木康行氏を社長に据えて会長に退いたが、業績が低迷し、08年にトップとして復帰した。

 

── 外部から社長を呼んだ理由は。

米浜 生え抜きの社員が社長をするのはまだ早いと思っていました。社員は私しか経営者を見ていないので、外部の経営者が来れば勉強になると思いました。

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2017年

11月

07日

防災設備を通じ人命と財産を守る 山形明夫 ホーチキ社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 社名から製品が想像できますね。

 

山形 防災を通じて「人命と財産を守る」という経営理念を掲げ、火災報知機のほか、消火設備を作っています。1918年4月2日に設立し、来年100周年を迎えます。火災報知機は住宅用警報器の設置義務化が2006年に始まり、テレビコマーシャルも流しましたので、知名度はあります。

 

── 野球場でよく看板を見ます。

 

山形 知られていませんが、ドーム球場の消火設備「大規模放水銃システム」を開発しました。火災を感知したら燃えているところを目がけて放水するもので、第1号は東京ドームです。他に名古屋、大阪の各ドーム球場、東京ビッグサイトや幕張メッセといった国際展示場などに設置しています。情報通信分野ではセキュリティーシステムも手がけています。

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2017年

10月

31日

次世代車市場の「台風の目」になる=小谷進・パイオニア社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── オーディオのイメージが強いパイオニアですが今の事業領域は。

 

小谷 1938年にホームオーディオ向けのスピーカー事業で創業してから、2018年1月で80周年を迎えますが、現在は車載機器事業に経営資源を集中しています。

 

 主力商品は「カーオーディオ」と「カーナビ」で、比率は金額ベースで6対4です。この二つで全事業の8割を占めます。それぞれアフターマーケット(市販)と自動車メーカーのブランドで生産するOEM(受託生産)があります。残りの2割はCDやDVDなど「光ディスクドライブ」や、クルマ部品の「ファクトリーオートメーション」(自動製造ライン)などを手がけています。

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2017年

10月

24日

良い薬を安く作り、医療財政を救う パトリック・リード ペプチドリーム社長 

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 世界の製薬大手が次世代の創薬技術として注目する「特殊ペプチド」。体内に投与しても酵素で分解されにくく、狙ったターゲットに強く結合する特性がある。従来の創薬技術では開発が困難だった病気の治療薬を作れる技術と期待されている。

 

── どんな会社ですか。

 

リード 菅裕明・東京大学教授(同社取締役)が開発した技術を実用化するために2006年に設立した東大発のバイオベンチャーです。最初の10年で創薬技術「PDPS(ペプチド・ディスカバリー・プラットフォーム・システム)」を確立して製薬会社と契約を結びました。これからの10年は実際に薬を作る段階に入ります。そういうタイミングで、研究開発部門の責任者である私が社長に就任しました。

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2017年

10月

17日

「在庫持つ」経営で石油ファンヒーター日本一 吉井久夫 ダイニチ工業社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 家庭用石油ファンヒーターで国内トップです。

 

吉井 自慢するつもりは毛頭ないのですが、国内主要家電量販店の販売台数が10年連続1位で、シェアは50%を超えています。現在、年間約100万台を生産しています。ただ、1位を狙ったのではなく、より良くしていった結果だと考えています。

 

── コロナやパナソニックなどがひしめく市場でどう戦うのですか。

 

吉井 お客様にとっての品質や価格、補償はもちろん、当社が卸す流通業者にとっての商品価値も高めています。

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2017年

10月

10日

「社員の多様性が武器 果敢に事業変革」石黒成直 TDK社長

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 会社のルーツは。

 

石黒 当社は82年前、東京工業大学の2人の博士が開発した磁性材料「フェライト」を、創業者が「日本人の開発品。何とか製品化できないか」と取り組んだのが始まりです。いわば大学発ベンチャー企業です。フェライトは磁性を帯びた電子材料で、今なお進化を続ける古くて新しい材料です。研究を進める中、電磁気に応用できる材料として、戦前はラジオ・通信機器のアンテナ、戦後はコンピューターや家電に使われるようになりました。フェライトを作るには酸化鉄を焼いて形成する「焼成」技術が必要です。当社のビジネスは、フェライトを作る磁性材料技術と、それを使ったプロセス技術、生産技術を根に、さまざまな技術・製品が木の枝を伸ばした構図です。

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2017年

10月

02日

国内シェア50%の燃料油基盤に世界へ 内田幸雄 JXTGホールディングス社長

内田幸雄 JXTGホールディングス社長
内田幸雄 JXTGホールディングス社長

◇Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── JXTGホールディングス(HD)はどんな会社ですか。

 

内田 JXHDと、東燃ゼネラル石油が今年4月に経営統合しました。石油業界の地殻変動に対応しようと模索を続けて実現した統合です。

 

 原油を輸入して精製し、ガソリンや軽油などの製品を販売する石油元売り会社は、1970年代には15社ほどありました。2度の石油危機や、規制緩和による競争激化、燃料油が90年代半ばから後半をピークに国内の需要が落ち始めたことなど、たびたび再編の圧力が高まりました。

 

 大きな転機となったのは、99年のエクソンとモービルの合併です。メジャーの2社の合併は誰も予想しませんでしたが、そのくらいの出来事が石油業界には起きていました。2000年代にも1バレル=100ドル台が続いた原油価格の高騰、エクソンモービルなどメジャーの撤退と、次々に経営に直結する問題が起き、各社は対応に追われてきました。石油元売り会社は集約され、現在は4グループになっています。

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2017年

9月

25日

日本の中小企業を強くする 佐々木大輔 freee(フリー)社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 設立5年で従業員が約350人と急成長中です。そもそもフリーはどんな会社ですか。

 

佐々木 中小企業のバックオフィス(間接部門)業務を、クラウド(インターネット上)で自動化するソフトウエアを提供しています。特に、経理と人事労務の二つに注力しています。経理の業務は、5分の1から50分の1に軽減できます。

 

── どう軽減するのですか。

 

佐々木 当社が提供するクラウド会計ソフトは、クレジットカードの利用明細やインターネット銀行の明細などから必要事項を抽出して、人工知能(AI)を使って自動で会計帳簿を作ることができます。例えば、明細に「ソフトバンク」とあれば「通信費」に、居酒屋の名前なら「交際費」などに自動で分類できます。他にも、飲食店であれば自社の売り上げデータを連携させることもできます。

 請求書の管理もできます。発行だけでなく、入金まで追って管理ができたり、受け取った請求書の入金について期日までに自動で支払うこともできます。

 使う企業にとっては、気がついたら帳簿ができている仕組みで、いつでも経営が見える化ができます。

 

── 顧客は何社ありますか。

 

佐々木 個人事業主を含めて80万事業者が使っています。料金は、個人事業主向けの確定申告を簡単にするサービスは月980円(税抜き)から、会社向けの会計ソフトは月1980円(税抜き)からなどのプランがあります。500~1000人規模の企業でも使えるようにしています。

 

── なぜ急拡大できたのですか。

 

佐々木 口コミが大きかったです。最初は、個人事業主や小規模法人を中心に広がりました。インターネットで当社のサービスを見つけてくれ、拡大の原動力となりました。

 我々がクラウド会計ソフトを開発した当初の会計業界は、新規参入者はおらず約30年間変わっていない業界でした。ですが、クラウド会計ソフトを実際に作ってみると、世の中の人に受け入れられました。これが僕たちの原点になっています。

 

 ◇グーグルで学んだこと

 

── なぜ会計業界で起業したのですか。

 

佐々木 以前ベンチャー企業でCFO(最高財務責任者)を経験して、手入力が必要なことが多く、すごく非効率でした。それを問題意識として持っていて、その解決方法もイメージしていました。このサービスで従来の経理業務が50分の1にできるのを自分自身で感じていました。

 経理はあらゆるビジネスで必要な部門です。これをインターネットで誰でも簡単にできるという時代を作れると思いました。

 

── グーグル日本法人での経験はどう生きていますか。

 

佐々木 28歳でグーグルに転職し、中小企業にインターネット広告を広げる活動をしていました。ある会合で、グーグル本社の幹部が「会社は運動(ムーブメント)だ」と言っていたことには、とても感銘を受けました。それまでの日本企業の価値観にありそうでなかった考え方で、これを実践する企業を日本でも作れたらと思いました。そうした感覚を覚えられたのが大きかったです。

 

 フリーは未上場の企業だが、ベンチャーキャピタルの米DCM、リクルートホールディングス、未来創生ファンド(トヨタ自動車と三井住友銀行が出資)などが出資する。投資家が評価する時価総額は、すでに400億円を超えるとも言われる。一方、クラウド会計ソフト市場を見ると、フリーは40%近いシェアを持つ。それを「弥生会計」の弥生や、9月29日に上場予定のベンチャー企業・マネーフォワードが追い、競争は激しい。

 

 ◇銀行融資を簡単に

 

── 銀行や信用組合などと業務提携を進めています。狙いは。

 

佐々木 合計20の金融機関と提携しています。いずれは当社のサービスのなかで融資を完結できるような世界を目指しています。

 当社のユーザー(顧客)にとっては、より良い条件で融資を受けられ、提出する書類も減らすことができます。その一方で、金融機関にとっては審査にかける時間が減り、融資先の経営に関わる助言にもっと時間をかけることができます。

 

── 銀行の審査部が必要ない時代が来るのでしょうか。

 

佐々木 そういう時代が来るかもしれません。企業の資金繰りは、過去の経営データを基にするので、自動化されるのではないでしょうか。

 

── 今後、フリーが目指す世界は。

 

佐々木 日本の中小企業を世界的に見ても競争力のあるものにしていかなくてはいけません。従業員全員が英語を話すという意味ではなく、ビジネスの仕方や生産性の面で世界のレベルについていくということです。中小企業の方が、よりスマートで、強い会社になれる仕組みを提供し、そうした中小企業のプラットフォーム(土台)になっていきます。

 

── 上場の予定は。

 

佐々木 今年から手続きを始めましたが、いつかは言えません。ただ、当社は米国系のベンチャーキャピタルからも出資を受けているため、早期の上場は必要ありません。

 未上場の期間をうまく利用して、盤石なビジネス基盤を作っていかないといけないと思っています。良い例になって道を広げて、自分で流れを変えていきたいです。

(構成=谷口健・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 20代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 広告代理店、投資ファンド、ベンチャー企業と転職していました。28歳でグーグル日本法人に入りました。

 

Q 「私を変えた本」は

A 米国人作家のパトリック・レンシオーニ氏の『あなたのチームは、機能してますか?』(翔泳社)です。読みやすく書かれた本で、社内での課題図書にしています。

 

Q 休日の過ごし方

A 走ったり、子供と遊んだりしています。

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 ◇ささき・だいすけ

 1980年生まれ。開成高校、一橋大学商学部卒。博報堂や投資ファンドを経て、IT企業のALBERTで執行役員兼CFO(最高財務責任者)。その後、グーグル日本法人で中小企業向けマーケティングに従事。2012年7月、フリーを設立。37歳。

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事業内容:クラウド会計ソフト、クラウド給与管理ソフトなどの開発・運営

本社所在地:東京都品川区

設立:2012年7月

資本金:96億円(資本準備金含む)

従業員数:約350人

業績

 売上高:非公表

2017年

9月

19日

顧客とともに栄え、イノベーションを起こす 此本臣吾 野村総合研究所社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どんな会社ですか。

 

此本 名前の由来からシンクタンクのイメージが強いですが、実態としては連結売上高の9割をITサービスが占めています。2017年3月期の売上高営業利益率は14%で、同業他社に比べると非常に利益率が高いのが特徴です。コンサルタント業務を行っていた旧野村総合研究所とITシステム会社の野村コンピュータシステムが1988年に合併し誕生しました。ITサービスの上流に位置するコンサル業務に強みを持っているのが同業他社との大きな違いです。

 

── 強みは。

 

此本 かつて、ITは企業のバックオフィスを支える存在でした。当社でも、コンサル部門は経営層、ITサービス部門は情報システム部門とそれぞれ対象の顧客が違い、一緒に連携して仕事をすることはあまりありませんでした。しかし、今では、ITが企業のビジネスモデルそのものを変える時代になりました。CEO(最高経営責任者)自身がITに関心を持ち、事業部門でもITを使ってビジネスを変えたいという話が出ています。二つの機能を持ち、融合する当社の強みはこれから生きます。

 

── 直近の業績は。

 

此本 17年3月期の連結決算は売上高4245億円、営業利益585億円でした。従業員数は単体で約6000人、連結では約1万1000人です。規模やコストで競争せず、価値提供で当社にしかできないサービスを目指しています。仕事を通じて知的好奇心をかき立てる組織であり、人材が集まっている会社です。就活学生の人気が高いのは、当社のカルチャーに交われば、自分たちも成長できるという期待が学生の間であるからではと思います。

 

── 企業理念は。

 

此本 「未来創発」です。将来を俯瞰(ふかん)し、新しい社会のパラダイムを洞察し、実現を担う。顧客のためにイノベーションを起こし、顧客とともに栄える。この企業理念が当社の存在そのものを象徴しています。まず、「新しい社会のパラダイムを洞察」するのがコンサルの役割です。「その実現を担う」のがITサービスです。シェアリング・エコノミーやブロックチェーンも、それを実現するために、我々はITという武器を持っています。

 

 ◇「ストーリーを語る」

 

── 同業他社との違いは。

 

此本 イノベーションを強く意識する会社は、テクノロジーを中心に、顧客に「あれもできます、これも可能です」と提案しがちです。でも、顧客を分析する能力がなければ、顧客は「それによって我々の抱えている問題をどのように解決してくれるのか」と不満を持つことになります。我々はコンサル部門でそれを徹底的に分析することが可能です。その上で、顧客が解決したいことを実現するには何が必要か、そのためにはどんなサービスを提供しなければならないか、ストーリーを語ることができます。コンサル部門を持っていることがすごい力になります。

 

── サッポログループの働き方改革で、AI導入をサポートしました。

 

此本 同グループの社内業務の問い合わせに、当社のAIシステムを活用しました。その結果、問い合わせの45%がAIで回答できました。今は経済産業省とAIを使った国会答弁の作成業務の自動化で実証実験をしています。

 

── コンサルとIT部門の人事交流はあるのですか。

 

此本 最近、ビッグデータの「アナリティクス」という分野が注目を集めています。例えば、ある消費財メーカーで、これまで中心顧客だった高齢の富裕層の購買力が落ち始めたので、若い女性層のマーケティングをしたいとします。こういう層にどのように効率的にアプローチするかを、データを基に分析し、会社にマーケティングの提案までをするのが、アナリティクスです。

 

 このようにアナリティクスでは、データ分析だけでなく、ビジネスも理解している必要があります。当社はコンサルとITサービスの両方の部門を持っているので、コンサルで育った人がIT側に異動して、さまざまな分析ツールへの理解を深めたり、逆にIT側で採用された分析のプロが、コンサルに異動し、ビジネスの勉強をすることができます。

 

 アナリティクスは消費財だけでなく、金融などの他業界でもますます必要になります。そのため、両方の能力を持った人をどれだけ育てるかが、当社の競争力の鍵になります。

 

── 長期経営ビジョンで23年3月期に営業利益1000億円を目指しています。

 

此本 当社はコストや規模ではなく、提供する「価値」で競争します。利益は価値を定量化したものです。そこにこだわりを持ちながら経営していきたい。他社のように、海外の大きな会社を買収するようなやり方はしません。海外で買収をするにしても、その会社しか持っていない知的財産やノウハウが、我々の方向性に欠けているピースであれば、買っていきます。会社の大小は関係ありません。

 

 例えば、15年に米国のデジタルマーケティング会社「ブライリー・アンド・パートナーズ」を買収しました。小さな会社ですが、非常に強力な知的財産を保有しています。社会がどのように変わるのか俯瞰しながら、他社より一歩先に布石を打っていきたいと思います。

(構成=稲留正英・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 台湾に駐在し、一から支店を開設して大きくしていきました。帰国するときには40人の会社になっていました。非常にやりがいがありました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 石川光男氏の『東洋的生命観と学問』(1983年)です。コンサルは社会科学であり、自然科学のように解析的に分析することの限界をこの本から学びました。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 子供が大きくなったので、妻と二人で小旅行に出かけています。最近は秋田県男鹿半島のジオパ

ークに出かけ、1000万年前の貝の化石を拾いました。

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 ■人物略歴

 ◇このもと・しんご

 1960年生まれ。東京都出身。都立西高校、東京大学工学部、同大学院工学研究科修了。85年野村総合研究所入社。94年台北事務所長、2004年執行役員、15年専務執行役員を経て、16年4月から現職。57歳。

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事業内容:コンサルティング、ITサービス

本社所在地:東京都千代田区

設立:1965年4月

資本金:186億円

従業員数:6003人(2017年3月現在)

業績(17年3月期・連結)

 売上高:4245億円

 営業利益:585億円

2017年

9月

12日

「新規路線で国際線を成長ドライバーに」 片野坂真哉 ANAホールディングス社長

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── ANAの社風は。

 

片野坂 新しいことに挑戦して成長してきた会社です。例えば、昔はタブーだった羽田空港の国際化を、20年以上前から言い続けてきました。歴代の社長も、国際線が赤字の頃も、やめろと言った人は一人もいませんでした。

 

── どういった事業に力を入れていきますか。

 

片野坂 柱の航空事業では、国際線で成長するという戦略を確固たるものにしたいですね。2020年の東京五輪・パラリンピックという一大イベントに向けて、羽田も成田も発着枠が増えるビジネスチャンスです。日本企業も海外にどんどん出ており、国際線を成長ドライバーとした成長戦略を描いています。ただ、今年と来年は発着枠は増えません。昨年はシステムダウンや、保安検査場でお客様を誤誘導するなどのトラブルも多かったので、「今年は安全と品質の総点検」と社員に宣言しており、しっかりと内部固めも大事な2年間と思っています。

 

── 路線拡大にリスクはありませんか。

 

片野坂 私は新規路線論者です。発着枠が増える時を逃さず、ネットワークを広げておく必要があります。この3年間、ヒューストン、クアラルンプール、ブリュッセル、プノンペン、武漢、メキシコなどに新規路線を就航させました。新規路線は需要が少ないのではないかと言われますが、やってみると最初から乗っていただける。ということはマーケットはまだまだあるということです。この2年間、増収増益で最高益を更新し、増配もできているので、決算もついてきています。

 

── 既存路線強化の目玉はありますか。

 

片野坂 19年にハワイ・ホノルル線に500席を超えるエアバスの大型機「A380」3機を投入します。ハワイ路線は利用率が9割程度で年間を通して安定しています。座席数が増える分、マーケットシェアが高まると見ています。今まではビジネス重視でネットワーク展開をしてきましたが、これからはレジャーやリゾートをグループの戦略として大事にしたい。それをまずはハワイでやろうと思っています。

 

── 国内線の経営方針は。

 

片野坂 15年3月の北陸新幹線の開業で100億円程度の減収になりましたが、その影響も一巡しました。人口が減少している国内では、地方が元気になって観光客が増えないと、航空会社のネットワークの維持はどこかで限界がきます。訪日外国人に利用してもらうのがこれからの鍵になるでしょう。

 

── 傘下の格安航空会社(LCC)についてはどう考えますか。

 

片野坂 4月にピーチ・アビエーションを連結子会社化しました。LCCのもう一つの子会社であるバニラ・エアと統合させないのかとよく聞かれますが、今は全くの白紙です。ピーチは関西空港ベース、バニラは成田空港ベースですみ分けができており、文化も全然違うので簡単に混ぜることは難しいです。今はできる限り自主性を尊重して、二つの会社が共に成長していけるようにしたいですね。

 

── LCCの戦略は。

 

片野坂 20年度までに中距離路線を強化します。バニラもピーチも、中距離と言えるバンコクやホーチミンには、沖縄や台湾を経由して飛んでいます。小型機を使って、乗り継ぐ形でアジアの中距離に既に入り始めており、現地でも知名度を上げています。いずれは、中型機を使った直行便を入れていきたいですね。

 

── 日本航空への対抗策は。

 

片野坂 8・10ペーパー(新規投資や路線開設が原則自由にできないと定めた国土交通省の指針の通称)がなくなり、成田─豪メルボルン線と成田─ハワイ・コナ線を新規就航するのはさすがだなと思っています。財務体質が良いので脅威ですね。こちらとしては新規路線で特徴を出していくことが重要だと思います。あとは、サービスと品質で負けないようにしていくことに尽きますね。

 

 ◇ノンエア事業も強化

 

── MRJ(三菱リージョナルジェット)の納入が遅れています。

 

片野坂 納入時期は20年半ばの予定ですが、親会社の三菱重工業などからは、少しでも前倒しできるようにしたいとも連絡を受けているので、信頼していくしかありません。我々のパイロットや整備士、客室乗務員が機器の設置位置や荷物棚の形状などについてアドバイスするなど、良い品質の飛行機にするために知恵を出しています。そういう意味では一心同体。ボーイング787の時もそうでしたが、開発のリスクをかぶるローンチカスタマー(世界で初めて導入する航空会社)の難しさは感じています。

 

── 航空事業以外の取り組みは。

 

片野坂 航空事業が苦しい時に支えるノンエア事業もしっかり育てたいです。「ANAビジネスソリューション」という会社では、企業の研修で客室乗務員が接客の基本を教えています。昨年設立した「ANA X」はマーケティングの会社で、搭乗データやマイレージクラブなどの顧客情報を分析した事業開発に取り組みます。例えば、保険や旅行の販売に生かすこともできます。まだまだこれからですが、飛行機に乗るだけのお客様に別の形でアプローチしたいですね。新しいイノベーティブな事業として、宇宙など将来の成長に向けた可能性もつくっておきたいです。

(構成=松本惇・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 30歳になった頃にANAが国際線に進出することになり、日米航空交渉などを担当しました。ANAがグローバルになるのを実感でき、面白い時代でした。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 山岡荘八の『徳川家康』です。すべての登場人物が生き生きと描かれていて、人生のヒントがあります。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 下手なゴルフが時々と、ガーデニングです。剪定(せんてい)すると芽が出て強くなるのは面白いですね。

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 ■人物略歴

 ◇かたのざか・しんや

 1955年生まれ。鹿児島県出身。ラ・サール高校、東京大学卒業後、79年4月に全日本空輸入社。人事部長などを歴任し、2013年4月のANAホールディングス発足時に副社長、15年から現職。62歳。

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事業内容:航空運送事業など

本社所在地:東京都港区

設立:1952年12月27日

資本金:3187億円

従業員数:3万9243人

(2017年3月31日現在、連結)

業績(17年3月期、連結)

 売上高:1兆7652億円

 営業利益:1455億円

2017年

9月

05日

「自分たちの生活から不満を発見し、商品開発」大山健太郎 アイリスオーヤマ社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どんな会社ですか。

 

大山 生活用品の製造販売をしています。メーカーでありながら問屋の機能を兼ね備え、量販店に自社商品を直接納入している「メーカーベンダー」は当社ぐらいでしょう。

 当社は需要創造型企業です。マーケットインではなく、ユーザーイン、つまり自分が欲しいと思うものは皆が欲しいと思い、開発します。市場調査はほとんどやりません。我々自身の生活をしっかりと見ます。

 生活の不便を快適に変える商品で奥様方から高評価をいただいてきましたが、ここ3年で家電が売り上げの半分を占めるようになりました。主力は炊飯器や布団乾燥機です。

 

── 会社の成り立ちは。

 

大山 父が東大阪で創業した従業員5人のプラスチック工場を19歳で継ぎ、零細下請けを脱皮したいと養殖用のブイ(浮き)や苗箱など1次産業の資材を手がけました。2000年代にペット用品、園芸用品を売り出しました。09年のLED(発光ダイオード)電球を皮切りに家電に参入しました。

 

── 最大の転機は。

 

大山 1970年代のオイルショックです。会社は破竹の勢いで拡大し、宮城県にも工場を構えていましたが、倒産寸前となりました。オイルショックで前倒しになった需要が止まり、供給過剰で値崩れが起きたのです。

 不況でも利益を出せる会社を作ろうと思いました。値崩れを引き起こす競争のないビジネスをするため、潜在需要を顕在化させることを考えました。園芸用品でガーデニングブームを作り、ペット用品で家畜をファミリーに変えてきました。

 

── LED電球のきっかけは。

 

大山 当初、夜も庭を楽しむために消耗しにくいLED電球を作りました。09年、鳩山由紀夫首相(当時)の二酸化炭素25%削減宣言で、照明がLED電球に切り替わるとみて生産を開始し、11年の東日本大震災後の節電を機に拡大しました。

 

── 家電に参入した理由は。

 

大山 大阪は家電の町、大阪人にとって家電メーカーは憧れの存在でした。それがグローバルの競争に負けてしまった。リストラで技術者があぶれているのはもったいないと思い、受け皿として、13年に大阪R&D(研究開発)センターを作り、採用を進めてきました。

 

── 日本の家電メーカーが崩壊するなかで成長できた理由は。

 

大山 日本の家電メーカーが負けた理由は二つあります。

 一つは、日本のものづくり産業が下請けの多層構造であることです。総合家電メーカーは設計し、部品を組み立てます。便利な構造ですが、各下請けが利益を乗せるので、海外と競争すると勝てないのです。

 もう一つは、創業者からサラリーマン社長に代替わりするとリスクを取らなくなります。商品開発の提案がとがっていても、何層も会議を経て他社の競合製品と比べる中で横並びになります。

 当社は、家電の内製比率が高いことがコスト競争力とイノベーションを生んでいます。そして、私が退いた後も機能するような仕組み作りに力を入れてきました。例えば、週初めに丸一日かけて商品開発のプレゼンテーション会議を行っています。私はじめ30人ほどが参加し、情報を共有しています。

 

 ◇常識の非常識

 

── ヒット家電を生んでいます。

 

大山 1~2人世帯が6割を占めるようになったのに、既存の家電メーカーは横並びで4人家族をベースにした製品を作り続けています。でも、1~2人世帯にとって便利な製品を考えれば、いろいろと出てきます。

 

── 生活の変化という簡単なことに皆が気づかないんですね。

 

大山 大きい製品の方が高く売れるからです。量販店も同じです。生活者を忘れています。でも、あっという間に携帯電話がスマートフォンに変わったように、今日と明日は違うんです。

 世の中には常識の非常識がけっこうあります。我々はお客様が気づいていない不足・不満を自分の生活の中から発見し、変えています。

 

── 今年4月にエアコンを発売し、大型白物家電に参入しました。

 

大山 家電のゴールです。まずエアコンを手がけたのは、省エネ効果が大きいからです。

 家電のシェアは今は単価が低いので数%です。マーケットは大きいですから、1割、3割へ伸ばしていきます。中国と国内で工場をどんどん増やしています。できるだけ内製します。

 

── 設備を抱えることにはリスクもあります。

 

大山 リスクを取ってシェアを取れば、設備の稼働率が上がります。

 ロングセラー商品にあぐらをかくなと言っています。年間1000アイテムを新たに発売しています。メーカーベンダーですから新商品を店頭に並べられます。過去3年間に発売した商品の売上比率が6割を超えています。

 

── 経営目標は。

 

大山 売り上げに対して1割の営業利益と過去3年の新商品比率5割以上です。売り上げ目標は立てません。

 

── 上場はしないのですか。

 

大山 必要がありません。無借金ですし。経常利益の5割程度を償却を含めた設備投資に充て、営業利益の5%を幹部社員に還元しています。

 会社にとって一番大事なのは、社員です。働く社員にとって良い会社を目指しています。

(構成=黒崎亜弓・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A オイルショックを経て、会社の業態転換のため必死で試行錯誤していました。

 

Q 「私を変えた本」は

A 本はあまり読みません。過去のことですから。今、起こっていることをウオッチし、本質を見極めるようにしています。

 

Q 休日の過ごし方

A クラシック音楽を1日5、6時間聴いています。毎朝3キロウオーキングし、週に1度は水泳をやる健康オタクです。

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 ■人物略歴

 ◇おおやま・けんたろう

 大阪府出身。大阪府立布施高校(東大阪市)卒業。1964年、大山ブロー工業代表者に就任。91年、アイリスオーヤマに社名変更。アイリスグループ会長。72歳。

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事業内容:生活用品の企画、製造、販売

本社所在地:仙台市青葉区

設立:1971年4月

資本金:1億円

従業員数:3013人(2017年1月現在)

業績(16年12月期・単体)

 売上高:1220億円

 経常利益:110億円

2017年

8月

29日

客室数日本一 中核の支配人は97%が女性 黒田麻衣子 東横イン社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 全国各地にある東横イン。私も出張で度々利用しています。

 

黒田 7月現在の店舗数は268で、客室数は5万4111室で、客室数は日本一です。2016年度の稼働率は83・6%でした。

 

 

── 名前の由来は。

 

黒田 1号店の蒲田が東京と横浜の間にあることから

 

です。蒲田近辺には建設会社や不動産会社で東横と名の付く会社が結構存在します。

 

── 特徴を一言で言うと。

 

黒田 創業当時からビジネスマンが対象です。創業者の父は、ホテルマンでも、接客業に従事していたわけでもなく、利用客の目線で常に明るく清潔でリーズナブル(お手ごろ価格)というホテルを作ってきました。ただ、2000年代半ばごろから家族連れの利用も増えてきました。かつては土日や夏休みシーズンの8月の稼働率は最も低かったのですが、今はむしろ高くなりました。

 

── こだわりは。

 

黒田 どこに行っても客室とサービス内容が同じです。固定客確保も図っています。入会金1500円で会員になれば宿泊料は5%割引し、10回泊まると1回無料となる特典があります。今では会員の宿泊率は7割弱です。

 

── 独特の経営スタイルとか。

 

黒田 物件を持たず、運営に専念しています。1986年に開業した蒲田の1軒目がたまたまそうだったのかもしれませんが、創業者の父が友人から相談を受けてホテル経営を勧めたところ、その友人が難色を示したため、建築を前提に父が運営を引き受けたところから始まりました。

 その後もホテル業には専念せず、不動産デベロップメントが本業でした。しかしバブルが崩壊して不動産は全て手放さざるを得なくなりました。創業10年後の96年、父がホテル業への専念を決め、そこから伸び始めました。お金がない状態で「建てていただいて運営させてもらう」スタイルが本格的に始まりました。

 

── なぜ物件を持たないのですか。

 

黒田 資産の負担が少なく、初期投資が少なくても続けられることが大きいです。副産物的には、土地と建物のオーナーは地元の名士なので顔が広く、地元経済界に紹介してもらえたり、お客様を呼んでくれたりするメリットもあると思います。

 

 ◇「就任30年で50万室」に

 

── 職場の特徴は。

 

黒田 圧倒的に女性が多いです。支配人は97%、フロントは80%が女性です。支配人は1号店の開業時から女性ですが、実は偶然です。父が行きつけの飲食店の接客に優れた女性に依頼したのが発端です。2号店の支配人は男性でしたが、1号店との稼働率の差がみるみるうちに出てきました。調べてみると女性支配人の1号店は常にきれいで明るいのに対し2号店はたばこ臭くて暗い。以来「目が行き届く女性向きの仕事」として支配人はずっと女性です。

 

── 支配人はどんな方々ですか。

 

黒田 40代が最も多く、職歴はキャビンアテンダントや教師、専業主婦などさまざまです。ただ、小学校以下のお子さんがいる方には厳しい仕事だと話しています。ホテルは24時間365日開いているので、何かあれば夜中でも駆けつけなければなりません。また月1回は全国10エリアごとの支配人会議があるので出張も多いです。

 一方で晩婚化が進み、30代後半から40代半ばは、お子さんが小さいケースが増えています。支配人も平均年齢は48歳と上がっています。何らかの子育てサポートの手立てを考えなければならないと思っています。

 

── その他の職種は。

 

黒田 フロント正社員の働き方は独特です。午前10時半から翌日午前11時半まで、計4時間の休憩を含んだ勤務です。勤務を終えた翌日と翌々日は休みです。出勤日の晩は、お子さんを家族に見てもらう必要がありますが、勤務を終えてからは一緒に過ごせる時間は長くなります。この勤務体系を支持する人も多いです。4日に一晩だけ何とかできれば、もっと子育て世代の味方になる職場になるのではないかな、と思うのですが。

 

── 初めから後を継ぐつもりでしたか。

 

黒田 教員を目指していました。ただ大学院生時代に母校の非常勤講師を務め「向いていない」と感じました。02年に入社して新規出店に関わった後、結婚と出産を経て05年に退社して専業主婦になりました。復帰するとは思っていませんでした。

 

── 戻るきっかけは。

 

黒田 08年に起こした廃棄物処理法違反事件です。グループの工事部門に対し、父が店舗の地下を建築資材置き場として容認したところ、雨水が入り込んで硫化水素を発生させてしまい、父は経営者から降りました。私は「戻らなきゃ」と思ったのです。当時2人の娘は幼稚園でしたが、子育てをどうしようと考える間もなく、突然湧いた思いでした。

 

── どんな会社にしたいですか。

 

黒田 戻ったときは会社の不祥事の後で、リーマン・ショックの影響でホテルの稼働率も前代未聞の低さで支配人に元気がありませんでした。「支配人の笑顔を取り戻し、日本一女性が働きたい職場を作りたい」と思いました。それには成長し続けることが必要で、「30年で50万室」という目標を立てました。業績が悪ければ客室数は増やせませんし、成長する会社に身を置いてこそ意気に感じて仕事ができると思います。二度と世間を騒がせてはならない。社会から尊敬される会社にしたいと思っています。

(構成=米江貴史・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 2008年末に戻ってきて、どちらかというと、仕事を覚えることで必死でした。今より何事も新鮮に受け止められていた気がします。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 変えたとまでは思いませんが、すごく良いなと思ったのは『海賊とよばれた男』(百田尚樹著)です。こんな社長になりたいと思いました。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 家事です。洗濯物や片付けに追われています。娘たちに必要なものを買いにも行きます。睡眠も取っています。

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 ■人物略歴

 ◇くろだ・まいこ

 1976年生まれ。東京都出身。成城学園高校、聖心女子大文学部を経て2002年、立教大大学院文学研究科博士課程前期修了後、東横イン入社。出産・育児のため05年退社後、08年に副社長として復帰。12年6月から現職。41歳。

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事業内容:ホテル運営

本社所在地:東京都大田区

設立:1986年

資本金:5000万円

従業員数:1万895人(パート従業員含む)

業績(2017年3月期単体)

 売上高:819億7000万円

 営業利益:172億1300万円

2017年

8月

22日

全自動衣類折り畳み機で世界を席巻 阪根信一 セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 さまざまな衣類に対応した世界初の全自動折り畳み機「ランドロイド」を開発した。大きさは高さ220センチ、幅87センチ、奥行き63センチ。1回で約30枚の衣類が投入でき、所要時間は1枚約5~12分。想定価格は185万円程度で来春までの納品を目指す。

 

── ランドロイドが話題ですね。

 

阪根 一部で予約を受け付けており、数百人の購入希望者がいます。

 

── どのような仕組みですか。

 

阪根 目で見て、頭でどのような衣類かを判断しなくてはならないので、カメラによる画像認識機能と、人工知能(AI)を搭載しています。手で畳む機能を実現しているのはロボットアームです。

 

── 衣類の折り畳みに着目したのはなぜですか。

 

阪根 世の中にないもの、人々の生活を豊かにするもの、技術的ハードルが高いものという三つの条件を満たすテーマを探しましたが、思いつくものは特許が取られていたりして、誰かが既に取り組んでいました。ある時、技術系の会社は男性社会なので、男の自分が考えても見つからないと思い、妻に聞いてみたところ、「洗濯物の自動折り畳み機が欲しい」と言われました。関連する特許も出ていなかったので、開発に着手することにしました。

 

── 苦労はありましたか。

 

阪根 2005年から開発を始めて、3年くらいで畳む技術はある程度実現できました。ただ、衣類がぐちゃぐちゃの状態からはなかなかきれいに畳めません。当時、住友電工の技術者から脱サラして起業した父の会社で開発を進めていましたが、リーマン・ショック(08年)が起き、他の事業は縮小している中で、こんな訳のわからないことをなぜ続けているのかという社内の目もありました。それでも11年ごろに技術的なブレークスルーが起き、手応えを感じました。

 

── 注目を浴びるきっかけは。

 

阪根 15年10月に国内最大の家電見本市「CEATEC(シーテック)」で発表してから反響がありました。

 

── 今後の改善点は。

 

阪根 3年間は新しいモデルをつくりません。購入後もAIは機械学習で随時更新してより精度を高めていくので、最初に買っても、3年後に買っても性能は変わらないようになります。10年後にはより普及できるような価格に抑えたいですね。まずは折り畳み専用機を世界中に普及させてから、将来的には洗濯・乾燥機能も備えたものをつくりたいです。

 

 ◇医療機器やゴルフ用品も

 

── 経営者を志したきっかけは。

 

阪根 化学の研究者になるために大学卒業後に留学した米国の大学院ではある程度成果を出せたのですが、上に行けば行くほど、これは勝てないという研究者が大勢いました。でも、技術とコミュニケーションが必要なビジネスなら、勝負になるのではないかと思いました。父の会社はOA機器用の部材の製造など技術系の企業だったので、そこに就職し、社長になりました。

 

── なぜ起業したのですか。

 

阪根 父に外部資本を入れることに賛同してもらえなかったからです。父の会社はBtoB(企業間取引)ビジネスでしたが、将来的にはBtoC(消費者向け)ビジネスで勝負したいと思っていました。そのためには外部資本を入れて会社を大きくする必要があります。祖父が経営していた上場企業が、ホテルニュージャパンの社長だった横井英樹さんに敵対的買収で乗っ取られたため、自分の会社に外部資本は入れないとの思いを父は持っていたようです。

 

── ランドロイド以外にはどのような事業をしていますか。

 

阪根 いびきや睡眠時の無呼吸を治療する機器「ナステント」を14年に発売しました。これまで約6万人に100万本以上が売れました。重症無呼吸患者だった私はCPAP(シーパップ、睡眠中に鼻に掛けたマスクから、圧力を加えた空気を送り込み、気道が閉塞(へいそく)しないようにする装置)で快適に眠れましたが、出張などの際の持ち運びが大変だったので、使い捨てコンタクトレンズのようなものを開発したいと思いました。ナステントはシリコーン製の使い捨てチューブで、睡眠時に鼻の穴に差し込んで利用します。1箱は7本入り(1週間分)で3220円(税抜き)です。

 

── 事業が多彩ですね。

 

阪根 人工衛星にも使われる特殊なカーボン製のゴルフシャフトもつくっています。独自に開発した、スイング中のシャフトのしなりとねじれを測る機械を使い、1本1本オーダーメードでつくります。価格は1本12万~1200万円(税抜き)。尾崎3兄弟らプロゴルファーにも愛用されています。

 

── 関連性のない複数の事業をやっているのはなぜですか。

 

阪根 イノベーションを起こすためには、ニーズからテーマを探す必要があると思いました。持っている知見を生かして何かをやろうとしてもイノベーションを起こすためのテーマは見つからないと気付き、世の中のニーズを優先した結果、バラバラのテーマになりました。

 

── 社名の由来は。

 

阪根 世界中に七つの開発拠点をつくりたいとの思いを込めています。

 

── 今後の目標は。

 

阪根 四つ目、五つ目の商品開発も進めており、特許も申請しています。早ければ1年後くらいに発表できるかもしれません。日本で生まれた技術で世界を席巻したいですね。

(構成=松本惇・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 父が起業した会社の社長に就任しました。会社を成長させるため、組織のマネジメントと対外交渉力を学びました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 松下幸之助さんの本は全て良かったのですが、特に印象に残っているのは『素直な心になるために』や『商売心得帖』です。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 半分は仕事ですが、残りの半分は子供と遊んでいることが多いですね。

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 ■人物略歴

 ◇さかね・しんいち

 1971年生まれ。高槻高校、甲南大学卒業後、米デラウェア大学化学・生物化学科博士課程修了。父が起業したI・S・Tに2000年に入社し、08年に社長就任。11年のセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ創業時から現職。46歳。

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事業内容:ゴルフ用品、医療機器、家電などの製造・販売

本社所在地:東京都港区

設立:2014年7月18日(11年2月創業)

資本金:77億円(資本準備金含む)

従業員数:117人(17年6月30日現在)

業績 非公開

 

2017年

8月

08日

再生から新たな攻めのステージへ 河野雅明 オリエントコーポレーション社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どんな会社ですか。

 

河野 広島県が発祥の信販会社で、消費者向けファイナンスの分野で大きく成長してきました。事業の柱は大きく四つ。オートローン(自動車購入の際の分割払い)やショッピングクレジットなどの「個品割賦」、クレジットカードやカード融資などの「カード・融資」、金融機関と提携して個人向け融資を保証する「銀行保証」、そして家賃保証や売掛金決済保証などの「決済・保証」です。こうしたサービスの加盟店は全国で79万店。当社は47都道府県に営業拠点があるのが強みです。

 

── オートローンは業界トップシェアですね。

 

河野 特に中古車市場では、日本中古自動車販売協会連合会と二人三脚で市場を作ってきました。ただ、その歴史的背景があるからとおごっていてはダメで、常にお客さまの視点に立って新しいサービスを作っていかなくてはなりません。月々の支払い金額や支払い回数をお客さまが自由に設定できる「ニューバジェットローン」を開発し、浸透してきたのがその例です。また、(モノを持たずに貸し借りする)シェアリング・エコノミーが広がっていく中で、(個人向けに車をリースする)オートリース事業も伸びています。

 

── クレジットカードはどうですか。

 

河野 家電量販店などとの提携カードを中心に発展してきましたが、現在力を入れているのは当社独自のカード「オリコカード ザ ポイント」です。高還元率(1%)で、ポストペイ(後払い)型の電子マネーも搭載するなど、商品性は高いと自負しています。今年1月からは、みずほ銀行の会員向け特典サービス「みずほマイレージクラブ」も受けられるカードを、みずほ銀行の窓口でも販売してもらえるようになりました。

 

── 銀行保証や決済・保証事業の特徴は。

 

河野 銀行保証の残高は1兆4000億円くらいあり、これも国内でトップ。全国の地方銀行や信用金庫、信用組合などとまんべんなく取引があります。地域金融機関との対話を重視しながら関係を築いてきた結果です。決済保証は比較的新しい業務で、特に伸びているのが家賃保証。高齢者を含め単身世帯が増え、(個人の連帯保証人が付けにくくなる)民法改正もあって、我々のような保証会社を付ける流れです。

 

 貸金業法(当時は貸金業規制法)改正の影響で、2007年3月期連結決算が4613億円の最終(当期)赤字となったオリエントコーポレーション(オリコ)。債務者が払いすぎた過払い金利息の返還請求に備え、引当金繰入額を特別損失として計上したことなどが理由だったが、17年3月期連結決算は営業収益が2136億円、最終利益が286億円と2期連続の増収増益に。11期ぶりに普通配当2円も実現した。

 

── 復配も実現しましたね。

 

河野 大幅な赤字決算からちょうど10年。緻密な収益管理やコスト構造改革を進め、安定的な収益体質になってきました。復配は株主に喜んでもらえたと思っています。これまでは再生のステージでしたが、これから新しい攻めのステージに移っていきます。

 

 ◇フィンテック情報収集

 

── 日本は現金志向が強い社会と言われ、クレジットカードが使えない店舗も少なくありませんでした。

 

河野 店舗側の意識はだいぶ変わりつつあります。通販などインターネット決済も急激に広がっており、いまやカードが使えないとビジネスができません。政府の「未来投資戦略2017」でもキャッシュレス化の推進が盛り込まれました。20年の東京五輪・パラリンピックもあり、外国人観光客のさらなる増加に向け、カードが使えるインフラを整えるのは国家戦略です。

 

── セキュリティーはどうですか。

 

河野 キャッシュレス化に向けては、データを読み取られるんじゃないかという利用者の不安を解消することが大事。我々はスマートフォンを使った非接触型の決済にはそれなりの技術を持っていると自負しています。さらには、フィンテック(ITと金融の融合)の時代ですから、新しい発想が必要です。昨年12月には米ベンチャーキャピタルと、新規事業開発を目的とするパートナーシップ契約を結ぶなど、情報収集や研究も進めています。

 

── 過払い金の返還の状況と、13年に発覚した暴力団融資問題の再発防止の取り組みは。

 

河野 過払い金の返還は予想よりも減り方が鈍いですが、利息制限法を超える利息の融資残高は10年6月にゼロになり、かなり時間が経過しています。今後は減っていくのは間違いありません。また、暴力団融資問題に対しては、コンプライアンス(法令順守)の強化を含め力を入れて再発防止の取り組みをしています。これには自信があります。

 

── 社長就任2年目です。これからどんな会社にしたいですか。

 

河野 これまで厳しい時代を過ごしてきましたが、これからは社会から評価されて株価もさらに上げていかなければなりません。「お客さまの豊かな人生の実現を通じて社会に貢献する」という企業理念を目指し、さらにお客さまの利便性を追求していきたいと思っています。

(構成=桐山友一・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 1990年代、銀行で人事と企画を担当していました。バブル崩壊から金融危機の足音が聞こえていた時代です。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A トム・ピーターズ、ロバート・ウォータマン『エクセレント・カンパニー』です。20代で最初に触れて以降、私の会社人としての原点です。時代は変われど、普遍的な真理が語られていると思います。

 

Q 休日の過ごし方

 

A ジョギングとジムで体をいじめています。52歳が初マラソンで、これまでフルマラソンを16回完走しました。

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 ■人物略歴

 ◇こうの・まさあき

 1957年生まれ。広島県出身。広島大学付属高校、東京大学経済学部卒業。79年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。みずほ銀行副頭取、みずほコーポレート銀行副頭取、みずほフィナンシャルグループ副社長などを経て、2016年6月から現職。60歳。

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事業内容:個品割賦、カード・融資、銀行保証

本社所在地:東京都千代田区

創業:1954年

資本金:1500億円

従業員数:3658人(2017年3月現在、単体)

業績(17年3月期、連結)

 営業収益:2136億円

 営業利益:335億円

2017年

7月

25日

難題に挑戦し技術に磨き 金川千尋 信越化学工業会長

◇難題に挑戦し技術に磨き 塩ビで世界トップ

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 会社を代表する製品は何でしょうか。

 

金川 塩化ビニール(塩ビ)です。使われる量が最も多いのはインフラです。窓枠や建物外壁などの建材や上下水道のパイプに使われ、生活や社会を支えています。私たちの身の回りでも、電線の被覆、車シートやソファのカバーなどに使われます。

 

── 塩ビの世界シェア1位とうかがっています。

 

金川 当社は1992年から塩ビでシェア世界一です。

 

── 塩ビはどこで製造しているのですか。

 

金川 米国の子会社「シンテック」が塩ビ事業の中心で、同国内に三つの製造拠点があります。同社は年間295万トンを生産する世界最大の塩ビメーカーです。これは、日本全体の需要の約3倍に匹敵します。シンテックに加えて、日本、オランダ、ポルトガルでも製造しています。

 

── 米国に重点を置く理由は。

 

金川 塩ビの大きな需要があり、かつ需要が安定していることが理由です。また、塩ビの主要原料は塩素とエチレンですが、米国では両方とも自国内で調達できます。電気代もシンテックの工場があるルイジアナ州では日本の半分以下であり、コスト競争力のある製品を作ることができます。日本で製造しようとするとすべての原料を輸入しなければならず、運送コストもかかります。

 

 ◇米でエチレン製造へ

 

── 原料の調達で大きなプロジェクトを進めているそうですね。

 

金川 現在、米国のルイジアナ州でエチレンの製造工場を建設中です。塩ビの主原料の一つであるエチレンの安定調達のための投資で、2018年半ばの完成を見込んでいます。日本の企業が米国でエチレン工場を建設するのは初めてです。

 

── エチレンの安定調達とは。

 

金川 現在、当社はエチレンをすべて外部から調達しています。これでは、エチレンメーカーや物流網のトラブルで供給が滞ったり、価格の上昇の影響を大きく受けるリスクがあります。自社で必要なエチレンの約半分を製造することで、リスクを減らせます。

 

── 半導体メーカーにシリコンウエハーを供給しています。

 

金川 シリコンウエハーも世界シェア30%で1位です。半導体業界は活況なので需要は旺盛です。

 

── ウエハーは10年ほど前から供給過剰の状態が続いていましたが、現在は需給が逼迫(ひっぱく)しています。価格政策を聞かせてください。

 

金川 ようやく需要が供給を上回り、今年の初めより一部「値戻し」を実現できています。今後の需要増に対応するためにも、更なる価格是正は必要と思います。

 

── 世界シェア1位の商品が複数あるのですね。

 

金川 五輪で金メダルを獲得するのは大変ですが、2大会連続で金メダルを取るのはさらに難しいことです。事業も同じです。重要なのは技術力です。現在の塩ビの生産性を大幅に伸ばすことができたのは、当社の技術者の努力のたまものです。「モノは売っても技術は売らない」というのが、私の信念です。

 

── 技術力が売り物なのですね。

 

金川 シンテックは、工場を建設する際には技術者と、グループのエンジニアリング会社が設計から建設工事の監督まで行っています。化学工場を建設し、安全に立ち上げるのは容易ではありません。しかし、難題に挑戦することで、当社の技術者は経験を積み、自信を持つようになります。この積み重ねが今日の強みである技術力を磨き上げてきました。

 

── 化学工場の設備投資額は莫大(ばくだい)です。投資の判断はどのようにしてきたのですか。

 

金川 設備投資の基本は「販売先行」です。製造したモノを売れる自信がなければ設備投資に踏み込めません。塩ビの設備は大きな投資が必要になりますから、慎重な判断が必要です。シンテックの工場が稼働を始めたのは1974年です。シンテックは私が企画、立案して生まれた会社です。私は「塩ビはすぐれた素材であり、確実に需要が増える」という確信があり、その確信は今日まで変わりません。

 

── それでも社内で議論があったのでは。

 

金川 確かに社内で異論もありましたが、当時の小田切新太郎社長が私を信じてご承認いただき、シンテックの事業を任せてくださいました。小田切さんのご決断のおかげで今日のシンテックがあります。心から感謝しています。

 

── 社長就任から27年、経営者として人材育成をどのように進めてきましたか。

 

金川 社員に「常在戦場」の心構えが大切と言っています。当社の製品の多くが市況の影響を受けます。市況の良い時ほど、悪化した時のことを考えていなければなりません。また、私が尊敬する山本五十六連合艦隊司令長官は「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ」と語ったそうです。人を動かし育てる要諦は、まず自分でやってみせることに尽きます。

 

── 社長就任後も苦労は絶えなかったのでは。

 

金川 市況の波に直面しても日々やるべきことを実行して、一つ一つ乗り越えてきました。毎日欠かさず、数々のデータを分析して、課題に対処すべく考え続けることが大切です。

(構成=種市房子・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 極東物産で合金鉄の営業などをしていました。モノ作りに魅力を感じて35歳で信越化学へ転職しました。市場開拓のために世界を飛び回りました。

 

Q 「私を変えた本」は

A 『山本五十六』(阿川弘之著)です。山本長官は米国の国力を冷静にみきわめて、右翼に命を狙われながらも最後まで開戦に反対されました。山本長官の先見性と人柄に尊敬の念を抱くようになりました。

 

Q 休日の過ごし方

A 自宅の庭を訪れる鳥や、庭の花をながめて、くつろいでいます。体を休めて英気を養っています。

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 ■人物略歴

 ◇かながわ・ちひろ

 朝鮮・大邱(テグ)出身。旧制第六高校を経て1950年、東京大学法学部卒、極東物産(現三井物産)入社。62年信越化学工業入社、78年米子会社「シンテック」社長。90年、シンテック社長と兼務で信越化学工業社長に就任。2010年から現職。91歳。

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事業内容:総合化学

本社所在地:東京都千代田区

設立:1926年

資本金:1194億円

従業員数:1万9206人(2017年4月現在、連結)

業績(17年3月期連結)

 売上高:1兆2374億円

 営業利益:2386億円

2017年

7月

18日

半歩先の新技術で企業を支援する 根元浩幸 クレスコ社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── サービスの柱は何ですか。

 

根元 BtoB(企業向け)のビジネス系ソフトウエアと組み込みソフトです。比率はビジネス系が8に対し、組み込みが2です。ビジネス系ソフトの半分は銀行や保険会社など金融向けが占めます。残り半分は、物流、旅行、人材、サービス、公共事業など多様な業種が顧客です。一方、組み込みソフトはスマートフォン、デジタルカメラ向けが多いです。

 

 クレスコは顧客ごとに最適なIT(情報技術)システムを構築し提供する「システムインテグレーター」だ。創業は1988年、朝日ビジネスコンサルタント(現・富士ソフト)から独立したベンチャー2社が合併して誕生。当時は汎用(はんよう)コンピューター上で動くミドルソフトウエア(制御系ソフト)やカーオーディオなどへの組み込みソフトから出発したが、IT市場拡大の波に乗り事業規模を広げた。現在はIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)など新技術も得意としている。社名はラテン語で「成長する」の意。

 

── 足元の業績は。

 

根元 ここ数年は増収増益傾向です。日本企業のIT投資は増えています。製造業も「金型よりもソフト」と意識が変わりました。「RPA(ロボットによる業務自動化)」関係のソフトの需要も増えています。

 

── 会社の強みは。

 

根元 新しい技術分野に飛び込める文化があることです。チャレンジ精神とも言えます。AI、IoT、クラウドといった新しい技術に、同業他社より1、2年先に取り組んできました。ここ数年は先端技術研究・開発活動の支援と促進を目指した「技術研究所」を社内に設置し、その成果を実際のビジネスへ導入・運用するための「先端技術事業部」を発足させました。

 

── AIの導入事例は。

 

根元 人材派遣会社フォーラムエンジニアリング向けに、IBMのAI「Watson(ワトソン)」を活用した人材マッチングシステムを構築しました。

 人材業界では雇用のミスマッチ解消が課題です。そこで、企業の求人情報と求職者のさまざまなデータをAIに学習させ、最適な組み合わせを探す仕組みを作りました。このシステムは、ワトソンの活用事例のうち、世界で十指に入る成功例としてIBMから認定されました。

 

── 新技術で先行できる理由は。

 

根元 顧客のビジネスの知識を持つことと、新技術に強い企業や研究機関との連携が重要です。例えば、当社はフォーラムエンジニアリングと10年以上の取引実績があり、同社の業務を熟知しています。それがなければAIの使い道も見いだせません。さらにIBMの営業担当も連れて行って顧客が必要とするシステムをトータルで提供しました。ビジネスの仕掛けづくりは、システムインテグレーターが活躍できる領域です。

 

 最近はオープンソース(無償)のAIを使い、目の病気を早期発見するための画像診断システムを、名古屋市立大と共同開発しました。網膜には目の病気の兆候が表れます。熟練の医師でないと診断が難しいのですが、同システムは網膜の中心を撮影した大量の画像をAIに学習させることで病気の兆候を高い確率で見つけ、眼科医の診断を補助します。今後は制度的な課題をクリアし、早期の商用化を目指します。

 

 ◇トップの顔を見せる

 

── IT分野で信頼を得るには。

 

根元 新技術と既存の古い技術、両面で確実に仕事をやり遂げることです。例えば金融系や航空系のシステムは品質問題が起きると社会的な影響が大きいので、古くても安定したシステムで動かします。これらのビジネスは地味ですが重要です。

 また、私は特別な用事がなくても顧客を訪れ、当社の考え方を自分の口から直接伝えるようにしています。トップの顔を見せると大きな仕事も安心して任せてもらえます。

 もう一つは、年間約800プロジェクトの月次業務報告書に目を通し、現場の状況把握に努めています。報告書は、問題の原因や顧客の課題を知る有用な情報ソースです。

 

── M&A(合併・買収)は。

 

根元 IT企業に限定して行っています。2016年9月にJAグループ傘下の農協観光のシステム子会社「エヌシステム」を買収しました。旅行業界向けのIT市場はパイが大きいとは言えませんが、同社を買収したことで専門性が高まりました。

 M&Aを行った後は、シナジー(相乗効果)を高めグループ全体の価値を上げる必要があります。例えば、現在10社ある子会社から、「AIで何かやりたい」といった声が上がることもあります。そこでグループ事業推進本部の下で横断的に研究・開発する仕組みを整えました。

 

── 人材確保はどうですか。

 

根元 人手不足で人材の採用は苦戦しています。そこで海外にも目を向け、数年前からベトナムの企業に仕事を出しています。これが定着してきたので4月に駐在員事務所を設置しました。うまくいけば支店や現地法人をつくることも可能です。

 

── 今後の成長に向けた施策は。

 

根元 顧客が注目している分野で、多様なサービスを出し続けることです。これは新規顧客の開拓につながります。大手企業の多くは発注するIT企業が決まっています。そこに参戦するには、他社ができないものを提供しなければなりません。そのために地道な努力を重ね、常に半歩進んだITサービスを提供したいです。

(構成=大堀達也・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A ソフト開発のプロジェクトマネジャーでした。いわゆる「モーレツ社員」で、家に帰らず仮眠室に寝泊まりしたことも度々でした。現場の苦労はよく分かります。

 

Q 「私を変えた本」は

A よく読むのは司馬遼太郎です。『翔ぶが如く』や『峠』で描かれた人間模様に引かれます。

 

Q 休日の過ごし方

A 顧客とのゴルフや、ウオーキングを楽しんでいます。

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 ■人物略歴

 ◇ねもと・ひろゆき

 1960年生まれ。北海道立苫小牧東高校、北海道大学大学院卒業後、84年朝日ビジネスコンサルタント(現・富士ソフト)入社。87年メディアリサーチ入社。88年クレスコ入社、2006年取締役。常務取締役などを経て14年4月社長就任。57歳。

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事業内容:ソフトウエア開発

本社所在地:東京都港区

設立:1988年

資本金:25億1487万円(連結)

従業員数:1904人(連結)

業績(2017年3月期・連結)

 売上高:308億9300万円

 営業利益:27億700万円

2017年

7月

11日

技術者を正社員雇用して派遣し急成長 若山陽一 UTグループ社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どんな事業をしているのですか。

 

若山 当社が正社員として雇用した技術社員を半導体を中心に、電機、自動車、建設などの工場や現場に派遣する事業です。常時1万6000人を派遣しており、7割が正社員です。残り3割は、勤務場所などの関係でその地位を選んだ非正規社員です。派遣先の中核は半導体産業です。

 

── 正社員派遣とは珍しいビジネスモデルですね。

 

若山 派遣に対する世間一般のイメージは「不安定」「有期雇用」などでしょう。当社は違いますが、大多数は、派遣期間は3カ月で、契約更新時に次の契約の給料を決めるというモデルです。一般には派遣社員の給料は、派遣先と派遣会社の間の契約に合わせて決まる。職歴の連続性など加味されていません。これでは、派遣社員は常に3カ月先のことなど考えられない状態です。派遣という働き方が増えていく中で、派遣される技術社員に安心・つながり・成長を提供する会社でありたいと考えました。安心の一つの形として正社員として雇用しています。

 

── 正社員派遣によって、派遣社員にはどのようなメリットがあるのですか。

 

若山 給料が、派遣先と派遣会社の契約に左右されるのではなく、当社の賃金体系によって社員が持っている技術を評価して給与を決めることです。当社の理念は「派遣社員がお客様」です。技術社員に当社を活用してキャリアを形成してもらい、可能性を広げるのに資することに存在意義があると思っています。

 

 ◇半導体への派遣が中核

 

── なぜ半導体への派遣を中核としているのですか。

 

若山 1995年に創業して以来売り上げが伸びていましたが、2001年にITバブル崩壊の影響もあり、初めて減収となりました。競合の大きな派遣会社と同じことをしていては、生き残れないと感じました。当時『ビジョナリーカンパニー2』(ジム・コリンズ)を読み、この会社の使命をきちんと決めようと決意しました。未来永劫(えいごう)社員が納得して働ける会社を作ろうと、当時の社員36人と1年間議論したのです。その議論の中で「チーム派遣の需要があり、高い技術力が求められる分野が、当社の事業戦略にかなう」という結論になりました。その分野にあてはまる事業が半導体だったのです。

 

── どのように半導体派遣事業を立ち上げたのですか。

 

若山 当時は米国系半導体メーカーのリストラがあり、30人を採用しました。彼らに半導体に必要な営業資料や教育資料を作成してもらい、会社の仕組みを変えました。それが今日の当社の中核となっています。

 

── その経験が現在に生かされているのですね。

 

若山 あの危機は、ビジネスや会社の根幹を考えるいい機会になりました。自分たちの価値観を発見したことで、一気に会社が動き出しました。その2年後にはJASDAQに上場し、現在は東証1部上場を目指しています。大きな変化は、絶対的なビジネスチャンスと言えます。

 

── いつごろから正社員派遣モデルを描いていたのですか。

 

若山 大学時代からインターンで派遣会社に勤め、24歳で起業し機械設計の技術者派遣を始めました。ただ、当時から正社員派遣を思い描いていたのではありません。さまざまな派遣社員とかかわる中、派遣社員の生活基盤を良くする会社でありたいという思いが積み上がった結果です。

 

── 正社員派遣は人件費がかかるのでは。

 

若山 当社は働きがいを通じて離職率の低さを実現しています。また、1人ではなく、平均で30人単位、多いと500人、1000人規模のチームで社員を派遣する「チーム派遣」の形を取っており、生産性は高いです。これらの付加価値を提供しているコストを、お客様が必要とされているので、経営の圧迫要因にはなりません。

 

── チーム派遣とは珍しいですね。

 

若山 プロフェッショナルが1人で派遣されて「絶対にこの仕事を遂行する」という欧米型モデルの派遣は日本人に合っていません。また、もの作りはチームで仕事をするものです。チームの力で学び教え合い、生産性を向上してきたのが日本なのです。また、1人で派遣されると、現場で誰が上司なのか同僚なのか分からない中、不安定な気持ちで働くことになるからです。体系だったチームで派遣することで、このような問題に対処できます。派遣先のお客様にも、労務管理が効率よくなるというメリットがあります。

 

── 国内で人手不足が深刻化しています。派遣社員確保に影響は。

 

若山 当社では月間300人の純増を達成しています。ポイントは、派遣先のお客様が良い条件を示してくれる仕事を確保することです。その条件とは、契約期間が長くて、派遣社員の受け入れ数が多く、派遣単価が高いという三つです。当社の希望条件を理解してくれて、職場環境も整備されている派遣先というと、自然に大企業になるのです。当社の顧客に日本を代表する企業が多いのもこのような理由からです。

 

── 具体的な派遣先は。

 

若山 日立製作所グループやトヨタ自動車、東京エレクトロンなどです。売り上げベースで、半分が半導体・電子部品、25%が電池・環境エネルギー、自動車関連が16%です。

(構成=種市房子・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 32歳で上場しました。24歳での起業以来、社員・顧客と直接顔を合わせる人と仕事をしてきましたが、直接顔を合わせない株主の方々に対して客観性と一貫性をもって会社の説明をできるように意識が変わりました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 絵本の『スイミー』(レオ・レオニ)です。チーム派遣にも通ずるものがあり、2000~3000冊買っていろいろな人に配りました。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 昨年生まれた息子を風呂に入れたり、一緒に遊んでいます。

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 ■人物略歴

 ◇わかやま・よういち

 1971年生まれ、愛媛県出身。日本大学を中退後、人材派遣会社に勤務。1995年に前身のエイムシーアイシーを設立。2007年、ユナイテッド・テクノロジー・ホールディングスとしてグループ持ち株会社設立。15年に現在の社名に変更。46歳。

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事業内容:製造、設計開発、建設分野などの正社員派遣事業

本社所在地:東京都品川区

設立:2007年

資本金:5億円

従業員数:1万6118人(17年3月現在)

業績(17年3月期)

 売上高:575億8800万円

 営業利益:34億1300万円

2017年

7月

04日

自販機網を生活者のインフラに変える 高松富也 ダイドーグループホールディングス社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── ダイドーと言えば缶コーヒーで有名です。

 

高松 当社は、祖父の高松富男が、戦後すぐに奈良県で置き薬の販売を始めたことが創業のきっかけです。1956年に大同薬品(現大同薬品工業)を設立後、医薬品の製造・販売を行ってきましたが、70年代に入って新規事業として飲料事業を開始、これが現在のダイドードリンコです。当時缶コーヒーが世の中に出始めた頃で、当社も初の缶コーヒー「ダイドーブレンド」を発売しました。現在まで続くロングセラー商品となっています。その後自販機で飲料の販売を開始して以降、自販機を中心に販路を広げてきました。

 

── ロングセラーの秘訣(ひけつ)は。

 

高松 ダイドーブレンドを開発した当時から、香料を使わず多種多様な豆を多く使用して、いかに本物の味わいを再現するかにこだわり続けてきました。常に焙煎(ばいせん)メーカーから情報を収集し、世界中から良い豆を買い付けています。

 

── 費用もかさむのでは。

 

高松 当社の強みとして、製造工場を持たないファブレス(外部の協力企業に委託)方式で長く運営していることがあります。設備投資に莫大(ばくだい)なコストをかけることがないため、製品開発と自販機の展開に経営資源を集中できるのです。

 

── 事業の柱を教えてください。

 

高松 当社の事業ポートフォリオは、売上高で国内飲料事業が75%、海外飲料事業が10%、医薬品の受託製造を行う大同薬品工業が5%、食品関連事業のたらみが10%となっており、国内飲料事業では約8割が自販機の売り上げです。

 足元では、当社の主力商品のボトル缶コーヒー「世界一のバリスタ」や、当社初の機能性表示食品「大人のカロリミット はとむぎブレンド茶」の売れ行きが好調で、2017年2~4月期の連結決算の売上高は、前年同期比1・9%増の389億円と堅調に推移しています。

 

── 海外展開は。

 

高松 海外飲料事業は、現在トルコ、マレーシア、ロシア、中国に展開しています。特に売り上げに貢献しているのは、昨年トルコの食品大手ユルドゥズ・ホールディングス(HD)から買収した飲料事業です。現状は、ユルドゥズHDの商品を基本に展開していますが、既に現地で販売する缶コーヒー開発も進めており、いずれは新商品を発売する予定です。

 

── 他の地域では。

 

高松 ロシアでも、日本から輸入した自販機を約600台展開していますが、現地での評判は良く、引き合いも強い。今後は、これらの海外事業を、いかにスピード感を持って拡大していけるかが勝負です。いずれは、海外飲料事業の比率を国内と同規模に引き上げていきたいです。

 

── 医薬品事業の状況は。

 

高松 大同薬品工業は、ドリンク剤の受託製造市場で6割のシェアを占める収益性の高い事業です。足元では、主に中国を中心としたアジア市場での美容ドリンクの受注が好調です。ドリンク剤市場は全体的に縮小傾向にありますが、今後もアジア市場での需要は底堅いことや、受注元の製薬メーカーは、基本的に製造部門を外部に委託する傾向が高いことから、現在稼働している奈良工場に加えて、新たに群馬県に新工場を建設することを決定しました。

 

 ◇IoT自販機を本格展開

 

── 昨年、キリンビバレッジと自販機事業で提携しました。狙いは。

 

高松 両社の主力商品をお互いの自販機網で相互販売し、販路を広げることでお客様との接点を増やし、自販機の収益向上や商品のブランド力を強化する狙いがあります。当社からは、「世界一のバリスタ」シリーズの2品を採用いただきました。

 また、自販機の設置に関しては、当社は地方に強いのですが、キリンさんは都市部が強い。その点を補う意味でも、キリンさんとは良い補完関係を構築できたと思います。

 

── 競争が激しい飲料業界で、今後どんな戦略がありますか。

 

高松 現在、国内に設置している約28万台の全国的な自販機網は、当社の最大の強みです。これを活用し、人々の生活インフラとなれるIoT(モノとモノのインターネット)自販機の展開を計画しています。

 

── 具体的には。

 

高松 例えば、自販機に通信機器を搭載し、個人のスマートフォン(スマホ)とつながることで、付近のお店の情報を受け取ったり、高齢者の見守りサービスなど自治体のお手伝いをすることもできます。既に、商品を購入した方のスマホにポイントを付与するサービスも開始しており、こうしたサービスが広がれば、自販機の価値向上につながり、当社独自の事業展開ができるはずです。現在は2万台程度ですが、将来的には15万台のIoT自販機を本格展開する予定です。

 

── 14年度に開始した5カ年の中期経営計画は今年で4年目です。進展は。

 

高松 中計では、四つのチャレンジを掲げました。(1)既存事業の成長(2)商品力強化(3)海外展開による市場拡大(4)新たな事業基盤の確立です。18年度までに売上高2000億円を目標としていますが、17年度の通期売上高の見通しは1755億円。目標達成には、M&Aによる新たな収益の柱の確立が不可欠です。

 イメージとしては、医薬品事業において、製品の製造に強みを持つ企業や、予防医薬の市場が拡大しているので、サプリメントなどの医薬品と食品の間の領域でも検討しています。

(構成=荒木宏香・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 30代前半は、自販機の開拓営業で現場を学び、30代後半で副社長に就任し、経営を見るようになりました。大阪と東京を週に2~3回往復する生活でしたが、仕事は楽しく、30代を通して良い経験ができました。

 

Q 「私を変えた本」は

A ビジネス書の『ビジョナリーカンパニー 2 飛躍の法則』(ジム・コリンズ著)です。折に触れて読み返す、指針のような本です。

 

Q 休日の過ごし方

A 2~3年前からランニングを始めました。週2回、1日10キロほど走ります。

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 ■人物略歴

 ◇たかまつ・とみや

 1976年奈良県生まれ。大阪星光学院高校、京都大学経済学部卒業。2001年、三洋電機入社。04年ダイドードリンコ入社。08年取締役、12年副社長を経て、14年から現職。

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事業内容:清涼飲料等の製造・販売

本社所在地:大阪市北区

設立:1975年1月

資本金:19億2400万円

従業員数:3602人(2017年1月時点、連結)

業績(16年度連結)

 売上高:1714億円

 営業利益:38億円

 

2017年

6月

20日

「生活を下支えする便利な存在に」 竹増貞信 ローソン社長 2017年6月20日号

◇生活を下支えする便利な存在に

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── コンビニエンスストアは年々進化しています。

 

竹増 かつてコンビニは「しょうゆが切れた」「マヨネーズがない」という場合の緊急購買の場でした。お客様も「少し高いけど、緊急だから仕方がないか」という気持ちがあったのでは。今は、毎日足を運んでくれるお客様も多く、夕方や夜間の来店も増えています。ローソンは日常で使っていただける店を目指し、卵や牛乳などの食品、調味料、日用品等の約90品目を、スーパーマーケットやドラッグストア等の市場動向に合わせて、価格を見直しています。

 

── 目指すべきコンビニの姿は。

 

竹増 コンビニでは、物販以外にも、公共料金支払いや、ATM(現金自動受払機)などを通じてとても大きな額のマネーが通過します。これは、金融を介してさまざまなサービスを提供できることを意味します。金融に限ったことではありません。ローソンでは、一部の地方自治体の住民票交付も手がけています。金融や行政も合わせることで「ローソンは便利だね、効率的だね」「ローソンにさえ寄れば何でもできる」と言われる店を目指します。そうすることで、生活を全て下支えするような存在になれるのではないでしょうか。

 

── 2017年度(18年2月期)の経営計画は。

 

竹増 連結営業利益は前年比52億円減の685億円と計画しています。前の期まで14年連続増益でしたが、減益計画となっています。これは、本業のコンビニエンス事業では60億円の増収を見込む一方で、(1)POS(販売時点情報管理)などのシステム更新(2)金融やヘルスケアなどの新規事業(3)業務提携先のセーブオン・スリーエフからの看板替え、などの成長分野への投資を積み増すからです。本業の商売力は弱めずに、将来の投資をしっかりする足場固めの期間と位置づけます。

 

── 新規事業のうち金融事業の進捗(しんちょく)は。

 

竹増 現在は銀行免許は持たずに、共同ATMを管理・運営しています。次のチャンレンジは、この基盤をベースに銀行免許を持った金融ビジネスに参入することです。現在、ローソンバンク設立準備株式会社を設置して、関係当局の許認可等を前提に、銀行の設立準備を進めています。

 

── 日販(1店当たりの1日当たり売上高)はセブン─イレブン65万円に対して、54万円にとどまります。

 

竹増 留意しなければいけないのは、都心のど真ん中にある店舗は、日販が高いが、家賃も高いことです。ただ、セブンさんの粗利益率は高い。見習わないといけません。

 

── 店舗数では「セブン─イレブン」「ユニー・ファミリーマート」に次いで3位です。17年度の出店計画は。

 

竹増 出店1400店、閉店500店を見込みます。出店1400店の内訳は、提携先の「スリーエフ」「セーブオン」店舗の看板替え400店▽通常出店1000店です。

 

── ずいぶん多いですね。

 

竹増 16年度の出店実績は1055店でしたから前年比増です。かつて、大量出店を試みてうまくいかなかったことがあります。しかし、今回は「前始末(まえしまつ)」をきちんとしており、過去の失敗とは違うという感触があります。加盟店やオーナーには本部から「スーパーバイザー」が派遣されて、在庫管理や接客などの経営指導に当たります。このスーパーバイザーを、数年前の採用段階からある程度の人数を採用して育ててきました。

 

 ◇商事と生産性を向上

 

── 今年2月に、三菱商事がローソンを完全子会社化しました。

 

竹増 完全子会社化のメリットを出すも出さないも僕らローソン次第です。消費の最前線に立つ僕らが「今の市場はこう動いています」と確信を持って、新たなビジネス提案をしなければなりません。その時点で初めて、いかに三菱商事グループの力を活用するかという段階になります。逆に三菱商事から「こんな原料、食品があるぞ」と言われても、ローソンの感性と合わないと、原料調達から製品出荷に至るまでの「サプライチェーン」は機能しないでしょう。僕が三菱商事に入社した頃の、出資先に対する果実の取り方とは違ってきています。

 

── それ以外でのメリットは?

 

竹増 黎明(れいめい)期のコンビニは、1店舗1オーナーが基本路線でした。しかし、今のローソンは1人で複数店を担う多店舗経営型を進めています。また、物流面の効率化も課題となっています。こうした経営面や物流面での問題に対して、三菱商事と共に無駄を排除して、店の生産性を高める対策を一緒になってやっていきたいです。

 

── 5月には玉塚元一・会長兼CEOが退任しました。

 

竹増 玉塚さんは退任を明らかにした会見で「(竹増社長に権限を集中する)1頭体制の方がスピード感があっていい」と言っていました。玉塚さんはある兆しを感じていたのではないでしょうか。それは「この案件は玉塚会長に報告しようか」「この案件は竹増社長に報告するか」「いや、この案件は二人共に報告しないと」という大企業的な2頭体制への兆しです。実際にはこのような状態には陥っていませんが、玉塚さんが感じていたのはその兆しではないでしょうか。玉塚さんは別の業界に行きましたが(IT会社「ハーツユナイテッド」社長に就任予定)、これからもローソンの兄貴分だと思い続けます。

(構成=種市房子・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 3年間、三菱商事から米国の豚肉処理・加工品製造会社へCEO(最高経営責任者)補佐として出向して日本や米国向けの豚肉の生産・販売を担当しました。また、「経営とは何か?」を学びました。食肉にも詳しいですよ。

 

Q 「私を変えた本」は

A 司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』です。

 

Q 休日の過ごし方

A 趣味の釣りをして、釣った魚を刺し身やイタリアンで調理して、家族に振る舞うのが楽しみです。

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 ■人物略歴

 ◇たけます・さだのぶ

 大阪府出身。大阪教育大附属高池田校舎、大阪大経済学部卒業。1993年、三菱商事入社。グループの米国豚肉処理・加工品製造会社や三菱商事社長秘書を経て、2014年ローソン副社長。16年6月から現職。47歳。

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事業内容:コンビニエンスストア

本社所在地:東京都品川区

設立:1975年4月

資本金:585億円(2017年2月時点)

従業員数:9403人(17年2月時点、連結)

業績(16年度連結)

 経常利益:730億円

 当期利益:364億円

 

2017年

6月

13日

経営者:編集長インタビュー 小澤二郎 かどや製油社長 2017年6月13日号

◇全社でごまのスペシャリストを目指す

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── かどや製油はどんな会社ですか。

 

小澤 江戸時代の安政5(1858)年に小豆島で創業して以来、ごま一筋でやってきました。小豆島ではそうめん作りが盛んですが、そうめんをなめらかにし、栄養価を高め保存しやすくするためにごま油が用いられてきたのです。当社ではごま油をはじめとして多様なごま製品を手がけており、本社は東京にありますが、製造や開発は今も小豆島工場で一貫して行っています

 

── 独特の容器と豊かな風味で強いブランド力があります。

 

小澤 「純正ごま油」は今年、販売から50周年を迎えます。当時の社長だった私の義父が米国に出張した際、家庭用のクッキングオイルが小瓶に詰められスーパーで販売されているのを見て、「これだ!」と製品化のヒントを得ました。しかし、日本でごま油は天ぷら用など高級品のイメージが強く、当社も業務用の製造・販売が中心でしたので、まずは「家庭用ごま油」という分野をゼロから開拓しなくてはいけませんでした。

 

── ごま油は家庭でなじみが薄かったのですか。

 

小澤 販売当初は、全社員が全国の酒屋や乾物屋などを回り、当社の製品の紹介とともに、ごま油自体を家庭料理で使ってもらうことに努力しました。天ぷらの店頭実演や風味を生かしたレシピの紹介など、まずは食卓や家庭への浸透を図ったのです。発売から3年ほど経て、当時のダイエーに製品が認められて全国の店舗に置いてもらうようになると、一気に人気が広がっていきました。今年は発売50周年ということで、同じく50周年目を迎えたタカラトミー社の「リカちゃん」人形とのコラボレーション事業など記念事業を展開していく方針です。

 

── 他社の製品との違いは。

 

小澤 当社の純正ごま油は原料がごま100%です。「ごま油」と一くくりにされがちですが、大豆や菜種などの食用油とミックスした「調合ごま油」もあります。製法技術へのこだわりでは煎り方や貯蔵方法で色や風味が変わってくることを生かし、定番の「金印」、十分に煎った風味の強い黒ごまから搾った「黒ごま油」、風味を抑えた生搾りの「純白ごま油」の3種類をラインアップして、料理の用途や好みで使い分けていただき好評です。

 

── 他にどんな製品に注力されていますか。

 

小澤 ごまの健康機能に重点を置いたカプセル製品が好調です。ごまはたんぱく質やカルシウム、ビタミン、ミネラルなどを豊富に含んでいて昔から体によい食べ物とされていました。30年ほど前、当社でもごまの成分を生かしたカプセル製品を開発し売り出したことがあったのですが、当時は浸透しませんでした。近年、大手メーカーの参入でごまに含まれている成分「セサミン」が注目されるようになり、私たちも改めて独自製法で事業化しました。お客様の健康に密接に関わる分野ですから、きめ細かい製品説明や販売を心がけていまして、専用の通販部門を新たに立ち上げました。

 

── 世代を超えてごま全体に人気が出ています。

 

小澤 いろいろなごまの楽しみ方を提案するため、当社は、ごまの風味を生かした「ラー油」やペースト状にした「ねりごま」などを販売しています。営業面でも新たな市場開拓を進めており、昨年度は純白ごま油に焦点を絞り、クッキングオイル市場で浸透させるため初めて交通広告など各種メディアを用いたPR活動を行いました。当社ウェブサイト上での純白ごま油を使った料理のレシピ紹介の充実などを図った結果好評で、今期の伸びにもつながると期待しています。

 

 ◇ごまへのこだわりを大切に

 

── 足元の業績はいかがですか。

 

小澤 ごま油は家庭用、業務用ともに好調で、2017年3月期の決算では売上高、販売数量ともに前期を上回りました。外食産業向けの売り上げが伸びており、特に600グラム製品の容器を丸型ペットボトルにリニューアルして好評です。ごま食品事業も、特に業務用が好調です。

 

── 業務用ではどんな製品がありますか。

 

小澤 風味づけや薬味としてインスタントラーメンからドレッシングまで食品メーカーの活用が幅広く、主にねりごま製品が人気です。食品ごま自体にも、例えばハンバーガーの丸パン(バンズ)や菓子パン向けなどでニーズがあります。

 

── 今後の事業展開は。

 

小澤 海外での需要の高まりに注目しています。これまで米国市場が好調で、最近は中国などアジア圏からの需要が高まっています。世界的な「ごま人気」は期待できる半面、経営の視点では課題があります。ごまの需要拡大に合わせ、競合企業の増加や原料確保競争が懸念されます。ごまは日本国内でほとんど生産されておらず、輸入が頼りですが、高品質な素材をいかに確保していくか、また為替の影響などの回避もトップとしての責任です。

 

── かどや製油の将来像は。

 

小澤 実直に、お客様への感謝を忘れない姿勢が大切です。長年のファンが多く親子2代でご愛用の声も頂きます。

 全社でこれからも大切にしたいことは、ごまへの徹底したこだわりです。小豆島の製造工場を中心に社員一人一人が「ごまのスペシャリストとしてトップ企業になること」を認識してもらいたい。

(構成=河井貴之・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 大学卒業後は三菱電機の名古屋にある製作所で勤務していましたが、30代で当時のかどや製油の親会社に入って石油販売を担当。休日返上で働いていました。

 

Q 「私を変えた本」は

A 『きけ わだつみのこえ』。学生時代に初めて読んだとき、中身のすごさにショックを受けました。

 

Q 休日の過ごし方

A ゴルフです。同年代の仲間がどんどん減っていき、最近は若い世代の人とプレーすることが増えましたが楽しいです。

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 ■人物略歴

 ◇おざわ・じろう

 1937年生まれ。灘高等学校、慶応義塾大学経済学部卒業。三菱電機での勤務を経て、小澤商店(現小澤物産)に入社。80年6月かどや製油取締役に就任、2003年に代表取締役社長。79歳。

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事業内容:ごま油、食品用ごま製品の製造・販売

本社所在地:東京都品川区

創業:1858年

資本金:21億6000万円

従業員数:284人(2017年3月31日現在)

業績(17年3月期)

 売上高:285億円

 営業利益:35億8200万円

2017年

6月

06日

「社会に貢献する価値を創り続ける」楢原誠慈 東洋紡社長

◇社会に貢献する価値を創り続ける

 

 ◇Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 東洋紡はどんな会社ですか。

 

楢原 「世の中に必要なものを何とか自分たちで創って役立てていこう」との思いを持って渋沢栄一が1882年に創設した紡績会社です。絹、綿、ウール、レーヨン、合成繊維を扱う中で培ってきた技術を応用して、現在はフィルムや機能樹脂、ヘルスケア分野の製品など多様な事業を展開しています。

 

── どのような技術を活用したのでしょうか。

 

楢原 合成繊維の加工技術は奥が深く、元々の「糸」や「繊維」を、薄く広げると「フィルム」になり、ストロー状に加工すれば「膜」になります。さらに樹脂自体の改質を進めて強度や耐熱性を強化したエンジニアリング・プラスチック製品も手がけています。

 

── フィルムはどのように使われているのですか。

 

楢原 食品包装用のフィルムで、当社は日本のトップシェアを有しています。菓子やインスタントラーメンの包装、ペットボトルのラベルが主力です。最近は生鮮野菜用の鮮度を保ちつつ水分で曇らない包装フィルムも需要が高まっています。「食品用」と一くくりにすると汎用(はんよう)的に見えますが、食品や商品の特徴や用途に応じて強度や耐久性、印字性などフィルムに求められる性質や機能はさまざまです。

 

── 高機能性が強みですね。

 

楢原 異なる分野ですが、高機能性という点では、液晶画面を見やすくするための偏光板用の保護フィルム製品も急成長中です。液晶テレビの中には何枚もフィルムが入っていて光源に近い部分には「TACフィルム」という高額で特殊なものが使われてきましたが、当社はポリエステルなど汎用的な素材を使いリーズナブルな価格と高機能化を両立した製品を開発・販売しています。ユーザーからも「素材革命だ」と高く評価され、2017年3月期の売り上げは前年比で2・2倍増でした。

 

── 膜技術ではどのような製品がありますか。

 

楢原 人工透析機で用いられる医療用の膜製品が世界でシェアを伸ばしています。また、当社独自に海水淡水化装置用の膜製品を手がけています。サウジアラビアを中心に中東地域でプラント向けに事業を展開しており、640万人分の淡水製造に貢献しています。現地製造の準備を進め、新技術の実証試験にも積極的に取り組んでいます。

 

── 紡績からの事業転換にはいつ頃から取り組んできたのですか。

 

楢原 紡績業の黄金期だった1950年に、当社は売上高で日本一を記録したこともありますが、その後は海外との競争が激しくなりました。そこで、60年代から紡績技術を活用した、新しい事業分野の研究開発や市場開拓を進めてきました。95年ぐらいまでは売上高の7割を衣料繊維が占め、その他の分野が3割という事業ポートフォリオでしたが、現在はフィルムや膜などの非繊維事業分野が7割、衣料繊維が3割程度と、逆転しています。

 

── 東洋紡といえば衣料繊維で日本を代表する大手メーカーというイメージがあります。

 

楢原 ポートフォリオに占める割合は下がりましたが、国内外で高付加価値化を進めて高い評価を得ています。例えばサウジアラビアでは、男性が全身にまとう真っ白な民族衣装「カンドゥーラ」用の高級トーブ布地のトップブランドメーカーとして当社の知名度は高く、製品も人気があります。

 

── 事業転換を成し遂げたポイントは何でしょうか。

 

楢原 創業の理念である「世の中にいかに役立つか」とは、逆に言えば「お役立ち競争」に勝てない製品や事業は成り立たないということです。時代的に変わらざるをえなかったという面もありますが、意図的に変わっていこうという我々自身の意志が一番重要だと思います。

 

 ◇エアバッグ繊維で世界展開

 

── 中期計画の進展はどうですか。

 

楢原 現計画は17年度が最終年度で、海外展開の加速と新分野の開拓を2本柱にしています。特に自動車のエアバッグに使う頑丈で特殊な織物や原糸の事業展開に注力しており、海外子会社の原糸メーカー「PHPファイバーズ」の生産力も生かして、17年度下期からはグローバルな拡販体制を強化します。

 

── 将来の成長分野は。

 

楢原 環境やヘルスケア分野の事業化に重点を置いており、海外市場からの注目も高いです。具体的な製品では、神経の再生を誘導する微細なチューブ素材「ナーブリッジ」の海外展開を18年から本格化する予定で、FDA(米食品医薬品局)の承認も取得しました。当社が独自に開発した酵素を応用した血糖値の診断薬も、海外市場での拡大が期待されています。もともとは、レーヨン工場の廃液のクリーン化のために開発した酵素を、全く異なる分野で活用しました。ほかにも、衣類に組み込んで心拍数など生体情報を計測できるフィルム状の素材などを実証実験中です。

 

── どんな会社を目指しますか。

 

楢原 経営の常道としては、高品質・高機能・リーズナブルなコストのバランスがとれた製品の提供を追求していきます。トップとしては従業員のやる気を正しい方向に発揮させなくてはいけないと思います。

 渋沢栄一が掲げた経営の理想は「論語とそろばんの両立」です。社会的な責任を果たしつつ持続的な成長も遂げていくという精神を、東洋紡のDNAとして大切にしていきます。

(構成=河井貴之・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 向こう見ずでへそ曲がりな社員でしたが、会社はそれ以上に柔軟で面白かったです。経理部門で消費税導入や会計ビッグバンに追われました。

 

Q 「私を変えた本」は

A 山岡荘八の『徳川家康』。全26巻を5回以上読んでいます。

 

Q 休日の過ごし方

A ウオーキングやゴルフ。妻との買い物で、自分で運転するのも楽しみです。

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 ■人物略歴

 ◇ならはら・せいじ

 1956年生まれ。福岡県出身。ラサール高校、東京大学法学部卒業後、九州電力を経て88年東洋紡績(現東洋紡)入社。グループ経営管理部長、財務経理部長、取締役などを経て2014年4月に社長就任。16年6月に日本紡績協会会長就任。60歳。

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事業内容:フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケア、衣料繊維分野などの製造・加工・販売

本社所在地:大阪市北区

創立:1882年5月3日

資本金:517億円

従業員数:連結9827人 単体3029人(2016年9月現在)

業績(17年3月期)

 売上高:3295億円

 営業利益:233億円

2017年

5月

30日

経営者:編集長インタビュー 新田信行 第一勧業信用組合理事長

◇「人物中心」の融資で創業と地方を支援

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どんな信用組合ですか。

 

新田 東京23区内に22の支店と四つの出張所があります。預金が3300億円に対して、貸金は2400億円で、預貸率は75%と高い水準です。地域に密着した金融機関です。年間300の地域のお祭りや盆踊りに私も含めて参加しています。そのため、土日の予定が全て埋まっています。お祭りに参加するため、ポップコーン製造機や綿あめ製造機を所有しています。「お祭り組合」と言ってよいかもしれません。

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2017年

5月

23日

ライフプランナーが保険の「出口」までお付き合い 一谷昇一郎 プルデンシャル生命保険社長

◇ライフプランナーが保険の「出口」までお付き合い

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どんな生命保険会社ですか。

一谷 生命保険は目に見えないサービスを顧客に買ってもらうものです。私たちは、(1)どのような商品が良いのか顧客に基準をきちんと理解してもらい、(2)何が必要かを一緒に考え、(3)自らの意思で購入してもらっています。「入り口」である保険加入時はこの三つが一番大事です。

 また、保険が実際にサービスを提供するのは「出口」である支払時です。万が一、何かあった時に、保険金の受け取り手続きから、何千万円もの保険金が入った場合、そのお金をどう残りの生活に生かしていくのか、税金をどうやって払うのか。この出口の部分も含めてサービスを提供する必要があります。この入り口から出口までを担当するのが「ライフプランナー」です。

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2017年

5月

16日

経営者:編集長インタビュー 糸井重里 ほぼ日社長

◇「ほぼ街(まち)」を作りたい

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 コピーライターの糸井重里氏率いる「ほぼ日(にち)」が3月16日、東京証券取引所ジャスダック市場に上場した。コラムなどを集めたウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を運営する同社の売上高は約38億円。サイトでの物販が好調で、1日1ページ、24時間枠で予定を書き込める「ほぼ日手帳」は毎年60万部以上を売り上げる。

 

── ほぼ日はどんな会社ですか。

 

糸井 「場」が作りたくてできた会社です。「ほぼ日刊イトイ新聞」のサイトを立ち上げた頃から、「ほぼ街(まち)」を作ろうと思っていました。RPG(ロールプレイングゲーム)の街のように、建物に入ったらお茶を飲める場所があるとか、そういう街です。

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2017年

5月

09日

経営者:編集長インタビュー 炭井孝志 ケンコーマヨネーズ社長

◇業務用に特化 サラダ市場を創造、拡大

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 社名からは、マヨネーズ専門のメーカーを想起させます。

炭井 確かに当社は、町のお総菜屋さんにマヨネーズを供給したことに始まります。しかし、創業直後からマヨネーズを販売するだけではなく、マヨネーズを使ったメニュー提案をしていました。そして時代の流れとともに、新たな素材を見つけて商品を開発し、今は商品数3100超の業務用食品メーカーとなりました。 

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2017年

4月

25日

経営者:編集長インタビュー 木村博紀 朝日生命保険社長

◇医療・介護保険でお客さまの「生きる」をサポート

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 朝日生命はどんな会社ですか。

木村 前身の帝国生命の創業が1888(明治21)年で、来年3月に創業130周年を迎える歴史のある会社です。現在は『一人ひとりの“生きる”を支える~「お客様大好き」企業。朝日生命~』を企業ビジョンに、今後の日本市場を想定して「シニア(高齢者)」「女性」「企業経営者」を三つの戦略マーケットと位置づけ、お客さまが生きていくためのサポートをする商品やサービスを提供しています。

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2017年

4月

18日

経営者:編集長インタビュー 瀬戸健 RIZAPグループ社長

◇「人は変われる」を証明したい

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どんな会社ですか。

瀬戸 「人は変われる」という理念を信じてひた走っています。ジムのトレーナーひとりひとりに情熱が宿っている会社です。

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2017年

4月

11日

経営者:編集長インタビュー 小堀秀毅 旭化成社長

◇化学技術で多様な社会課題を解決

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 旭化成とはどのような会社ですか。

小堀 創業以来、産業構造の変化に立ち向かい、新事業に果敢に挑戦してきた企業です。現在の事業領域は、素材を扱うマテリアル、住宅、ヘルスケアの3分野です。この3分野を持つ化学会社は世界にも類がなく、ユニークな点と言えます。事業領域は広いですが、化学技術を基礎にしている点では共通しています。環境や健康などの社会課題を、化学技術で克服するという理念で事業を展開しています。

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2017年

4月

04日

経営者:編集長インタビュー 森川桂造 コスモエネルギーホールディングス社長

◇上流・下流のバランスで競争力強化

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 石油元売り業界の再編が進む中、2月21日にキグナス石油(東京都中央区)の株式2割を取得する資本業務提携契約の締結を発表した。2020年ごろからキグナスの給油所約500カ所にガソリンなどを供給する。

 

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2017年

3月

28日

経営者:編集長インタビュー 楠雄治 楽天証券社長

◇iDeCo(イデコ)とラップ口座を投資の入り口に

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どのような顧客層が多いですか。

楠 口座数は220万を突破しています。そのうち数万人がデイトレーダー(ほぼ毎日取引する利用者)で、大半は週に数回などたまに取引をする層です。預かり資産は4兆円を超え、国内インターネット専業の証券会社のなかでは2位です。

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2017年

3月

21日

経営者:編集長インタビュー 江尻義久 ハニーズホールディングス社長

◇「価値あるものを安く」日中両国で婦人服店展開

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どんな会社ですか。

江尻 カジュアル着からお出かけ着まで婦人服を10~50代の幅広い層を対象に展開しています。製造から小売りまで一貫して手がける「製造小売り(SPA)」と呼ぶ手法を用いていますので、トレンドを素早く捉え、顧客のニーズにタイムリーに応えることができる点が強みです。

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2017年

3月

14日

経営者:編集長インタビュー 新芝宏之 岡三証券グループ社長

◇「対面」「ネット」「地域」で強い証券会社に

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 会社の強みは。

新芝 2023年に創業100周年を迎える「伝統」と、ネット証券で創業10年の岡三オンライン証券という「革新」的な部分を併せ持っていることです。岡三証券グループは、対面販売を行う証券会社としては国内大手5社に次いで6番目、ネット証券としても7番目の規模です。対面とネットの両方で上位に名を連ねているのは、当社だけです。

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2017年

3月

07日

経営者:編集長インタビュー 尾賀真城 サッポロホールディングス社長

◇もう一度、ビール回帰へ

 

 ◇Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 貴社の強みは。

尾賀 サッポロラガービールのラベルには、「JAPAN'S OLDEST BRAND(日本で一番歴史あるブランド)」とあります。作り方から追求し、原材料の麦やホップを独自に品種改良して作るなど、創業時からこだわりと責任を持ち続けています。

 2003年に持ち株会社体制となり、酒類、食品・飲料、外食、不動産の4本柱で事業を展開してきました。「黒ラベル」「エビス」や、老舗ビアホールを運営する「サッポロライオン」、グループで運営する商業施設「恵比寿ガーデンプレイス」(東京・渋谷)などがわれわれの財産です。

 

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2017年

2月

28日

経営者:編集長インタビュー 丸山寿 日立化成社長

◇高機能材料ベースに1兆円企業へ

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 日立化成はどんな会社ですか。

丸山 1912年に日立製作所がモーター用の絶縁ワニス(電気の流れを遮る樹脂)を作ったのが当社の始まりで、62年に分離独立しました。一言で言えば、樹脂を混ぜたり、貼ったり、塗ったり、ひっぱったりして材料を作っている会社です。

 

── どんな製品がありますか。

丸山 例えば、当社が世界シェア約5割を持つ「ディスプレー用回路接続フィルム」という製品があります。絶縁性の樹脂の中に電気を通す粒が入ったセロハンテープのような材料で、スマートフォンで使われています。粒を通じて縦方向に電気を通し、横には逃がさない特性があるため、複数の電極を一括して取り付けることができます。

 そういった材料を、その時々の成長市場に提供してきました。現在の主力は半導体や液晶などの機能材料と、自動車部品や電池などの先端部品・システムで、利益率が高いのは前者、売り上げが安定しているのが後者です。

 

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2017年

2月

21日

経営者:編集長インタビュー 宮下直人 総合車両製作所社長

◇ステンレス車両の先駆けとして進化させる

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 会社の成り立ちから教えてください。

宮下 当社は、2012年にJR東日本が東急車輛製造を買い取って設立し、14年JR東日本新津車両製作所の車両事業を経営統合、新津事業所(新潟県)としました。JR東日本は鉄道の国内需要が人口減少で縮小するなかグローバルな展開を目指し、車両製造を第4の柱に位置づけました。

 鉄道事業が背景にあるので、例えば海外に進出する時、メンテナンスや運行、駅ナカまでパッケージとして展開することができます。その意味で社名に「総合」とつけています。

 

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2017年

2月

14日

経営者:編集長インタビュー 辻庸介 マネーフォワード社長

◇家計と企業のおカネをダイエット

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 金融とIT(情報技術)の融合である「フィンテック」を使ったベンチャー企業として注目されています。現在の事業は。

辻 主に二つあります。一つは、個人がスマートフォンで使う自動家計簿・資産管理アプリ「マネーフォワード」で、登録ユーザー数は1月に450万人を超えました。

 もう一つが、中小企業や個人事業主向けの「MFクラウド」で、会計や確定申告、経費などをインターネット上で管理するサービスです。この利用者数は、50万ユーザー(法人や個人事業主)を突破しています。

 

 

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2017年

2月

07日

経営者:編集長インタビュー 大前孝太郎 城北信用金庫理事長

◇地域創生とコミュニケーションのプロ目指す

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 城北信金はどのような金融機関ですか。

大前 若い人にチャンスがある、仕事をさせる会社です。進取の気性に富み、自分で進んで仕事をしたい人には、私が直接判断し、どんどん挑戦してもらっています。

 

── 金融業界についてどのような見方ですか。

大前 私は20年来、国内に銀行が多すぎると考える「オーバーバンキング」論者です。そのため、従来の銀行業務だけでは先行きは厳しく、金融以外のサービスを作り上げ、金融と非金融の2本柱で進んでいかないといけないと考えています。

 

── 例えば、どのような取り組みですか。

大前 一つが、昨年7月に創設した「Johoku Athlete Club」です。オリンピックを目指す7人の女子アスリートとマネジャー2人の計9人を職員として採用しています。顧客の中には、スポーツに非常に関心のある経営者や、一般でもシンパシーを感じてくれる顧客がおり、「ぜひ取引をしたい」と言ってくださいます。金利を引き下げなくても、お付き合いできる状態をなるべく作りたいと思います。

 

── なぜ、スポーツなのですか。

大前 スポーツは、経済・社会・教育的にも非常に重要な分野であり、コンテンツであると考えています。実は北区赤羽は日本オリンピック委員会の強化施設があるアマチュアスポーツのメッカです。女子バレーのスター選手が毎晩食事に来るなど、地域との接点があります。私は文部科学省に対して、アスリートのセカンドキャリアをどうするのか、企業も応分の支援をすべきだと提案していました。そこで、率先して採用したのが、クラブの始まりです。

 

── アスリート職員は、どのような仕事をしているのですか。

大前 銀行業務をしてもらうわけではありません。彼女たちには背負ってきた人生があるし、普通の人には得難い経験をしています。そこで、例えば小学校の総合学習の時間に子供たちに実技を教えたりしています。これはある種のタレント育成、プロダクション業務です。私にとって大事なのは金融そのものではなく、その機能を活用して地域を活性化することです。コンテンツは地域に資するものなら、何でも良いと考えます。

 

── 信用金庫の顧客をどのように取り込むのですか。

大前 2015年4月にポータルサイト「NACORD(ナコード)」を立ち上げました。サイバーエージェントと連携したクラウドファンディング(インターネットを活用した資金調達)機能や、マーケティング支援機能があります。中小企業のプロモーションは誰がやるのか、という問題意識からスタートしました。中小企業はものづくりは得意ですが、売るのは得手ではありません。そこで、一番身近な我々が、広告代理店的なノウハウを積んで、BtoC(企業対個人)向け商品であれば、顧客に届くような仕組みを作りました。

 

 ◇地元企業をプロデュース

 

── 具体的には、どのようなものですか。

大前 「NACORD」の特徴は、資金調達だけでなく、商品購入の場でもあることです。

 例えば、新しいレストランを開業する時に、当金庫のライターが経営者に取材し、美しい写真を撮影して、ポータルサイト上でプロデュースする。そこで、ディナー券などを販売します。台東区根岸にある老舗の洋食屋さんでは、レトルトパックのハヤシライスやローストビーフを販売し、2日間で250万円の売り上げがありました。サービスの利用は無償です。草履やげたを製造する会社なども含め、今、30社くらいが利用しています。

 

── 内閣府の官僚を経験するなど、自身の経歴もユニークです。

大前 内閣府時代に福井県鯖江市で、地元眼鏡フレーム産業の振興を手掛けました。日本の眼鏡フレームの大半は鯖江で製造し、産業集積度では他の自治体に比べて恵まれています。

 しかし、シャネル、ルイ・ヴィトンなどの欧米ブランドのOEM(受託生産)中心でやってきたので、自身のブランド力はありません。そうした中、中国企業の台頭で、どんどんOEMの仕事を奪われていきました。そこで、私は事業をいろいろと仕掛けました。

 代表例で言えば、若者向けのブランドに鯖江でファッション眼鏡を作ってもらい、ファッションショー「東京ガールズコレクション」で、鯖江製であることを公表して、ショーを行いました。モデルが身につけている眼鏡を売るのですが、1日で5000個が完売しました。まさにこの時の経験が、「NACORD」などのビジネスプロモーションの仕事につながっています。

 

── 信用金庫の常識を変えたいと。

大前 いろんな形でコミュニケーションを展開していきますが、「信用金庫」にはこだわりたいと思います。信用金庫は、地域に密着し、エンドユーザーに深く関われるコミュニケーションのプロです。最近は、北区の区長から、観光協会の立ち上げを依頼されています。12年から荒川河川敷の花火大会の実行委員長をやっていますし、今後は、都内で一番大きな音楽フェスティバルを仕掛けようかとも思っています。皆さんがよく知っているアーティストを呼ぶかもしれません。

(構成=稲留正英・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 小渕政権時代に内閣官房で、金融危機対応に追われていました。どっぷり、政策の中につかり、エキサイティングでした。

 

Q 「私を変えた本」は

A 中学の時に読んだ山崎正和さんの『藝術・変身・遊戯』が、私の何かを変えました。芸術の何たるか、という話が新鮮でした。

 

Q 休日の過ごし方

A 音楽が好きなので楽曲制作をしています。エレキギターを弾きながらフュージョン系の作品です。

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 ■人物略歴

 ◇おおまえ・こうたろう

 東京都出身。東京都開成高校、慶応義塾大学卒業。1987年住友銀行(現三井住友銀行)入行。98年内閣官房特別調査員、2001年内閣府参事官補佐、09年城北信用金庫常務理事を経て、15年6月より現職。52歳。

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事業内容:金融業

本部所在地:東京都北区

設立:1921年5月

出資金:302億円(2016年3月期)

従業員数:1988人

業績(2016年3月期)

 経常収益:393億円

 業務純益:82億円

2017年

1月

31日

経営者:編集長インタビュー 八郷隆弘 ホンダ社長

◇世界6極体制を進化させる

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 中国事業が好調です。

八郷 中国企業との合弁会社2社のラインアップを見直した成果が出ています。

 

従来は、グローバルモデルの車種を2社に割り振って販売していました。例えば、「アコード」は広汽ホンダ、「シビック」は東風ホンダが販売していましたが、私が中国生産統括責任者になった時、同じプラットフォーム(クルマの基本構成部分)で二つの車種を作り分け、効率よくラインアップを構成しようと改革を進めてきました。

 

広汽ホンダが日本で人気の小型SUV(スポーツタイプ多目的車)の「ヴェゼル」を販売し、東風ホンダもデザインを少し変えた「XR─V」を販売して人気を得ています。共有部品をまとめて買うことで生産コストを下げ、安定的に120万台を生産できる体制ができてきました。

 

 中国事業の好調は過去の教訓が生きている。2000年代、世界販売は米国頼みで「一本足打法に近かった」(八郷社長)。12年秋、販売の倍増を目指し、世界6極(日本、中国、アジア大洋州、北米、南米、欧州)で開発・生産・販売を一貫して行う「グローバル6極体制」を打ち出した。だが、各拠点の開発現場の負担が増えた結果、人気車種「フィット」のリコール問題も起きた。そこで、グローバル車の開発を強化、それを軸に地域モデルを派生させる改革を行う。その成果が世界各地でヒットした新型シビックだ。

 

── ようやく6極体制がうまく回り始めているように見えます。

八郷 地域専用車とグローバル車へのテコ入れが実を結びつつあります。6極体制の強化の結果、地域専用車は、中国ではSUV、北米ではライトトラック、日本では軽自動車と、地域の需要に合ったクルマが作れるようになりました。

 一方、グローバル車はプラットフォームやデザインを一新しました。特にシビックは前のモデルの評判がよくなかったため、世界展開できるようモデルチェンジを早めました。

 

── 今後の世界戦略は。

八郷 地域専用車を強化すると、グローバル車の派生モデルが増えるため部品数が多くなります。地域専用車の間で共有する部分を増やすなど効率化を進めます。また、グローバルの生産能力555万台に対し販売が498万台とギャップがあります。これを縮小するため、生産に余剰感がある日本と英国から米国への輸出を増やすなど、6極で連携を強化しています。これが奏功して、米国の販売は堅調です。

 ただ、16年は英国の欧州連合(EU)離脱問題や米大統領選でのトランプ氏勝利などもあり不透明感が高まっています。環境の変化を見極めて効率向上を図っていきたいです。

 

── 16年度の業績見通しは。

八郷 下期は想定為替レートを1ドル=100円にしています。新興国通貨の影響でマイナスの部分もありますが、ドル・円だけで見れば1円円安になると営業利益は年間120億円改善します。業績は上振れを見込んでいます。

 

 ◇グーグルと自動運転で提携

 

── 環境規制や自動運転という大きな変革の波にどう対応しますか。

八郷 ホンダは「二つのゼロ」を目標に掲げています。すなわち、地球環境にやさしいゼロエミッション(排ガスを全く出さない)車、交通事故ゼロを実現する自動運転です。

 ゼロエミッション車は、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)などの手法がありますが、電動化の方向を見据えて開発を進めます。

 

 一方、自動運転は、まず渋滞時や夜間の走行でドライバーの負担を軽減する運転支援から始めます。

 その先の完全自動運転は、人工知能(AI)が重要になります。AIのハードではなく、クルマをどう制御するかといったソフトの部分は、自動車メーカーとしての経験が生きるので内製化する価値があります。このためソフトエンジニアの教育にも力を入れていきます。

 

── 他社との提携やM&A(合併・買収)は。

八郷 ウィンウィンの関係が築けるなら前向きに考えたいです。これまでも技術の進展に応じて電子制御やバッテリーで優れた技術を持つ企業と提携してきました。今後はAIなど自動運転に必要な技術を持つサプライヤーと付き合っていかなければなりません。16年12月にはグーグルの子会社で自動運転開発を専門とする「Waymo(ウェイモ)」と提携しました。自動車業界は課題が多いので、必要であれば他のメーカーとの協業も考えます。

 

── 自動車以外の分野は。

八郷 15年に事業化した自家用飛行機「ホンダジェット」は長い目で大事に育てていきたいです。また、ロボット事業は、歩行補助の医療用ロボの取り組みを拡大させます。

 F1レースは、16年度の成績は苦戦したものの、着実に前進しています。勝たなくてはやる意味がないので、17年度は表彰台に立てるレベルに持っていきたいです。

 

── 大企業であるホンダを、今後どう指揮していきますか。

八郷 ホンダはモビリティーの楽しさを知る現場の人間を中心にモノづくりをしてきた会社です。人々の生活に役立つと同時に、操る喜びがあるクルマを実現するという思いを社員が共有することが大切です。

 自動運転を極めてもホンダらしいクルマができるとは思いません。クルマ離れが進む中、クルマの楽しみをどう作り上げるか、若い社員に考えさせたいです。

(構成=大堀達也・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 本田技術研究所で2代目CR―Vや米国向けオデッセイの開発に当たっていました。開発が楽しくて仕方ありませんでした。

 

Q 「私を変えた本」は

A 『孫子に経営を読む』(伊丹敬之著)は経営の勉強になるので、今も読み返しています。

 

Q 休日の過ごし方

A 気分転換のためにクルマやバイクでドライブに出かけます。

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 ■人物略歴

 ◇はちごう・たかひろ

 1959年生まれ。神奈川県立相模原高校、武蔵工業大学(現東京都市大学)卒業後、82年ホンダ入社。中国生産統括責任者、常務執行役員、専務執行役員などを経て、2015年6月社長就任。57歳。

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事業内容:四輪車、二輪車の生産・販売、金融サービス事業

本社所在地:東京都港区

設立:1948年9月

資本金:860億円(2016年3月末現在)

従業員数:連結20万8399人、単体2万2399人(16年3月末現在)

業績(16年3月期・連結)

 売上高:14兆6011億円

 営業利益:5033億円

 

 

2017年

1月

24日

経営者:編集長インタビュー 来島達夫 JR西日本社長

◇「山陰・山陽の魅力を豪華列車で発信します」

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 2015年春に北陸新幹線が金沢まで開業しました。人の流れはどう変わりましたか。

来島 初年度は東京からのお客様が予想の2倍を超え、3倍に増えました。北陸が注目され、関西から北陸への特急利用客も増えています。

 今は北陸新幹線の上越妙高から金沢までが当社の運行ですが、敦賀、そして大阪まで延伸される予定です。新幹線は保有する鉄道建設・運輸施設整備支援機構に貸付料を30年間にわたって収入から返済していくスキームで、営業努力により利用が想定を上回った分は当社の収益になります。北陸と関西、さらに山陰、山陽との交流を促進していきます。東京と大阪がつながれば東海道新幹線の代替軸にもなります。

 

── 今年6月17日には豪華寝台列車「瑞風(みずかぜ)」が走り出します。

来島 鉄道の旅の魅力を訴えるために打ち出しました。基本は1泊2日で京都・大阪と下関の間を山陰経由あるいは山陽経由で片道運行します。料金はロイヤルツインで1人当たり27万円です。2泊3日で一周するコースもあります。

 山陰、山陽の自然や歴史、食材を味わっていただきたい。立ち寄りの観光地では新たに見どころを発掘してもらっています。沿線の工芸品を車内の随所に取り入れています。沿線の魅力を発信し、瑞風以外でも訪れる機会につなげていきます。

 

── 一生に一度は乗ってみたい。

来島 より気軽に長距離の列車の旅を楽しみたいというニーズに応えるための検討も始めています。

 

── 海外展開は。

来島 国内で打つべき手はまだありますが、私たちの経験を海外で生かす道も模索してきました。15年12月にブラジルの都市鉄道事業に、出資の形で参画しました。技術協力の要素を含んでいます。ブラジルはバスとマイカーが中心で、公共交通としての鉄道は需要があります。まずはブラジルですが、今後、各国の事情を見ながら考えていきます。

 

 ◇安全を根幹に

 

── 社長就任まで4年間、福知山線列車事故ご被害者対応本部長を務めました。その経験をどう生かしますか。

来島 安全性向上は経営の根幹だと認識しています。ご遺族の方々、けがをされた方々の思いに向き合い、私自身が取り組まねばという覚悟です。乗客死傷事故ゼロを基本に据え、昨今はホームや踏切の事故を減らす指標を掲げて取り組んでいます。

 

── 事故から10年以上たつなかで、風化を防ぐ手立ては。

来島 事故後に入社した社員が1万人を超えました。事故の悲惨さを語り継ぐことはもとより、教育訓練によって技能を向上させることを意識しています。研修センター内には事故について学ぶ鉄道安全考動館があります。全社員、グループ会社も含めて事故の教訓を共有しています。

 

── 18年3月までの5年間の中期経営計画は、2年目で収益目標を達成し、計画を上方修正しました。

来島 国内需要増のほか、インバウンド(外国人旅行客)の伸びが大きく、鉄道業を中心に収益が伸びました。財務指標のみならず、安全面や事業創造の目標達成に向けて、着実に進めていきます。

 

── 次の経営計画の方向性は。

来島 当社は発足から30年がたちます。この先の30年を意識して、グループ全体が向かえるような、ありたい姿を明確にしたうえで、一定の期間の数値目標や事業戦略として組み立てたい。人口減や高齢化、過疎化がいっそう進み、厳しい環境ではありますが、成長の可能性は持っていると思っています。

 

── 鉄道とは別の事業も拡大しています。

来島 収益基盤を持続的に確たるものとする必要があります。流通、不動産を中心とした生活関連のサービス事業を重視するとともに新たな事業開拓にもチャレンジしています。

 流通では、駅ナカやホーム上の店舗をセブン─イレブンに転換し、売り上げは1・5倍近く伸びました。不動産ではエリア外にも展開して収益を底上げするため、関東で物件を持つ三菱重工業の不動産子会社に70%出資することを決めました。ホテル事業では、既存のホテルブランドとは別に、ハイクラスの宿泊特化型ホテルを大阪・梅田に建設中です。

 16年3月期の連結売り上げは鉄道業とそれ以外の比率が64対36でした。22年度には6対4まで鉄道業以外の比率を高めたいと考えています。

 

── 16年12月にベンチャーキャピタルを立ち上げました。狙いは。

来島 出資そのものが目的ではありません。技術進化が激しくなるなかで、当社の事業に生かせる技術やノウハウを開拓できればと考えています。スピーディーに動いて成果を共有するため新会社を設立しました。

 

── 鉄道以外の比重が増すなか、グループの全体像をどう描きますか。

来島 鉄道を軸にすることは変わりません。流通や不動産、ホテル事業は鉄道と親和性があります。鉄道をコアに連携する業態の集合体です。

 西日本に住む企業グループとして、地域と一緒に生きていきます。当社だけがもうかればいいというものではありません。地域があって、当社があります。西日本エリアが活性化するために、瑞風はじめ当社がお役に立てることがあると思っています。

(構成=黒崎亜弓・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A JR発足とともに30代がスタートしました。人事部勤労課の副長の立場で労働組合との窓口を3年間務めました。労使関係のルールがないなか試行錯誤でトラブルもありましたが、経験として大きかったと思います。

Q 「私を変えた本」は

A 城山三郎さんの『少しだけ、無理をして生きる』です。自然体では自分の力が伸びない。少しストレッチした目標のもとで常に自分を高めていくという趣旨の章が好きです。

Q 休日の過ごし方

A 最近はジョギングで汗を流しています。

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 ■人物略歴

 ◇きじま・たつお

 山口県出身。下関西高校、九州大学法学部卒、1978年国鉄入社。JR西日本広報室長、人事部長等を経て、2016年6月より現職。62歳。

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事業内容:運輸、流通、不動産業

本社所在地:大阪市北区

設立:1987年4月

資本金:1000億円

従業員数:4万7456人(連結)

業績(2016年3月期・連結)

 売上高:1兆4513億円

 営業利益:1815億円

2017年

1月

17日

経営者:編集長インタビュー 荻野調 財産ネット社長

◇金融投資を民主化したい

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 創業の動機を教えてください。

荻野 財産ネットはフィンテックのベンチャーですが、当社の考えるフィンテックとは「ファイナンス」と「ネットビジネス」の融合です。

 その視点で、大手銀行のネットバンキングなどを見ると、振り込み画面にしても一昔前の作りです。

 一方、アマゾンなどネット通販サイトは非常に使いやすくできています。アマゾンは客単価が数千円、粗利が1割程度、実益は数%でビジネスを回しています。客単価が数千円で回るネットビジネスのノウハウを、株式投資などで数十万円がやり取りされる金融で展開すれば、大きな利益が出せると考え創業しました。

 

 ◇株価動向の予測精度は80%

 

── ターゲット層は。

荻野 資産が3000万円から1億円の人たちです。日本に1000万世帯あり、金融資産は合計500兆円という最大のボリュームゾーンになっています。ただ、富裕層は黙っていても金融機関が寄ってくるので資産ポートフォリオを組めるのに対し、ボリュームゾーンの人々は資産を増やすために株式やFX(外国為替証拠金取引)を始めるのが一般的です。ところが、知識がなく損失を出すケースが多いのです。富裕層との間に情報格差があります。

 また、株や投資信託を買いに証券会社や銀行に行っても、他社の商品を比較検討できない上に、個人情報の提供が必要で、気軽に買えません。実際、証券会社の口座数は2300万ありますが、その多くは使われていません。

 そこで、資産を増やすための方法や有用な情報を提供し、匿名でも簡単に金融商品を比較検討できるサービスを作ることで、金融商品の敷居を低くしたいです。

 

── 具体的なサービスは。

荻野 株価・為替予報サイトの「兜予報」です。スマートフォン向けアプリケーションを含め実際に使っているアクティブユーザー数は月に3万~5万人います。

 兜予報は経済ニュースの相場への影響を可視化します。株では上場企業3000社を対象にしていますが、ニュースが株価に織り込まれるまで1時間程度かかる中小型株が中心です。機関投資家ではなくデイトレーダーに勝算がある時価総額100億~1000億円の銘柄です。

 株価の予測精度はおよそ80%に達します。その秘訣(ひけつ)は大きく二つあります。一つは、メディアや企業が発信する多数の情報のうち、株価に影響のあるもののみを抽出する、当社独自のキュレーション(情報選択)のノウハウです。ニュースの99%は株価に影響がありませんが、残り1%未満に株価を動かす情報があります。これはデイトレーダーが欲しがる情報と言えます。

 もう一つは、抽出した情報が株価にプラスとマイナスのどちらに影響するかを投票するアナリストの存在です。当社専属と外部の約20人の経験豊富なアナリストが集まると、80%以上の確率で株価の方向性を予想できるようになります。人とシステムの強みを融合したサービスです。

 

── どう収益に結びつけますか。

荻野 兜予報では、予測を提供するだけでなく、すぐに証券会社サイトに移動して実際に売買できる仕組みになっています。ユーザーが移動した時点で当社に手数料が入ります。その意味ではネット証券とは競合でなく、共存関係が築けます。

 日本にいる30万~50万人のアクティブトレーダーのうちデイトレーダーは5万人です。少なく見えますが、彼らがネット証券の7~8割の売り上げを占めています。ネット証券は大手5社で3000億円規模なので、デイトレーダーだけで2000億円の売り上げを生んでいます。仮に1万人のデイトレーダーが兜予報ユーザーになれば、中堅証券会社並みの400億円市場で課金ビジネスができることになります。

 

── 「兜予報」の他には。

荻野 2016年夏にサービスを開始した「資産の窓口」です。中流層をターゲットに長期的な資産運用を支援します。匿名性を重視し、年収、年齢、金融資産、ローン残高、株・FXでの収入、不動産の6項目を入力するだけで家計のバランスシートや貸借対照表を割り出し、そこから資産ポートフォリオの将来予測を立てます。

 資産の窓口は、トレーディングをする時間のない人や、兜予報ユーザーの受け皿にもなります。資産の窓口で投資信託の運用が選択肢に挙がったら、そこで各社の商品を比較検討できます。ユーザーが投信会社のサイトに移動したら当社に手数料が入ります。

 

── 検討中のサービスは。

荻野 兜予報のノウハウにより、株価に影響を与えるニュースが出てから、株価に織り込まれるまでのタイミングが高い精度で予測できるようになりました。これはヘッジファンドが最も欲しい情報の一つです。これを「株価織り込み時間予測エンジン」として商品化し、キュレーションによって無駄な情報を除いたデータとともにヘッジファンドに提供するサービスを開発中です。

 

── 今後の経営目標は。

荻野 17年度に単月黒字化を目指します。当社のサービスが利用されるようになれば、これまで情報を持っていた富裕層しか恩恵を受けられなかった金融商品で、日本の大半を占める中流層も資産を増やすことができるようになります。「金融投資の民主化」を実現したいです。

(構成=大堀達也・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A ソニーで数多くの新規ビジネスの立ち上げに携わった後、IT企業では一転、事業の撤退・整理を経験しました。ビジネスの「生き死に」を見たことは大きな経験です。

 

Q 「私を変えた本」は

A 小学生の時に図書館の本をほとんど読破しましたが、多くの本は古代の大哲学者から近代の作家までパターン化されていると悟りました。今は技術書しか読んでいません。

 

Q 休日の過ごし方

A 子供と一緒に料理を作るのが楽しみです。

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 ■人物略歴

 ◇おぎの・しらべ

 1973年生まれ。早稲田大学高等学院、東京大学卒業後、ハーバード大学で修士号取得。98年タイタス・コミュニケーションズ入社。ソニー、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、グリーを経て2015年に財産ネットを設立し社長に就任。

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事業内容:金融情報サービスの提供

本社所在地:東京都港区

設立:2015年3月

従業員数:25人

兜予報の月間アクティブユーザー数:3万~5万人

 

2017年

1月

10日

経営者:編集長インタビュー 磯崎功典 キリンホールディングス社長

◇ビール通じて地域活性化の一助に

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── キリンと言えば日本で知らない人はいないビールのブランドです。

磯崎 当社はビールの製造販売からスタートしましたが、目指しているのは事業を通して世の中の社会課題を解決することです。

 

たとえば、今年、ビールの主力ブランド「一番搾り」では47都道府県ごとに、ラベルや風味を変えた商品を発売しました。ビールを通して、忘れかけた古里やゆかりの地を思い出してもらい、地域の活性化に役立てたいのです。全国9工場で、47の商品を製造しています。工程上、手間もかかります。しかし、「面倒くさい、嫌だ」と言っていては、成熟市場では生き残れません。かつては、全国一律の製法で同じ商品を提供することに価値がありました。しかし、今はお客様は商品に個性を求めています。

 

── 他の取り組みは?

磯崎 健康面での取り組みもやっています。プリン体や糖質をカットした発泡酒などを発売しています。また、グループには医薬・バイオ企業「協和発酵キリン」もあり、パーキンソン病や乾癬(かんせん)向けの薬も開発販売しています。

 

── 事業別のポートフォリオは。

磯崎 営業利益で見ると、飲料・ビール・ワインなどの国内事業、ビールが中心の海外事業、医薬・バイオの3分野でそれぞれ3分の1ずつです。

 

── 2016年から3カ年の中期経営計画の初年度です。手応えは。

磯崎 中計では三つの課題を指摘しました。(1)ビール事業の収益基盤強化、(2)国内飲料・ブラジル事業など低収益事業の再生・再編、(3)医薬・バイオケミカル事業の飛躍的成長です。まずビール事業に言及しているのは、当社の元々のDNAだからです。ビール事業が盤石でないと次の手も打てません。国内をはじめ、ブラジル、豪州、フィリピン、ミャンマーなどで展開しています。

 

── 国内のビール事業の現状は。

磯崎 国内ビール消費は1994年をピークに下がり続けており、成熟市場と言えます。どこに市場があるのか、どこに市場を創るか、を考えるのが重要です。14年からはクラフトビールにも力を入れており、製品販売や飲食店運営で市場を創っています。今年10月には米国・ニューヨーク州でクラフトビールを製造する「ブルックリン・ブルワリー」との資本業務提携も公表しました。

 

── クラフトビールの魅力は。

磯崎 これまでは日本人はビールと言えば、琥珀(こはく)色の苦いタイプばかりでした。このため、若者は「ビールは苦い」と言って離れていきました。しかし、クラフトビールは製法上、ラズベリーやチョコレートなど今までなかった風味を付けることも可能です。私もキリン醸造のパクチー風味クラフトビールを飲みました。話題の素材・パクチーの風味が濃く、お勧めです。若い人は、多少高くても、こうした個性あるビールを飲んでくれます。日本では、クラフトビール消費量は、ビール類全体の1%しか占めませんがいずれは3~5%に持っていきたいです。

 

 ◇ブラジル事業は急回復

 

── 海外ビール事業では、ブラジルキリン社が不振で、15年の最終赤字の元凶となりました。

磯崎 ブラジル事業は急速な勢いで回復しています。私が15年3月に社長に就任して最初に訪問した国がブラジルです。当時のCEO(最高経営責任者)と話して「何も市場を分かっていない」と感じ、後任を外部から招きました。現CEOは市場を熟知しています。製品ラインアップは大きく変えていませんが、売り上げが伸びました。CEOが、お客様を見て何をすればいいのかを考えるという当たり前のことを、非凡なレベルで実行したからです。

 

── 国内飲料会社「キリンビバレッジ」の状況は。

磯崎 国内飲料は過当競争で、過去には営業利益率1・5%(15年実績)と厳しい状況でした。しかし、生茶のリニューアルなどが奏功して今年は5%近いところまで行きそうです。しかし、海外の飲料メーカーは10%です。5%に満足せず、さらに収益性を上げていきたいです。ただ、その目標を達成するには自社の努力だけでは困難です。他社との提携などでコストシナジーを発揮せねばなりません。コカコーラと提携も協議しており、もう一段高い収益性を目指します。

 

── 世界市場では、首位のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)が、2位のSABミラー(英国)を買収し大きな変革が起きています。海外戦略は。

磯崎 豪州は日本同様、成熟市場なのでクラフトビールの割合を増やしていきます。ミャンマーやフィリピンでは、市場の主流となっている、標準的な価格で消費も多い商品の魅力を訴えつつ、高付加価値路線のプレミアム商品も投入していきたいです。

 

── 経営で気を付けていることは。

磯崎 若手社員がおっかなびっくりになっています。何をするにもリスクはつきものです。失敗したら怒るのではなく「もういっぺんやってみろ」と言えるのがリーダーです。今年、社長直轄の事業創造部を創設しました。キリンらしくない、未来を変える事業アイデアを考えるのが仕事です。部長は、かつて缶チューハイ「氷結」の開発にもかかわった45歳の女性で、グループでも若手の部門長です。成果は楽しみですが、私が干渉してはダメで、遠くから見守ります。

(構成=種市房子・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代のころはどんなビジネスマンでしたか

A 米国留学をしました。言葉が通じず苦しいこともありましたが、見るもの、聞くもの全てが新しく、行ってよかったです。

 

Q 「私を変えた本」は

A 『イノベーションのジレンマ』(クレイトン・クリステンセン)。

 

Q 休日の過ごし方

A 出身地の神奈川県小田原市にミカン畑を所有しており、毎週とは言えないまでも、せん定や草取りをしています。今年も40本から2トンを収穫しました。

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 ■人物略歴

 ◇いそざき・よしのり

 神奈川県出身。小田原高校、慶応義塾大経済学部卒業。1977年キリンビール入社。キリンホテル開発、フィリピン・サンミゲル社出向などを経て2008年経営企画部長、10年常務取締役、12年、キリンビール社長。15年3月から現職。63歳。

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事業内容:飲料、食料、医薬品

本社所在地:東京都中野区

設立:1907(明治40)年2月 ※2007年7月に持ち株会社化に伴い商号変更

資本金:1020億円

従業員数:3万9888人

業績(15年12月期:連結)

 売上高:2兆1969億円

 営業利益:1247億円

2016年

12月

27日

経営者:編集長インタビュー 山本明弘 広島市信用組合理事長

◇融資こそ地方創生のロマン

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 投信や生命保険は一切販売せず、預金と融資に特化して業績を伸ばしている金融機関が広島にある。純利益28億円は県内の上場企業47社と比較しても14番目だ。

 

── 広島市信用組合とは一言でいうとどんな金融機関ですか。

山本 中小零細企業に特化した相談しやすい金融機関、リスクテークをする金融機関です。他者に負けないスピードがあります。

 

── スピードとは。

山本 基本的に融資の決済は3日で判断します。支店長と得意先係は毎日融資先を歩き、会社の技術力、成長性、経営者の人間性まで見て、財務状況を常に頭に入れています。この日ごろの活動があればおのずと答えは早くなるのです。

 

── 大口融資となれば本店の決済も必要では。

山本 私は毎朝5時20分に出社し、34支店の支店長日誌すべてに目を通します。6時45分から約1時間の役員会議を開き、融資先を含め、あらゆる情報を共有します。パートを含め職員445人すべての顔が見える。だから即決できるのです。

 

── なぜ融資に特化できるのか。

山本 投信や生命保険を一切販売していないからです。それをやれば職員が説明のために準備や余計な時間が取られる。しかも投信はお客様に損をさせることもある。だから投信や保険は一切販売しないのです。

 もう一つは不良債権をバルクセール(まとめ売り)で徹底的に処理してきました。これをやったおかげで職員は不良債権処理の後ろ向きの仕事に時間が割かれることがない。

 

── バルクセールの実績は。

山本 2001年以来、件数にして2550件、累計で560億円の不良債権を処理してきました。お客様とじっくり話し合って進めたため、トラブルはゼロです。この結果、問題企業の2割弱が再生しました。

 

── 不良債権は激減しましたか。

山本 現在の不良債権比率は2・64%。全国比較でも良好な数値ですが2年前から少し増えました。というのも従来7000万円以上の赤字・繰り越し欠損・債務超過の融資先の査定を今期から4000万円に下げました。基準を厳しくして引当金を積んでおけば、どんな金融危機が来ても対応できるという判断です。

 

 9年前から法人と大口融資先を対象に財務状況などを載せたディスクロージャー誌を職員が手分けして配布するローラー作戦を開始した。その数は1万5000軒。地元では「シシンヨー」の愛称で呼ばれ、この対面の活動が「投信も保険も売らないから安心」と新たな預金の獲得につながるという。

 

── リスクを取る金融機関とは。

山本 取引して2年以上が経過した法人に、最高2000万円までの事業性融資をカードローンで提供しています。金利は9・5%ですが、担保は求めません。もう一つは住宅ローン。年収が300万円前後の人でも人間をよく見て25~30年、1500万~2500万円の住宅ローンを提供しています。金利は2・5~3・5%。多少金利が高くても「家が持てた」と喜んできちょうめんに返済していただけます。

 

 ◇格付けは全国で3位

 

── 今期の業績見通しは。

山本 本業の利益を示すコア業務純益は83億5000万円、当期純利益は29億5000万円で、いずれも過去最高を見込んでいます。

 

── 財務状況は。

山本 自己資本比率は今期末で10・15%を達成する見込みで全国265の信用金庫、153の信用組合の中で3位となるシングルA(日本格付研究所)の格付けです。当組合は社債を発行していませんが、この強固な財務体質で顧客が安心し、大口の預金獲得も可能となるのです。

 

── しかし信組の融資対象は従業員300人以下か資本金3億円以下の事業者に限定されています。

山本 だからこそまだまだ取引していないお客様がたくさんいるのです。地域の金融機関はいま再編や分野統合、異業種連携が活発ですが、それ自体が目的になり、握手をして終わりということになりかねない。

 

 大事なのはその後の経営です。当組合は3年前、広島大学と提携しているバイオ医薬ベンチャーに1億円の融資をしました。この会社が大手製薬会社と提携し、上場も視野に入りました。過去には現在上場している信販会社や大手流通企業に融資してきた実績もあります。誰も振り向きもしない赤字の会社を独自の眼力で見つけ将来にかける。それこそが地域の創生につながる融資のロマンではないでしょうか。

 

── 収益はどう還元しますか。

山本 現在も支店のリニューアルを続け、お客様の利便性を図っています。懸賞金付きの定期預金で預金総額に対し0・3%程度の利益還元もしています。この「ハッピードリーム定期」の残高は2000億円になりました。10月には新入職員の初任給を1万6000円アップしました。地域、法人、預金者、組合員、そして職員に利益を還元するのが我々の役目です。

 

── 課題は何ですか。

山本 人材育成、それしかない。私の後任を含め、職員全員を融資大好き人間に育てていくこと。もう一つは女性の登用です。すでに28人の支店長代理が女性で、42人の女性係長もいます。育児休暇後の復帰率は100%。これも続けていきたい。

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 35歳で支店長になり、融資のことで絶えず本部の審査部と大げんかしていました。担保がなくても「私が確かめたから大丈夫だ」と日々、格闘していました。

 

Q 「私を変えた本」は

A 本ではないですが、新人の頃、得意先係で経験した挫折からの教訓「お金は貸すものではなく、使っていただくもの」という顧客目線の経営哲学です。

 

Q 休日の過ごし方

A 土曜日は半日だけ仕事をします。日曜は完全休養して、ドライブに行ったり、妻と小旅行しています。

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 ■人物略歴

 ◇やまもと・あきひろ

 山口県出身。県立宇部高校、専修大学経済学部卒業。1968年広島市信用組合入組。2001年専務理事、04年副理事長を経て、05年6月より現職。71歳。

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事業内容:信用組合

本社所在地:広島県広島市

設立:1952年

出資金:185億円(2016年9月30日現在)

職員数:414人(16年9月30日現在)

業績(16年3月期)

 コア業務純益:82億7300万円

 当期純利益:28億6600万円

2016年

12月

20日

経営者:編集長インタビュー 辻範明 長谷工コーポレーション社長

◇大手がやりたがらない分野にこそ存在意義

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 「マンションのことならわかるんだ」というCMが印象的です。

辻 マンション造りの企画、開発、設計、建設、販売、管理とすべてに携わっています。ゼネコンは主に工事までですが、管理を担うことで、住み心地や間取りの使い勝手のよさといった顧客からの評価を直接聞くことができる。それを次に生かして、より安心、安全で快適なマンションを提供しています。

 

── マンションに特化しています。

辻 当社施工の第1号マンションは1968年着工です。当時マンション価格は高く、ごく一部のお金持ちしか買えませんでした。価格を抑え、品質は高い一般向けを普及させようと取り組んできた結果、「民間の日本住宅公団(現都市再生機構〈UR〉)」という評価をいただくまでになりました。施工数は累計59万戸、全国のマンション戸数の1割に当たり、国内最多です。

 

── 受注も多いそうですね。

辻 今期の受注は、大手不動産会社を中心に約2万3000戸の見通しです。

 実はCMについて、株主から「大手デベロッパーのようにかっこいいものを」と指摘を受けました。しかし当社は請け負う側なので、大手のブランドイメージを超えることが狙いではありません。建設会社として、真面目にやっているということを伝えたかった。出演しているボクシングの元世界チャンピオンの内藤大助は、以前私の直属の部下でした。ほかの出演者もほぼ全員が社員です。製作費を抑えるという理由が大きかったのですが(笑)、結果的に社員のやる気にもつながりました。

 

── 低価格と安定した品質で「マンションのユニクロ」とも呼ばれています。

辻 建設の現場を担う協力会社のおかげです。当社は設計から施工まで行っており、工事のやり方が常に一定です。そのため当社の手法に慣れた会社と長く付き合うことができ、結果的にコストを抑えることができます。また、現在当社が施工中のマンションは約3万9000戸あり、うち半分は今年度に竣工(しゅんこう)します。常に2年先まで見据えて仕事ができるので、腕のいい職人を確保しておけるのです。そのサイクルによって、どこにも負けない品質を保っているという自負があります。

 

 バブル期にデベロッパー路線で多額の負債を抱え、倒産危機に陥った。金融機関の支援を受けて経営再建に取り組み、2007年3月期に過去最高の連結経常利益630億円を計上したものの、リーマン・ショックで再び資金繰りが悪化するなど多難続きだった。

 

── 苦しい時期を乗り越え、3期連続の増収増益です。

辻 繰り返しになりますが、協力会社との信頼関係のおかげで、コストを抑えて再建に取り組むことができました。16年3月期は売上高7873億円、経常利益673億円でした。今期の計画はそれぞれ8000億円、840億円です。既築物件の管理、修繕の「ストック市場」に力を入れていますが、経常利益の大部分が新規建設の「フロー」によるもので、そこが課題です。来年2月11日に創業80周年を迎えるため、社員一丸となって過去最高の売り上げを目指しています。

 

── 好調の要因は。

辻 東京五輪やアベノミクスの影響で、大手ゼネコンが公共事業や民間の高層ビル事業にシフトし、大規模マンションを手がけられる会社が減ったことが大きい。関東圏のシェアをみると、今年4~9月の供給数1万6737戸のうち、当社の施工数は6419戸と38・4%を占めています。1棟100戸以上の大規模物件では、シェア55%です。マンション専業として、力をつけてきたことが生きていると思います。

 

 ◇ストック事業も柱に

 

── 超高齢社会に入り、マンションの空室問題も深刻化しています。新しい社会状況にどう対応しますか。

辻 ストック市場が鍵になります。また、国が「空き家の有効活用」を打ち出しており、リフォーム需要が見込めます。

 建て替えにも積極的に取り組んでいきたい。建て替えは基本的に区分所有者の全住民の合意が必要で、取り付けるのに10年かかることも珍しくありません。手間がかかり、デベロッパーは手をつけたがらない。当社はこれまで、33棟の建て替え実績があり、国内トップです。

 そのほか、現在首都圏、近畿圏を中心に41カ所、約2500戸を展開している介護マンション事業にさらに力を入れていきます。

 

── 他業種から参画して成功が見込めますか。

辻 簡単に事業として成立するとは思っていません。しかし、介護は日本にとって喫緊の課題です。国を挙げてもっと真剣に考えるべきです。施設を造って運営し、失敗も経験としながら、10年後には国に提言できるような企業を目指したい。

 マンションは完璧で当たり前ということもあり、顧客からのクレームが絶えません。オフィスビルなどと比べて利益率も低く、専業の会社が育ってきませんでした。そんな中、当社は大手がやりたがらないことに取り組んで、存続してきた企業です。他社と同じことをやるだけでは、「長谷工」という会社は存在意義がないと思っています。その思いで、介護も必ず事業の柱に育てます。

(構成=酒井雅浩・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 30代半ばで京都支店の支店長を任され、部下が200人いました。種をまいた飛び込み営業が次々に結果につながり、寝ずに酒を飲んでも数字が出て、「天下無敵」とうぬぼれていた時代です(笑)。

 

Q 「私を変えた本」は

A 本ではないのですが、組合活動に携わり、膝を突き合わせて人と向き合うことの大切さを学んだことです。

 

Q 休日の過ごし方

A ゴルフです。取引先がほとんどなので、休みとは言えません。純粋な休みは年に片手(5日)もありませんが、妻の買い物に付き合っています。

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 ■人物略歴

 ◇つじ・のりあき

 岡山県出身。金光学園高校、関西大学法学部卒業。1975年長谷川工務店(現・長谷工コーポレーション)入社。99年取締役、2010年代表取締役副社長、長谷工アネシス代表取締役社長などを経て、14年4月より現職。63歳。

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事業内容:マンション建設

本社所在地:東京都港区

設立:1946年8月

資本金:575億円(2016年9月30日現在)

従業員数:2380人(16年9月30日現在)

業績(16年3月期・連結)

 売上高:7873億円

 営業利益:687億円

2016年

12月

13日

経営者:編集長インタビュー 長門正貢 日本郵政社長 2016年12月13日号

◇地方自治体と同じ感度で地域のニーズに応える

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 日本郵政の2016年9月中間連結決算は最終(当期)利益が前年同期比3割減でした。

長門 前年同期には(子会社の)日本郵便で保有株式の売却による特別利益があったことなどを勘案し、もともと厳しい営業計画を立てていました。その意味では順調という評価ですが、日本郵政グループの経営課題が凝縮して現れた決算でもあります。

 

減益要因は大きく三つ。一つ目は、上場に伴って日本郵政が保有するゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式11%を売却し、日本郵政に帰属する純利益がその分、減少したことです。

 

ゆうちょ、かんぽの株式は今後も売却するので、この減少分をどう補っていくかが課題です。二つ目は、日銀が16年1月に導入を決めたマイナス金利政策の影響で、ゆうちょ、かんぽの運用益が下がっています。三つ目は日本郵便の業績が落ちていること。株式売却の特別利益がなくなったほか、(15年5月に買収した豪物流事業の)トール・ホールディングスが期待通りの業績を上げられていません。

 

── どう対処していきますか。

長門 一つはゆうちょ、かんぽの運用の深掘り(収益力の強化)です。ゆうちょの保有資産は他の銀行に比べても内容が良く、まだリスクを取ることが可能です。そこで、未公開株ファンドやヘッジファンド、不動産というオルタナティブ(代替)資産への投資も始めました。こうしたオルタナティブ投資を含め、サテライト・ポートフォリオ(社債、外国証券、株式など)の残高は16年9月末現在ですでに64兆円と、中期経営計画(15~17年度)の最終年度の目標60兆円をクリアしています。

 

── リスク管理も重要ですね。

長門 ゆうちょの運用部門では15年、元ゴールドマン・サックス証券副社長の佐護勝紀氏を副社長とするなど、積極的に専門人材を外部から採用する一方、16年1月には「リスク管理部門」を新設し、担当の専務を置くなどしてリスク管理も強化しています。かんぽはゆうちょほど運用の切迫度は高くないため、取り組みはゆっくりですが、方向性はゆうちょと同様です。こうした手をすでに打っているので、いずれ収益は底上げされるでしょう。

 

 官民挙げた15年11月の上場時、日本郵政、ゆうちょ、かんぽとも売り出し価格を大幅に上回る初値を記録し、市場は大きく盛り上がった。しかし、16年に入って世界経済への懸念が広がると、一転して下落基調に。着実な株価上昇に対する株主の期待は高い。

 

 ◇タンス預金を動かした

 

── 3社の上場で初めて株を買った個人も多いと聞きます。

長門 郵便局には145年の歴史があり、141年前からは貯金も集め出しました。かんぽは16年10月、100周年を迎えています。こうした歴史に親しみを覚えていただき、中にはまさにタンス預金となっていた聖徳太子の旧1万円札で、株を買った人もいたと聞きます。郵便局は全国津々浦々に2万4105局(16年9月末)あり、ゆうちょ、かんぽは国内最大の銀行、保険会社です。郵政民営化は一大国家プロジェクトで、非常に国民から期待されている仕事だと感じます。

 

── 手数料収入確保も課題です。

長門 ゆうちょでは、三井住友信託銀行などと合弁で設立した運用会社「JP投信」が16年2月、投資信託の新商品の販売をスタートしました。誰にでも分かりやすく損をしにくい商品を開発したのですが、そのうち1商品はマイナス金利の影響で販売をあきらめました。ただ、国内全体の投信残高は落ちている中で、ゆうちょでは1兆1628億円(16年9月末)へと増えています。

 

市場環境の悪化もあり簡単に投信の残高は伸びませんが、16年は準備期間と位置づけています。お客様にまずは投信口座を開いてもらおうと、営業現場に口座開設のインセンティブをつけることも始めました。また、10月からは、ATM(現金自動受払機)の口座間送金を4回目以降から有料としましたが、できるだけお客様にご迷惑をおかけしない範囲で手数料収入を増やしていきたいと考えています。

 

── トールはどう立て直しますか。

長門 天然資源の豊富な豪州で、資源価格の下落がトールの業績にも影響しています。しかし、日本国内の市場では収益機会が減っており、成長するアジア太平洋地域で勝負していかなければならず、トールの買収はそのために打った手の一つです。(日本郵政の提携先の)イオンが扱う豪州のタスマニアビーフを日本に輸送する際にトールを使ってもらうなど、収益向上や経費節減の取り組みを現に始めており、業績立て直しに向けて行動で示していきたいですね。

 

── グループ43万人の従業員にどのような意識改革を訴えますか。

長門 カスタマー、コミュニティー、カンパニーという「3C」のための意識を浸透させたいと思っています。お客様はやっぱり神様で、顧客のニーズがあるところに仕事があります。また、郵便局は地域に根ざしており、地方自治体と同じような感度で地域のニーズを捉え、それに応えていくことも大切です。さらに、企業として競争力がなければ評価もされません。数字に厳しく、事業の選択と集中を通していい業績を求めていきます。皆が同じ方向を向いて進むため、3Cを言い続けるつもりです。

(構成=桐山友一・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 米南部ヒューストンで、資源関係の顧客開拓のため興銀の事務所を立ち上げました。その後、中国で初のプロジェクトファイナンス案件を担当し、涙が出るほど楽しかったです。

Q 「私を変えた本」は

A 『アメリカにおける秋山真之』(島田謹二著)です。『ニュー・エンペラー 毛沢東とトウ小平の中国』(ソールズベリー著)は読み物として絶品です。

Q 休日の過ごし方

A 土曜午前はジム、午後は老人ホームに入った母と散歩。日曜はひたすら雑誌や新聞を読んでいます。

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 ■人物略歴

 ◇ながと・まさつぐ

 東京都出身。学習院高等科、一橋大学社会学部卒業。1972年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。みずほコーポレート銀行常務執行役員、富士重工業副社長、シティバンク銀行会長などを経て、2015年5月にゆうちょ銀行社長。16年4月から現職。68歳。

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事業内容:日本郵政グループの経営戦略策定

本社所在地:東京都千代田区

設立:2006年

資本金:3兆5000億円

従業員数(常勤):25万876人(16年3月末現在・連結)

業績(16年3月期・連結)

 売上高:14兆2575億円

 営業利益:9662億円

 

2016年

12月

06日

経営者:編集長インタビュー 呉文精 ルネサスエレクトロニクス社長 2016年12月6日号

◇買収で自動運転やIoT分野を強化

 

◇Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 半導体業界におけるルネサスの特徴は。

 半導体の中でも、人間の頭脳に相当する「マイコン」を中心に設計・製造する日本で唯一の会社です。三菱電機、日立製作所、NECの三つの会社の半導体部門が一緒になってできました。半導体を含めた日本の電機業界は、製品のデジタル化が進むなかで、新興国の追い上げに苦戦しているところが多い。当社は、積極的にマーケティングして、特定の分野で付加価値のある製品を作っていきたいと考えています。

 

── 米半導体のインターシルを買収しました。

 シナジー(相乗効果)は非常に明確です。我々は汎用(はんよう)のマイコンに強い。彼らは電圧制御用の半導体やアナログ信号をデジタル信号に変換するミックスシグナル半導体に強い。車が自動運転になると、どんどん電力を消費します。だから、省電力、低発熱で車を制御する電圧制御用の半導体の存在が低燃費につながります。

 

また、ミックスシグナルについては、現実の世界をマイコンが判断するためには、レーダーやカメラ、圧力センサーなどからのアナログ情報をデジタルに転換し、マイコンで演算後、再び、アクチュエーター(駆動装置)にアナログ情報として戻す必要があります。買収で当社はその両方を手に入れました。

 

── 2011年の東日本大震災時は、工場の被災で、世界の自動車生産に影響を及ぼしました。

 ご迷惑をお掛けしましたが、それだけ当社が必要とされていることの表れだとも思います。自動車用のマイコンでは世界トップシェアですが、実は売り上げや利益は自動車向け以外からの方が多い。例えば、プリンターやエアコン、冷蔵庫用のMCU(メモリー制御装置)でも世界トップシェアです。難しいことをする頭脳部分なので、他社の半導体では簡単には置き換えできません。この教訓を受け、今年の熊本の震災では熊本工場が被災しましたが、5年前と比べはるかに早く復旧しました。

 

── 製品のポートフォリオは、今後、どのようにしていく考えですか。

 当社の売り上げは、分野別では自動車向けが全体のほぼ5割弱を占めます。残りは産業機器やオフィス機器向けです。しかし、特にどちらに比重を置いていくか考えていません。自動車は主要顧客がはっきりしており、戦略や技術は明確です。ただ、自動運転などの分野は、自動車メーカーと共同開発してから量産に至るまで費用が先行し、収益化するのに時間がかかります。一方でプリンター向けなどのビジネスは、今日の収益につながります。そのバランスを考えながら経営する必要があります。

 

だから、モノをインターネットにつなげる「IoT」、白物家電、オフィス機器、通信基地局などの産業向けは積極的にやっていこうと思います。携帯電話やゲーム機向けなどの浮き沈みが激しいところは撤退の方向です。

 

 ◇人工知能をチップに

 

── 自動運転やIoTへの具体的な対応は。

 両方とも非常に面白いと思いますが、ある意味、太平洋にこぎ出すような話で、片っ端から手がけるわけにはいきません。自動運転は、車単体ではなく、車同士、あるいは車と街が通信していくようになると、規格の標準化が非常に大事になってきます。日本はここが得意でないので、「ガラパゴス」にならないよう、注意しながらやっていきたいと思います。

 

IoTで今注力しているのは、ユーザーの近くにサーバーを分散し、通信遅延を短縮する「エッジコンピューティング」や人工知能をチップに埋め込む「エンベデットAI(人工知能)」の分野。例えば工場の機械で異常な振動が出て、すぐに止めないといけない場合、いちいち、クラウドのサーバーまで戻り、命令を受けていたら、間に合いません。だから、チップの中にAIの膨大なデータを埋め込む。そうすると、指先に頭脳があることになり、末端だけで物事を判断できます。今後、こうした分野に力を入れようと思います。

 

── 今後の買収の計画は。

 まずは、インターシルの買収後の統合をしっかりとやり遂げます。今後の買収については、IoT、製造業の高度化を目指す「インダストリー4・0」、自動運転がキーワードになります。無線・通信の分野、あと暗号化などのセキュリティー技術は面白い。将来的には、エクイティファイナンス(新株発行を伴う資金調達)を視野に入れながら、次の買収を考えていきたいです。

 

── 成功する経営のコツは。

 本社の大きな戦略、意思決定のプロセスや基準を明確に示すことです。右なら右と決めたら、そちらの方向で自信を持って進む。やると決めたら優勝を狙うことです。また、グローバル経営に踏み出すのですから、海外の人の立場を理解できないとうまくいきません。

 

── 産業革新機構が筆頭株主です。出口戦略については。

 産業革新機構が保有する当社株について、コメントする立場にはありません。ただ、私から革新機構に申し上げたいのは、ルネサスはマイコンという半導体の頭脳部分を持っている唯一の日本企業と言うことです。こういう産業を日本に残せるかどうかは、重要です。

(構成=稲留正英・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 日本興業銀行(現みずほ銀行)のニューヨーク支店にいました。帰国後は興銀証券で、グローバル債券の引き受けや資源開発のプロジェクトファイナンスを担当しました。

 

Q 「私を変えた本」は

A ジム・コリンズの『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』です。データに基づいているので、学んだことが多いです。

 

Q 休日の過ごし方

A あるようでありません。今の仕事が非常にチャレンジングなので…。

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 ■人物略歴

 ◇くれ・ぶんせい

 東京都出身。神奈川県栄光学園、東京大学法学部卒業。1979年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年GEフリートサービス社長、08年カルソニックカンセイ社長、13年日本電産副社長を経て、16年6月より現職。60歳。

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事業内容:半導体の設計・製造

本社所在地:東京都江東区

設立:2002年11月

資本金:100億円

従業員数:1万9160人

業績(2016年3月期・連結)

 売上高:6933億円

 営業利益:1038億円

2016年

11月

29日

経営者:編集長インタビュー 落合寛司 西武信用金庫理事長 2016年11月29日特大号

落合 寛司 西武信用金庫理事長

 

◇「雨の日に傘貸す」協同組織金融機関目指す

 

Interviewer 金山 隆一(本誌編集長)

── 西武信金はどのような金融機関ですか。

落合 「利用者保護」が基本理念である協同組織金融機関の働きを最大限に追求した、コンサルティング機能を持つ金融機関です。顧客の課題を徹底的に解決します。

 

── なぜ、「コンサル」なんですか。

落合 日本は今、二つの大きな変革期にあります。まず、世界経済の主役が先進国から新興国に変わりました。二つめは少子高齢化です。このような変革期は、これをチャンスにできる企業と、ピンチにする企業がはっきりと分かれます。だから、コンサルが必要です。 

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2016年

11月

22日

経営者:編集長インタビュー 新野良介 ユーザベース社長 2016年11月22日号

新野良介 ユーザベース社長 

 

◇ビジネス情報プラットフォームの世界標準目指す

 

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── ユーザベースはどんな会社ですか。

新野 日本発のビジネス情報のプラットフォームとして、世界に通用するものを作り出すことが目標です。

 

インターネットの普及に伴い、一般ユーザー向け情報プラットフォームは、グーグルなどの検索エンジンからフェイスブックなどソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)へと劇的に変わりました。

 

一方でビジネス情報に目を転じると、使いやすいものが少ない。例えば、世界企業の中での時価総額ランキング一つとっても調べるのは大変な作業です。業界における企業の位置づけなど重要な情報なのに収集が難しいというストレスを、技術革新によって解決したいのです。

 

── ユーザベースが考えるビジネス情報とはどのようなものですか。

新野 株価や為替、企業の合併・買収(M&A)といったものだけではありません。例えば、ある企業へのインタビュー記事を読んだことがきっかけで志望する学生がいます。そうした自分の人生で下す決断に影響を与えるような経済情報です。

 

2002年に大手商社に入り食品部門を担当していた新野氏は、プレゼン向け資料の作成に膨大な時間がかかることを疑問視、ユーザー側に立った情報プラットフォームの必要性を感じていた。外資系証券会社に転職後、梅田優祐氏(現ユーザベース共同経営者)と意気投合し、08年、数人の仲間とマンションの一室でユーザベースを立ち上げた。翌09年には「SPEEDA」(スピーダ)の提供を開始。創業8年目の今年10月21日には東証マザーズに上場を果たす。

 

── 主力の情報プラットフォームの内容を教えてください。

新野 法人向けのスピーダと、子会社が運営する一般向けニュースサイト「NewsPicks」(ニューズピックス)の二つです。法人向けと一般向けの両方のプラットフォームを持つことが当社の強みです。

スピーダが提供する情報は、(1)世界200カ国以上、上場・非上場合わせ約380万社の企業情報、(2)550のカテゴリに分類した業界情報、(3)企業のM&A情報の3種類です。各社がどんな戦略を取っているかといった情報を集約して表示します。株式トレーダーに特化したデータベースのような狭い範囲の経済情報でなく、より広い範囲を対象とした基礎リサーチのツールとして顧客に認知されています。

一方、ニューズピックスの特徴は「ソーシャル」、つまり一方的なニュース配信でなく利用者も情報を発信できる点です。一人一人が発信者になれるのがネットの強み。例えば、利用者の意見それ一つでは影響力は小さいですが、それに同意や反対意見を加えることで、世論が形成されていくこともあります。

 

── 配信するビジネス情報はどう集めていますか。また、差別化は。

新野 スピーダは経済データを配信している国内外の約50の企業と提携しています。情報を提供してもらうと同時に、相手が持つ情報のマネタイズ支援も行います。加えて、自社独自のコンテンツも作っています。ニューズピックスも自前の記者がいます。

既存の法人向けサービスを見ると、データ量で勝負しているものが多く、一般向けのさまざまなプラットフォームほど使い勝手がよくないと感じていました。そこで「ユーザビリティー」(利用者の使いやすさ)に価値を転換し、ほとんどの情報はスピーダで取れるという「ワンストップ」を目指しました。

スピーダは企業情報の地図のようなもので、例えば、ある国のある業界を知りたいとき、企業のデータやニュースのほか、さらに深い情報を得たいときに、誰にアクセスすればいいかといった情報も提供します。

 

◇アジアでトップを目指す

 

── 売り上げ構成は。

新野 16年12月期は、およそ30億円の売り上げを見込んでいます。うち20億円がスピーダ、10億円がニューズピックスという内訳です。スピーダの加入ID数は国内外で約1400。売り上げの9割は国内で、残り1割が海外です。業種別に見ると一般企業が35%、銀行、証券会社、コンサルティング会社といった、プロフェッショナルファームが65%です。

 

ニューズピックスの収益源は主に三つあります。一つ目は現在、約2万人の会員がいる月額1500円の有料サービスで、これが3分の1を占めます。二つ目は企業のブランド広告、三つ目はニューズピックスを使った求人サービスです。

 

── 海外展開を含め、今後の戦略を教えてください。

新野 スピーダにとって最大の市場は、経済規模が圧倒的に大きい米国だと考えています。ただ、競合するプレーヤーも多く競争も激しいので際立った力が必要です。

現在、アジア市場でシェアを伸ばせているのは、日本のビジネス情報でナンバーワンという位置づけを取れたことが大きいと思います。スピーダの試用版への海外からの問い合わせでは、香港、シンガポールに次いで多いのが米国です。つまり、アジア情報でナンバーワンになることが米国に進出する際の最大の差別化要因になります。まずはアジア市場を押さえることが、次の展開につながると考えています。

(構成=大堀達也・編集部)

 

◇横顔

 

Q 20代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 30歳までに起業することが目標だったので商社に入り、起業がしやすい小さい商材を扱う生活産業分野で経験を積みました。

Q 「私を変えた本」は

A リカルド・セムラー著『セムラーイズム』、ケネス・クラーク著『ザ・ヌード』、共和政ローマ期の政治家カエサルの自伝『ガリア戦記』です。

Q 休日の過ごし方

A ジムに通っています。

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 ■人物略歴

 ◇にいの・りょうすけ

 1977年生まれ。暁星国際高校、慶応義塾大学卒業後、2002年三井物産入社。UBS証券を経て08年にユーザベースを設立し、共同経営者に就任。

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事業内容:ビジネス情報プラットフォームの運営

本社所在地:東京都渋谷区

設立:2008年

資本金:23億300万円

従業員数:178人(8月31日時点、ニューズピックス含む)

業績(2015年12月期・連結)

 売上高:19億1500万円

2016年

11月

15日

経営者:編集長インタビュー 大野直竹 大和ハウス工業社長 2016年11月15日号

◇「戸建ての心」で顧客と長い付き合いをする

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 現在の主力事業は何ですか。

 

大野 もともとは戸建てを中心に出発しましたが、今では、賃貸住宅・商業施設・事業施設の建設・運営をするコア3事業が連結売上高の6割以上を占めるようになりました。しかし、「戸建ての心」は忘れていません。戸建ての特性は、「顧客の夢を我々が預かる」こと。建物の完成後も、何十年も顧客とお付き合いします。この「戸建ての心」を持って、賃貸住宅・商業施設・事業施設を展開しています。

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2016年

11月

08日

経営者:編集長インタビュー 福田三千男 アダストリア会長兼最高経営責任者(CEO) 2016年11月8日号

◇「カジュアル衣料のR&Dを強化」

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 アダストリアは、グローバルワークやローリーズファームなど、17のカジュアル衣料ブランドを、国内外に約1300店舗展開している。売上高は、2000年上場時の100億円から、16年2月期通期は2000億円と、低迷する小売業界で急成長を遂げている。

 

── 創業は1953年と、長い歴史があります。

福田 当社は、父が創業した「福田屋洋服店」で紳士服販売から始め、これまで環境の変化に応じて、メンズカジュアル、ジーンズカジュアル、ファッションカジュアルチェーンへとビジネスモデルを変えてきました。規模が拡大するにつれ、競合との差別化や店舗運営など、現在まで苦難の連続でした。現在の市場に進出したのは、92年にローリーズファームの展開を開始してからです。

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2016年

11月

01日

経営者:編集長インタビュー ハロルド・メイ タカラトミー社長 2016年11月1日号

 ◇0歳から100歳まで楽しめるおもちゃを作る

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 有力商品は何ですか。

メイ 長く売れ続けている定番のおもちゃが、発売から46年たったトミカ、57年のプラレール、来年50年のリカちゃんです。グローバルに通用する定番として、車がロボットに変形するトランスフォーマー、ベーゴマが進化したベイブレードがあります。子供の本能に訴える定番商品が多いのが強みです。

── 少子化は逆風では。

メイ 日本で子供だけを相手にしていればそうです。消費者は誰かを考えなければなりません。おもちゃの定義を変えようとしています。

 今までは、おもちゃといえば遊ぶものでした。でも役に立つもの、集めたくなるものも立派なおもちゃです。0歳から100歳までが楽しめる商品を作っていきます。

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2016年

10月

18日

経営者:編集長インタビュー 出澤剛 LINE社長 2016年10月18日号

◇LINEで何でもできる世界をつくる

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

── 今年7月に上場を果たしました。
出澤 2011年6月にスマートフォン向けコミュニケーションアプリ(メッセンジャー)の「LINE」を提供し始めて5年がたち、成長戦略、収益性、組織力の三つに自信がついたところで上場しました。

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2016年

10月

11日

経営者:編集長インタビュー 平岡昭良 日本ユニシス社長 2016年10月11日特大号

◇社会問題をITシステムで解決する

 

── 2017年3月期は増収増益の計画です。好調な事業は。

平岡 コンビニなどで売っているプリペイドカード向けのIT(情報技術)システムです。アマゾンやアップル、グーグル、任天堂、DeNAなどのサービスで使うプリペイドカードは現在、約100種類あり、その約5割は、当社が提供するカードの発行元と販売元をつなぐ仕組み(プラットフォーム)で動いています。プリペイドカード市場は、米国では10兆円規模になり、まだ統計がない日本でもインターネットで買い物する市場が拡大するなかで伸びていくとみています。

── そのビジネスモデルは。

平岡 プリペイドカード事業が好調なのは、カードが普及すればするほど、当社の手数料収入が上がるビジネスモデルにできたのが大きいです。つまり、普及しなければ赤字プロジェクトになるため、お客様と同じ方向を向くことができます。

 これまで、当社の売り上げはプロジェクトの工程に対して、それに取り組む人の数で計算していました。ただし、当社の売り上げが上がると、お客様にとっては投資額が上がってしまいます。これからは、お客様の初期費用は少なく、当社のシステムを利用して手数料をいただくような、ウィンウィンの関係を作っていきます。

 

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2016年

10月

04日

経営者:編集長インタビュー 高谷康久 イー・ガーディアン社長 2016年10月4日特大号

高谷康久 イー・ガーディアン社長

◇ネットサービスの守護神になる

 

 イー・ガーディアンは、SNSの投稿監視などを行うネットサービスのセキュリティー会社。9月16日に東証マザーズから東証第1部に市場変更した。

── 売上高が2010年9月期の13億円から15年9月期に30億円と倍増しています。急成長の理由は何ですか。

高谷 インターネット関連の市場が急拡大しているからです。ブログやSNSが普及し、それに伴ってネット関連のトラブルが増えました。ネットサービスは、24時間365日動いていますから、それを個別企業で運用・監視するのは大変です。ブログやSNSのプラットフォーム(基盤)を提供する会社の代わりに、そのサービスを監視しています。

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2016年

9月

27日

経営者:編集長インタビュー 張店(デビッド・チャン) BTCボックス社長 2016年9月27日号

◇「仮想通貨IPO」の時代が来る

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

  日本円でビットコインを購入・売却するための取引所を運営する。月間の取引規模は62万9416BTC(BTCはビットコインの単位)、約440億円(7月)。

 

── ビットコインが活況ですね。

 張 理由の一つは、日本の国会で5月末に仮想通貨の悪用を防ぐための規制を定めた改正資金決済法が可決されたことです。法整備が進み仮想通貨に対するイメージが良くなりました。

  もう一つは、4年に1度、新たな通貨の供給量が半減するという、ビットコイン特有の仕組みの影響です。通貨価値を担保するための半減期が7月にあり、それを見越して6月に価格が2倍に急騰しました。

 

  さらに、ビットコインの基盤技術である「ブロックチェーン」の応用技術開発に大手金融機関が乗り出したこともあります。ブロックチェーンとはインターネット上の巨大な台帳で、世界中のビットコインのユーザーによって共有され、新たな取引が行われる度に取引記録が書き加えられる仕組みです。

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2016年

9月

20日

経営者:編集長インタビュー 山本良一 J.フロントリテイリング社長 2016年9月20日特大号

 ◇時代に合った新たな百貨店へ転換

 

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 来年で統合から10年がたちます。振り返っていかがですか。

山本 2007年に大丸と松坂屋ホールディングス(HD)が経営統合し、持ち株会社として発足した当初から、百貨店を中核とした小売業のリーディングカンパニーを目指すという明確なビジョンを持ち、事業展開を行ってきました。12年にパルコを子会社化したり、通販大手の千趣会と資本提携を結ぶなど、マルチリテイラーとして、目標イメージに近い会社へ変化しています。

── 一番苦労したことは。

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2016年

9月

13日

経営者:編集長インタビュー 長谷川敦弥 LITALICO社長 2016年9月13日号

◇障害があっても幸せな社会に

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

  LITALICO(以下、リタリコ)は、障害者の支援をビジネスとして実現する日本唯一の上場会社だ(2016年3月上場)。内閣府の『平成28年版 障害者白書』によると、日本にいる障害者は860万人。一方、障害者の労働者数は、36万6000人にとどまる。

リタリコは、障害者の就労や学習支援を通 して、この課題に取り組む。

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2016年

9月

06日

経営者 編集長インタビュー  越智仁 三菱ケミカルホールディングス社長

◆化学3社統合を機に、総合力強化

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 三菱ケミカルホールディングス(HD)は、石油化学事業(石化)の三菱化成と三菱油化が合併した三菱化学が原点の総合化学メーカー。2005年のHD設立以降、M&A(合併・買収)で事業を拡大。石化のほか、三菱樹脂や三菱レイヨンの樹脂製品、田辺三菱製薬の医薬品、大陽日酸の産業ガスなど多様な事業を展開している。

 

── 足元で伸びている事業は。

越智 コーティング材など自動車の部材が安定して伸びています。電機業界向けでも、フラットパネルディスプレーに使うポリエステルフィルムなどが堅調です。医薬品では、自社製品を海外の会社に委託したロイヤルティー収入で年間数百億円を得ています。15年度は、糖尿病治療薬「インヴォカナ」や多発性硬化症治療剤「ジレニア」が伸びました。

── 他の分野はどうですか。

越智 合成樹脂では、アクリル樹脂原料「MMA」が、世界で約40%のシェアがあります。エタンガスから作る他社にない低コストの製造法のため、競争力がある製品です。これも自動車や、欧米の住宅でコーティング材として重宝されています。また、アクリル樹脂の「PMMA」は、発光ダイオード(LED)の材料としてメーカーに提供しています。

 

 ◇石化再編にめど

 

 石油化学事業では、エチレンプラントの削減などの事業再編を進めている。16年は、採算が悪化した合成繊維原料「PTA」事業で中国・インドから撤退する。

 

── 石化の構造改革の状況は。

越智 11年度から15年度までの中期経営計画で事業を再編し、構造改革は一段落した状態です。伝統ある事業なので抵抗感はありましたが、ポリエチレンなどで収益性の低い事業を縮小してきました。この3年で4基あったエチレンプラントは2基を停止しました。現在、プラントの稼働率は100%を超えており、低コストの運営を実現しています。

── 現状の収益力の評価は。

越智 まだ不十分です。現在、約4兆円の売り上げですが、営業利益は2800億円です。16年度から5年間の中計では、20年度で3800億円の営業利益を目指しています。

── 収益力をどう高めますか。

越智 海外展開と新事業の2軸で進めます。海外売上比率で当社は43%程度で、米化学大手デュポンなどより低い水準です。中国経済が減速した14年度以降、世界的に低成長の状況ですが、拡大している海外市場を取り込むことは欠かせません。炭素繊維やプラスチック製品、医薬品など、高性能で競争力のある商品を拡大していきます。MMAでも、サウジアラビアに新たなプラントを作り、17年に稼働する予定です。

── グローバル化の体制は。

越智 今後、200以上ある海外拠点のうち、地域ごとの統括拠点を設立し、現地市場の把握や地域間の連携を強化していきます。従来の日本主導ではなく、現地の主体性を尊重する方針です。グループで約6万9000人の従業員のうち、約2万4000人いる海外人材の活性化にもつながると考えています。

── 新事業で期待する分野は。

越智 電機産業向けの製品は、次世代の事業と位置づけ、将来の収益拡大に向けて改善しています。その一つが、LEDに使う「窒化ガリウム」の基板です。LEDの輝度が高くなり、光を遠くまで飛ばせるので、自動車のヘッドライトには欠かせません。有機太陽電池の部材も、フレキシブルに形状を変えられ、軽いものに改善していきます。

── 大陽日酸を14年に買収しました。

越智 同社は収益が安定しており、16年度で四百数十億円の営業利益を見込んでいます。また、産業ガスは社会インフラなので、さまざまな製品や顧客とのつながりが期待できます。実際、三菱レイヨンが医療用で提供している炭酸泉(二酸化炭素が溶け込んだお湯)では、大陽日酸の炭酸ガスを使います。三菱化学が作る窒化ガリウム基板の生産設備も大陽日酸の製品です。

── 17年4月に、三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンの3社が統合し、三菱ケミカルが発足します。統合に伴う改革は。

越智 統合する3社で4万人の従業員がいますから、各事業部門に権限を委譲し、スピード感のある経営を促します。3社で60の事業部門を10に再編し、統合会社を含むグループ全体で技術や販売チャンネルを共有、グループの総合力強化を図ります。

── 統合に向けた課題は。

越智 これまでは、グループに数ある事業会社や事業部門が単独で動き、研究開発の知見や販売チャンネルなどを十分に共有していませんでした。例えば、自動車用製品を欧州で販売する際、現地の販売チャンネルに強みがある三菱樹脂と連携すれば、さらに拡大できるはずです。

── M&Aの方針は。

越智 今後、グループ内で連携を進めて新たなニーズを探るようになれば、既存の事業から少し離れたニーズも見えてきます。その際、自社にない経営資源は、他社との提携やM&Aで取り入れます。単なる規模拡大ではなく、グループとしての事業ポートフォリオ(構成割合)の観点でシビアに見定めていきます。

(構成=藤沢壮・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 1970~80年代だったので、オイルショックで石化が大変な時期でした。アンモニア製造の課長代理として、作業効率改善や要員削減といった現場の合理化に取り組んでいました。

Q 「私を変えた本」は

A 2000年ごろ、製造畑だった私が初めて事業部長になったときに読んだ『マネジメント』(ピーター・ドラッカー)です。

Q 休日の過ごし方

A 妻と買い物に行くことと、スポーツクラブに通っています。

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 ■人物略歴

 ◇おち・ひとし

 愛媛県立西条高校卒、京都大学大学院卒。1977年三菱化成工業(現三菱化学)入社、2009年三菱ケミカルホールディングス取締役執行役員経営戦略室長を経て、15年6月社長就任。63歳。

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事業内容:三菱系の総合化学持ち株会社。傘下に石油化学、合成樹脂、医薬品などの製造・販売会社を持つ

本社所在地:東京都千代田区

設立:2005年10月3日

資本金:500億円

従業員数:6万8988人(連結、2016年3月31日現在)

業績(2016年3月期・連結)

 売上高:3兆8230億円

 営業利益:2800億円

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2016年

8月

30日

経営者:編集長インタビュー 津谷正明 ブリヂストン会長兼CEO 2016年8月30日特大号

◇技術、サービス組み合わせ解決型ビジネス

 

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── タイヤの世界シェア1位(売上高ベース)の日本企業ですね。

津谷 一口にタイヤと言っても、用途は広いです。自転車、二輪、自動車の他、航空機や鉱山掘削トラクター用のタイヤも製造しています。大型で、耐性も必要とされるこれらの特殊なタイヤは、新興国のタイヤメーカーにはない技術を持つからこそできます。当社は、大型航空機(座席数100程度)向け新品タイヤで、世界シェア4割(自社推計)を占めており、トップの座を仏ミシュラン社と争っています。

── 手がけるのはタイヤのみですか。
津谷 タイヤに限らず、建物の免震ゴム、工場設備の配管用ホース、鉱石輸送用のコンベヤーベルトなど、ゴムを使った製品も作っています。また、製造だけにとどまらずに、サービスも提供しています。たとえば、航空会社向けのビジネスでは、一度新品タイヤを提供しておしまいではありません。飛行日程の合間に、空気圧や溝の深さを定期的に検査します。安全上、必要とあらば、タイヤの表面のゴム(トレッド)を削り、新しいゴムと張り替える「リトレッド」もします。
── もはやメーカーの概念ではありませんね。
津谷 昨年10月に発表した中期経営計画では「商品単体からソリューション(課題解決)へ」というスローガンを立てて、さまざまなビジネスモデルを確立しています。ソリューションとは、新品タイヤの供給▽タイヤ以外のゴム製品供給▽維持管理▽その他のサービス、を組み合わせて顧客の課題を解決するビジネスモデルです。従来は、新品タイヤを売る→古くなれば新たなタイヤを売る、というビジネスでした。しかし、今やタイヤにかかわるあらゆる技術を駆使したソリューションを提供しています。
── ビジネス領域が広がりますね。
津谷 鉱山会社には、車両用のタイヤ、コンベヤーベルト、設備用のホースを一括して売り始めました。従来は、これらの商品を別々に供給していました。今はワンストップ体制に改め、価格交渉などの手間も省力化できます。また、運送会社向けに、新品タイヤの供給、空気圧などの管理、24時間体制でタイヤ交換をできるサービスを組み合わせて提供しています。「車両を、休みなくいかに効率的に稼働させるか」という運送会社の経営課題に取り組むサービスと言えます。
── 世界シェア1位をミシュランと激しく競り合っています。世界一の座をつかむカギは。
津谷 タイヤ業界は、規模の経済がはたらきます。このため、製造・販売・サービス拠点の網を世界に張り巡らせるグローバル化が必要です。1988年に米タイヤ製造・卸売り会社「ファイアストン」を買収したのもグローバル化を進めるためでした。当時の売上高は6200億円なのに対して買収額は3300億円。賭けでした。しかし、経営者が「将来のためには必要な買収だ」と判断したのです。当社にとっては第二の創業です。ただ、当初は同社の設備老朽化や技術力不足で高性能のタイヤが製造できないことなど、問題もありました。「この買収はうまくいかないかも」と不安になった時期もありました。老朽化設備更新などのために同社に増資するなど、高い授業料は払いました。しかし振り返ると、グローバル企業として必要な経験でした。
── 規模拡大以外に重要なことは。
津谷 技術力も必要です。当社は、原料のゴムをゲノム段階から研究していますし、彦根工場でAI(人工知能)を使って製造自動化を進めています。ただ、拠点網と技術力があっても、それで良しとはしません。車向けも航空機向けも、より軽くより安全なタイヤが求められます。難しい技術が必要だから当社の存在意義があります。大きな変革の前に、先を読んで、競争力を付けようという気概が必要です。

 ◇買収断念褒められた

 昨年、米タイヤ販売大手「ペップ・ボーイズ」の買収を表明した。しかし、「もの言う株主」として知られる投資家のカール・アイカーン氏が対抗して買収を表明し、買収合戦に発展。その結果、ペップ・ボーイズの買収を断念した。

── 買収断念をどう振り返りますか。
津谷 6月に、米国で機関投資家と対話しました。その際「あの買収は降りて正解だったね」と褒められました。当社は、事業の一環としてペップ社の買収を計画しました。しかし、アイカーン氏による買収提案は別の意図があったのではないでしょうか。アイカーン氏が買収価格を数度引き上げたことで、「深追いはしない方がいい」と判断しました。
── 一方で、6月にはフランスの販売会社「スピーディ社」を買収しました。狙いは。
津谷 フランスでは、当社グループの店舗は300しかない上に、ミシュラン社の影響力が大きい国です。買収によってグループの店舗は800店にまで増加します。しかも、これらの店舗は、収益は高いが、新規ならば出店が難しい街中の店舗が中心です。当社の欧州の売り上げは全売上高の1割と小さいので、今回の買収で欧州の売り上げを伸ばしたいです。

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2016年

8月

23日

経営者:編集長インタビュー 境 正博 ジャパンミート社長 2016年8月23日号

◇「M&Aで成長する肉のプロフェッショナル」

 

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

ジャパンミートは、茨城県に本社を構え、関東で「生鮮館」や「肉のハナマサ」などのスーパーを展開する。1978年に食肉卸業として創業して以来、肉のプロとして事業追求してきた。またM&A(合併・買収)を通じて事業拡大し、今年4月に東証2部に上場を果たした。

 

── 上場を決めた理由は。

 M&Aなどで売上高1000億円が見えてきて、今後の成長戦略として上場を決めました。2013年に買収をした花正の運営する「肉のハナマサ」の体制も整ってきたので、更に攻めの経営に出ました。

 上場で集まった約40億円は、東京本部ビルと茨城県の新加工物流センターの拠点づくりに使います。

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2016年

8月

09日

経営者:編集長インタビュー 澤田道隆 花王社長 2016年8月9・16日合併号

◇「基盤研究が花王のDNA」

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 6期連続増収増益、26期連続の増配です。

澤田 当社は「絶えざる革新」を理念のベースとし、消費者のニーズの半歩先を見て、驚きや感動を与える付加価値の高い商品を提案してきました。提案して終わりではなく、そこから5年、10年かけて継続的に研究を重ね、繰り返し商品を改良し、受け入れられる商品作りをしてきたことが、業績好調の大きな要因です。

 例えば、ヘアケアシリーズ「メリット」は、40年以上続く商品です。最初はフケに特化したシャンプーとして発売しましたが、より高付加価値のものを突き詰めるうちに、地肌ケアもできる弱酸性シャンプーにシフトしました。研究・改良を重ね、現在は子供も使える「家族シャンプーメリット」に生まれ変わりました。

── 好調の要因は。

澤田 当社の単体の従業員数は6970人で、そのうちの約3分の1が研究員です。研究開発に年間約520億円、競合他社は大体売上高の2%台であるのに対し、当社は3・5%を費やしています。また、そのうちの半分を、身体の本質や泡などの物質を解明する基盤研究が占めており、これが成長のベースにあります。

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2016年

8月

05日

経営者:編集長インタビュー 市川秀夫 昭和電工社長 2016年8月2日号

◇先端化学でリチウムイオン電池材料に商機

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 昭和初期に設立された総合化学メーカー「昭和電工」は、時代に合わせて、事業を転換してきた。現在はどのような事業が稼ぎ頭なのか。

 

── 御社はどのような会社か。

市川 約100年前、国内化学産業が近代化する以前は、日本は多くの素材を海外からの輸入に頼らざるを得なかった。そこで創業者の森矗昶(もりのぶてる)らが「化学素材を国産化する」という信念の下、築き上げた事業が当社の源流だ。その後、時代に合わせて事業転換を繰り返しながら領域を拡大してきた。例えば、当社の祖業の一つがアルミニウム製錬事業だが、製造する過程で原料を溶解する電炉が必要だ。そこで、電炉の熱源となる黒鉛電極事業を始めた。黒鉛は、導電性が高く、高熱にも耐えられる素材だ。現在は国内にアルミニウム製錬事業は残っていないが、黒鉛電極はスクラップ鉄の溶解に不可欠な材料として世界的に展開する事業となっている。現在は石油化学、化学品、無機(黒鉛電極など)、アルミニウム、エレクトロニクス(ハードディスクなど)の五つの大きなセグメントで展開している。

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2016年

7月

26日

2016年7月26日号 仲尾功一 タカラバイオ社長

 

◇「コツコツ続けた遺伝子治療が実用化へ」

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 宝酒造の一事業部門から発展した会社ですね。

仲尾 宝酒造はビール事業から1967年に撤退しました。残った発酵技術者という資産を生かし、新たなビジネスを模索しました。当初は発酵技術を使った医薬品原料を作って他社に納めたりしましたが、当社が主導権を握れるビジネスを作ろうと始めたのが遺伝子工学を中心としたバイオテクノロジー事業です。

 79年に売り出した研究用試薬が、現在も主力製品です。大学や病院、研究機関向けに販売しています。初年度の製品は7品目でしたが、今では7000品目に上り、国内のバイオ試薬分野ではトップシェアです。2016年3月期の研究用試薬の海外の売り上げは74%を占めます。

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2016年

7月

19日

経営者:編集長インタビュー 大橋徹二 コマツ社長 2016年7月19日号

大橋徹二 コマツ社長

◇「断トツ」の建機サービスを作り上げる

 

 コマツは、油圧ショベルやブルドーザーなど建設機械で国内1位、グローバルでは米キャタピラーに次ぐ2位。ほぼ全世界で事業を展開しているため、「世界経済の景気敏感株」とも言われる。

 2016年度の業績見通しは、新興国経済の減速を受けて、売上高が15年度比9・2%減の1兆6850億円、営業利益は同28・1%減の1500億円とする。

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2016年

7月

12日

編集長インタビュー 辻孝夫 JVCケンウッド社長 2016年7月12日特大号

 ◇音響、通信、映像の技術を医療にも生かす

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── カーナビや車内音響などの車載事業に大きく舵(かじ)を切っています。

辻 現在、売上高の47%を占めています。2008年に日本ビクターとケンウッドが統合した時の二十数%から増えて続けています。20年度には60%にする計画で、基本的に想定通りの動きになっています。

 

── どう拡大させるのですか。

辻 例えば、国内の新車市場は、年間500万台くらいの規模です。そのうちの約6割がOEM(相手先ブランドによる受託生産)、つまり、工場から車が出荷される時にカーナビやステレオ機器などが搭載されています。残りの4割、約200万台弱が各販売店(ディーラー)でお客様が選べるディーラーオプションです。

 当社はディーラーオプションの市場で急速にシェアを拡大させています。15年9月にホンダとも契約し、昨年の下半期からディーラー向けに出荷し始めています。社名は公表できませんが、他にも大手2社と契約し、今年夏ごろから出荷予定です。

 

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2016年

7月

05日

経営者:編集長インタビュー 高岡本州 エアウィーヴ会長 2016年7月5日特大号

 

 ◇眠りを研究し、寝具を極める

 

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 ベッドの上に乗せて使う高反発マットレスパッドの製造・販売を手掛けるエアウィーヴ(本社・東京都中央区)。浅田真央さん、錦織圭さんなどスポーツ選手を起用したテレビCMでおなじみだ。

 

── ベッドに置くマットレスパッドで急成長しています。

高岡 当社は質の良い眠りをお届けすることをミッションにした会社です。人生の3分の1を占める眠りの質を上げることは、残り3分の2の質を上げることにつながります。公益性の高い会社だと思っています。

── 足元の業績は。

高岡 2015年度の売上高は120億円、今期は新商品を積極的に投入するので、130億~140億円を目指しています。主力のマットレスパッドの価格帯は3万~20万円で、百貨店の寝具売り場など150カ所以上で販売しています。

 

 ◇異業種から参入

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2016年

6月

28日

経営者:編集長インタビュー 山本謙 宇部興産社長 2016年6月28日号

◇化学部門の復活目指す

 

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 1897年、山口県・宇部の炭田を開発するために地元の人たちが出資してつくった「沖ノ山炭鉱組合」が原点。採掘された石炭が工業用として質が良くなかったため、石炭採掘以外の事業にも取り組んできた。現在、「化学」「医薬」「建設資材」「機械」「エネルギー・環境」の5事業を展開している。

 

── さまざまな製品を扱っていますが、事業戦略は。

山本 非化学部門の収益基盤を強化しながら、中核産業の化学部門を原動力に、グループ全体の成長を図っていくことを目指しています。

 復興需要やインフラ更新需要などにより、建設資材など非化学部門が伸びている一方、化学部門は2008年のリーマン・ショック後の中国国内の設備過剰から悪化していて、厳しい状況が続いています。

── 化学部門の取り組みは。

山本 ナイロン、合成ゴム、セパレーター、高機能コーティングの4事業を化学部門の積極拡大分野と位置付け、重点的に資源投入していく予定です。19年3月期に営業利益200億円レベルまでの回復を目標としています。

 化学部門の営業利益は08年3月期に過去最高の327億円だったところ、16年3月期は120億円になっていて、立て直しが道半ばです。16年3月期は設備の定期修理がなかったことや原燃料安などが寄与して一定程度回復してきたので、更なる収益の改善を目指します。

── 化学部門で事業再編を行ったそうですね。

山本 15年に化成品・樹脂カンパニーと機能品・ファインカンパニーを統合し、化学カンパニーとして再編しました。また、家電などの部材に使うABS樹脂国内首位のテクノポリマーと2位のUMG・ABS(宇部興産が50%出資)が17年10月の経営統合を目指して協議を始めました。国内外の競争激化を背景に、製造効率やコスト競争力を確保するのが狙いです。

 欧米などと比べると日本の化学会社は小さく、汎用(はんよう)品は海外展開は難しい状況となっています。提携はどの部門でも起こってきます。

── 注力していく分野は。

山本 リチウムイオン電池(LiB)の主要部材セパレーターです。車載用LiBの国内外市場の需要が高まっています。セパレーターはリチウムイオンを透過させる多孔質フィルムです。トヨタ自動車「プリウス」などのハイブリッド車や電気自動車をターゲットにしています。

 また、日立マクセルと連携し、塗布型セパレーターの加工能力も高めています。

── 資源投入するナイロン事業は。

山本 国内は宇部市、海外ではスペインとタイに、原料のカプロラクタムなどの生産拠点を設けています。食品の包装用フィルムでのグローバルナンバーワンを目指し、スペインとタイの工場でそれぞれ4万トンの増強を計画。燃料電池自動車の水素漏れ防止の役割を担うライナー(タンクの最も内側の層)用のナイロン材料などは、全世界どのエリアでも供給可能な体制を整えていきます。

 

◇ICTも導入

 

── 好調な建設資材は。

山本 セメント需要は約20年前が最盛期で、現在はその半分くらいになっています。以前から製造の合理化を図ったり、セメント製造の際に廃棄物を原燃料に使用し、処理コストを得たりすることで利益を支えてきました。一部で輸出もしています。

── 17年3月期の業績見通しは。

山本 連結売上高が前期比2%増の6550億円で、化学事業で車のタイヤに使われる合成ゴムなどの販売が増えています。営業利益は同15%減の350億円で、ナイロン原料などとして用いられるアンモニアの製造設備の2年に1度の定期修繕があり、その分、利益が下がります。

── 17年3月期から3カ年の中期経営計画が始動しました。

山本 投資額は前中期経営計画(14年3月期~16年3月期)比3割増の1500億円で、ナイロンやLiBのセパレーターなどの生産拠点の能力増強や基盤事業のコスト競争力向上にあてる予定です。最終年度の19年3月期に、連結売上高7500億円(16年3月期比17%増)、営業利益500億円(同21%増)を目指しています。

── 今後の海外戦略は。

山本 化学部門のナイロンは食品の包装用フィルムなどをスペインやタイで増産します。合成ゴムはタイヤメーカーに高機能材を拡販し、国内に加えて、タイやマレーシアの既存工場で増産を計画しています。新しい工場については、立地を含めて将来的に実施するか検討している段階です。

── 製造現場でも改革を行っているそうですね。

山本 宇部工場でICT(情報通信技術)を使った化学プラントの異常予兆検知システムを試験導入して現在改良中です。プラントに取り付けた約1000個のセンサーから集めるビッグデータを解析し、不良品の発生などを未然に防ぐのが狙いです。

── 会社の将来像は。

山本 当社は技術力や製品化する力はあるのですが、市場につなげて利益にする力が足りていませんでした。それを改善し、利益ベースで一番良かった時代を凌駕(りょうが)したいです。

 そのためには、市場調査しながら、既存の事業分野や製品の裾野を広げ、あるいは従来と異なるマーケットに商品を投入しながら、顧客ニーズに合った形の商品を提供します。

(構成=丸山仁見・編集部)

 

◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A メカニカルエンジニア(機械の専門技術者)として船を動かす歯車など回転体の設計を担当していました。

Q 「私を変えた本」は

A 日本や中国などの歴史書です。今まで文化として伝わっているもののルーツが何かを知ることが好きです。

Q 休日の過ごし方

A 近所のジムに行って体を動かしたり、美術館に行ったりします。春には庭園を見に行きました。

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■人物略歴

◇やまもと・ゆずる

広島県出身。広島県立福山誠之館高校卒業。1977年京都大学大学院修了後、宇部興産入社。2003年宇部興産機械社長、07年宇部興産常務、10年専務、13年代表取締役。15年4月から現職。63歳。

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事業内容:化学、建設資材、機械など

本社所在地:東京都港区、山口県宇部市

設立:1942年3月

資本金:584億3500万円(16年3月末現在)

従業員数:1万764人(16年3月末現在・連結)

業績(16年3月期・連結)

 売上高:6417億5000万円

 営業利益:414億800万円

 

 

【訂正しました】この記事は、本誌2016628日号の67ページを転載しています。本誌では、食品の包装用フィルムについて、スペインとタイの工場でそれぞれ増産するのは「40万㌧」となっていますが、正しくは「4万㌧」でした。また、合成ゴム生産について、「マレーシアで新工場の建設も検討しています」なっていますが、正しくは、立地を含めて将来的に実施するか検討している段階のため、本文を訂正しました。

2016年

6月

21日

経営者:編集長インタビュー ガブリエル・ベルチ アストラゼネカ・ジャパン社長 2016年6月21日特大号

 ◇研究開発重視、がん領域で新薬開発に挑む

 

── 売り上げが短期間で拡大しています。

ベルチ 2015年度の日本法人の売上高は3232億円(薬価ベース)で、国内製薬企業の売上高ランキングでは、12年の12位から16年第1四半期は7位まで浮上しました。主力の高脂血症治療薬「クレストール」、抗潰瘍薬「ネキシウム」などが好調だったほか、新薬も貢献しました。今後はがん治療薬の新薬も加わるので、売り上げ倍増を見込んでいます。

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2016年

6月

14日

経営者:編集長インタビュー 柿木厚司JFEスチール社長 2016年6月14日号

柿木厚司 JFEスチール社長

◇技術開発、職場改革で存在感示す

 

 世界的な供給過剰・市況悪化に見舞われている鉄鋼業界。国内2位のJFEスチールも2016年3月期は、売上高2兆4451億円(前期比4287億円減)、経常利益は278億円(同1607億円減)の減収減益だった。同社の柿木厚司社長は「中国の動向には引き続き注意を要する」と話す。

 

── 足もとの事業環境は。

柿木 2017年3月期は経常利益で100億円の減益を予想する。これは事業計画を立てた1~3月の鋼材価格が底値だったことが原因だ。その後、4月に鉄鋼価格が上がった。鋼材価格が底値だった時に立てた業績予想なので、外部からは「上ぶれする」とも言われる。しかし、やはり中国の動向は気になる。

 

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2016年

6月

07日

経営者 堀場厚 堀場製作所会長兼社長 2016年6月7日特大号

◇世界の産業を支える「はかる」プロ集団

 

── まず、御社の強みや特徴を教えてください。

堀場 固体や液体、気体をより正確に測るための分析・計測装置を作っています。1945年に父の雅夫が創業して以来、開発型企業として事業を続けてきました。

 決して大きな企業ではありませんが、事業分野は多岐にわたり、自動車や半導体など主要産業を支える「マザーツール」を手掛けている自負があります。取引先には主要企業の研究開発担当者も多い。社員は、こうした優秀な技術者と対等にわたり合わなければなりませんから、個性や才能を持つとんがった人間でなければ務まりません。

 社是に「おもしろおかしく」とうたっているのは、興味を持って自発的に仕事に取り組まないと、よいモノを作れないと考えたためです。

 

 2015年12月期の売上高は前年比11・7%増の1708億円、営業利益は同12・5%増の193億円と、ともに2年連続で過去最高を更新した。2月に発表した新しい中期経営計画では、2020年に売上高2500億円、営業利益300億円の目標を掲げる。

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2016年

5月

31日

経営者:編集長インタビュー 大西洋 三越伊勢丹ホールディングス社長 2016年5月31日号

◇百貨店受難の時代を「ものづくり」で生き残る

 

 百貨店大手の三越伊勢丹ホールディングスの2016年3月期決算は、売上高1兆2872億円(前年比1・2%増)、経常利益367億円(同6・2%増)で売り上げ・利益ともに微増となった。大西洋社長は「中間層の消費減退が顕著」と危機感をあらわにする。

 

 ◇製造小売りを拡大

 

── 足もとの事業環境は。

大西 中間層の消費の落ち込みを富裕層の旺盛な消費でカバーしてきたが、その富裕層の消費も3月ごろから落ちてきている。円安によりモノの価格が上がる一方で、多くの人は可処分所得が増えず、消費にまわすお金が減っている。

 全国の百貨店売上高は1990年代初頭のバブル崩壊直前まで10兆円近くあったが、現在は6兆円まで減少している。百貨店は全国に約240店あるが、毎年数店閉店している。業界で危機感を共有する必要がある。

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2016年

5月

24日

経営者:編集長インタビュー 池田育嗣 住友ゴム工業社長 2016年5月24日特大号

 ◇常に先を見て

  欧米のビジネスチャンスをつかむ

 国内シェア2位、世界シェア6位のタイヤメーカーで、「ダンロップ」や「ファルケン」ブランドでグローバル展開している。2015年12月期は売上高が前期比1・3%増の8487億円、当期純利益が同4・9%増の558億円と、ともに過去最高。昨年10月には提携効果が薄れたことなどから、1999年から続けてきた米グッドイヤー社との資本・業務提携を解消した。

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2016年

5月

17日

経営者:編集長インタビュー 林野宏クレディセゾン社長 2016年5月17日号

 ◇アジアのネオファイナンス企業を目指す

 

 流通系カード会社の首位を走るクレディセゾン。2015年3月期の営業収益は2590億円、16年3月期の予想は2730億円。近年は、フィンテック(金融とITの融合)にも積極的だ。

 

── 他のカード会社との違いは。

林野 クレジットカード会社を銀行系、流通系、信販系と分けると、クレディセゾンは流通系カード会社を確立させたと言えます。

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2016年

5月

03日

経営者:編集長インタビュー 田口三昭 バンダイナムコホールディングス社長 2016年5月3・10日合併号

田口三昭 バンダイナムコホールディングス社長

 

◇日本のキャラクターで世界をつなぐ

 

「機動戦士ガンダム」「ドラゴンボール」など人気アニメーション・マンガを中心にプラモデルや玩具を展開するトイホビー、家庭用・業務用ゲームを中心とするネットワークエンターテインメント、既存の人気映画・音楽のほか新作にも取り組む映像音楽プロデュースの3領域を事業の柱に据える。

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2016年

4月

26日

経営者:編集長インタビュー エバ・チェン トレンドマイクロ社長 2016年4月26日号

◇情報セキュリティーは絶えず進化している

 

 1991年に発売を開始したセキュリティーソフト「ウイルスバスター」が国内市場で高いシェアを誇る。

 

── ウイルスバスターを普及させるまで、どのような苦労がありましたか。

チェン なぜセキュリティーソフトが必要なのかということを顧客が認識していなかったので、まず最初に重要だったのは危険性を周知することでした。名前が映画の「ゴーストバスターズ」に似ていたので、親しみを持ってくれたこともあったかもしれません。米マイクロソフト社のパソコン用基本ソフト「ウィンドウズ95」の導入とともに市場に浸透しました。

 

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2016年

4月

19日

経営者:編集長インタビュー 兼元謙任 オウケイウェイヴ社長 2016年4月19日号

◇兼元謙任 オウケイウェイヴ社長

◇いじめ根絶の思いが国内最大級Q&Aサイトへ

 

 国内最大級のQ&Aサイト「OKWAVE」では、家電の使い方から病気の悩みまでさまざまな話題について、会員同士が質問と回答を無料で投稿できる。非会員でも閲覧することができ、月間利用者は3500万人に上る。

 

── Q&Aサイトを作ったきっかけは。
兼元 小学生の頃に経験したいじめをなくしたい思いがベースです。社会に出て、ホームページの作成方法をインターネット上の掲示板で質問したところ、そこは質問をする場ではなかったので、非難を浴び、話を聞いてもらえませんでした。いじめられた時も同じ。誰かに相談をすることもできませんでした。だから、対話のできる質問専門のサイトがあればいいと思いました。

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2016年

4月

12日

経営者:編集長インタビュー 芦田 信 JCRファーマ会長兼社長 2016年4月12日特大号

◇芦田 信 JCRファーマ会長兼社長

◇「難病治療薬の開発に存在意義がある」

 

 JCRファーマは、遺伝子組み換えや細胞培養といった最先端の領域で、医薬品の開発から製造、販売まで手がける。

 

── 強みは何ですか。

芦田 1975年に創業し、人間の尿からたんぱく質を精製して薬を作りました。酵素やホルモンといったたんぱく質の精製技術が強みです。

 その後、主流になった遺伝子工学で開発するうえで、私は研究部門に一つ要求しました。通常は培養の際に牛の血清を使いますが、クロイツフェルト・ヤコブ病などのリスクがあるため、動物由来の成分を使わずに開発してほしい、と。研究部門は見事にやってくれました。第1号が2010年に発売した、透析患者の腎性貧血を治療するための「エポエチンアルファBS注JCR」です。

 この製品はバイオシミラー(バイオ後続品)のため、当社は世間からバイオシミラーの会社として見られることが多いのですが、これは遺伝子工学において動物由来の成分を使わず開発できるか、一つの実験でした。現在、希少・難治性疾患を対象に新薬を開発しています。

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2016年

4月

05日

経営者:編集長インタビュー 加留部淳 豊田通商社長 2016年4月5日特大号

 ◇自動車以外の事業も成長を目指す

 

 豊田通商はトヨタグループの総合商社。2015年3月期の連結業績は、売上高8兆6634億円、営業利益1694億円と過去最高だった。20年3月期の目標として、当期(最終)利益1400億円、ROE(株主資本利益率)10~13%を掲げている。

── 特に自動車関連が強いです。

 

加留部 自動車バリューチェーンを確立しています。例えば、新素材・先端技術の開発、関連資源の調達、部品の製造販売、タイヤの組み付け、使用済み自動車の資源の再利用など、自動車ではあらゆる事業を行っています。販売面では、代理店がある国でトヨタ車の販売戦略をつくっているほか、ディーラーでの販売、自動車の販売金融や中古車販売まで手がけているのが強みです。

 

── トヨタグループの強みですね。

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2016年

3月

29日

経営者:編集長インタビュー 松本大マネックス証券会長CEO 2016年3月29日特大号

松本大マネックス証券会長CEO

◇新しい投資体験のために技術革新を続ける

 

── マネックス証券の強みは。

松本 当社は常に利用者の選択肢を広げてきました。日本株、香港株、米国株、世界中の投資信託、為替など幅広く取り扱っています。米国株については、他社が1000銘柄程度に対して、当社は約3000銘柄、つまり米国のほとんどすべての銘柄を扱っています。米国株の取扱時間も他社に比べて圧倒的に長い。そこが最大の特徴かな。

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2016年

3月

22日

経営者:編集長インタビュー 江崎勝久 江崎グリコ社長 2016年3月22日号

 

 ◇一生付き合える商品をつくる

 

 1921年に創業者の江崎利一氏がグリコーゲンを主成分とする栄養菓子「グリコ」を製造販売する江崎商店を創立。菓子のビスコ、プリッツ、冷菓のパピコ、乳製品のプッチンプリンなどのロングセラー商品を生み出してきた。勝久社長は利一氏の孫にあたる。

 

── 創業以来の理念は何ですか。

江崎 「おいしさと健康」は当時から変わらない理念です。「グリコ」には開発当時、「毎日食べることによって健康な体になる」というコンセプトがありました。子どもの2大天職は「食べること」と「遊ぶこと」と考え、両要素を入れるため、27年からおもちゃを付けました。菓子とおもちゃで一つの商品と考えています。

── 商品が多岐にわたりますが。

江崎 菓子をはじめとした加工食品、アイスクリームなどの冷菓、乳製品のほか、化粧品、天然原料、麺のコシを出すデンプン、グルテンなどの食品原料なども扱っています。コンビニで販売されている麺類の中には当社の原料が使われているものもあります。粉ミルクは、2001年に製造販売を行っていた米ワイスを子会社化、アイクレオに社名変更し、事業に進出しました。

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2016年

3月

15日

経営者:編集長インタビュー 森下 一喜 ガンホー・オンライン・エンターテイメント社長 2016年3月15日号

 ◇「パズドラ」でスマホゲームトップ

 

 スマートフォンやパソコン、家庭用ゲーム機など、幅広い機種を対象にゲームソフトを開発・販売するガンホー・オンライン・エンターテイメント(ガンホー)。主力は、2012年に配信開始したスマホ向けオンラインゲーム「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」だ。

 

── パズドラの特徴は。
森下 スマホやタブレット端末で遊べるオンラインゲームです。画面上に表示されたパズルを三つ以上組み合わせると、味方のキャラクター(モンスター)で敵を倒すことができます。直感的に楽しめます。次のステージに進んだり、新たなモンスターを手に入れたりといった要素を盛り込み、継続しやすくしています。

── 利用状況はいかがですか。
森下 消費者が作品を手に取ったことを示すダウンロード数は、16年1月時点で累計4000万件を超えました。

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2016年

3月

08日

経営者:編集長インタビュー 中村吉伸 セイコーホールディングス社長 2016年3月8日特大号

◇「スイスに並ぶ世界の高級ブランドへ」

 

── 高級時計が売れています。
中村 商品と流通、広告宣伝が三位一体となってうまく回転しています。国内市場が好調なところに、訪日外国人(インバウンド)の買い物需要が上乗せとなりました。
 当社は2012年に世界で初めてGPSソーラー時計(衛星から電波を受信して時刻を補正)、アストロンを発売しました。中心価格帯は20万~30万円で、それを機に消費者の目が高価格帯の時計に向かいました。
 流通では、グランドセイコーとクレドール、ガランテの三つの高級ブランドを扱う「セイコープレミアムウオッチサロン」を国内の百貨店や専門店に30カ所展開しています。
 広告宣伝はこれまで他社ほど投資していませんでしたが、ここ2、3年、力を入れています。
── なかでもグランドセイコーの人気は高いですね。
中村 針一本の磨きまで粋を極めた、実用時計の最高峰です。1960年の誕生から基本は変えていませんが、ようやく花開いてきました。
 14年にスイス・ジュネーブの時計グランプリで、日本の機械式時計では初めて「小さな針」部門賞を受賞しました。クオーツ時計で壊滅的な打撃を受けたスイスにとって、クオーツを開発したセイコーは許しがたい存在です。それが機械式時計で認められたのですから感動的でした。

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2016年

3月

01日

経営者:編集長インタビュー 津田純嗣 安川電機社長 2016年3月1日号

 ◇産業用ロボットで世界トップを走り続ける

 

── 売上高約4000億円のうち、約21%が中国市場です。最近の中国経済減速をどう見ますか。

津田 中国には1990年代に参入し、製鉄所の大型高炉に使うドライブシステム(モーターと速度を制御するインバーターで製造工程ラインを効率的に動かす装置群)、セメントや鉱山向けのコンベヤー、素材産業の産業用ロボットなど当社の製品が多く使われています。そして、自動車、スマートフォン、半導体、太陽光パネル、液晶パネルを製造するロボットが伸びてきましたが、各分野で設備過剰になっています。市場拡大の後に過剰設備に陥る歴史が繰り返されているという認識です。

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