経営者:編集長インタビュー

2017年

11月

28日

健康データで医療費削減目指す 谷田千里 タニタ社長

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 創業当初から体重計を作っていたのですか。

 

谷田 1923年にできた前身の会社は健康とは全く逆の商品、たばこのケースを作っていました。その後44年に祖父(故・五八士・元会長)がOEM(相手先ブランドによる受託生産)でトースターなどを作り、59年に体重計の製造を始めました。「ヘルスメーター」と銘打って売り始めたのは当社が最初です。祖父は体重計の普及を図り、商標は取らなかったようです。体脂肪計などでも同じように商標は登録していません。

 

── 体脂肪計の開発の経緯は。

 

谷田 日本初のデジタル表示式ヘルスメーターを作ったことが体脂肪計の開発につながりました。父(大輔・前会長)が社長だった92年に世界初の「乗るだけで測れる」体脂肪計として発売し、爆発的にヒットしました。その後、筋肉量など体の中身を測れる世界初の業務用「体組成計」へと発展し、現在は売上高の約5割を占めるメインとなっています。

 

── 競合も多いですが、強みは。

 

谷田 原点のものづくりに力を入れていることでしょうか。秋田と中国・東莞の自社工場で作っています。体脂肪計を開発した後も「もっとうまくできる方法を」と探っていました。その間に計測の技術が発達して体の水分量や内臓脂肪、推定骨量など体の構成が分かるようになりました。そこで「もう一つ上のものが出せる」として生まれたのが、世界初の体組成計です。重量センサーなどの考え方が生かせる血圧計、どの程度体を動かしたかの消費カロリーを計測する「活動量計」、アルコール度数計などを作っています。

 

── 常に技術革新を考えるDNAが流れている。

 

谷田 父が社長だった時代は「世界初を目指そう」という目標を理念に掲げていました。2008年に私が社長に就任してからは掲げていませんが、「面白いものを作ろう」という社風は今でも流れています。

 

 ◇レシピ本は542万部

 

── レシピ本『体脂肪計タニタの社員食堂』は「カロリー控えめながらも食事が楽しめる」と評判を呼び、一世を風靡(ふうび)しました。

 

谷田 09年に本社の社員食堂がテレビ番組で紹介されたのがきっかけです。売れるとは思っていませんでしたが、10年に1作目を発行し、シリーズ4冊で累計542万部です。30万部で大ヒットといわれる中で、今までとは比較にならないほどブランドが広がりました。

 

── レストランも展開しています。

 

谷田 タニタ食堂の屋号を付けているのは10店舗。メニューを出しているものを含めると約30店舗です。

 

── まさに特需ですね。

 

谷田 社内ではレシピ本のロイヤルティーの比率を上げようという声もありましたが、変えませんでした。当時は体脂肪計のブームが終わり、売り上げが落ちてきた時期で、改革を進めていました。基盤を作らなければならない時期に一時的な「バブル」で会社が踊らされるのを防ぎたかった。ロイヤルティーを上げて赤字の補填(ほてん)に使っていたら、ダメになっていたかもしれません。その分、出版元は工夫して宣伝してくれたのでうまくいったと思います。

 

── 今、力を入れていることは。

 

谷田 個人の体重などをチェックし、これを基に健康指導などを行う「タニタ健康プログラム」を展開しています。企業や自治体などを対象に、機器やデータ、健康指導のノウハウなどを含めた仕組みを買ってもらうビジネスです。具体的には従業員や住民には活動量計を配り、体重や血圧を測る計測スポットなどで個人のデータをオンラインで結びます。データは個人で確認できるほか、指導にも役立てます。

 

── 企業も行政も医療費の負担に頭を悩ませています。

 

谷田 父は体組成計や血圧計などで得たデータの活用を先読みして、個人向けの健康データを管理する子会社を作っていましたが、業績は芳しくありませんでした。そこで09年、この会社を活用し、対象を企業や自治体向けに変えて使いやすいものを作ろうと、開発を始めました。本社の社員約200人を対象に歩数計や体組成計などから得た個人の健康データを管理して「見える化」を進めるとともに、データを基に専門スタッフが改善指導などをする仕組みを作りました。

 

 取り組みの結果、適正な体重の社員が約5%増加し、社内での医療費が導入前より1割弱減りました。

 

── 1割とはすごいです。

 

谷田 プロジェクトの成功を基に健康プログラムとして改良し、毎年改定を重ねています。約100の企業や自治体で導入されています。

 

 国も健康経営を政策として進めており、厚生労働白書にも、メタボリック症候群の解消事例や、健康寿命延伸の取り組みとして2度取り上げられました。

 

 ◇実績持って世界へ

 

── この先、どんな会社にしたいですか。

 

谷田 社員食堂のおかげで「健康についてはタニタに相談すればいい」というイメージが広がりました。このイメージを維持しつつ、健康データを活用した医療費の削減をはじめ、日本の社会保障費の適切化、健康を図りたい。そのためにもプログラムを全国に導入してもらえたら、と思います。そして実績を持って世界に攻めていきたいですね。

(構成=米江貴史・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 米国の販売会社にいました。それまでは正しい理論を盾に仕事をしていましたが、人心掌握が大切だと気づかされました。正しいことばかりを言っていても人は聞いてくれない。コミュニケーションをとり、自分の立場を理解してもらった方が仕事はしやすいと思います。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 『金持ち父さん貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ著)です。家や車などを持つことが大切だと思っていましたが、価値概念が全てなくなりました。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 会社と自宅の掃除をしています。

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 ■人物略歴

 ◇たにだ・せんり

 1972年生まれ。大阪府出身。立教高校(埼玉県)、佐賀大学理工学部卒業。船井総合研究所を経て、2001年にタニタ入社。05年米国販売会社のタニタアメリカINC取締役、07年タニタ取締役を経て、08年から現職。45歳。

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事業内容:家庭用・業務用計量器などの製造・販売

本社所在地:東京都板橋区

設立:1944年

資本金:5100万円

従業員数:グループ1200人(2017年3月末)

業績(17年3月期、連結)

 売上高:158億円

 営業利益:非公表

2017年

11月

21日

ケーブル網やデータセンターに回帰 庄司哲也 NTTコミュニケーションズ社長

Interviewer 金山 隆一(本誌編集長)

 

── 現在の経営環境は。

 

庄司 1999年に当社がNTTの子会社として誕生してから18年がたち、通信業界を巡る競争関係は変わっています。当社を含めた通信企業が展開するネットワークの上で、グーグルやアマゾンなどのIT(情報技術)サービスが展開されており、米国のシリコンバレーを中心に急成長するIT企業が増えています。

 こうしたなかで、我々は原点に戻って、ネットワーク網やデータセンターなど物理的なインフラを持つ強みを生かしています。

── 御社が持つインフラとは

 

庄司 我々は、190以上の国や地域に通信ネットワークのサービスを展開しています。それを支えるのが海底や大陸を横断する通信ケーブルです。日米間の太平洋、ロシア経由、インド経由などケーブルの長さは28万キロメートル、地球7周分に及びます。

 

 2011年3月の東日本大震災の時には、4本ある日米間の海底ケーブルが3本切れてしまいました。最終的な復旧には半年以上かかりました。この教訓を生かして、当社が運用する船舶としては4隻目となる新しい海底ケーブル敷設船を今年3月に竣工させました。名前は社内で公募し、「きずな」に決まりました。我々の「つなぐことへの使命感」をイメージできる名前になりました。

 

── そのネットワーク網は世界にも通用しますか。

 

庄司 当社は「通信の運び屋」として、世界のトップ3に入っています。例えば、データセンターは、世界で140カ所以上展開しています。保有するサーバーの面積では、自社で使う面積も含めると世界一です。企業にデータセンターを貸し出すことを専門とする2社を含めると世界3位になるかもしれません。

 

 このインフラを、例えば、インターネット上のセキュリティーやクラウドサービスなどに生かしながら、「ICT(通信情報技術)業界における総合商社」のような存在になっていきたいです。

 

 ◇HFT、陰の立役者

 

 NTTコミュニケーションズの設立時を振り返ると、都道府県を超えて行われる長距離通信事業や、国際通信事業などを担う会社として誕生した。当時は黎明(れいめい)期だったインターネット通信も含め、グローバル市場でも自由に事業を伸ばすことができた背景がある。

 

── NTTコミュニケーションズが持つインフラは、どのように使われているのですか。

 

庄司 当社の海底ケーブルは、通信の速さにも競争力があります。日米間をつなぐ「PC─1」という海底ケーブルは通信速度が一番速いと思います。米国のHFT業者(株式などを1000分の1秒単位で売買する高頻度取引業者)から見ると、日米間の通信は我々のケーブルが、一番速く取引を成立させられます。

 

 また、当社はシンガポールや香港などアジアでも競争力のある通信ケーブルを持っています。特に、香港やシンガポールでは、証券取引所の近くにつながっていますので、こちらの通信速度も速いです。いずれのネットワークもいっぱいいっぱいの状況で、増設・増量をしないといけないくらいです。同じケーブルの中で情報を圧縮して送る「多重化」技術で対応していきます。

 

 ◇クラウドは集約へ

 

── 人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット化)の取り組みはどうですか。

 

庄司 例えば、今は言語解析AI「COTOHA(コトハ)」への問い合わせが多くなっています。ユーザーが質問すると、回答することもできます。これをコールセンターやチャットによる顧客対応サービスに使うことができます。

 

── M&A(企業の合併・買収)については。

 

庄司 それぞれの市場から「仲間」を見つけています。欧州・中近東、米国、アジア太平洋地域の3地域に分けて、「足らざるピース」を補完する形でM&Aをしてきました。

 直近では、15年にドイツのデータセンター事業者「イーシェルター」、16年にスペインのクラウド業者「アトラス」も仲間に入りました。現在では、グループ従業員のうち、約5割が海外で働いています。

 

── NTTグループのなかで重複する事業もあります。

 

庄司 持ち株会社のNTTと協議しているのは、まず、クラウドサービスは我々のサービスに集約していこうという議論が出ています。

 

 例えば、グループ会社のなかに、(NTTが10年に買収した南アフリカ企業)「ディメンションデータ」があります。彼らのクラウドサービスを我々のサービスに統合する作業を今年度中に終えます。来年度からは一つのブランドでクラウドを提供できるようになると思います。

 

「OCNモバイル」ブランドの格安スマートフォン事業は、携帯電話大手3社が出す高品質のサービスと、我々のサービスではかなりの違いがあります。また、格安スマホ事業の延長には、将来的にSIMカードを使ったIoTに関する新事業にも生かしていけるものがあると考えています。

 

── 中期的な目標はありますか。

 

庄司 16年度の売上高は1兆2830億円、営業利益は1325億円でした。これを、20年度に売上高1兆5000億円を目指します。そのうち、海外比率は15年度の27%(3500億円)から、40%の6000億円にしていく目標です。

(構成=谷口健・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 日本電信電話の民営化のプロジェクトチームに入っていました。政府や各省庁に、「民営化でこんなによくなる」というシナリオを見せに行っていました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 司馬遼太郎の『坂の上の雲』です。

 

Q 休日の過ごし方

 

A クルマが好きなので、録画したカーレースのビデオを見ます。

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 ◇しょうじ・てつや

 都立青山高等学校、東京大学経済学部卒業後、1977年、日本電信電話公社(現・NTT)に入社。NTT西日本で人事部長、NTTで総務部門長。2012年、NTTコミュニケーションズ副社長(営業担当)を経て、15年6月に社長就任。63歳。

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事業内容:電気通信事業など

本社所在地:東京都千代田区

設立:1999年7月

資本金:2117億円

従業員数:グループ2万1900人、単体6400人

業績(2016年度)

 売上高:1兆2830億円

 営業利益:1325億円

2017年

11月

14日

野菜の国産化と厨房の自動化を追求 米浜和英 リンガーハット会長兼CEO

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 2017年2月期決算では最終(当期)利益が3年連続で過去最高と業績が好調です。

 

米浜 健康志向や安全・安心という意識が高まる中で、国産野菜を使って手ごろな価格で長崎ちゃんぽんを提供していることが受けているのではないかと思っています。

 

 05年に日本マクドナルド出身の八木康行氏を社長に据えて会長に退いたが、業績が低迷し、08年にトップとして復帰した。

 

── 外部から社長を呼んだ理由は。

米浜 生え抜きの社員が社長をするのはまだ早いと思っていました。社員は私しか経営者を見ていないので、外部の経営者が来れば勉強になると思いました。

── 経営が厳しくなった要因は。

 

米浜 外資系の会社は自分で工場を持たずに外注することが多いですが、そのやり方が当社ではうまくいかなかったのだと思います。また、業績が悪くても社員に同じようにボーナスを出したり、役員の人数を増やしたり、売り上げを確保するためにクーポンを発行して値引きするなどしましたが、それでは利益がなかなか出ません。赤字の店を閉めると、特別損失が出て会計上の見かけが悪くなるため、利益が出ない店が増える状況でした。

 

── 経営トップに戻ってきた時の決意は。

 

米浜 このままでは会社がだめになると思い、08年に復帰しました。もともとモヤシやキャベツは国産でしたが、とにかくおいしいものを提供しようと思い、ニンジンやタマネギ、コーンなど全ての野菜を国産化しました。ただ、コストは上がりました。当初は年間13億円増えるという試算が出ました。

 そこで、それまで外注していた野菜の加工をやめ、土がついたままの野菜を自社の工場に持ってきて、自分たちで洗ってカットするなどで効率化を図りました。それでも年間10億円のコストアップです。値引きをやめる、不採算店舗を閉める、自社工場を生かすという三つを徹底しました。

 

── すぐに効果はありましたか。

 

米浜 10億円も材料費が上がるわけですから、価格に転嫁せざるを得ませんでした。最初はお客さんも簡単には受け入れてくれませんでしたが、テレビ番組で国産野菜にこだわる取り組みなどが紹介されたこともあり、徐々に売り上げは増えました。

 

── 社員への対応は変えたのでしょうか。

 

米浜 ボーナスは業績連動型にしました。まだ達成できていませんが、社員1人当たり売上高1億円を目標にしています。ただし、経営の効率化を進めても、社員の教育費だけは減らしませんでした。マニュアルも大事ですが、マニュアルを執行するための根本的な精神を、しっかり教育する必要があると考えました。

 

 ◇フードコートに出店

 

── 効率化で重点的に取り組んでいることは。

 

米浜 1994年からトヨタ生産方式を勉強して、厨房(ちゅうぼう)の自動化を進めています。

 

当時は「あそこの店はおいしいけど、ここの店はおいしくない」「30分間待たされた」といったクレームが多く、店によって味や量にバラつきがあって短時間に提供できないという問題がありました。中華鍋で4人前をまとめて作っていたので、どうしても味や量にバラつきが出て、混雑時は提供も遅れてしまっていました。さまざまな業種の企業が入会しているトヨタ生産方式の研究会では「1個づくりをしないとだめだ」と指摘されました。1個ずつ作れば味も量も安定するということです。

 

── 自動化の進捗(しんちょく)状況は。

 

米浜 02年ごろから、一定時間でIHヒーター上を鍋が自動で移動していく「自動鍋送り機」や「自動野菜炒(いた)め機」を導入し、リンガーハットの約650店舗全てで自動化しています。作業環境は飛躍的によくなりました。ラーメン屋やうどん屋の厨房は、麺をゆでるので夏は40度くらいになり、湿度も高い。今の形になってからは、厨房と客席の温度の違いは1~2度になりました。1個ずつ作るので味と量も一定になり、素早い提供も可能になりました。

 

 このため、ショッピングセンターのフードコートにも出店しやすくなり、今では約350店舗あります。昔は、中華鍋で作れるようになるには最低でも2~3週間はかかりましたが、今はマニュアルを覚えれば、すぐに作れるようになります。従業員の教育時間も短くなり、パートやアルバイトの人材募集もしやすくなりました。

 

── 価格の戦略は。

 

米浜 西日本では8月にちゃんぽんを520円から540円に値上げしましたが、販売量への影響はほとんどありません。麺の増量が無料なことなどを考えると、500円台で食べられるのはまだまだ安いということだと思います。食材や物流費などが上がる中で、どこかでコストを吸収する必要があります。まずは西日本でテストをして、東日本でも上げるか判断します。

 

── 今後の目標は。

 

米浜 売上高経常利益率10%、国内1000店舗、海外で半分稼ぐ体質にすることを目標に掲げています。日本は人口が減少していくので、ハワイやタイなどに15店舗ある海外事業を拡大する必要もあります。常に先を見て、もっといい品質のもの、もっとお客さんに喜ばれるものを追求していこうと考えています。

 

(構成=松本惇・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 創業時から社長をしていた兄が急死して32歳で社長になりました。1、2年は大変でしたが、株式上場を目指して経営するようになりました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 『NPSの奇跡』(篠原勲著、東洋経済新報社)と、『モノづくりの経営思想』(木下幹彌編著、同)です。この本でトヨタ生産方式を学び、経営効率化に役立てました。

 

Q 休日の過ごし方

A ゴルフをすることが多いです。ウオーキングは休日を含めて毎日しています。

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 ◇よねはま・かずひで

 1943年生まれ。鳥取県出身。鳥取県立鳥取西高校卒業後、前身である株式会社「浜かつ」設立時(64年)から参加。65年に取締役、76年に社長、2005年に会長。06年に代表権のない会長に退き、日本フードサービス協会会長を務めた後、08年に代表権のある会長に復帰。一時社長も兼任し、13年から現職。73歳。

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事業内容:長崎ちゃんぽんなどの専門店を運営

本社所在地:東京都品川区

設立:1964年3月7日

資本金:90億200万円

従業員数:541人(2017年9月現在・連結)

業績(17年2月期・連結)

 売上高:438億4400万円

 営業利益:32億8400万円

2017年

11月

07日

防災設備を通じ人命と財産を守る 山形明夫 ホーチキ社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 社名から製品が想像できますね。

 

山形 防災を通じて「人命と財産を守る」という経営理念を掲げ、火災報知機のほか、消火設備を作っています。1918年4月2日に設立し、来年100周年を迎えます。火災報知機は住宅用警報器の設置義務化が2006年に始まり、テレビコマーシャルも流しましたので、知名度はあります。

 

── 野球場でよく看板を見ます。

 

山形 知られていませんが、ドーム球場の消火設備「大規模放水銃システム」を開発しました。火災を感知したら燃えているところを目がけて放水するもので、第1号は東京ドームです。他に名古屋、大阪の各ドーム球場、東京ビッグサイトや幕張メッセといった国際展示場などに設置しています。情報通信分野ではセキュリティーシステムも手がけています。

 

── センサーの仕組みは。

 

山形 主に煙、熱、一酸化炭素(CO)を感知します。米国は全てを一体化したものを求められることがありますが、日本は規格上、それぞれの機能を分けています。例えば厨房(ちゅうぼう)で煙が出やすいところは、COと熱を感知するものにします。

 

── 何台ぐらい出ていますか。

 

山形 一般用、住宅用感知器の台数は国内が232万個、海外が175万個でした。今年は海外の方が多くなるかもしれません。

 

── 情報通信はどんなことをしていますか。

 

山形 一番多いのがセキュリティー分野です。防犯カメラの売り上げ構成が多いです。他の企業にはない事業で、売り上げの約2割を占めています。

 

── 売上高の構成は。

 

山形 売上高(17年3月期)は連結731億円のうち、火災報知設備が69・2%、消火設備12・9%で、防災事業で82・1%を占めます。火災報知設備はビルなど大規模建築物の新築工事で、ゼネコンなど取引先に供給することが多いです。市場は私どもを含めた4社で93%を占めています。

 民間調査機関の調査では、シェアは大規模建築物向けではトップで、住宅用など中小規模の建築物向けでは2位です。

 

 ◇早い海外展開強みに

 

── 生産拠点は。

 

山形 工場は国内が町田(東京)、宮城、茨城で、海外では米カリフォルニア州、英ケント州にあります。

 

── 海外展開はいつからですか。

 

山形 61年にタイへ火災報知機を輸出したのが始まりです。米国へは71年、英国へは86年にそれぞれ進出しました。2012年には英国の受信設備機器メーカーを買収しました。

 海外事業の強化に拍車がかかったのはここ15年ほどです。寡占状態の国内市場で1%の利益を上げるのは大変ですが、海外には伸びしろがあります。

 

── 現地の生産状況は。

 

山形 米、英両国でセンサーを、英国では火災情報の受信機器設備も作っています。英国で買収したメーカーでは、受信機器設備の部品を外注せず、一貫生産しています。人手はかかっていますが、不良品は出さない取り組みをしています。

 

── 他社にない強みは。

 

山形 歴史が長いこともありますが、海外事業の展開を早めに進めたことです。感知器の規格は米国規格と欧州の規格、日本の消防法の規格しかありません。海外事業は現地の規格に合わせて早期に対応することが大切です。私たちは3種類の規格の最も厳しい基準をクリアできる基準を設定しています。海外工場にも適用しているので各国の要望に応えられ、高品質も維持しています。

 

── 売上高に占める海外比率は。

 

山形 海外比率は他社より高く、現在は売上高の14%を占めています。これを20%に引き上げることを目指しています。海外製の低価格の製品はありますが、少々高くても高品質の製品を供給しています。

 

 ◇更新とメンテナンス強化

 

── 他に力を入れていることは。

 

山形 需要がある更新工事に力を入れ始めました。一般機器は大体25年、住宅用は10年サイクルです。これまでは新築工事で競争してきましたが、12年から業績が回復して4年連続増収増益となったのはここが強くなったからです。

 メンテナンスにも力を入れています。今や全体の売り上げの19%を占めるようになりました。メンテナンスによって、安心安全を提供し続けられ、更新の需要にもつながります。製品の開発・販売・工事・メンテナンスと、長期のサイクルに対応して、一度仕事をもらうと、ずっと続けられます。安定した経営基盤になりつつあります。

 

── 未来の防災設備は。

 

山形 海外では避難や弱者に対する考え方が先んじています。日本は非常灯があるぐらいですが、避難指示まで出る報知機のほか、火災発生を感知するだけでなく、さまざまな情報を得られるセンサーも出るかもしれません。

 

── この先どんな会社にしていきたいですか。

 

山形 火災による犠牲者ゼロを目指した世の中づくりに貢献したい。火災で人が亡くなったというニュースを聞くと、痛みを感じます。業務提携やM&A(合併・買収)も考えていきたいですね。

(構成=米江貴史・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 38歳のときに出先の営業所長になりました。人の少ないところでいかに成果を上げるか、という部署経営を経験しました。転換期だったと思います。それがなければ、今の立場にはいなかったかもしれません。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 酒巻久さんの『ドラッカーの教えどおり、経営してきました』です。1冊でドラッカーの良いところが手軽に読めて感銘を受けました。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 1日はプライベートでのゴルフです。もう1日は家族に料理を作ります。酒のさかなになるものが多いです。

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 ■人物略歴

 ◇やまがた・あきお

 1950年生まれ。宮城県出身。県立石巻高校、東北学院大学工学部卒業後、73年ホーチキ入社。宇都宮営業所長、人事部長、取締役管理本部長、専務取締役海外本部長などを経て2017年6月に社長就任。67歳。

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事業内容:火災報知、消火、防犯など各設備の製造、販売、施工や保守管理

本社所在地:東京都品川区

設立:1918年4月

資本金:37億9800万円

従業員数:単体1306人(2017年3月末)

業績(17年3月期・連結)

 売上高:731億1800万円

 営業利益:54億1700万円

 

 

2017年

10月

31日

次世代車市場の「台風の目」になる=小谷進・パイオニア社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── オーディオのイメージが強いパイオニアですが今の事業領域は。

 

小谷 1938年にホームオーディオ向けのスピーカー事業で創業してから、2018年1月で80周年を迎えますが、現在は車載機器事業に経営資源を集中しています。

 

 主力商品は「カーオーディオ」と「カーナビ」で、比率は金額ベースで6対4です。この二つで全事業の8割を占めます。それぞれアフターマーケット(市販)と自動車メーカーのブランドで生産するOEM(受託生産)があります。残りの2割はCDやDVDなど「光ディスクドライブ」や、クルマ部品の「ファクトリーオートメーション」(自動製造ライン)などを手がけています。

── 車載機器の市場シェアは。

 

小谷 アフターマーケットはオーディオが世界販売約720万台、ナビが約57万台で、ともに世界シェアは3割に上ります(16年度)。

 一方、OEMはトヨタ自動車をはじめ国内大手自動車メーカーと取引があります。欧米でも自動車大手が主要な顧客です。車載搭載機器は陳腐化が早いので、クルマの開発期間を考え、3~4年後に必要となる技術を提案できることが評価されています。市販とOEMを合わせた販売台数は年間約1000万台超です。

 

 ◇自動運転の中核技術を開発

 

── 自動運転化の流れの中、どんな手を打っていますか。

 

小谷 自動運転に必須の技術を持っている当社には、ビジネスチャンスが訪れています。

 例えば光ディスクの技術を生かし、光を使って障害物を検知する「LiDAR(ライダー)」と呼ばれるセンサーの実用化を目指しています。完全自動運転はライダーなしでは実現しないと言われています。

 ただ、自動運転の実験車両などで使われている既存品はサイズが大きく、1個数百万円と高価なため市販車への搭載には向きません。そこで、実用的なライダーを開発しました。

 

── その特長は。

 

小谷 カメラやレーダーと比べて悪天候や夜間に強いライダーは、クルマ向けに各社が開発を競っています。当社のライダーはクルマのヘッドランプの中などに組み込めるように小型・軽量化を目指しています。

 価格は1万円以下での提供が目標です。クルマ1台当たり4~5個ライダーが必要ですが、それでも4万~5万円で済みます。国内自動車メーカーなどにサンプル品を提供し、来年の改良版の評価を見て、19年後半に量産準備に入ります。

 ただ、ハードの販売だけでは価格競争に陥ります。そこでライダーを使った自動運転向けの高精度地図サービスも考えています。

 

── 高精度地図とは。

 

小谷 現在のカーナビの地図は道路が「行き」「帰り」の2車線しか表示されません。複数車線などさらに細かい情報が反映されたものを高精度地図といい、これも自動運転に不可欠な技術です。その基盤づくりを手がけるダイナミックマップ基盤(DMP)には当社の地図子会社インクリメントPも出資しています。DMPがつくる基盤の上に、地図各社は独自に多様な情報を付加して高精度地図を提供する形です。

 ナビの地図は道路の変化に合わせ定期的な更新が必要ですが、これは従来、人海戦術の作業でした。しかし、カメラやライダーを搭載したクルマであれば、走行するだけで自動的に道路のデータを収集できます。搭載車が増えれば膨大なデータを集めることができ、高精度地図に必要な情報を吸い上げます。「データエコシステム」という地図更新システムの構築が最終目標です。

 

── 9月に欧州の地図大手ヒアと業務・資本提携で合意した狙いは。

 

小谷 世界的な地図サービスの提供です。その一つが、インクリメントPとヒアが進める地図の仕様の共通化です。現在、ナビの地図は地域ごとに仕様が異なります。そこで、自動車メーカーがどの地域でも一貫性のある地図の供給を受けられるようなサービスを提供します。

 フォルクスワーゲン、ダイムラー、アウディの独3社を親会社とするヒアは、欧米のナビ市場で80%という圧倒的なシェアを持っています。ヒアのパートナーと国内シェア30%の当社が協力すれば全世界をカバーすることも可能です。

 収益は、自動車メーカーへの販売収入と地図更新時の使用料収入です。現在、定期的な更新サービスはナビ1台当たり数万円の売り上げなので、大きなビジネスです。世界で走っているクルマは約10億台。その更新需要の取り込みを狙います。

 

── 新規分野の開拓は。

 

小谷 一つは有機ELの照明(写真)です。フィルムタイプは曲げることができるので、クルマのデザインを重視する欧州自動車メーカーを中心に、テールランプや車内照明に使いたいというニーズがあります。今年6月にはフィルムタイプに強みを持つコニカミノルタと合弁会社を設立しました。

 もう一つは、これまで培った光や音の解析、画像処理の技術を駆使した医療・健康機器です。第1号製品として、光の技術を使った小型血流計を、透析機器大手JMSと共同開発しました。

 

── 今後の戦略は。

 

小谷 技術革新が早い車載機器業界で必要となる開発スピードと、ヒアのような強いパートナーを確保することで、自動運転の世界標準作りの一翼を担いたいです。

(構成=大堀達也・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 通算20年の海外駐在の最初が33歳の時のロンドンです。6年半の間にオーディオの仕入れから、ビデオデッキなどの新商品の企画まで、さまざまな経験が大きな財産になりました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 息抜きでよく読むのが佐伯泰英さんの時代小説『居眠り磐音 江戸双紙』。人間としてこうありたい、と思わせる登場人物が魅力です。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 週末に仕事やプライベートでのゴルフをしたり、孫の面倒を見たりしています。

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 ◇こたに・すすむ

 1950年生まれ。独協高校、明治学院大学卒業後、75年パイオニア入社。2000年パイオニアエレクトロニクス(USA)社長、03年パイオニア執行役員、07年常務執行役員などを経て08年11月から現職。67歳。

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事業内容:車載機器などの製造・販売

本社所在地:東京都文京区

創業:1938年

資本金:928億8148万円(連結)

従業員数:1万6763人(連結)

業績(17年3月期・連結)

 売上高:3866億8200万円

 営業利益:41億6700万円

 

2017年

10月

24日

良い薬を安く作り、医療財政を救う パトリック・リード ペプチドリーム社長 

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 世界の製薬大手が次世代の創薬技術として注目する「特殊ペプチド」。体内に投与しても酵素で分解されにくく、狙ったターゲットに強く結合する特性がある。従来の創薬技術では開発が困難だった病気の治療薬を作れる技術と期待されている。

 

── どんな会社ですか。

 

リード 菅裕明・東京大学教授(同社取締役)が開発した技術を実用化するために2006年に設立した東大発のバイオベンチャーです。最初の10年で創薬技術「PDPS(ペプチド・ディスカバリー・プラットフォーム・システム)」を確立して製薬会社と契約を結びました。これからの10年は実際に薬を作る段階に入ります。そういうタイミングで、研究開発部門の責任者である私が社長に就任しました。

── PDPSとは。

 

リード 「特殊ペプチド」という物質を用いた創薬技術です。PDPSの強みは、薬のもとになるシーズ(候補物質)を、たくさんの候補の中から、効率よく、短時間で絞り込めることです。

 製薬会社が持つ「ライブラリー」と呼ばれる薬の候補物質は大手でも200万~300万個といわれていますが、当社はアミノ酸の組み合わせでさまざまなペプチドを作ることができるので、1兆個の候補物質からシーズを探すことができます。

 

 また候補物質の絞り込みには通常1~3年かかりますが、PDPSならば3~6カ月で見つかります。特殊ペプチドは狙ったターゲットに強く結合する候補物質が最初から複数見つかるため、成功確率が高くなります。

 

── 開発コストも抑えられる。

 

リード そうです。新薬開発はターゲット物質を見つけて効果を評価するプロセスに時間がかかり、成功確率が低いことも相まって、コストが膨らんでしまいます。特殊ペプチドでより効率的に薬を作れるようになれば、良い薬を、より価格を抑えて提供できるようになります。薬剤費が医療財政を圧迫する問題の解決策の一つになるでしょう。また抗体医薬より副作用を抑えられる点も期待されています。

 

 ◇薬を輸出産業に

 

 低分子薬は、分子量が小さいため飲み薬にしやすく、また価格も抑えられる。だが、特定のたんぱく質を狙って作用させるのが難しい。

 一方、新薬の開発が相次ぐ抗体医薬などの高分子薬は、特定のたんぱく質に効く半面、分子量が大きいため飲み薬に適さず、注射や点滴による投与になるので患者の負担が大きい。開発・製造コストも高めだ。特殊ペプチドは中間の中分子に位置づけられ、抗体医薬と同様の効果がある薬をより安く作ることができると考えられている。

 

── ビジネスモデルは。

 

リード 三つあります。一つは製薬大手との共同研究で、17社と60プロジェクトが進行中です。製薬会社が病気の原因を研究し、この物質を阻害すれば病気が治ると考えられるターゲットを見つけます。そして当社がそのターゲットに結合する薬のシーズを見つけます。

 

 二つ目は当社がPDPSの技術を提供して、各社が研究開発を進める技術移管。現在契約しているのは、米ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMS)、スイスのノバルティス、米イーライリリー、米ジェネンテック、塩野義製薬の5社です。この二つのビジネスモデルで、世界の売上高トップ10の製薬会社のうち7社と契約しています。

 

── 製薬大手との取引が中心ですか。

 

リード バイオベンチャーとの取り組みも進めています。三つ目のビジネスモデルの、互いに技術を持ち寄って研究する戦略的提携です。JCRファーマ(兵庫県芦屋市)と脳に薬を運ぶ研究を、そーせいグループ(東京都千代田区)傘下の英ヘプタレスと病気に関与するたんぱく質の研究を進めています。

 未上場企業では、特殊ペプチドから低分子薬を作る研究をモジュラス(東京都千代田区)と、がんの免疫に関する治療薬を米クリオと研究しています。

 

── 17年6月期は、4期連続最高益を更新しました。

 

リード 開発途中ながらも黒字を確保できているのは、共同研究先企業から契約時に一時金を受け取るほか、プロジェクトごとに研究開発支援金が入るためです。契約金の金額は年々上昇しています。特に技術移管先企業からの一時金は大きく、10億円を超えるようになってきました。将来的には、薬の発売後も、売り上げの一部を受け取ります。

 

── 塩野義製薬、積水化学工業と新会社を設立しました。

 

リード 特殊ペプチドを使った原薬をより安く、安定的に、しかも国内で作るために、共同出資で製造受託会社「ペプチスター」を立ち上げました。日本の医薬品は輸入超過ですが、国内で作れるようになれば、輸出産業に育てる道が開けます。

 

── 今後の課題は。

 

リード BMSはがん免疫療法薬の第1相臨床試験を開始していますし、ノバルティス、第一三共も今後、臨床試験に入る見通しです。22年6月までには薬を世に出すことができると思います。最初の薬はがん治療薬になるでしょう。

(構成=花谷美枝・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 東京大学で動脈硬化症、がん、糖尿病の研究をしていました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A ありません。研究以外の本を読んだことがないので。仕事が大好きなので、暇さえあれば論文を読んでいます。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 海が大好きなので、泳いだり、スキューバダイビングを楽しんだりします。今は自宅のそばに海がないので残念です。

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 ■人物略歴

 ◇Patrick・Reid

 1975年生まれ。米バーモント州出身。米ダートマス医科大学院修了。生化学博士。2004年東京大学先端科学技術研究センター特任助教授、07年ペプチドリーム入社。17年9月から現職。42歳。

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事業内容:独自の開発プラットフォームPDPSによる創薬技術の提供および新薬開発

本社所在地:神奈川県川崎市

設立:2006年7月

資本金:約38億7000万円

従業員数:約60人

業績(17年6月期)

 売上高:48億9500万円

 営業利益:24億9000万円

2017年

10月

17日

「在庫持つ」経営で石油ファンヒーター日本一 吉井久夫 ダイニチ工業社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 家庭用石油ファンヒーターで国内トップです。

 

吉井 自慢するつもりは毛頭ないのですが、国内主要家電量販店の販売台数が10年連続1位で、シェアは50%を超えています。現在、年間約100万台を生産しています。ただ、1位を狙ったのではなく、より良くしていった結果だと考えています。

 

── コロナやパナソニックなどがひしめく市場でどう戦うのですか。

 

吉井 お客様にとっての品質や価格、補償はもちろん、当社が卸す流通業者にとっての商品価値も高めています。

── どういう意味ですか。

 

吉井 いくら良い製品で安く提供しても、流通業者にとっては、商品が余ったり、足りない時は問題となります。当社は、市場動向や流行に合わせて、その増減に対応できる生産体制を整えています。流通業者から見ると品切れがないので、「ハイドーゾ(はいどうぞ)生産方式」と呼んでいます。そうした総合力で1位になっているのだと思います。

 

── 「ハイドーゾ生産方式」で生産の増減をどう調整するのですか。

 

吉井 まず生産は国内(新潟県)です。そして、1月から9月までは、同じペースで生産を続ける「平準化生産」をしています。

 当社の売上高の8割を占める石油ファンヒーターなどの暖房機器は、販売のピークが10月、11月、12月に集中します。販売時期はその3カ月しかありませんので、当社はシーズンが到来する前の時点で約9カ月分の在庫を持つわけです。

 

── 在庫リスクは御社が抱える?

 

吉井 そうです。1~9月ごろまでの生産で計画の7~8割を作りますが、残りの2~3割は、売れる機種や売れない色など市場の動向を注視しながら変えます。12月末には在庫をなるべくゼロにする考えなので、100台、500台、赤、白など、10月からは機種や色に合わせてばらばらに生産するので大変です。

 機種によって、プラスマイナス約20%の違いが出ますが、10~12月の対応力をいかにスムーズにするかがカギです。10月から3カ月間の情報収集をしっかりすればできます。

 

── 2003年に参入した加湿器でも国内トップです。

 

吉井 おかげさまで、台数と金額でトップを獲得しています。当社は後発の参入でしたが、とにかく静かな加湿器を目指しました。送風による気化式とヒーターのハイブリッド式の加湿器で、「赤ちゃんが寝ていても使える加湿器」とアピールしたのが利きました。

 当社のコア技術は、鉄板加工、プラスチック成形、その組み立て、自社でプログラミングしているマイコンなどの制御技術です。その技術で、熱、風、ポンプを正確に制御できます。現在、その延長線上にある新製品も開発しています。

 

 ◇ほぼ全員が正社員

 

 ダイニチ工業は、生産だけでなく働き方もユニークだ。512人いる社員はほぼ全員が正社員で、非正規社員はわずか3人にとどまる。また、残業を極力減らし、17時半に退社する。社員からは「毎日18時のニュースを家で見られる」との声があるほどだ。

 

── 期間工(期間従業員)は雇わないのですか。

 

吉井 しません。こうすることで、未熟練の社員でも、時間がたてばほぼベテランに近いレベルまで熟練度が増すからです。(派遣労働者や期間工などに頼って)毎日代わられると、いつも素人の人が生産するということになってしまいます。

 当社は500人規模の会社ですが、十数社の協力会社がいて、すべて合わせると当社と同じ人員規模で、生産台数も同じ規模です。生産の浮き沈みも同じにして、信頼関係の構築につなげています。

 

── 協力会社にリスクを取らせる企業が多いです。

 

吉井 私は1999年に社長になりましたが、その前年に在庫を大量に出しました。それがきっかけで、協力工場と当社がお互いにメリットがある体制を作り上げてきました。

 当社の生産が減る時に、協力工場の生産を取り上げると、当社の稼働率は保てますが、協力工場の仕事は減ります。それが恒常化すると、協力工場は当社に割り増しの工賃を要求せざるを得ません。だから、この体制は、ある意味で必要性もあるわけです。また、協力工場と年3回行う交流会は欠かせません。

 

 ◇地域で仕事する価値

 

── なぜ国産にこだわる?

 

吉井 以前は考えていなかったのですが、結局「我々が何のために仕事しているのか」を考えると、「この地域でこの仕事をしている価値がある」からだと考えます。当社には500人規模の社員がいて、協力工場も含めると1000人前後が当社の製品で仕事をしています。その家族も含めると数千人になります。この地域に工場があるだけで、数千人の人が生活できるわけです。それってすごく価値があることです。

 

── 逆転の発想です。

 

吉井 例えば、工場を持たない経営にして、外国で作ったものを安く仕入れて、高く売ることもできます。それで利益が上がれば、いかにも「能力のある経営者」に見えます。しかし、「ここで仕事をして生活をする」というのが、単に個人がもうける話ではなくて、みんながその価値を共有する喜びがあると思います。

(構成=谷口健・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 開発や資材部門から営業に行き、東京の営業所を立ち上げました。その後は、経理・総務に移って経営に携わりました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A ピーター・ドラッカーや松下幸之助、稲盛和夫氏の経営本です。「真面目であれ」「悪いことをするな」など、結局同じことを言っていることが分かってきました。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 家でしっかり休養を取ります。

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 ■人物略歴

 ◇よしい・ひさお

 1947年生まれ。大阪府布施市(現・東大阪市)出身。新潟県立三条高校、芝浦工業大学卒業後、1969年、吉井電器店に入社。73年、ダイニチ工業に入社。常務、専務を経て、99年に社長就任。70歳。

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事業内容:家庭用石油ファンヒーター、加湿器、コーヒーメーカーなどの製造・販売

本社所在地:新潟県新潟市

設立:1964年4月

従業員数:512人

業績(2016年度)

 売上高:182億円

 営業利益:7億円

 

2017年

10月

10日

「社員の多様性が武器 果敢に事業変革」石黒成直 TDK社長

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 会社のルーツは。

 

石黒 当社は82年前、東京工業大学の2人の博士が開発した磁性材料「フェライト」を、創業者が「日本人の開発品。何とか製品化できないか」と取り組んだのが始まりです。いわば大学発ベンチャー企業です。フェライトは磁性を帯びた電子材料で、今なお進化を続ける古くて新しい材料です。研究を進める中、電磁気に応用できる材料として、戦前はラジオ・通信機器のアンテナ、戦後はコンピューターや家電に使われるようになりました。フェライトを作るには酸化鉄を焼いて形成する「焼成」技術が必要です。当社のビジネスは、フェライトを作る磁性材料技術と、それを使ったプロセス技術、生産技術を根に、さまざまな技術・製品が木の枝を伸ばした構図です。

 

── 1980年代の記憶がある世代には、TDKと言えばカセットテープというイメージがあります。

 

石黒 カセットテープも磁性技術の延長で、酸化鉄を粉にして、塗料に混ぜて、テープ上に塗布するものです。カセットテープやビデオテープなどのメディア事業はピーク時の80年代後半には全社の売り上げの約4割を占めました。しかし、この事業からは完全撤退しました。それ以来、消費者向けビジネスはほとんど手がけていません。むしろ当社は最初から法人向けビジネスが基本路線です。今は、スマートフォン、自動車、産業機械など、あらゆるメーカーに電子部品やセンサーを納入しています。最終製品の見えない部分に入る基板上の製品が大半ですが、身の回りの多くの製品で使われています。

 

── 具体的には。

 

石黒 スマートフォンのリチウムイオン電池や各種の電子部品・センサーのほか、パソコンやレコーダーに使われるハードディスクドライブ(HDD)の部品などです。自動車も電化が進むと、モーターが多く使われ、その分磁石も使われます。パワーステアリングも磁気センサーが角度を制御しています。

 

◇センサーは成長領域

 

── 製品別のポートフォリオは。

 

石黒 売り上げベースでは(1)電気を放出・蓄積するコンデンサーなど受動部品(電流制御などの能動操作をしない部品)が約40%(2)センサー応用製品が約6%(3)HDD用磁気ヘッドなど磁気応用製品が約25%(4)リチウムイオン電池などのフィルム応用製品が約25%です。センサーは今後の成長領域だと期待しています。

 

── そのセンサー事業をどう育ててきたのですか。

 

石黒 当社は、磁気信号を使って、HDDの記録を書き換える磁気ヘッドで世界屈指のシェアを持ちます。しかし、HDDの出荷数は00年代後半から減少傾向が続きます。磁気ヘッドの統括を務めていた当時「どうやって既存技術を生かして次の枝を作れるか」を模索し始めました。部署内での議論の結果出てきたのは、磁気ヘッドの材料である「TMR素子」を使った高精度センサーでした。微弱な磁気信号をキャッチする特性をセンサーに生かしたのです。技術者3人が細々と1~2年かけて試作品を完成させ、大手自動車関連メーカーに飛び込み営業をかけて「使い道はありませんか」と持ちかけました。その後、自動車関連メーカーとの共同開発も進み、今や40件以上の引き合いがあります。今後、大きく伸ばしていく製品と位置付けています。

 

── センサー事業では最近2年間で立て続けに他企業を買収しました。

 

石黒 理由は二つあります。一つ目はセンサー技術の引き出しをできるだけ確保したかったからです。センサーは単に製品を売るというビジネスではなく、製品とソリューション(課題解決策)をお客様に提供するビジネスになります。元々当社には、磁気センサーや温度、圧力センサーの技術はありましたが、それ以外の技術は不足していました。そこで、TDKが持たない別種類の磁気センサーを扱う独ミクロナスや、微細・集積化するためのMEMS(メムス)技術を使ったセンサーの知見を持つ米インベンセンスや仏トロニクスマイクロシステムズを買収しました。

 

── もう一つの狙いは。

 

石黒 技術をそろえて多様なデータを採取しても、処理する頭脳の役割がなければ無意味です。そこで今年3月、IC(集積回路)設計能力を持つベルギーのICセンスの買収を決めました。また、商品企画力も強化する必要があります。インベンセンスはこの能力にも優れているとみて、グループに入ってもらいました。

 

── カセットテープ、HDD事業、そして足元のセンサーへと、果敢に事業を変化させて成功してきた秘訣(ひけつ)は。

 

石黒 創業時にベンチャー企業だっただけに「おもしろいことには挑戦してみたら」という企業文化があったことです。また、人材の多様性も作用したと思います。まだ、転職が珍しかった80年代から、当社は中途採用が多く、新卒採用とは異なる発想で活躍しています。今でもかなり中途入社の社員を採用しています。また、86年に香港の磁気ヘッドメーカー「SAEマグネティックス」を買収して以降、M&A(企業の合併・買収)を重ねてきました。その結果、今や全従業員10万人のうち9万人が外国人です。執行役員18人のうち6人は外国人で、経営会議も英語です。日本内外の力を合わせていろんなことをやっていこうという社風が醸成されています。

(構成=種市房子・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 33歳でルクセンブルクのカセットテープ工場設立のために渡欧し、14年間駐在しました。30代前

半は工場操業、後半は欧州全体の供給体制構築で、苦労の連続でさまざまなことを体験しました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 吉村昭の『高熱隧道』。吉村作品の魅力は、事実を徹底的に調べ、根源にある人間の本質を探る筆致です。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 料理を作ってゆっくり過ごします。つまみを作って気の置けない仲間を家に呼ぶのも好きです。

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◇いしぐろ・しげなお

 1957年生まれ、東京都出身。都立府中高卒業、北海道大中退。82年東京電気化学工業(TDK)入社。カセットテープや磁気ヘッド部門などを担当し、2014年執行役員。16年から現職。欧州、香港の駐在経験が長く、海外駐在は通算36年に及ぶ。59歳。

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事業内容:電子部品・電子材料

本社所在地:東京都港区

創業:1935年

資本金:326億円

従業員数:9万9693人(2017年3月末現在)

業績(17年3月期・連結)

 売上高:1兆1782億円

 営業利益:2086億円

2017年

10月

02日

国内シェア50%の燃料油基盤に世界へ 内田幸雄 JXTGホールディングス社長

内田幸雄 JXTGホールディングス社長
内田幸雄 JXTGホールディングス社長

◇Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── JXTGホールディングス(HD)はどんな会社ですか。

 

内田 JXHDと、東燃ゼネラル石油が今年4月に経営統合しました。石油業界の地殻変動に対応しようと模索を続けて実現した統合です。

 

 原油を輸入して精製し、ガソリンや軽油などの製品を販売する石油元売り会社は、1970年代には15社ほどありました。2度の石油危機や、規制緩和による競争激化、燃料油が90年代半ばから後半をピークに国内の需要が落ち始めたことなど、たびたび再編の圧力が高まりました。

 

 大きな転機となったのは、99年のエクソンとモービルの合併です。メジャーの2社の合併は誰も予想しませんでしたが、そのくらいの出来事が石油業界には起きていました。2000年代にも1バレル=100ドル台が続いた原油価格の高騰、エクソンモービルなどメジャーの撤退と、次々に経営に直結する問題が起き、各社は対応に追われてきました。石油元売り会社は集約され、現在は4グループになっています。

 

 JXHDは、日本石油、三菱石油、日本鉱業、共同石油の4社が前身。東燃ゼネラル石油は、東燃、ゼネラル石油、モービル石油、エッソ石油が前身だ。

 

 今回、元売りトップのJXHDと、3位の東燃ゼネラル石油の統合で、国内の燃料油販売シェア50%になりました。(メジャーが本拠を置く)EU(欧州連合)で、主要2カ国をどのように組み合わせても、日本の総需要より大きくはなりません。計算上は、英国全体を当社が扱っているようなものです。私の口から「最終形態」とは言いにくいですが、これ以上の統合は難しいのではないでしょうか。

 

── 力を入れている事業は。

 

内田 中核事業3社体制です。主力はJXTGエネルギーで、石油製品を精製し、燃料油から、ペットボトルや合成繊維の原料となるパラキシレン、プロピレンといった石油化学製品の製造、販売まで、幅広く手がけています。今後、燃やさずに石油をどう使うかがますます重要になります。新興国の生活水準が上がればプラスチックなどの需要が増えることになるため、石油化学は確実に伸ばしていかなければならない分野です。

 

 JX石油開発は、石油、天然ガスの探鉱を行っています。地球の資源に付加価値を生み出す事業です。ポートフォリオではなく、事業としている会社では国内三指に入ります。

 

 JX金属は、銅を中心とした非鉄金属のサプライチェーン全体を手掛けています。チリのカセロネス鉱山は、日本企業の100%出資です。精錬から電材加工まで手がけ、みなさんが使っている電子部品には、ほぼ当社の製品が入っていると思います。IoT(モノのインターネット化)は大きなビジネスチャンスですが、今は生産能力を目いっぱい使っても、需要に応えきれていません。まずは生産体制を整えることが喫緊の課題です。

 

 統合で「エッソ」「モービル」「ゼネラル」を含めて四つになったガソリンスタンドのブランドを、19年度中を目標に「ENEOS(エネオス)」に統一することを発表した。

 

── ブランド戦略をどう考えていますか。

 

内田 四つのブランドのガソリンスタンドは全国に計約1万4000店あります。消費者とつながる大切な存在で、一つの会社として認知してもらえるようにすることが重要です。

 

── 統合による具体的な目標は。

 

内田 「アジア有数の総合エネルギー・資源・素材企業グループ」です。そのためには、収益力をどう上げるかに懸かっています。エネルギーは国内で圧倒的な地位になりましたから、それを生かして海外に進出できる経営基盤を作るのが私の役割です。

 17~19年度の中期経営計画で、20年3月期に連結営業利益5000億円を掲げました。製造業で国内を主戦場にしている企業で、5000億円の利益を上げられる会社はなかなかありません。当社はその潜在能力があると思っています。

 

 ◇EV普及はチャンス

 

── 世界で電気自動車(EV)へのシフトが急速に進んでいます。

 

内田 現在、国内に自動車は9000万台登録されています。電気、水素など石油以外を動力にしているのは20万台ほどです。EVがどの程度普及するか、予測はできません。エネルギー業界は社会のインフラで、最初に大きな投資をしますが、企業としては回収しなければならない。どのタイミングで投資するのが適切か、見極めなければいけません。

 いずれにしてもEVが増えるのは間違いない。「増える電気需要をどうまかなうか」ということになり、総合エネルギー企業としての腕の見せどころです。これまで石油業界は、経済規模の発展に伴って成長してきました。今後は技術や社会の変革に合った発展を目指さなければいけません。

 

── 野球部、バスケットボール部を持っています。企業スポーツの意義をどう考えていますか。

 

内田 従業員の一体感の醸成です。いずれも強豪で、活躍は特約店でも話題になり、多くの関係者の融和に大きく貢献してくれています。

 ルールを守って勝つのがスポーツです。企業も法令順守意識を持って、業績で勝ちたい。最終的には利益を上げることが、統合会社の融和にとっても最も重要で、私の大きな使命です。

(構成=酒井雅浩・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 入社は石油危機の1973年。30代は80年代と重なります。規制緩和、湾岸危機と荒波の中で原油の調達を担当し、原油ほどコストと価格の乖離(かいり)が激しいものはないと痛感しました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A パラダイムシフトが起きていることを実感できる本です。大栗博司氏の宇宙論が好きです。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 10分でも、会社のことを何も考えないことでストレス解消をしています。桂枝雀の落語は、突き抜けたばかばかしさが気分転換にもってこいです。

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 ◇うちだ・ゆきお

 1951年生まれ。福井県出身。福井県立高志高校、京都大学法学部卒業。73年日本鉱業入社。2010年JX日鉱日石エネルギー取締役、15年JXホールディングス社長などを経て、17年4月のJXTGホールディングス発足に伴い社長。66歳。

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事業内容:エネルギー事業、石油・天然ガス開発事業、金属事業など

本社所在地:東京都千代田区

設立:2010年4月

資本金:1000億円

従業員数:2万6247人(17年3月31日現在・連結)

業績(17年3月期・連結)

 売上高:8兆1360億円

 営業利益:2984億円

 (注)従業員数、業績は旧JXホールディングスの数字

 

2017年

9月

25日

日本の中小企業を強くする 佐々木大輔 freee(フリー)社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 設立5年で従業員が約350人と急成長中です。そもそもフリーはどんな会社ですか。

 

佐々木 中小企業のバックオフィス(間接部門)業務を、クラウド(インターネット上)で自動化するソフトウエアを提供しています。特に、経理と人事労務の二つに注力しています。経理の業務は、5分の1から50分の1に軽減できます。

 

── どう軽減するのですか。

 

佐々木 当社が提供するクラウド会計ソフトは、クレジットカードの利用明細やインターネット銀行の明細などから必要事項を抽出して、人工知能(AI)を使って自動で会計帳簿を作ることができます。例えば、明細に「ソフトバンク」とあれば「通信費」に、居酒屋の名前なら「交際費」などに自動で分類できます。他にも、飲食店であれば自社の売り上げデータを連携させることもできます。

 請求書の管理もできます。発行だけでなく、入金まで追って管理ができたり、受け取った請求書の入金について期日までに自動で支払うこともできます。

 使う企業にとっては、気がついたら帳簿ができている仕組みで、いつでも経営が見える化ができます。

 

── 顧客は何社ありますか。

 

佐々木 個人事業主を含めて80万事業者が使っています。料金は、個人事業主向けの確定申告を簡単にするサービスは月980円(税抜き)から、会社向けの会計ソフトは月1980円(税抜き)からなどのプランがあります。500~1000人規模の企業でも使えるようにしています。

 

── なぜ急拡大できたのですか。

 

佐々木 口コミが大きかったです。最初は、個人事業主や小規模法人を中心に広がりました。インターネットで当社のサービスを見つけてくれ、拡大の原動力となりました。

 我々がクラウド会計ソフトを開発した当初の会計業界は、新規参入者はおらず約30年間変わっていない業界でした。ですが、クラウド会計ソフトを実際に作ってみると、世の中の人に受け入れられました。これが僕たちの原点になっています。

 

 ◇グーグルで学んだこと

 

── なぜ会計業界で起業したのですか。

 

佐々木 以前ベンチャー企業でCFO(最高財務責任者)を経験して、手入力が必要なことが多く、すごく非効率でした。それを問題意識として持っていて、その解決方法もイメージしていました。このサービスで従来の経理業務が50分の1にできるのを自分自身で感じていました。

 経理はあらゆるビジネスで必要な部門です。これをインターネットで誰でも簡単にできるという時代を作れると思いました。

 

── グーグル日本法人での経験はどう生きていますか。

 

佐々木 28歳でグーグルに転職し、中小企業にインターネット広告を広げる活動をしていました。ある会合で、グーグル本社の幹部が「会社は運動(ムーブメント)だ」と言っていたことには、とても感銘を受けました。それまでの日本企業の価値観にありそうでなかった考え方で、これを実践する企業を日本でも作れたらと思いました。そうした感覚を覚えられたのが大きかったです。

 

 フリーは未上場の企業だが、ベンチャーキャピタルの米DCM、リクルートホールディングス、未来創生ファンド(トヨタ自動車と三井住友銀行が出資)などが出資する。投資家が評価する時価総額は、すでに400億円を超えるとも言われる。一方、クラウド会計ソフト市場を見ると、フリーは40%近いシェアを持つ。それを「弥生会計」の弥生や、9月29日に上場予定のベンチャー企業・マネーフォワードが追い、競争は激しい。

 

 ◇銀行融資を簡単に

 

── 銀行や信用組合などと業務提携を進めています。狙いは。

 

佐々木 合計20の金融機関と提携しています。いずれは当社のサービスのなかで融資を完結できるような世界を目指しています。

 当社のユーザー(顧客)にとっては、より良い条件で融資を受けられ、提出する書類も減らすことができます。その一方で、金融機関にとっては審査にかける時間が減り、融資先の経営に関わる助言にもっと時間をかけることができます。

 

── 銀行の審査部が必要ない時代が来るのでしょうか。

 

佐々木 そういう時代が来るかもしれません。企業の資金繰りは、過去の経営データを基にするので、自動化されるのではないでしょうか。

 

── 今後、フリーが目指す世界は。

 

佐々木 日本の中小企業を世界的に見ても競争力のあるものにしていかなくてはいけません。従業員全員が英語を話すという意味ではなく、ビジネスの仕方や生産性の面で世界のレベルについていくということです。中小企業の方が、よりスマートで、強い会社になれる仕組みを提供し、そうした中小企業のプラットフォーム(土台)になっていきます。

 

── 上場の予定は。

 

佐々木 今年から手続きを始めましたが、いつかは言えません。ただ、当社は米国系のベンチャーキャピタルからも出資を受けているため、早期の上場は必要ありません。

 未上場の期間をうまく利用して、盤石なビジネス基盤を作っていかないといけないと思っています。良い例になって道を広げて、自分で流れを変えていきたいです。

(構成=谷口健・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 20代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 広告代理店、投資ファンド、ベンチャー企業と転職していました。28歳でグーグル日本法人に入りました。

 

Q 「私を変えた本」は

A 米国人作家のパトリック・レンシオーニ氏の『あなたのチームは、機能してますか?』(翔泳社)です。読みやすく書かれた本で、社内での課題図書にしています。

 

Q 休日の過ごし方

A 走ったり、子供と遊んだりしています。

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 ◇ささき・だいすけ

 1980年生まれ。開成高校、一橋大学商学部卒。博報堂や投資ファンドを経て、IT企業のALBERTで執行役員兼CFO(最高財務責任者)。その後、グーグル日本法人で中小企業向けマーケティングに従事。2012年7月、フリーを設立。37歳。

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事業内容:クラウド会計ソフト、クラウド給与管理ソフトなどの開発・運営

本社所在地:東京都品川区

設立:2012年7月

資本金:96億円(資本準備金含む)

従業員数:約350人

業績

 売上高:非公表

2017年

9月

19日

顧客とともに栄え、イノベーションを起こす 此本臣吾 野村総合研究所社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どんな会社ですか。

 

此本 名前の由来からシンクタンクのイメージが強いですが、実態としては連結売上高の9割をITサービスが占めています。2017年3月期の売上高営業利益率は14%で、同業他社に比べると非常に利益率が高いのが特徴です。コンサルタント業務を行っていた旧野村総合研究所とITシステム会社の野村コンピュータシステムが1988年に合併し誕生しました。ITサービスの上流に位置するコンサル業務に強みを持っているのが同業他社との大きな違いです。

 

── 強みは。

 

此本 かつて、ITは企業のバックオフィスを支える存在でした。当社でも、コンサル部門は経営層、ITサービス部門は情報システム部門とそれぞれ対象の顧客が違い、一緒に連携して仕事をすることはあまりありませんでした。しかし、今では、ITが企業のビジネスモデルそのものを変える時代になりました。CEO(最高経営責任者)自身がITに関心を持ち、事業部門でもITを使ってビジネスを変えたいという話が出ています。二つの機能を持ち、融合する当社の強みはこれから生きます。

 

── 直近の業績は。

 

此本 17年3月期の連結決算は売上高4245億円、営業利益585億円でした。従業員数は単体で約6000人、連結では約1万1000人です。規模やコストで競争せず、価値提供で当社にしかできないサービスを目指しています。仕事を通じて知的好奇心をかき立てる組織であり、人材が集まっている会社です。就活学生の人気が高いのは、当社のカルチャーに交われば、自分たちも成長できるという期待が学生の間であるからではと思います。

 

── 企業理念は。

 

此本 「未来創発」です。将来を俯瞰(ふかん)し、新しい社会のパラダイムを洞察し、実現を担う。顧客のためにイノベーションを起こし、顧客とともに栄える。この企業理念が当社の存在そのものを象徴しています。まず、「新しい社会のパラダイムを洞察」するのがコンサルの役割です。「その実現を担う」のがITサービスです。シェアリング・エコノミーやブロックチェーンも、それを実現するために、我々はITという武器を持っています。

 

 ◇「ストーリーを語る」

 

── 同業他社との違いは。

 

此本 イノベーションを強く意識する会社は、テクノロジーを中心に、顧客に「あれもできます、これも可能です」と提案しがちです。でも、顧客を分析する能力がなければ、顧客は「それによって我々の抱えている問題をどのように解決してくれるのか」と不満を持つことになります。我々はコンサル部門でそれを徹底的に分析することが可能です。その上で、顧客が解決したいことを実現するには何が必要か、そのためにはどんなサービスを提供しなければならないか、ストーリーを語ることができます。コンサル部門を持っていることがすごい力になります。

 

── サッポログループの働き方改革で、AI導入をサポートしました。

 

此本 同グループの社内業務の問い合わせに、当社のAIシステムを活用しました。その結果、問い合わせの45%がAIで回答できました。今は経済産業省とAIを使った国会答弁の作成業務の自動化で実証実験をしています。

 

── コンサルとIT部門の人事交流はあるのですか。

 

此本 最近、ビッグデータの「アナリティクス」という分野が注目を集めています。例えば、ある消費財メーカーで、これまで中心顧客だった高齢の富裕層の購買力が落ち始めたので、若い女性層のマーケティングをしたいとします。こういう層にどのように効率的にアプローチするかを、データを基に分析し、会社にマーケティングの提案までをするのが、アナリティクスです。

 

 このようにアナリティクスでは、データ分析だけでなく、ビジネスも理解している必要があります。当社はコンサルとITサービスの両方の部門を持っているので、コンサルで育った人がIT側に異動して、さまざまな分析ツールへの理解を深めたり、逆にIT側で採用された分析のプロが、コンサルに異動し、ビジネスの勉強をすることができます。

 

 アナリティクスは消費財だけでなく、金融などの他業界でもますます必要になります。そのため、両方の能力を持った人をどれだけ育てるかが、当社の競争力の鍵になります。

 

── 長期経営ビジョンで23年3月期に営業利益1000億円を目指しています。

 

此本 当社はコストや規模ではなく、提供する「価値」で競争します。利益は価値を定量化したものです。そこにこだわりを持ちながら経営していきたい。他社のように、海外の大きな会社を買収するようなやり方はしません。海外で買収をするにしても、その会社しか持っていない知的財産やノウハウが、我々の方向性に欠けているピースであれば、買っていきます。会社の大小は関係ありません。

 

 例えば、15年に米国のデジタルマーケティング会社「ブライリー・アンド・パートナーズ」を買収しました。小さな会社ですが、非常に強力な知的財産を保有しています。社会がどのように変わるのか俯瞰しながら、他社より一歩先に布石を打っていきたいと思います。

(構成=稲留正英・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 台湾に駐在し、一から支店を開設して大きくしていきました。帰国するときには40人の会社になっていました。非常にやりがいがありました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 石川光男氏の『東洋的生命観と学問』(1983年)です。コンサルは社会科学であり、自然科学のように解析的に分析することの限界をこの本から学びました。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 子供が大きくなったので、妻と二人で小旅行に出かけています。最近は秋田県男鹿半島のジオパ

ークに出かけ、1000万年前の貝の化石を拾いました。

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 ■人物略歴

 ◇このもと・しんご

 1960年生まれ。東京都出身。都立西高校、東京大学工学部、同大学院工学研究科修了。85年野村総合研究所入社。94年台北事務所長、2004年執行役員、15年専務執行役員を経て、16年4月から現職。57歳。

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事業内容:コンサルティング、ITサービス

本社所在地:東京都千代田区

設立:1965年4月

資本金:186億円

従業員数:6003人(2017年3月現在)

業績(17年3月期・連結)

 売上高:4245億円

 営業利益:585億円

2017年

9月

12日

「新規路線で国際線を成長ドライバーに」 片野坂真哉 ANAホールディングス社長

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── ANAの社風は。

 

片野坂 新しいことに挑戦して成長してきた会社です。例えば、昔はタブーだった羽田空港の国際化を、20年以上前から言い続けてきました。歴代の社長も、国際線が赤字の頃も、やめろと言った人は一人もいませんでした。

 

── どういった事業に力を入れていきますか。

 

片野坂 柱の航空事業では、国際線で成長するという戦略を確固たるものにしたいですね。2020年の東京五輪・パラリンピックという一大イベントに向けて、羽田も成田も発着枠が増えるビジネスチャンスです。日本企業も海外にどんどん出ており、国際線を成長ドライバーとした成長戦略を描いています。ただ、今年と来年は発着枠は増えません。昨年はシステムダウンや、保安検査場でお客様を誤誘導するなどのトラブルも多かったので、「今年は安全と品質の総点検」と社員に宣言しており、しっかりと内部固めも大事な2年間と思っています。

 

── 路線拡大にリスクはありませんか。

 

片野坂 私は新規路線論者です。発着枠が増える時を逃さず、ネットワークを広げておく必要があります。この3年間、ヒューストン、クアラルンプール、ブリュッセル、プノンペン、武漢、メキシコなどに新規路線を就航させました。新規路線は需要が少ないのではないかと言われますが、やってみると最初から乗っていただける。ということはマーケットはまだまだあるということです。この2年間、増収増益で最高益を更新し、増配もできているので、決算もついてきています。

 

── 既存路線強化の目玉はありますか。

 

片野坂 19年にハワイ・ホノルル線に500席を超えるエアバスの大型機「A380」3機を投入します。ハワイ路線は利用率が9割程度で年間を通して安定しています。座席数が増える分、マーケットシェアが高まると見ています。今まではビジネス重視でネットワーク展開をしてきましたが、これからはレジャーやリゾートをグループの戦略として大事にしたい。それをまずはハワイでやろうと思っています。

 

── 国内線の経営方針は。

 

片野坂 15年3月の北陸新幹線の開業で100億円程度の減収になりましたが、その影響も一巡しました。人口が減少している国内では、地方が元気になって観光客が増えないと、航空会社のネットワークの維持はどこかで限界がきます。訪日外国人に利用してもらうのがこれからの鍵になるでしょう。

 

── 傘下の格安航空会社(LCC)についてはどう考えますか。

 

片野坂 4月にピーチ・アビエーションを連結子会社化しました。LCCのもう一つの子会社であるバニラ・エアと統合させないのかとよく聞かれますが、今は全くの白紙です。ピーチは関西空港ベース、バニラは成田空港ベースですみ分けができており、文化も全然違うので簡単に混ぜることは難しいです。今はできる限り自主性を尊重して、二つの会社が共に成長していけるようにしたいですね。

 

── LCCの戦略は。

 

片野坂 20年度までに中距離路線を強化します。バニラもピーチも、中距離と言えるバンコクやホーチミンには、沖縄や台湾を経由して飛んでいます。小型機を使って、乗り継ぐ形でアジアの中距離に既に入り始めており、現地でも知名度を上げています。いずれは、中型機を使った直行便を入れていきたいですね。

 

── 日本航空への対抗策は。

 

片野坂 8・10ペーパー(新規投資や路線開設が原則自由にできないと定めた国土交通省の指針の通称)がなくなり、成田─豪メルボルン線と成田─ハワイ・コナ線を新規就航するのはさすがだなと思っています。財務体質が良いので脅威ですね。こちらとしては新規路線で特徴を出していくことが重要だと思います。あとは、サービスと品質で負けないようにしていくことに尽きますね。

 

 ◇ノンエア事業も強化

 

── MRJ(三菱リージョナルジェット)の納入が遅れています。

 

片野坂 納入時期は20年半ばの予定ですが、親会社の三菱重工業などからは、少しでも前倒しできるようにしたいとも連絡を受けているので、信頼していくしかありません。我々のパイロットや整備士、客室乗務員が機器の設置位置や荷物棚の形状などについてアドバイスするなど、良い品質の飛行機にするために知恵を出しています。そういう意味では一心同体。ボーイング787の時もそうでしたが、開発のリスクをかぶるローンチカスタマー(世界で初めて導入する航空会社)の難しさは感じています。

 

── 航空事業以外の取り組みは。

 

片野坂 航空事業が苦しい時に支えるノンエア事業もしっかり育てたいです。「ANAビジネスソリューション」という会社では、企業の研修で客室乗務員が接客の基本を教えています。昨年設立した「ANA X」はマーケティングの会社で、搭乗データやマイレージクラブなどの顧客情報を分析した事業開発に取り組みます。例えば、保険や旅行の販売に生かすこともできます。まだまだこれからですが、飛行機に乗るだけのお客様に別の形でアプローチしたいですね。新しいイノベーティブな事業として、宇宙など将来の成長に向けた可能性もつくっておきたいです。

(構成=松本惇・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 30歳になった頃にANAが国際線に進出することになり、日米航空交渉などを担当しました。ANAがグローバルになるのを実感でき、面白い時代でした。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 山岡荘八の『徳川家康』です。すべての登場人物が生き生きと描かれていて、人生のヒントがあります。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 下手なゴルフが時々と、ガーデニングです。剪定(せんてい)すると芽が出て強くなるのは面白いですね。

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 ■人物略歴

 ◇かたのざか・しんや

 1955年生まれ。鹿児島県出身。ラ・サール高校、東京大学卒業後、79年4月に全日本空輸入社。人事部長などを歴任し、2013年4月のANAホールディングス発足時に副社長、15年から現職。62歳。

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事業内容:航空運送事業など

本社所在地:東京都港区

設立:1952年12月27日

資本金:3187億円

従業員数:3万9243人

(2017年3月31日現在、連結)

業績(17年3月期、連結)

 売上高:1兆7652億円

 営業利益:1455億円

2017年

9月

05日

「自分たちの生活から不満を発見し、商品開発」大山健太郎 アイリスオーヤマ社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どんな会社ですか。

 

大山 生活用品の製造販売をしています。メーカーでありながら問屋の機能を兼ね備え、量販店に自社商品を直接納入している「メーカーベンダー」は当社ぐらいでしょう。

 当社は需要創造型企業です。マーケットインではなく、ユーザーイン、つまり自分が欲しいと思うものは皆が欲しいと思い、開発します。市場調査はほとんどやりません。我々自身の生活をしっかりと見ます。

 生活の不便を快適に変える商品で奥様方から高評価をいただいてきましたが、ここ3年で家電が売り上げの半分を占めるようになりました。主力は炊飯器や布団乾燥機です。

 

── 会社の成り立ちは。

 

大山 父が東大阪で創業した従業員5人のプラスチック工場を19歳で継ぎ、零細下請けを脱皮したいと養殖用のブイ(浮き)や苗箱など1次産業の資材を手がけました。2000年代にペット用品、園芸用品を売り出しました。09年のLED(発光ダイオード)電球を皮切りに家電に参入しました。

 

── 最大の転機は。

 

大山 1970年代のオイルショックです。会社は破竹の勢いで拡大し、宮城県にも工場を構えていましたが、倒産寸前となりました。オイルショックで前倒しになった需要が止まり、供給過剰で値崩れが起きたのです。

 不況でも利益を出せる会社を作ろうと思いました。値崩れを引き起こす競争のないビジネスをするため、潜在需要を顕在化させることを考えました。園芸用品でガーデニングブームを作り、ペット用品で家畜をファミリーに変えてきました。

 

── LED電球のきっかけは。

 

大山 当初、夜も庭を楽しむために消耗しにくいLED電球を作りました。09年、鳩山由紀夫首相(当時)の二酸化炭素25%削減宣言で、照明がLED電球に切り替わるとみて生産を開始し、11年の東日本大震災後の節電を機に拡大しました。

 

── 家電に参入した理由は。

 

大山 大阪は家電の町、大阪人にとって家電メーカーは憧れの存在でした。それがグローバルの競争に負けてしまった。リストラで技術者があぶれているのはもったいないと思い、受け皿として、13年に大阪R&D(研究開発)センターを作り、採用を進めてきました。

 

── 日本の家電メーカーが崩壊するなかで成長できた理由は。

 

大山 日本の家電メーカーが負けた理由は二つあります。

 一つは、日本のものづくり産業が下請けの多層構造であることです。総合家電メーカーは設計し、部品を組み立てます。便利な構造ですが、各下請けが利益を乗せるので、海外と競争すると勝てないのです。

 もう一つは、創業者からサラリーマン社長に代替わりするとリスクを取らなくなります。商品開発の提案がとがっていても、何層も会議を経て他社の競合製品と比べる中で横並びになります。

 当社は、家電の内製比率が高いことがコスト競争力とイノベーションを生んでいます。そして、私が退いた後も機能するような仕組み作りに力を入れてきました。例えば、週初めに丸一日かけて商品開発のプレゼンテーション会議を行っています。私はじめ30人ほどが参加し、情報を共有しています。

 

 ◇常識の非常識

 

── ヒット家電を生んでいます。

 

大山 1~2人世帯が6割を占めるようになったのに、既存の家電メーカーは横並びで4人家族をベースにした製品を作り続けています。でも、1~2人世帯にとって便利な製品を考えれば、いろいろと出てきます。

 

── 生活の変化という簡単なことに皆が気づかないんですね。

 

大山 大きい製品の方が高く売れるからです。量販店も同じです。生活者を忘れています。でも、あっという間に携帯電話がスマートフォンに変わったように、今日と明日は違うんです。

 世の中には常識の非常識がけっこうあります。我々はお客様が気づいていない不足・不満を自分の生活の中から発見し、変えています。

 

── 今年4月にエアコンを発売し、大型白物家電に参入しました。

 

大山 家電のゴールです。まずエアコンを手がけたのは、省エネ効果が大きいからです。

 家電のシェアは今は単価が低いので数%です。マーケットは大きいですから、1割、3割へ伸ばしていきます。中国と国内で工場をどんどん増やしています。できるだけ内製します。

 

── 設備を抱えることにはリスクもあります。

 

大山 リスクを取ってシェアを取れば、設備の稼働率が上がります。

 ロングセラー商品にあぐらをかくなと言っています。年間1000アイテムを新たに発売しています。メーカーベンダーですから新商品を店頭に並べられます。過去3年間に発売した商品の売上比率が6割を超えています。

 

── 経営目標は。

 

大山 売り上げに対して1割の営業利益と過去3年の新商品比率5割以上です。売り上げ目標は立てません。

 

── 上場はしないのですか。

 

大山 必要がありません。無借金ですし。経常利益の5割程度を償却を含めた設備投資に充て、営業利益の5%を幹部社員に還元しています。

 会社にとって一番大事なのは、社員です。働く社員にとって良い会社を目指しています。

(構成=黒崎亜弓・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A オイルショックを経て、会社の業態転換のため必死で試行錯誤していました。

 

Q 「私を変えた本」は

A 本はあまり読みません。過去のことですから。今、起こっていることをウオッチし、本質を見極めるようにしています。

 

Q 休日の過ごし方

A クラシック音楽を1日5、6時間聴いています。毎朝3キロウオーキングし、週に1度は水泳をやる健康オタクです。

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 ■人物略歴

 ◇おおやま・けんたろう

 大阪府出身。大阪府立布施高校(東大阪市)卒業。1964年、大山ブロー工業代表者に就任。91年、アイリスオーヤマに社名変更。アイリスグループ会長。72歳。

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事業内容:生活用品の企画、製造、販売

本社所在地:仙台市青葉区

設立:1971年4月

資本金:1億円

従業員数:3013人(2017年1月現在)

業績(16年12月期・単体)

 売上高:1220億円

 経常利益:110億円

2017年

8月

29日

客室数日本一 中核の支配人は97%が女性 黒田麻衣子 東横イン社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 全国各地にある東横イン。私も出張で度々利用しています。

 

黒田 7月現在の店舗数は268で、客室数は5万4111室で、客室数は日本一です。2016年度の稼働率は83・6%でした。

 

 

── 名前の由来は。

 

黒田 1号店の蒲田が東京と横浜の間にあることから

 

です。蒲田近辺には建設会社や不動産会社で東横と名の付く会社が結構存在します。

 

── 特徴を一言で言うと。

 

黒田 創業当時からビジネスマンが対象です。創業者の父は、ホテルマンでも、接客業に従事していたわけでもなく、利用客の目線で常に明るく清潔でリーズナブル(お手ごろ価格)というホテルを作ってきました。ただ、2000年代半ばごろから家族連れの利用も増えてきました。かつては土日や夏休みシーズンの8月の稼働率は最も低かったのですが、今はむしろ高くなりました。

 

── こだわりは。

 

黒田 どこに行っても客室とサービス内容が同じです。固定客確保も図っています。入会金1500円で会員になれば宿泊料は5%割引し、10回泊まると1回無料となる特典があります。今では会員の宿泊率は7割弱です。

 

── 独特の経営スタイルとか。

 

黒田 物件を持たず、運営に専念しています。1986年に開業した蒲田の1軒目がたまたまそうだったのかもしれませんが、創業者の父が友人から相談を受けてホテル経営を勧めたところ、その友人が難色を示したため、建築を前提に父が運営を引き受けたところから始まりました。

 その後もホテル業には専念せず、不動産デベロップメントが本業でした。しかしバブルが崩壊して不動産は全て手放さざるを得なくなりました。創業10年後の96年、父がホテル業への専念を決め、そこから伸び始めました。お金がない状態で「建てていただいて運営させてもらう」スタイルが本格的に始まりました。

 

── なぜ物件を持たないのですか。

 

黒田 資産の負担が少なく、初期投資が少なくても続けられることが大きいです。副産物的には、土地と建物のオーナーは地元の名士なので顔が広く、地元経済界に紹介してもらえたり、お客様を呼んでくれたりするメリットもあると思います。

 

 ◇「就任30年で50万室」に

 

── 職場の特徴は。

 

黒田 圧倒的に女性が多いです。支配人は97%、フロントは80%が女性です。支配人は1号店の開業時から女性ですが、実は偶然です。父が行きつけの飲食店の接客に優れた女性に依頼したのが発端です。2号店の支配人は男性でしたが、1号店との稼働率の差がみるみるうちに出てきました。調べてみると女性支配人の1号店は常にきれいで明るいのに対し2号店はたばこ臭くて暗い。以来「目が行き届く女性向きの仕事」として支配人はずっと女性です。

 

── 支配人はどんな方々ですか。

 

黒田 40代が最も多く、職歴はキャビンアテンダントや教師、専業主婦などさまざまです。ただ、小学校以下のお子さんがいる方には厳しい仕事だと話しています。ホテルは24時間365日開いているので、何かあれば夜中でも駆けつけなければなりません。また月1回は全国10エリアごとの支配人会議があるので出張も多いです。

 一方で晩婚化が進み、30代後半から40代半ばは、お子さんが小さいケースが増えています。支配人も平均年齢は48歳と上がっています。何らかの子育てサポートの手立てを考えなければならないと思っています。

 

── その他の職種は。

 

黒田 フロント正社員の働き方は独特です。午前10時半から翌日午前11時半まで、計4時間の休憩を含んだ勤務です。勤務を終えた翌日と翌々日は休みです。出勤日の晩は、お子さんを家族に見てもらう必要がありますが、勤務を終えてからは一緒に過ごせる時間は長くなります。この勤務体系を支持する人も多いです。4日に一晩だけ何とかできれば、もっと子育て世代の味方になる職場になるのではないかな、と思うのですが。

 

── 初めから後を継ぐつもりでしたか。

 

黒田 教員を目指していました。ただ大学院生時代に母校の非常勤講師を務め「向いていない」と感じました。02年に入社して新規出店に関わった後、結婚と出産を経て05年に退社して専業主婦になりました。復帰するとは思っていませんでした。

 

── 戻るきっかけは。

 

黒田 08年に起こした廃棄物処理法違反事件です。グループの工事部門に対し、父が店舗の地下を建築資材置き場として容認したところ、雨水が入り込んで硫化水素を発生させてしまい、父は経営者から降りました。私は「戻らなきゃ」と思ったのです。当時2人の娘は幼稚園でしたが、子育てをどうしようと考える間もなく、突然湧いた思いでした。

 

── どんな会社にしたいですか。

 

黒田 戻ったときは会社の不祥事の後で、リーマン・ショックの影響でホテルの稼働率も前代未聞の低さで支配人に元気がありませんでした。「支配人の笑顔を取り戻し、日本一女性が働きたい職場を作りたい」と思いました。それには成長し続けることが必要で、「30年で50万室」という目標を立てました。業績が悪ければ客室数は増やせませんし、成長する会社に身を置いてこそ意気に感じて仕事ができると思います。二度と世間を騒がせてはならない。社会から尊敬される会社にしたいと思っています。

(構成=米江貴史・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 2008年末に戻ってきて、どちらかというと、仕事を覚えることで必死でした。今より何事も新鮮に受け止められていた気がします。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 変えたとまでは思いませんが、すごく良いなと思ったのは『海賊とよばれた男』(百田尚樹著)です。こんな社長になりたいと思いました。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 家事です。洗濯物や片付けに追われています。娘たちに必要なものを買いにも行きます。睡眠も取っています。

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 ■人物略歴

 ◇くろだ・まいこ

 1976年生まれ。東京都出身。成城学園高校、聖心女子大文学部を経て2002年、立教大大学院文学研究科博士課程前期修了後、東横イン入社。出産・育児のため05年退社後、08年に副社長として復帰。12年6月から現職。41歳。

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事業内容:ホテル運営

本社所在地:東京都大田区

設立:1986年

資本金:5000万円

従業員数:1万895人(パート従業員含む)

業績(2017年3月期単体)

 売上高:819億7000万円

 営業利益:172億1300万円

2017年

8月

22日

全自動衣類折り畳み機で世界を席巻 阪根信一 セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 さまざまな衣類に対応した世界初の全自動折り畳み機「ランドロイド」を開発した。大きさは高さ220センチ、幅87センチ、奥行き63センチ。1回で約30枚の衣類が投入でき、所要時間は1枚約5~12分。想定価格は185万円程度で来春までの納品を目指す。

 

── ランドロイドが話題ですね。

 

阪根 一部で予約を受け付けており、数百人の購入希望者がいます。

 

── どのような仕組みですか。

 

阪根 目で見て、頭でどのような衣類かを判断しなくてはならないので、カメラによる画像認識機能と、人工知能(AI)を搭載しています。手で畳む機能を実現しているのはロボットアームです。

 

── 衣類の折り畳みに着目したのはなぜですか。

 

阪根 世の中にないもの、人々の生活を豊かにするもの、技術的ハードルが高いものという三つの条件を満たすテーマを探しましたが、思いつくものは特許が取られていたりして、誰かが既に取り組んでいました。ある時、技術系の会社は男性社会なので、男の自分が考えても見つからないと思い、妻に聞いてみたところ、「洗濯物の自動折り畳み機が欲しい」と言われました。関連する特許も出ていなかったので、開発に着手することにしました。

 

── 苦労はありましたか。

 

阪根 2005年から開発を始めて、3年くらいで畳む技術はある程度実現できました。ただ、衣類がぐちゃぐちゃの状態からはなかなかきれいに畳めません。当時、住友電工の技術者から脱サラして起業した父の会社で開発を進めていましたが、リーマン・ショック(08年)が起き、他の事業は縮小している中で、こんな訳のわからないことをなぜ続けているのかという社内の目もありました。それでも11年ごろに技術的なブレークスルーが起き、手応えを感じました。

 

── 注目を浴びるきっかけは。

 

阪根 15年10月に国内最大の家電見本市「CEATEC(シーテック)」で発表してから反響がありました。

 

── 今後の改善点は。

 

阪根 3年間は新しいモデルをつくりません。購入後もAIは機械学習で随時更新してより精度を高めていくので、最初に買っても、3年後に買っても性能は変わらないようになります。10年後にはより普及できるような価格に抑えたいですね。まずは折り畳み専用機を世界中に普及させてから、将来的には洗濯・乾燥機能も備えたものをつくりたいです。

 

 ◇医療機器やゴルフ用品も

 

── 経営者を志したきっかけは。

 

阪根 化学の研究者になるために大学卒業後に留学した米国の大学院ではある程度成果を出せたのですが、上に行けば行くほど、これは勝てないという研究者が大勢いました。でも、技術とコミュニケーションが必要なビジネスなら、勝負になるのではないかと思いました。父の会社はOA機器用の部材の製造など技術系の企業だったので、そこに就職し、社長になりました。

 

── なぜ起業したのですか。

 

阪根 父に外部資本を入れることに賛同してもらえなかったからです。父の会社はBtoB(企業間取引)ビジネスでしたが、将来的にはBtoC(消費者向け)ビジネスで勝負したいと思っていました。そのためには外部資本を入れて会社を大きくする必要があります。祖父が経営していた上場企業が、ホテルニュージャパンの社長だった横井英樹さんに敵対的買収で乗っ取られたため、自分の会社に外部資本は入れないとの思いを父は持っていたようです。

 

── ランドロイド以外にはどのような事業をしていますか。

 

阪根 いびきや睡眠時の無呼吸を治療する機器「ナステント」を14年に発売しました。これまで約6万人に100万本以上が売れました。重症無呼吸患者だった私はCPAP(シーパップ、睡眠中に鼻に掛けたマスクから、圧力を加えた空気を送り込み、気道が閉塞(へいそく)しないようにする装置)で快適に眠れましたが、出張などの際の持ち運びが大変だったので、使い捨てコンタクトレンズのようなものを開発したいと思いました。ナステントはシリコーン製の使い捨てチューブで、睡眠時に鼻の穴に差し込んで利用します。1箱は7本入り(1週間分)で3220円(税抜き)です。

 

── 事業が多彩ですね。

 

阪根 人工衛星にも使われる特殊なカーボン製のゴルフシャフトもつくっています。独自に開発した、スイング中のシャフトのしなりとねじれを測る機械を使い、1本1本オーダーメードでつくります。価格は1本12万~1200万円(税抜き)。尾崎3兄弟らプロゴルファーにも愛用されています。

 

── 関連性のない複数の事業をやっているのはなぜですか。

 

阪根 イノベーションを起こすためには、ニーズからテーマを探す必要があると思いました。持っている知見を生かして何かをやろうとしてもイノベーションを起こすためのテーマは見つからないと気付き、世の中のニーズを優先した結果、バラバラのテーマになりました。

 

── 社名の由来は。

 

阪根 世界中に七つの開発拠点をつくりたいとの思いを込めています。

 

── 今後の目標は。

 

阪根 四つ目、五つ目の商品開発も進めており、特許も申請しています。早ければ1年後くらいに発表できるかもしれません。日本で生まれた技術で世界を席巻したいですね。

(構成=松本惇・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 父が起業した会社の社長に就任しました。会社を成長させるため、組織のマネジメントと対外交渉力を学びました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 松下幸之助さんの本は全て良かったのですが、特に印象に残っているのは『素直な心になるために』や『商売心得帖』です。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 半分は仕事ですが、残りの半分は子供と遊んでいることが多いですね。

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 ■人物略歴

 ◇さかね・しんいち

 1971年生まれ。高槻高校、甲南大学卒業後、米デラウェア大学化学・生物化学科博士課程修了。父が起業したI・S・Tに2000年に入社し、08年に社長就任。11年のセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ創業時から現職。46歳。

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事業内容:ゴルフ用品、医療機器、家電などの製造・販売

本社所在地:東京都港区

設立:2014年7月18日(11年2月創業)

資本金:77億円(資本準備金含む)

従業員数:117人(17年6月30日現在)

業績 非公開

 

2017年

8月

08日

再生から新たな攻めのステージへ 河野雅明 オリエントコーポレーション社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どんな会社ですか。

 

河野 広島県が発祥の信販会社で、消費者向けファイナンスの分野で大きく成長してきました。事業の柱は大きく四つ。オートローン(自動車購入の際の分割払い)やショッピングクレジットなどの「個品割賦」、クレジットカードやカード融資などの「カード・融資」、金融機関と提携して個人向け融資を保証する「銀行保証」、そして家賃保証や売掛金決済保証などの「決済・保証」です。こうしたサービスの加盟店は全国で79万店。当社は47都道府県に営業拠点があるのが強みです。

 

── オートローンは業界トップシェアですね。

 

河野 特に中古車市場では、日本中古自動車販売協会連合会と二人三脚で市場を作ってきました。ただ、その歴史的背景があるからとおごっていてはダメで、常にお客さまの視点に立って新しいサービスを作っていかなくてはなりません。月々の支払い金額や支払い回数をお客さまが自由に設定できる「ニューバジェットローン」を開発し、浸透してきたのがその例です。また、(モノを持たずに貸し借りする)シェアリング・エコノミーが広がっていく中で、(個人向けに車をリースする)オートリース事業も伸びています。

 

── クレジットカードはどうですか。

 

河野 家電量販店などとの提携カードを中心に発展してきましたが、現在力を入れているのは当社独自のカード「オリコカード ザ ポイント」です。高還元率(1%)で、ポストペイ(後払い)型の電子マネーも搭載するなど、商品性は高いと自負しています。今年1月からは、みずほ銀行の会員向け特典サービス「みずほマイレージクラブ」も受けられるカードを、みずほ銀行の窓口でも販売してもらえるようになりました。

 

── 銀行保証や決済・保証事業の特徴は。

 

河野 銀行保証の残高は1兆4000億円くらいあり、これも国内でトップ。全国の地方銀行や信用金庫、信用組合などとまんべんなく取引があります。地域金融機関との対話を重視しながら関係を築いてきた結果です。決済保証は比較的新しい業務で、特に伸びているのが家賃保証。高齢者を含め単身世帯が増え、(個人の連帯保証人が付けにくくなる)民法改正もあって、我々のような保証会社を付ける流れです。

 

 貸金業法(当時は貸金業規制法)改正の影響で、2007年3月期連結決算が4613億円の最終(当期)赤字となったオリエントコーポレーション(オリコ)。債務者が払いすぎた過払い金利息の返還請求に備え、引当金繰入額を特別損失として計上したことなどが理由だったが、17年3月期連結決算は営業収益が2136億円、最終利益が286億円と2期連続の増収増益に。11期ぶりに普通配当2円も実現した。

 

── 復配も実現しましたね。

 

河野 大幅な赤字決算からちょうど10年。緻密な収益管理やコスト構造改革を進め、安定的な収益体質になってきました。復配は株主に喜んでもらえたと思っています。これまでは再生のステージでしたが、これから新しい攻めのステージに移っていきます。

 

 ◇フィンテック情報収集

 

── 日本は現金志向が強い社会と言われ、クレジットカードが使えない店舗も少なくありませんでした。

 

河野 店舗側の意識はだいぶ変わりつつあります。通販などインターネット決済も急激に広がっており、いまやカードが使えないとビジネスができません。政府の「未来投資戦略2017」でもキャッシュレス化の推進が盛り込まれました。20年の東京五輪・パラリンピックもあり、外国人観光客のさらなる増加に向け、カードが使えるインフラを整えるのは国家戦略です。

 

── セキュリティーはどうですか。

 

河野 キャッシュレス化に向けては、データを読み取られるんじゃないかという利用者の不安を解消することが大事。我々はスマートフォンを使った非接触型の決済にはそれなりの技術を持っていると自負しています。さらには、フィンテック(ITと金融の融合)の時代ですから、新しい発想が必要です。昨年12月には米ベンチャーキャピタルと、新規事業開発を目的とするパートナーシップ契約を結ぶなど、情報収集や研究も進めています。

 

── 過払い金の返還の状況と、13年に発覚した暴力団融資問題の再発防止の取り組みは。

 

河野 過払い金の返還は予想よりも減り方が鈍いですが、利息制限法を超える利息の融資残高は10年6月にゼロになり、かなり時間が経過しています。今後は減っていくのは間違いありません。また、暴力団融資問題に対しては、コンプライアンス(法令順守)の強化を含め力を入れて再発防止の取り組みをしています。これには自信があります。

 

── 社長就任2年目です。これからどんな会社にしたいですか。

 

河野 これまで厳しい時代を過ごしてきましたが、これからは社会から評価されて株価もさらに上げていかなければなりません。「お客さまの豊かな人生の実現を通じて社会に貢献する」という企業理念を目指し、さらにお客さまの利便性を追求していきたいと思っています。

(構成=桐山友一・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 1990年代、銀行で人事と企画を担当していました。バブル崩壊から金融危機の足音が聞こえていた時代です。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A トム・ピーターズ、ロバート・ウォータマン『エクセレント・カンパニー』です。20代で最初に触れて以降、私の会社人としての原点です。時代は変われど、普遍的な真理が語られていると思います。

 

Q 休日の過ごし方

 

A ジョギングとジムで体をいじめています。52歳が初マラソンで、これまでフルマラソンを16回完走しました。

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 ■人物略歴

 ◇こうの・まさあき

 1957年生まれ。広島県出身。広島大学付属高校、東京大学経済学部卒業。79年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。みずほ銀行副頭取、みずほコーポレート銀行副頭取、みずほフィナンシャルグループ副社長などを経て、2016年6月から現職。60歳。

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事業内容:個品割賦、カード・融資、銀行保証

本社所在地:東京都千代田区

創業:1954年

資本金:1500億円

従業員数:3658人(2017年3月現在、単体)

業績(17年3月期、連結)

 営業収益:2136億円

 営業利益:335億円

2017年

7月

25日

難題に挑戦し技術に磨き 金川千尋 信越化学工業会長

◇難題に挑戦し技術に磨き 塩ビで世界トップ

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 会社を代表する製品は何でしょうか。

 

金川 塩化ビニール(塩ビ)です。使われる量が最も多いのはインフラです。窓枠や建物外壁などの建材や上下水道のパイプに使われ、生活や社会を支えています。私たちの身の回りでも、電線の被覆、車シートやソファのカバーなどに使われます。

 

── 塩ビの世界シェア1位とうかがっています。

 

金川 当社は1992年から塩ビでシェア世界一です。

 

── 塩ビはどこで製造しているのですか。

 

金川 米国の子会社「シンテック」が塩ビ事業の中心で、同国内に三つの製造拠点があります。同社は年間295万トンを生産する世界最大の塩ビメーカーです。これは、日本全体の需要の約3倍に匹敵します。シンテックに加えて、日本、オランダ、ポルトガルでも製造しています。

 

── 米国に重点を置く理由は。

 

金川 塩ビの大きな需要があり、かつ需要が安定していることが理由です。また、塩ビの主要原料は塩素とエチレンですが、米国では両方とも自国内で調達できます。電気代もシンテックの工場があるルイジアナ州では日本の半分以下であり、コスト競争力のある製品を作ることができます。日本で製造しようとするとすべての原料を輸入しなければならず、運送コストもかかります。

 

 ◇米でエチレン製造へ

 

── 原料の調達で大きなプロジェクトを進めているそうですね。

 

金川 現在、米国のルイジアナ州でエチレンの製造工場を建設中です。塩ビの主原料の一つであるエチレンの安定調達のための投資で、2018年半ばの完成を見込んでいます。日本の企業が米国でエチレン工場を建設するのは初めてです。

 

── エチレンの安定調達とは。

 

金川 現在、当社はエチレンをすべて外部から調達しています。これでは、エチレンメーカーや物流網のトラブルで供給が滞ったり、価格の上昇の影響を大きく受けるリスクがあります。自社で必要なエチレンの約半分を製造することで、リスクを減らせます。

 

── 半導体メーカーにシリコンウエハーを供給しています。

 

金川 シリコンウエハーも世界シェア30%で1位です。半導体業界は活況なので需要は旺盛です。

 

── ウエハーは10年ほど前から供給過剰の状態が続いていましたが、現在は需給が逼迫(ひっぱく)しています。価格政策を聞かせてください。

 

金川 ようやく需要が供給を上回り、今年の初めより一部「値戻し」を実現できています。今後の需要増に対応するためにも、更なる価格是正は必要と思います。

 

── 世界シェア1位の商品が複数あるのですね。

 

金川 五輪で金メダルを獲得するのは大変ですが、2大会連続で金メダルを取るのはさらに難しいことです。事業も同じです。重要なのは技術力です。現在の塩ビの生産性を大幅に伸ばすことができたのは、当社の技術者の努力のたまものです。「モノは売っても技術は売らない」というのが、私の信念です。

 

── 技術力が売り物なのですね。

 

金川 シンテックは、工場を建設する際には技術者と、グループのエンジニアリング会社が設計から建設工事の監督まで行っています。化学工場を建設し、安全に立ち上げるのは容易ではありません。しかし、難題に挑戦することで、当社の技術者は経験を積み、自信を持つようになります。この積み重ねが今日の強みである技術力を磨き上げてきました。

 

── 化学工場の設備投資額は莫大(ばくだい)です。投資の判断はどのようにしてきたのですか。

 

金川 設備投資の基本は「販売先行」です。製造したモノを売れる自信がなければ設備投資に踏み込めません。塩ビの設備は大きな投資が必要になりますから、慎重な判断が必要です。シンテックの工場が稼働を始めたのは1974年です。シンテックは私が企画、立案して生まれた会社です。私は「塩ビはすぐれた素材であり、確実に需要が増える」という確信があり、その確信は今日まで変わりません。

 

── それでも社内で議論があったのでは。

 

金川 確かに社内で異論もありましたが、当時の小田切新太郎社長が私を信じてご承認いただき、シンテックの事業を任せてくださいました。小田切さんのご決断のおかげで今日のシンテックがあります。心から感謝しています。

 

── 社長就任から27年、経営者として人材育成をどのように進めてきましたか。

 

金川 社員に「常在戦場」の心構えが大切と言っています。当社の製品の多くが市況の影響を受けます。市況の良い時ほど、悪化した時のことを考えていなければなりません。また、私が尊敬する山本五十六連合艦隊司令長官は「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ」と語ったそうです。人を動かし育てる要諦は、まず自分でやってみせることに尽きます。

 

── 社長就任後も苦労は絶えなかったのでは。

 

金川 市況の波に直面しても日々やるべきことを実行して、一つ一つ乗り越えてきました。毎日欠かさず、数々のデータを分析して、課題に対処すべく考え続けることが大切です。

(構成=種市房子・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 極東物産で合金鉄の営業などをしていました。モノ作りに魅力を感じて35歳で信越化学へ転職しました。市場開拓のために世界を飛び回りました。

 

Q 「私を変えた本」は

A 『山本五十六』(阿川弘之著)です。山本長官は米国の国力を冷静にみきわめて、右翼に命を狙われながらも最後まで開戦に反対されました。山本長官の先見性と人柄に尊敬の念を抱くようになりました。

 

Q 休日の過ごし方

A 自宅の庭を訪れる鳥や、庭の花をながめて、くつろいでいます。体を休めて英気を養っています。

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 ■人物略歴

 ◇かながわ・ちひろ

 朝鮮・大邱(テグ)出身。旧制第六高校を経て1950年、東京大学法学部卒、極東物産(現三井物産)入社。62年信越化学工業入社、78年米子会社「シンテック」社長。90年、シンテック社長と兼務で信越化学工業社長に就任。2010年から現職。91歳。

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事業内容:総合化学

本社所在地:東京都千代田区

設立:1926年

資本金:1194億円

従業員数:1万9206人(2017年4月現在、連結)

業績(17年3月期連結)

 売上高:1兆2374億円

 営業利益:2386億円

2017年

7月

18日

半歩先の新技術で企業を支援する 根元浩幸 クレスコ社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── サービスの柱は何ですか。

 

根元 BtoB(企業向け)のビジネス系ソフトウエアと組み込みソフトです。比率はビジネス系が8に対し、組み込みが2です。ビジネス系ソフトの半分は銀行や保険会社など金融向けが占めます。残り半分は、物流、旅行、人材、サービス、公共事業など多様な業種が顧客です。一方、組み込みソフトはスマートフォン、デジタルカメラ向けが多いです。

 

 クレスコは顧客ごとに最適なIT(情報技術)システムを構築し提供する「システムインテグレーター」だ。創業は1988年、朝日ビジネスコンサルタント(現・富士ソフト)から独立したベンチャー2社が合併して誕生。当時は汎用(はんよう)コンピューター上で動くミドルソフトウエア(制御系ソフト)やカーオーディオなどへの組み込みソフトから出発したが、IT市場拡大の波に乗り事業規模を広げた。現在はIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)など新技術も得意としている。社名はラテン語で「成長する」の意。

 

── 足元の業績は。

 

根元 ここ数年は増収増益傾向です。日本企業のIT投資は増えています。製造業も「金型よりもソフト」と意識が変わりました。「RPA(ロボットによる業務自動化)」関係のソフトの需要も増えています。

 

── 会社の強みは。

 

根元 新しい技術分野に飛び込める文化があることです。チャレンジ精神とも言えます。AI、IoT、クラウドといった新しい技術に、同業他社より1、2年先に取り組んできました。ここ数年は先端技術研究・開発活動の支援と促進を目指した「技術研究所」を社内に設置し、その成果を実際のビジネスへ導入・運用するための「先端技術事業部」を発足させました。

 

── AIの導入事例は。

 

根元 人材派遣会社フォーラムエンジニアリング向けに、IBMのAI「Watson(ワトソン)」を活用した人材マッチングシステムを構築しました。

 人材業界では雇用のミスマッチ解消が課題です。そこで、企業の求人情報と求職者のさまざまなデータをAIに学習させ、最適な組み合わせを探す仕組みを作りました。このシステムは、ワトソンの活用事例のうち、世界で十指に入る成功例としてIBMから認定されました。

 

── 新技術で先行できる理由は。

 

根元 顧客のビジネスの知識を持つことと、新技術に強い企業や研究機関との連携が重要です。例えば、当社はフォーラムエンジニアリングと10年以上の取引実績があり、同社の業務を熟知しています。それがなければAIの使い道も見いだせません。さらにIBMの営業担当も連れて行って顧客が必要とするシステムをトータルで提供しました。ビジネスの仕掛けづくりは、システムインテグレーターが活躍できる領域です。

 

 最近はオープンソース(無償)のAIを使い、目の病気を早期発見するための画像診断システムを、名古屋市立大と共同開発しました。網膜には目の病気の兆候が表れます。熟練の医師でないと診断が難しいのですが、同システムは網膜の中心を撮影した大量の画像をAIに学習させることで病気の兆候を高い確率で見つけ、眼科医の診断を補助します。今後は制度的な課題をクリアし、早期の商用化を目指します。

 

 ◇トップの顔を見せる

 

── IT分野で信頼を得るには。

 

根元 新技術と既存の古い技術、両面で確実に仕事をやり遂げることです。例えば金融系や航空系のシステムは品質問題が起きると社会的な影響が大きいので、古くても安定したシステムで動かします。これらのビジネスは地味ですが重要です。

 また、私は特別な用事がなくても顧客を訪れ、当社の考え方を自分の口から直接伝えるようにしています。トップの顔を見せると大きな仕事も安心して任せてもらえます。

 もう一つは、年間約800プロジェクトの月次業務報告書に目を通し、現場の状況把握に努めています。報告書は、問題の原因や顧客の課題を知る有用な情報ソースです。

 

── M&A(合併・買収)は。

 

根元 IT企業に限定して行っています。2016年9月にJAグループ傘下の農協観光のシステム子会社「エヌシステム」を買収しました。旅行業界向けのIT市場はパイが大きいとは言えませんが、同社を買収したことで専門性が高まりました。

 M&Aを行った後は、シナジー(相乗効果)を高めグループ全体の価値を上げる必要があります。例えば、現在10社ある子会社から、「AIで何かやりたい」といった声が上がることもあります。そこでグループ事業推進本部の下で横断的に研究・開発する仕組みを整えました。

 

── 人材確保はどうですか。

 

根元 人手不足で人材の採用は苦戦しています。そこで海外にも目を向け、数年前からベトナムの企業に仕事を出しています。これが定着してきたので4月に駐在員事務所を設置しました。うまくいけば支店や現地法人をつくることも可能です。

 

── 今後の成長に向けた施策は。

 

根元 顧客が注目している分野で、多様なサービスを出し続けることです。これは新規顧客の開拓につながります。大手企業の多くは発注するIT企業が決まっています。そこに参戦するには、他社ができないものを提供しなければなりません。そのために地道な努力を重ね、常に半歩進んだITサービスを提供したいです。

(構成=大堀達也・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A ソフト開発のプロジェクトマネジャーでした。いわゆる「モーレツ社員」で、家に帰らず仮眠室に寝泊まりしたことも度々でした。現場の苦労はよく分かります。

 

Q 「私を変えた本」は

A よく読むのは司馬遼太郎です。『翔ぶが如く』や『峠』で描かれた人間模様に引かれます。

 

Q 休日の過ごし方

A 顧客とのゴルフや、ウオーキングを楽しんでいます。

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 ■人物略歴

 ◇ねもと・ひろゆき

 1960年生まれ。北海道立苫小牧東高校、北海道大学大学院卒業後、84年朝日ビジネスコンサルタント(現・富士ソフト)入社。87年メディアリサーチ入社。88年クレスコ入社、2006年取締役。常務取締役などを経て14年4月社長就任。57歳。

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事業内容:ソフトウエア開発

本社所在地:東京都港区

設立:1988年

資本金:25億1487万円(連結)

従業員数:1904人(連結)

業績(2017年3月期・連結)

 売上高:308億9300万円

 営業利益:27億700万円

2017年

7月

11日

技術者を正社員雇用して派遣し急成長 若山陽一 UTグループ社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どんな事業をしているのですか。

 

若山 当社が正社員として雇用した技術社員を半導体を中心に、電機、自動車、建設などの工場や現場に派遣する事業です。常時1万6000人を派遣しており、7割が正社員です。残り3割は、勤務場所などの関係でその地位を選んだ非正規社員です。派遣先の中核は半導体産業です。

 

── 正社員派遣とは珍しいビジネスモデルですね。

 

若山 派遣に対する世間一般のイメージは「不安定」「有期雇用」などでしょう。当社は違いますが、大多数は、派遣期間は3カ月で、契約更新時に次の契約の給料を決めるというモデルです。一般には派遣社員の給料は、派遣先と派遣会社の間の契約に合わせて決まる。職歴の連続性など加味されていません。これでは、派遣社員は常に3カ月先のことなど考えられない状態です。派遣という働き方が増えていく中で、派遣される技術社員に安心・つながり・成長を提供する会社でありたいと考えました。安心の一つの形として正社員として雇用しています。

 

── 正社員派遣によって、派遣社員にはどのようなメリットがあるのですか。

 

若山 給料が、派遣先と派遣会社の契約に左右されるのではなく、当社の賃金体系によって社員が持っている技術を評価して給与を決めることです。当社の理念は「派遣社員がお客様」です。技術社員に当社を活用してキャリアを形成してもらい、可能性を広げるのに資することに存在意義があると思っています。

 

 ◇半導体への派遣が中核

 

── なぜ半導体への派遣を中核としているのですか。

 

若山 1995年に創業して以来売り上げが伸びていましたが、2001年にITバブル崩壊の影響もあり、初めて減収となりました。競合の大きな派遣会社と同じことをしていては、生き残れないと感じました。当時『ビジョナリーカンパニー2』(ジム・コリンズ)を読み、この会社の使命をきちんと決めようと決意しました。未来永劫(えいごう)社員が納得して働ける会社を作ろうと、当時の社員36人と1年間議論したのです。その議論の中で「チーム派遣の需要があり、高い技術力が求められる分野が、当社の事業戦略にかなう」という結論になりました。その分野にあてはまる事業が半導体だったのです。

 

── どのように半導体派遣事業を立ち上げたのですか。

 

若山 当時は米国系半導体メーカーのリストラがあり、30人を採用しました。彼らに半導体に必要な営業資料や教育資料を作成してもらい、会社の仕組みを変えました。それが今日の当社の中核となっています。

 

── その経験が現在に生かされているのですね。

 

若山 あの危機は、ビジネスや会社の根幹を考えるいい機会になりました。自分たちの価値観を発見したことで、一気に会社が動き出しました。その2年後にはJASDAQに上場し、現在は東証1部上場を目指しています。大きな変化は、絶対的なビジネスチャンスと言えます。

 

── いつごろから正社員派遣モデルを描いていたのですか。

 

若山 大学時代からインターンで派遣会社に勤め、24歳で起業し機械設計の技術者派遣を始めました。ただ、当時から正社員派遣を思い描いていたのではありません。さまざまな派遣社員とかかわる中、派遣社員の生活基盤を良くする会社でありたいという思いが積み上がった結果です。

 

── 正社員派遣は人件費がかかるのでは。

 

若山 当社は働きがいを通じて離職率の低さを実現しています。また、1人ではなく、平均で30人単位、多いと500人、1000人規模のチームで社員を派遣する「チーム派遣」の形を取っており、生産性は高いです。これらの付加価値を提供しているコストを、お客様が必要とされているので、経営の圧迫要因にはなりません。

 

── チーム派遣とは珍しいですね。

 

若山 プロフェッショナルが1人で派遣されて「絶対にこの仕事を遂行する」という欧米型モデルの派遣は日本人に合っていません。また、もの作りはチームで仕事をするものです。チームの力で学び教え合い、生産性を向上してきたのが日本なのです。また、1人で派遣されると、現場で誰が上司なのか同僚なのか分からない中、不安定な気持ちで働くことになるからです。体系だったチームで派遣することで、このような問題に対処できます。派遣先のお客様にも、労務管理が効率よくなるというメリットがあります。

 

── 国内で人手不足が深刻化しています。派遣社員確保に影響は。

 

若山 当社では月間300人の純増を達成しています。ポイントは、派遣先のお客様が良い条件を示してくれる仕事を確保することです。その条件とは、契約期間が長くて、派遣社員の受け入れ数が多く、派遣単価が高いという三つです。当社の希望条件を理解してくれて、職場環境も整備されている派遣先というと、自然に大企業になるのです。当社の顧客に日本を代表する企業が多いのもこのような理由からです。

 

── 具体的な派遣先は。

 

若山 日立製作所グループやトヨタ自動車、東京エレクトロンなどです。売り上げベースで、半分が半導体・電子部品、25%が電池・環境エネルギー、自動車関連が16%です。

(構成=種市房子・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 32歳で上場しました。24歳での起業以来、社員・顧客と直接顔を合わせる人と仕事をしてきましたが、直接顔を合わせない株主の方々に対して客観性と一貫性をもって会社の説明をできるように意識が変わりました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 絵本の『スイミー』(レオ・レオニ)です。チーム派遣にも通ずるものがあり、2000~3000冊買っていろいろな人に配りました。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 昨年生まれた息子を風呂に入れたり、一緒に遊んでいます。

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 ■人物略歴

 ◇わかやま・よういち

 1971年生まれ、愛媛県出身。日本大学を中退後、人材派遣会社に勤務。1995年に前身のエイムシーアイシーを設立。2007年、ユナイテッド・テクノロジー・ホールディングスとしてグループ持ち株会社設立。15年に現在の社名に変更。46歳。

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事業内容:製造、設計開発、建設分野などの正社員派遣事業

本社所在地:東京都品川区

設立:2007年

資本金:5億円

従業員数:1万6118人(17年3月現在)

業績(17年3月期)

 売上高:575億8800万円

 営業利益:34億1300万円

2017年

7月

04日

自販機網を生活者のインフラに変える 高松富也 ダイドーグループホールディングス社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── ダイドーと言えば缶コーヒーで有名です。

 

高松 当社は、祖父の高松富男が、戦後すぐに奈良県で置き薬の販売を始めたことが創業のきっかけです。1956年に大同薬品(現大同薬品工業)を設立後、医薬品の製造・販売を行ってきましたが、70年代に入って新規事業として飲料事業を開始、これが現在のダイドードリンコです。当時缶コーヒーが世の中に出始めた頃で、当社も初の缶コーヒー「ダイドーブレンド」を発売しました。現在まで続くロングセラー商品となっています。その後自販機で飲料の販売を開始して以降、自販機を中心に販路を広げてきました。

 

── ロングセラーの秘訣(ひけつ)は。

 

高松 ダイドーブレンドを開発した当時から、香料を使わず多種多様な豆を多く使用して、いかに本物の味わいを再現するかにこだわり続けてきました。常に焙煎(ばいせん)メーカーから情報を収集し、世界中から良い豆を買い付けています。

 

── 費用もかさむのでは。

 

高松 当社の強みとして、製造工場を持たないファブレス(外部の協力企業に委託)方式で長く運営していることがあります。設備投資に莫大(ばくだい)なコストをかけることがないため、製品開発と自販機の展開に経営資源を集中できるのです。

 

── 事業の柱を教えてください。

 

高松 当社の事業ポートフォリオは、売上高で国内飲料事業が75%、海外飲料事業が10%、医薬品の受託製造を行う大同薬品工業が5%、食品関連事業のたらみが10%となっており、国内飲料事業では約8割が自販機の売り上げです。

 足元では、当社の主力商品のボトル缶コーヒー「世界一のバリスタ」や、当社初の機能性表示食品「大人のカロリミット はとむぎブレンド茶」の売れ行きが好調で、2017年2~4月期の連結決算の売上高は、前年同期比1・9%増の389億円と堅調に推移しています。

 

── 海外展開は。

 

高松 海外飲料事業は、現在トルコ、マレーシア、ロシア、中国に展開しています。特に売り上げに貢献しているのは、昨年トルコの食品大手ユルドゥズ・ホールディングス(HD)から買収した飲料事業です。現状は、ユルドゥズHDの商品を基本に展開していますが、既に現地で販売する缶コーヒー開発も進めており、いずれは新商品を発売する予定です。

 

── 他の地域では。

 

高松 ロシアでも、日本から輸入した自販機を約600台展開していますが、現地での評判は良く、引き合いも強い。今後は、これらの海外事業を、いかにスピード感を持って拡大していけるかが勝負です。いずれは、海外飲料事業の比率を国内と同規模に引き上げていきたいです。

 

── 医薬品事業の状況は。

 

高松 大同薬品工業は、ドリンク剤の受託製造市場で6割のシェアを占める収益性の高い事業です。足元では、主に中国を中心としたアジア市場での美容ドリンクの受注が好調です。ドリンク剤市場は全体的に縮小傾向にありますが、今後もアジア市場での需要は底堅いことや、受注元の製薬メーカーは、基本的に製造部門を外部に委託する傾向が高いことから、現在稼働している奈良工場に加えて、新たに群馬県に新工場を建設することを決定しました。

 

 ◇IoT自販機を本格展開

 

── 昨年、キリンビバレッジと自販機事業で提携しました。狙いは。

 

高松 両社の主力商品をお互いの自販機網で相互販売し、販路を広げることでお客様との接点を増やし、自販機の収益向上や商品のブランド力を強化する狙いがあります。当社からは、「世界一のバリスタ」シリーズの2品を採用いただきました。

 また、自販機の設置に関しては、当社は地方に強いのですが、キリンさんは都市部が強い。その点を補う意味でも、キリンさんとは良い補完関係を構築できたと思います。

 

── 競争が激しい飲料業界で、今後どんな戦略がありますか。

 

高松 現在、国内に設置している約28万台の全国的な自販機網は、当社の最大の強みです。これを活用し、人々の生活インフラとなれるIoT(モノとモノのインターネット)自販機の展開を計画しています。

 

── 具体的には。

 

高松 例えば、自販機に通信機器を搭載し、個人のスマートフォン(スマホ)とつながることで、付近のお店の情報を受け取ったり、高齢者の見守りサービスなど自治体のお手伝いをすることもできます。既に、商品を購入した方のスマホにポイントを付与するサービスも開始しており、こうしたサービスが広がれば、自販機の価値向上につながり、当社独自の事業展開ができるはずです。現在は2万台程度ですが、将来的には15万台のIoT自販機を本格展開する予定です。

 

── 14年度に開始した5カ年の中期経営計画は今年で4年目です。進展は。

 

高松 中計では、四つのチャレンジを掲げました。(1)既存事業の成長(2)商品力強化(3)海外展開による市場拡大(4)新たな事業基盤の確立です。18年度までに売上高2000億円を目標としていますが、17年度の通期売上高の見通しは1755億円。目標達成には、M&Aによる新たな収益の柱の確立が不可欠です。

 イメージとしては、医薬品事業において、製品の製造に強みを持つ企業や、予防医薬の市場が拡大しているので、サプリメントなどの医薬品と食品の間の領域でも検討しています。

(構成=荒木宏香・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 30代前半は、自販機の開拓営業で現場を学び、30代後半で副社長に就任し、経営を見るようになりました。大阪と東京を週に2~3回往復する生活でしたが、仕事は楽しく、30代を通して良い経験ができました。

 

Q 「私を変えた本」は

A ビジネス書の『ビジョナリーカンパニー 2 飛躍の法則』(ジム・コリンズ著)です。折に触れて読み返す、指針のような本です。

 

Q 休日の過ごし方

A 2~3年前からランニングを始めました。週2回、1日10キロほど走ります。

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 ■人物略歴

 ◇たかまつ・とみや

 1976年奈良県生まれ。大阪星光学院高校、京都大学経済学部卒業。2001年、三洋電機入社。04年ダイドードリンコ入社。08年取締役、12年副社長を経て、14年から現職。

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事業内容:清涼飲料等の製造・販売

本社所在地:大阪市北区

設立:1975年1月

資本金:19億2400万円

従業員数:3602人(2017年1月時点、連結)

業績(16年度連結)

 売上高:1714億円

 営業利益:38億円

 

2017年

6月

20日

「生活を下支えする便利な存在に」 竹増貞信 ローソン社長 2017年6月20日号

◇生活を下支えする便利な存在に

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── コンビニエンスストアは年々進化しています。

 

竹増 かつてコンビニは「しょうゆが切れた」「マヨネーズがない」という場合の緊急購買の場でした。お客様も「少し高いけど、緊急だから仕方がないか」という気持ちがあったのでは。今は、毎日足を運んでくれるお客様も多く、夕方や夜間の来店も増えています。ローソンは日常で使っていただける店を目指し、卵や牛乳などの食品、調味料、日用品等の約90品目を、スーパーマーケットやドラッグストア等の市場動向に合わせて、価格を見直しています。

 

── 目指すべきコンビニの姿は。

 

竹増 コンビニでは、物販以外にも、公共料金支払いや、ATM(現金自動受払機)などを通じてとても大きな額のマネーが通過します。これは、金融を介してさまざまなサービスを提供できることを意味します。金融に限ったことではありません。ローソンでは、一部の地方自治体の住民票交付も手がけています。金融や行政も合わせることで「ローソンは便利だね、効率的だね」「ローソンにさえ寄れば何でもできる」と言われる店を目指します。そうすることで、生活を全て下支えするような存在になれるのではないでしょうか。

 

── 2017年度(18年2月期)の経営計画は。

 

竹増 連結営業利益は前年比52億円減の685億円と計画しています。前の期まで14年連続増益でしたが、減益計画となっています。これは、本業のコンビニエンス事業では60億円の増収を見込む一方で、(1)POS(販売時点情報管理)などのシステム更新(2)金融やヘルスケアなどの新規事業(3)業務提携先のセーブオン・スリーエフからの看板替え、などの成長分野への投資を積み増すからです。本業の商売力は弱めずに、将来の投資をしっかりする足場固めの期間と位置づけます。

 

── 新規事業のうち金融事業の進捗(しんちょく)は。

 

竹増 現在は銀行免許は持たずに、共同ATMを管理・運営しています。次のチャンレンジは、この基盤をベースに銀行免許を持った金融ビジネスに参入することです。現在、ローソンバンク設立準備株式会社を設置して、関係当局の許認可等を前提に、銀行の設立準備を進めています。

 

── 日販(1店当たりの1日当たり売上高)はセブン─イレブン65万円に対して、54万円にとどまります。

 

竹増 留意しなければいけないのは、都心のど真ん中にある店舗は、日販が高いが、家賃も高いことです。ただ、セブンさんの粗利益率は高い。見習わないといけません。

 

── 店舗数では「セブン─イレブン」「ユニー・ファミリーマート」に次いで3位です。17年度の出店計画は。

 

竹増 出店1400店、閉店500店を見込みます。出店1400店の内訳は、提携先の「スリーエフ」「セーブオン」店舗の看板替え400店▽通常出店1000店です。

 

── ずいぶん多いですね。

 

竹増 16年度の出店実績は1055店でしたから前年比増です。かつて、大量出店を試みてうまくいかなかったことがあります。しかし、今回は「前始末(まえしまつ)」をきちんとしており、過去の失敗とは違うという感触があります。加盟店やオーナーには本部から「スーパーバイザー」が派遣されて、在庫管理や接客などの経営指導に当たります。このスーパーバイザーを、数年前の採用段階からある程度の人数を採用して育ててきました。

 

 ◇商事と生産性を向上

 

── 今年2月に、三菱商事がローソンを完全子会社化しました。

 

竹増 完全子会社化のメリットを出すも出さないも僕らローソン次第です。消費の最前線に立つ僕らが「今の市場はこう動いています」と確信を持って、新たなビジネス提案をしなければなりません。その時点で初めて、いかに三菱商事グループの力を活用するかという段階になります。逆に三菱商事から「こんな原料、食品があるぞ」と言われても、ローソンの感性と合わないと、原料調達から製品出荷に至るまでの「サプライチェーン」は機能しないでしょう。僕が三菱商事に入社した頃の、出資先に対する果実の取り方とは違ってきています。

 

── それ以外でのメリットは?

 

竹増 黎明(れいめい)期のコンビニは、1店舗1オーナーが基本路線でした。しかし、今のローソンは1人で複数店を担う多店舗経営型を進めています。また、物流面の効率化も課題となっています。こうした経営面や物流面での問題に対して、三菱商事と共に無駄を排除して、店の生産性を高める対策を一緒になってやっていきたいです。

 

── 5月には玉塚元一・会長兼CEOが退任しました。

 

竹増 玉塚さんは退任を明らかにした会見で「(竹増社長に権限を集中する)1頭体制の方がスピード感があっていい」と言っていました。玉塚さんはある兆しを感じていたのではないでしょうか。それは「この案件は玉塚会長に報告しようか」「この案件は竹増社長に報告するか」「いや、この案件は二人共に報告しないと」という大企業的な2頭体制への兆しです。実際にはこのような状態には陥っていませんが、玉塚さんが感じていたのはその兆しではないでしょうか。玉塚さんは別の業界に行きましたが(IT会社「ハーツユナイテッド」社長に就任予定)、これからもローソンの兄貴分だと思い続けます。

(構成=種市房子・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 3年間、三菱商事から米国の豚肉処理・加工品製造会社へCEO(最高経営責任者)補佐として出向して日本や米国向けの豚肉の生産・販売を担当しました。また、「経営とは何か?」を学びました。食肉にも詳しいですよ。

 

Q 「私を変えた本」は

A 司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』です。

 

Q 休日の過ごし方

A 趣味の釣りをして、釣った魚を刺し身やイタリアンで調理して、家族に振る舞うのが楽しみです。

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 ■人物略歴

 ◇たけます・さだのぶ

 大阪府出身。大阪教育大附属高池田校舎、大阪大経済学部卒業。1993年、三菱商事入社。グループの米国豚肉処理・加工品製造会社や三菱商事社長秘書を経て、2014年ローソン副社長。16年6月から現職。47歳。

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事業内容:コンビニエンスストア

本社所在地:東京都品川区

設立:1975年4月

資本金:585億円(2017年2月時点)

従業員数:9403人(17年2月時点、連結)

業績(16年度連結)

 経常利益:730億円

 当期利益:364億円

 

2017年

6月

13日

経営者:編集長インタビュー 小澤二郎 かどや製油社長 2017年6月13日号

◇全社でごまのスペシャリストを目指す

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── かどや製油はどんな会社ですか。

 

小澤 江戸時代の安政5(1858)年に小豆島で創業して以来、ごま一筋でやってきました。小豆島ではそうめん作りが盛んですが、そうめんをなめらかにし、栄養価を高め保存しやすくするためにごま油が用いられてきたのです。当社ではごま油をはじめとして多様なごま製品を手がけており、本社は東京にありますが、製造や開発は今も小豆島工場で一貫して行っています

 

── 独特の容器と豊かな風味で強いブランド力があります。

 

小澤 「純正ごま油」は今年、販売から50周年を迎えます。当時の社長だった私の義父が米国に出張した際、家庭用のクッキングオイルが小瓶に詰められスーパーで販売されているのを見て、「これだ!」と製品化のヒントを得ました。しかし、日本でごま油は天ぷら用など高級品のイメージが強く、当社も業務用の製造・販売が中心でしたので、まずは「家庭用ごま油」という分野をゼロから開拓しなくてはいけませんでした。

 

── ごま油は家庭でなじみが薄かったのですか。

 

小澤 販売当初は、全社員が全国の酒屋や乾物屋などを回り、当社の製品の紹介とともに、ごま油自体を家庭料理で使ってもらうことに努力しました。天ぷらの店頭実演や風味を生かしたレシピの紹介など、まずは食卓や家庭への浸透を図ったのです。発売から3年ほど経て、当時のダイエーに製品が認められて全国の店舗に置いてもらうようになると、一気に人気が広がっていきました。今年は発売50周年ということで、同じく50周年目を迎えたタカラトミー社の「リカちゃん」人形とのコラボレーション事業など記念事業を展開していく方針です。

 

── 他社の製品との違いは。

 

小澤 当社の純正ごま油は原料がごま100%です。「ごま油」と一くくりにされがちですが、大豆や菜種などの食用油とミックスした「調合ごま油」もあります。製法技術へのこだわりでは煎り方や貯蔵方法で色や風味が変わってくることを生かし、定番の「金印」、十分に煎った風味の強い黒ごまから搾った「黒ごま油」、風味を抑えた生搾りの「純白ごま油」の3種類をラインアップして、料理の用途や好みで使い分けていただき好評です。

 

── 他にどんな製品に注力されていますか。

 

小澤 ごまの健康機能に重点を置いたカプセル製品が好調です。ごまはたんぱく質やカルシウム、ビタミン、ミネラルなどを豊富に含んでいて昔から体によい食べ物とされていました。30年ほど前、当社でもごまの成分を生かしたカプセル製品を開発し売り出したことがあったのですが、当時は浸透しませんでした。近年、大手メーカーの参入でごまに含まれている成分「セサミン」が注目されるようになり、私たちも改めて独自製法で事業化しました。お客様の健康に密接に関わる分野ですから、きめ細かい製品説明や販売を心がけていまして、専用の通販部門を新たに立ち上げました。

 

── 世代を超えてごま全体に人気が出ています。

 

小澤 いろいろなごまの楽しみ方を提案するため、当社は、ごまの風味を生かした「ラー油」やペースト状にした「ねりごま」などを販売しています。営業面でも新たな市場開拓を進めており、昨年度は純白ごま油に焦点を絞り、クッキングオイル市場で浸透させるため初めて交通広告など各種メディアを用いたPR活動を行いました。当社ウェブサイト上での純白ごま油を使った料理のレシピ紹介の充実などを図った結果好評で、今期の伸びにもつながると期待しています。

 

 ◇ごまへのこだわりを大切に

 

── 足元の業績はいかがですか。

 

小澤 ごま油は家庭用、業務用ともに好調で、2017年3月期の決算では売上高、販売数量ともに前期を上回りました。外食産業向けの売り上げが伸びており、特に600グラム製品の容器を丸型ペットボトルにリニューアルして好評です。ごま食品事業も、特に業務用が好調です。

 

── 業務用ではどんな製品がありますか。

 

小澤 風味づけや薬味としてインスタントラーメンからドレッシングまで食品メーカーの活用が幅広く、主にねりごま製品が人気です。食品ごま自体にも、例えばハンバーガーの丸パン(バンズ)や菓子パン向けなどでニーズがあります。

 

── 今後の事業展開は。

 

小澤 海外での需要の高まりに注目しています。これまで米国市場が好調で、最近は中国などアジア圏からの需要が高まっています。世界的な「ごま人気」は期待できる半面、経営の視点では課題があります。ごまの需要拡大に合わせ、競合企業の増加や原料確保競争が懸念されます。ごまは日本国内でほとんど生産されておらず、輸入が頼りですが、高品質な素材をいかに確保していくか、また為替の影響などの回避もトップとしての責任です。

 

── かどや製油の将来像は。

 

小澤 実直に、お客様への感謝を忘れない姿勢が大切です。長年のファンが多く親子2代でご愛用の声も頂きます。

 全社でこれからも大切にしたいことは、ごまへの徹底したこだわりです。小豆島の製造工場を中心に社員一人一人が「ごまのスペシャリストとしてトップ企業になること」を認識してもらいたい。

(構成=河井貴之・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 大学卒業後は三菱電機の名古屋にある製作所で勤務していましたが、30代で当時のかどや製油の親会社に入って石油販売を担当。休日返上で働いていました。

 

Q 「私を変えた本」は

A 『きけ わだつみのこえ』。学生時代に初めて読んだとき、中身のすごさにショックを受けました。

 

Q 休日の過ごし方

A ゴルフです。同年代の仲間がどんどん減っていき、最近は若い世代の人とプレーすることが増えましたが楽しいです。

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 ■人物略歴

 ◇おざわ・じろう

 1937年生まれ。灘高等学校、慶応義塾大学経済学部卒業。三菱電機での勤務を経て、小澤商店(現小澤物産)に入社。80年6月かどや製油取締役に就任、2003年に代表取締役社長。79歳。

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事業内容:ごま油、食品用ごま製品の製造・販売

本社所在地:東京都品川区

創業:1858年

資本金:21億6000万円

従業員数:284人(2017年3月31日現在)

業績(17年3月期)

 売上高:285億円

 営業利益:35億8200万円

2017年

6月

06日

「社会に貢献する価値を創り続ける」楢原誠慈 東洋紡社長

◇社会に貢献する価値を創り続ける

 

 ◇Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 東洋紡はどんな会社ですか。

 

楢原 「世の中に必要なものを何とか自分たちで創って役立てていこう」との思いを持って渋沢栄一が1882年に創設した紡績会社です。絹、綿、ウール、レーヨン、合成繊維を扱う中で培ってきた技術を応用して、現在はフィルムや機能樹脂、ヘルスケア分野の製品など多様な事業を展開しています。

 

── どのような技術を活用したのでしょうか。

 

楢原 合成繊維の加工技術は奥が深く、元々の「糸」や「繊維」を、薄く広げると「フィルム」になり、ストロー状に加工すれば「膜」になります。さらに樹脂自体の改質を進めて強度や耐熱性を強化したエンジニアリング・プラスチック製品も手がけています。

 

── フィルムはどのように使われているのですか。

 

楢原 食品包装用のフィルムで、当社は日本のトップシェアを有しています。菓子やインスタントラーメンの包装、ペットボトルのラベルが主力です。最近は生鮮野菜用の鮮度を保ちつつ水分で曇らない包装フィルムも需要が高まっています。「食品用」と一くくりにすると汎用(はんよう)的に見えますが、食品や商品の特徴や用途に応じて強度や耐久性、印字性などフィルムに求められる性質や機能はさまざまです。

 

── 高機能性が強みですね。

 

楢原 異なる分野ですが、高機能性という点では、液晶画面を見やすくするための偏光板用の保護フィルム製品も急成長中です。液晶テレビの中には何枚もフィルムが入っていて光源に近い部分には「TACフィルム」という高額で特殊なものが使われてきましたが、当社はポリエステルなど汎用的な素材を使いリーズナブルな価格と高機能化を両立した製品を開発・販売しています。ユーザーからも「素材革命だ」と高く評価され、2017年3月期の売り上げは前年比で2・2倍増でした。

 

── 膜技術ではどのような製品がありますか。

 

楢原 人工透析機で用いられる医療用の膜製品が世界でシェアを伸ばしています。また、当社独自に海水淡水化装置用の膜製品を手がけています。サウジアラビアを中心に中東地域でプラント向けに事業を展開しており、640万人分の淡水製造に貢献しています。現地製造の準備を進め、新技術の実証試験にも積極的に取り組んでいます。

 

── 紡績からの事業転換にはいつ頃から取り組んできたのですか。

 

楢原 紡績業の黄金期だった1950年に、当社は売上高で日本一を記録したこともありますが、その後は海外との競争が激しくなりました。そこで、60年代から紡績技術を活用した、新しい事業分野の研究開発や市場開拓を進めてきました。95年ぐらいまでは売上高の7割を衣料繊維が占め、その他の分野が3割という事業ポートフォリオでしたが、現在はフィルムや膜などの非繊維事業分野が7割、衣料繊維が3割程度と、逆転しています。

 

── 東洋紡といえば衣料繊維で日本を代表する大手メーカーというイメージがあります。

 

楢原 ポートフォリオに占める割合は下がりましたが、国内外で高付加価値化を進めて高い評価を得ています。例えばサウジアラビアでは、男性が全身にまとう真っ白な民族衣装「カンドゥーラ」用の高級トーブ布地のトップブランドメーカーとして当社の知名度は高く、製品も人気があります。

 

── 事業転換を成し遂げたポイントは何でしょうか。

 

楢原 創業の理念である「世の中にいかに役立つか」とは、逆に言えば「お役立ち競争」に勝てない製品や事業は成り立たないということです。時代的に変わらざるをえなかったという面もありますが、意図的に変わっていこうという我々自身の意志が一番重要だと思います。

 

 ◇エアバッグ繊維で世界展開

 

── 中期計画の進展はどうですか。

 

楢原 現計画は17年度が最終年度で、海外展開の加速と新分野の開拓を2本柱にしています。特に自動車のエアバッグに使う頑丈で特殊な織物や原糸の事業展開に注力しており、海外子会社の原糸メーカー「PHPファイバーズ」の生産力も生かして、17年度下期からはグローバルな拡販体制を強化します。

 

── 将来の成長分野は。

 

楢原 環境やヘルスケア分野の事業化に重点を置いており、海外市場からの注目も高いです。具体的な製品では、神経の再生を誘導する微細なチューブ素材「ナーブリッジ」の海外展開を18年から本格化する予定で、FDA(米食品医薬品局)の承認も取得しました。当社が独自に開発した酵素を応用した血糖値の診断薬も、海外市場での拡大が期待されています。もともとは、レーヨン工場の廃液のクリーン化のために開発した酵素を、全く異なる分野で活用しました。ほかにも、衣類に組み込んで心拍数など生体情報を計測できるフィルム状の素材などを実証実験中です。

 

── どんな会社を目指しますか。

 

楢原 経営の常道としては、高品質・高機能・リーズナブルなコストのバランスがとれた製品の提供を追求していきます。トップとしては従業員のやる気を正しい方向に発揮させなくてはいけないと思います。

 渋沢栄一が掲げた経営の理想は「論語とそろばんの両立」です。社会的な責任を果たしつつ持続的な成長も遂げていくという精神を、東洋紡のDNAとして大切にしていきます。

(構成=河井貴之・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 向こう見ずでへそ曲がりな社員でしたが、会社はそれ以上に柔軟で面白かったです。経理部門で消費税導入や会計ビッグバンに追われました。

 

Q 「私を変えた本」は

A 山岡荘八の『徳川家康』。全26巻を5回以上読んでいます。

 

Q 休日の過ごし方

A ウオーキングやゴルフ。妻との買い物で、自分で運転するのも楽しみです。

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 ■人物略歴

 ◇ならはら・せいじ

 1956年生まれ。福岡県出身。ラサール高校、東京大学法学部卒業後、九州電力を経て88年東洋紡績(現東洋紡)入社。グループ経営管理部長、財務経理部長、取締役などを経て2014年4月に社長就任。16年6月に日本紡績協会会長就任。60歳。

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事業内容:フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケア、衣料繊維分野などの製造・加工・販売

本社所在地:大阪市北区

創立:1882年5月3日

資本金:517億円

従業員数:連結9827人 単体3029人(2016年9月現在)

業績(17年3月期)

 売上高:3295億円

 営業利益:233億円

2017年

5月

30日

経営者:編集長インタビュー 新田信行 第一勧業信用組合理事長

◇「人物中心」の融資で創業と地方を支援

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どんな信用組合ですか。

 

新田 東京23区内に22の支店と四つの出張所があります。預金が3300億円に対して、貸金は2400億円で、預貸率は75%と高い水準です。地域に密着した金融機関です。年間300の地域のお祭りや盆踊りに私も含めて参加しています。そのため、土日の予定が全て埋まっています。お祭りに参加するため、ポップコーン製造機や綿あめ製造機を所有しています。「お祭り組合」と言ってよいかもしれません。

 

── 強い地域は。

 

新田 世田谷、練馬、杉並以外は全てカバーしています。対象エリアは飲食街や商店街などです。顧客は小規模事業主、個人事業主、業態は料亭、居酒屋、飲食店が結構あります。

 

── どのような事業をしているのですか。

 

新田 当組合の三つの基本方針の一つに、「人とコミュニティの金融」を掲げています。融資には三つのやり方があります。一つ目は決算書から財務分析をして格付けをする。二つ目は、ノンバンクや質屋のように担保を取る。三つ目が人を見て貸す、です。私たちは信用供与の源泉が格付けでもなく、担保でもなく、フェイストゥフェイスの人間関係がベースになっています。

 

── 何で評価しますか。

 

新田 人と事業を徹底的に見ます。他の金融機関からは、「格付けもせず、担保も取らずによく融資をしますね」と言われますが、私からすると、「社長に会わず、工場も見ないでどうやってお金を貸すのですか」ということです。信用組合のお金は組合員のものですからリスクは取れません。ひたすら汗をかいて、社長や工場や製品・サービスを見るしかありません。

 

── 融資例を教えてください。

 

新田 コミュニティローンが280くらいあります。例えば東京23区内にある六つの花街向けの「芸者さんローン」があります。また、「亀有商店街ローン」や「巣鴨町内会ローン」などもあります。特徴はそれぞれのローンに必ず固有名詞が付くことです。それぞれの商店街や町内会の組合長や会長が、当組合の出資者の代表である総代をしています。ある意味、会員制のクラブです。会員の紹介が無いと当組合には入れません。

 

── 不良債権になる恐れはありませんか。

 

新田 格付けは過去の決算書に基づきます。しかし、私たちが知りたいのは未来の業績です。だから、当組合と他の金融機関では与信判断が変わります。私が就任時に67%だった預貸率が75%まで上昇しているのは、他の金融機関で否決された貸し出しを実行しているためです。しかし、人をよく見ていますから、この4年間、当組合では不良債権がほとんど発生していません。芸者さんローンであれば、6人の芸者組合のトップが全部自分の配下の芸者のことを知っているわけです。

 

 ◇創業加速で支援

 

── 創業向けの融資は。

 

新田 背景には、日本の資金循環が非常に悪いことに対する危機感があります。お金を持っているのはシニアですが、お金を使いたいのは若者です。創業者ローンではまだ決算書も担保もない創業者に融資します。昨年1年間で150件、残高で10億円を実行しました。この件数は日本の金融機関でトップです。当組合の融資に並行して日本政策金融公庫も同額の融資を実行します。また、創業期は赤字になりますから、創業ファンドで出資もします。

 

── 資金面以外の支援は。

 

新田 創業者はアイデアは良くても、法律家、税理士、販売先などの事業ツールは持っていません。そこで、当組合がメンターとなりスポーツジムの「ライザップ」のように短期間で立ち上げを指導します。そのために昨年「東京アクセレータープログラム」を開催し、113件の応募に対して、最終的に9件を支援しました。

 その中の一つにお祭りで日本を元気にするベンチャーの「オマツリジャパン」があります。代表の加藤優子さんには私のネットワークでお祭りをしている町内会長を紹介して、1カ月で全てを回るようにアドバイスしました。

 

── 地方連携の取り組みは。

 

新田 「量から質」の金融を目指します。質とは付加価値のことですが、これは未来志向の連携の中でしか生まれません。だから、志を同じくする人には連携を呼び掛けています。東京税理士会や東京行政書士会、東京理科大学などです。地方は、北海道から岡山まで18の信用組合と連携しており、まもなく19に増えます。一生懸命地域を良くしよう、中小企業を支え、若者や女性を応援しようという志です。秋田県信用組合はドジョウの養殖やニンニクの栽培をするベンチャーを支援しましたが、これを手掛けているのは地元の若い建設業者です。地方創生と創業支援は切っても切れない関係にあります。

 

── 人材育成は。

 

新田 若手職員向けに相談員制度を創設しました。六つの分野で専門性を磨きます。制度導入から3年で、融資の目利きができる事業金融相談員は40人ほどとなりました。

 

── 足元の業績は。

 

新田 私が理事長に就任する前は経常利益は1億円台でしたが、平成27年度は12億円を超えました。不良債権の比率もこの4年間で10%から5%まで低下しました。

(構成=稲留正英・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 1985年のプラザ合意後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)で海運業界を担当していたので、不良債権の処理で大変でした。

Q 「私を変えた本」は

A デール・カーネギーの『道は開ける』です。不良債権処理で追い込まれたときに読み、頑張ろうという気になりました。

Q 休日の過ごし方

A 仕事です。お祭りや花見で人に会い続けています。

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 ■人物略歴

 ◇にった・のぶゆき

 1956年生まれ。千葉県出身。千葉高校、一橋大学法学部卒業。1981年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。2011年みずほ銀行常務執行役員、13年第一勧業信用組合理事長に就任。60歳。

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事業内容:金融業

本店所在地:東京都新宿区

設立:1965年5月

出資金:113億円

役職員数:364人(2015年度末)

業績(2015年度)

 経常収益:67億円

 純利益:15億円

2017年

5月

23日

ライフプランナーが保険の「出口」までお付き合い 一谷昇一郎 プルデンシャル生命保険社長

◇ライフプランナーが保険の「出口」までお付き合い

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どんな生命保険会社ですか。

一谷 生命保険は目に見えないサービスを顧客に買ってもらうものです。私たちは、(1)どのような商品が良いのか顧客に基準をきちんと理解してもらい、(2)何が必要かを一緒に考え、(3)自らの意思で購入してもらっています。「入り口」である保険加入時はこの三つが一番大事です。

 また、保険が実際にサービスを提供するのは「出口」である支払時です。万が一、何かあった時に、保険金の受け取り手続きから、何千万円もの保険金が入った場合、そのお金をどう残りの生活に生かしていくのか、税金をどうやって払うのか。この出口の部分も含めてサービスを提供する必要があります。この入り口から出口までを担当するのが「ライフプランナー」です。

 

── ライフプランナーの役割について詳しく教えてください。

一谷 保険は長い期間にわたる高い買い物なので、自分の掛けたコストが、実際のリスクに見合っているのか。顧客は内容をよく理解しないで高い買い物をしていると、「対価として何をくれるのか」という気持ちになります。入り口と出口の間には「保全」活動があります。保険加入時から契約者とは長い付き合いができるので、顧客のさまざまな環境変化に応じて、提案ができます。

 例えば、20代、30代の若い時は高額の死亡保障、50代になれば介護保険に加入したり、あるいは死亡保障を少し減らして積み立てに回すなど。顧客の皆さんは、頭で理解できても、なかなか実行に移すことができません。それをライフプランナーが「見える化」します。顧客の生涯を通じて、ずっとサービスできる。それが我々の一番の強みです。

 

── ライフプランナーはどれくらいいるのですか。

一谷 3800人います。平均年齢は40歳を少し超えたくらいです。30歳前後で転職してくる人が多く、今50歳前後の人は当社で17~18年働いています。体を壊すなどのよほどの理由がない限り、あまり辞める人はいません。だから、顧客とともに年齢を重ねていくことができます。

 

── 現在、保険契約数は。

一谷 直近で349万件です。実際に加入している被保険者数は200万人を少し超えたところです。

 

── 契約者のアフターフォローは具体的にどのようにしているのですか。

一谷 契約者に1年から1年半の間隔で定期的に連絡をします。家族の状況や勤め先、収入などが変わっていないかを確認します。それによって、今の契約が十分に生活ニーズを満たしているのか、足りないようなら新たな提案をします。保険は時々見直した方がよいのです。このコミュニケーションが大事です。

 

 ◇採用にじっくり時間

 

── 実績を教えてください。

一谷 MDRT(Million Dollar Round Table)と呼ばれる国際的な保険営業の自己研さん組織があります。ここには卓越した専門家が加盟しています。当社は、1998年から19年連続で、国内生保の中で一番多く会員がいます。米市場調査会社のJDパワーの調査では、保険金請求の対応の満足度で2年連続1位です。保有保険件数は27期連続で増加しました。口コミも非常に大きい要素です。一人の担当から一家の担当、一家の担当から一族の担当になれると理想です。

 

── どのような採用と教育をしているのですか。

一谷 1年に600人近く採用します。当社は全国に営業所長が470人、支社長が120人います。総勢約600人のマネジャーで600人の指導や教育をしています。知識だけでなく、どのように顧客に信頼してもらい、自分をサービスの一環として受け入れてもらえるのか、というようなことです。

 

── 採用の際の基準は。

一谷 リクルート活動は会社の肝です。会社の価値観に合った人、基礎能力の高い人、人として間違いがない人をどれだけ社員として採用できるかが重要です。まだ前の会社に在籍している時点で、1回2時間を3回、計6時間掛けて、当社が何を目指しているのか、当社に来るとどんな可能性が広がるのか、講習をしています。この仕事を理解してもらい、その上でアプローチしてきた人を面接しています。この採用のプロセスが2カ月間あります。

 

── このマイナス金利時代にどのような運用をしているのですか。

一谷 終身保険をはじめとする長いお金を預かっています。だから、負債に資産をマッチさせた運用をしています。20~30年の国債や社債で運用しています。予定利率を下回らないようにしています。外貨建ての商品は米国の親会社の資産運用のノウハウを活用して、再保険に出しています。広告宣伝費は、ほとんど使っていません。

 

── 最近力を入れている商品やサービスは。

一谷 2015年の秋から生命保険信託を開始しました。両親が亡くなった場合、お子さんへの保険金を大切に預かるためです。過去には預かった保険金を親戚が借金の返済に使ってしまうケースがありました。そこで、亡くなった方の意思に沿った形で保険金が安全に使われる方法を考えたのです。この1年間で200件くらい新規で預かりました。一番多かったのは母子家庭の母親が自分に万が一があった場合を考えて、契約するケースです。

(構成=稲留正英・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A まさに、営業所長としてリクルーター、トレーナーの毎日を過ごしていました。会社のビジネスモデルを熱く語り、来る日も来る日も良い人を探していました。

 

Q 「私を変えた本」は

A 歴史小説が好きです。小村寿太郎を主人公にした吉村昭さんの『ポーツマスの旗』です。

 

Q 休日の過ごし方

A 朝ご飯に自分で作ったみそ汁を飲みながら、好きなジャズを聴いています。

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 ■人物略歴

 ◇いちたに・しょういちろう

 1958年生まれ。兵庫県出身。大阪教育大学付属高校、関西学院大学経済学部卒業。91年プルデンシャル生命保険入社。2008年執行役員、12年取締役執行役員専務、13年から現職。58歳。

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事業内容:生命保険業

本社所在地:東京都千代田区

設立:1987年10月

資本金:290億円

従業員数:5197人(2015年度末)

業績(2015年度)

 経常収益:8920億円

 当期純利益:107億円

2017年

5月

16日

経営者:編集長インタビュー 糸井重里 ほぼ日社長

◇「ほぼ街(まち)」を作りたい

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 コピーライターの糸井重里氏率いる「ほぼ日(にち)」が3月16日、東京証券取引所ジャスダック市場に上場した。コラムなどを集めたウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を運営する同社の売上高は約38億円。サイトでの物販が好調で、1日1ページ、24時間枠で予定を書き込める「ほぼ日手帳」は毎年60万部以上を売り上げる。

 

── ほぼ日はどんな会社ですか。

 

糸井 「場」が作りたくてできた会社です。「ほぼ日刊イトイ新聞」のサイトを立ち上げた頃から、「ほぼ街(まち)」を作ろうと思っていました。RPG(ロールプレイングゲーム)の街のように、建物に入ったらお茶を飲める場所があるとか、そういう街です。

 

── 株式の上場も街を目指す通過点ですか。

 

糸井 上場によってオーソライズ(公認)されたと言えるかもしれません。マンションの住人のおばあさんが「上場おめでとうございます」「株買うわよ」とか声をかけてくれるんです。そういう会話は今までなかった。「ほぼ日は有名なのに、なんで上場したんですか」と言われるのですが、有名だけど有名じゃなかったんですよね。

 

 ◇ライバルはディズニー

 

── 何で稼いでいるのですか。

 

糸井 ほぼ日手帳の売り上げが7割です。「手帳で食っている会社」と言う人もいますが、その切り口で見てくださっても構わないと思います。自分たちが使いたいものを作ってきました。生意気な言い方をすれば、「いいに決まっているもの」を出しているのがよかったんだと思います。

 

── 売り上げの残り3割は。

 

糸井 モノの形をしたコンテンツ、例えばタオル、腹巻き、衣料などの販売です。これからは手帳以外の事業が伸びて、手帳の割合が相対的に下がってほしいと思っています。

「場」を作る仕事と言っても、場代を取っているわけではないので、小売業の分類に収まっています。でも、今後はどうなるかわかりません。

 

── 伸ばしたい事業は。

 

糸井 犬や猫の写真を投稿するアプリ「ドコノコ」を始めたり、地球儀を開発したりしています。

 3月24~26日には六本木ヒルズで「生活のたのしみ展」を開催しました。いいものを作ってるなという人たちのコンテンツを集めてお店にしたイベントです。イベントでありブランドでもあるというのは一種の発明だと思うので、どう伸びていくのか楽しみです。

 

── 最近は糸井さん自身の引退について言及しています。

 

糸井 先輩たちを見ていると、上手にリタイアした人もいるし、リーダーがいなくなってつまらなくなった会社もあります。僕らが若い頃に憧れだった広告の製作プロダクションは、今は代理店の下請けです。だから、自分たちがイニシアチブを持って仕事をしていくことが本当に大事だと思ってほぼ日を始めました。

 

── 上場する規模に会社が育った。

 

糸井 チームが育ち、応援してくれるサポーターも育ってきてくれました。これ、僕がいなくなった時になくなっちゃったらつまらないですよね。もっと面白くなってほしい。「ライバルはディズニー」と言っているのですが、ウォルト・ディズニーがいなくなってもディズニーとして機能している。そういうことがあり得るんじゃないかと思って、少しずつ準備をしています。

 

── 糸井さんがいなくなった後のほぼ日は。

 

糸井 ぜんぜん同じではないことはわかっています。ただ、僕がいなくなってもできる仕事をどんどん増やしていくのも僕の仕事です。この2年くらい一生懸命しているのは、僕をいなくさせるための仕事。それが僕の作品です。

 

── 上場で得た資金の使い道は。

 

糸井 人を雇うことに使います。内部の人が育つのにも必要です。イノベーションを生み出す人、無理かもしれないことを実行できるように工夫する人、そういう人が圧倒的に足りない。工場を建てるのと同じくらいの予算組みをして、人を取らなければいけない時代が来ていると思います。

 

── 投資家とどう向き合いますか。

 

糸井 僕らがどれだけできるか見ようじゃないかと、好意的にも、悪意を持っても言われます。もっと利益を上げて、株価を上げなさいと言う人もいます。でも、そんなに簡単な話じゃないと思う。

 僕がよく泊まる旅館のおばあちゃんは、「戦後に買った任天堂株を持っているから安泰だ」と言うんです。義理で買った花札メーカーの株が、今の任天堂の株になった。すごいことです。任天堂は「ラブテスター」(男女の相性を測る玩具)とか、タクシー会社とか、ダメだった時期も含めて、山あり谷ありで今みたいな会社になった。こういうやり方をすればうまくいくというのはないんです。

 

── 成功の方程式はない。

 

糸井 上場後は、事業の質や規模について、これまで以上に問われるようになりました。僕みたいなことを言っている人がダメになったら、後の人も寂しいでしょう。弱っちい動物なりに生き延びたとか、体が大きくなったとか、そういうことを多少は見せないと、つまんないですよね。

 

── 株価は気になりますか。

 

糸井 流れの中でどういう場所にいるのかは把握していますが、あまりとらわれないようにしています。僕が引退する時に株価が下がったら、僕の仕事が足りていなかったということでしょうね。

(構成=花谷美枝・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどうでしたか

 

A 一生懸命いい気になってました。いい気にさせてくれる人たちが現れる時期だったので。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 大学を中退した頃に出会った吉本隆明さんの『最後の親鸞』。ほぼ日で吉本さんの183講演の音源を無料公開したことは、僕の人生の年表に入れてほしい。今なら、株主総会でどう説明するか考えないといけない(笑)。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 指圧や床屋に行きます。

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 ■人物略歴

 ◇いとい・しげさと

 群馬県出身。群馬県立前橋高校出身、法政大学文学部中退。コピーライター、作詞家、タレント、エッセイストとして活躍。1998年に「ほぼ日刊イトイ新聞」を開設した。68歳。

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事業内容:ウェブサイト『ほぼ日刊イトイ新聞』の運営、商品の販売

本社所在地:東京都港区

創業:1979年12月

資本金:3億4705万円

従業員数:69人(2017年3月1日現在、契約社員含む)

業績(16年8月期)

 売上高:37億6750万円

 営業利益:4億9954万円

2017年

5月

09日

経営者:編集長インタビュー 炭井孝志 ケンコーマヨネーズ社長

◇業務用に特化 サラダ市場を創造、拡大

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 社名からは、マヨネーズ専門のメーカーを想起させます。

炭井 確かに当社は、町のお総菜屋さんにマヨネーズを供給したことに始まります。しかし、創業直後からマヨネーズを販売するだけではなく、マヨネーズを使ったメニュー提案をしていました。そして時代の流れとともに、新たな素材を見つけて商品を開発し、今は商品数3100超の業務用食品メーカーとなりました。 

 

── 売り上げの内訳は。

炭井 商品別ではサラダ・総菜類が4割、タマゴ類(卵焼き、タマゴサラダなど)が3割、マヨネーズ・ドレッシング類が2割です。

 

── どう商品群を広げたのですか。

炭井 マヨネーズの供給先からサラダ・総菜に関する相談を受ける中、自社で製品を開発するようになりました。たとえば、1970年代には、大手製パンメーカーから「総菜パンにはさむ具材として、長持ちするサラダが欲しい」と要請され、タマゴサラダやツナサラダを開発しました。また、大手ハンバーガーチェーン「マクドナルド」のハンバーガー用ソースも当社が製造しています。

 

── 他にはどんな商品がありますか。

炭井 最近では、コンビニエンスストアの弁当やスーパーの総菜用に、各種サラダやひじきや野菜の煮物、卵焼きなど幅広い食品を供給しています。今でこそ普及したゴボウサラダやパンプキンサラダは、当社が開発したものです。サラダを切り口にして、新たな素材を投入し新たな市場を創っていきます。

 

── 供給先はどこが多いのですか。

炭井 売上高ベースではコンビニが3割、外食産業が3割、スーパーなどの量販店が2割、製パンメーカー・町のパン屋と給食向けで2割です。

 

── なぜ業務用に専念するのですか。

炭井 小売店向けに家庭用商品を供給するのはもうからないからです。家庭用向けは、キユーピーや味の素など一大ブランドがあり、価格競争も激しいです。80~90年代、家庭用を手がけていた時期もありました。その時期は、会社を挙げて小売店に営業しました。そもそも、業務用と家庭用の販売方法は異なるにもかかわらず、 家庭用の売り方を知らないので、収益は真っ赤っか。しかも、人的資源を家庭用の営業に回したので、業務用への営業もおろそかになりました。私はずっと「会社の強みを生かせるのは業務用の世界だ」と思っていましたので、私が社長になった後の2003年に家庭用はやめました。私が社長を続ける限り、家庭用向けはしません。

 

── 供給先の要望も厳しいのでは。

炭井 供給先には鍛えられました。世界的なハンバーガーチェーン、日本を代表する製パンメーカー、最近ではコンビニなど常に厳しい品質、値段を求められてきました。おかげで、常に食品市場のトレンドを感じられるポジションにいられました。供給先の求めることを先読みした結果、当社の強みと言える多品種少量生産ができるライン運用を確立しました。

 

── 強みを持つ商品は。

炭井 タマゴ類です。タマゴの総菜メーカーは通常、養鶏場で割ったタマゴの「液卵」を調達します。液卵はコストが低いのですが、一度熱殺菌が必要なので風味が落ちます。これに対して当社の静岡県の工場では、殻付きタマゴを調達して工場で割って24時間以内に加工します。卵焼きの供給先にも「液卵より格段においしい」と評価されます。殻付きタマゴの調達費は高いのですが、熱殺菌を経ずに割ってすぐに調理できるラインを作り上げたことで、トータルコストは下げられます。

 

── 食品メーカーは、国内の人口減にあえいでいます。

炭井 日本人の胃袋は減っています。しかし、働く人が増えて中食(なかしょく)需要は増えています。また、ゴボウサラダのように今までにない素材の商品を提案することもできます。日本市場全体のパイは広がりませんが、自分たちの市場を広げることはできます。

 

 ◇工場も夕方退社目指す

 

── 3カ年の中期経営計画は今年度が最終年度です。

炭井 18年3月期の連結売上高750億円に向けて順調に推移しています。17年3月期も過去最高益を見込みますが、製品の需要に生産設備が足りていません。目標到達のためには、現在進めている工場の新増設がカギとなります。

 

── 工場の新増設とは?

炭井 19年3月までに総額150億円強を投じて、北海道と神奈川県にサラダ類・総菜類工場を新設し、静岡県の卵焼き工場と京都府のサラダ類工場を増設します。工場新増設には長時間労働を是正する狙いもあります。現在ほぼ24時間フル稼働ですが、長期的には、午前8時~午後5時の稼働でも需要に応えられる体制にしたいです。

 

── 製造業で午前8時~午後5時稼働は成り立つのですか?

炭井 周囲には「その稼働時間ではもうからない」と言われます。しかし、人手不足の時代にあっては工場の労働環境も変えなければなりません。私も法人向けの営業時代、午前8時に出社して、午後5時には退勤していました。朝一番から力の限り働く人が、夕方以降も働けるわけがないのは経験で分かります。今、工場だけではなく、事務部門や間接部門も含めた社内全体で、この時間内で効率よく働ける方法を模索しています。

(構成=種市房子・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 法人向けの営業担当でした。誰よりも早く書類を確認して、電話対応をし、外勤に出ており、それで十分でした。

 

Q 「私を変えた言葉」は

A 山本五十六の「男の修行」です。

 

Q 休日の過ごし方

A ウオーキングか、仕事がらみのゴルフです。昨年から四国八十八カ所巡りも始めました。逆ルートで香川県からスタートして、愛媛県まで到達しました。

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 ■人物略歴

 ◇すみい・たかし

 1953年生まれ。香川県出身。県立高松高校卒業。1978年東京水産大(現・東京海洋大)卒業後、ケンコーマヨネーズ入社。営業畑を皮切りに購買、生産部門を歩み、98年に管理部門部門長、99年に取締役。2000年から現職。

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事業内容:業務用食品

本店所在地:神戸市灘区

東京本社:東京都杉並区

設立:1958年3月

資本金:21億円

従業員数:2957人(連結)(2016年3月現在)

業績(16年3月期・連結)

 売上高:669億円

 営業利益:34億円

2017年

4月

25日

経営者:編集長インタビュー 木村博紀 朝日生命保険社長

◇医療・介護保険でお客さまの「生きる」をサポート

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 朝日生命はどんな会社ですか。

木村 前身の帝国生命の創業が1888(明治21)年で、来年3月に創業130周年を迎える歴史のある会社です。現在は『一人ひとりの“生きる”を支える~「お客様大好き」企業。朝日生命~』を企業ビジョンに、今後の日本市場を想定して「シニア(高齢者)」「女性」「企業経営者」を三つの戦略マーケットと位置づけ、お客さまが生きていくためのサポートをする商品やサービスを提供しています。

 

── 他社にない強みや特徴は。

木村 成長市場の医療保険や介護保険など(生命保険、損害保険のどちらにも属さない)「第3分野」と呼ばれる保険商品に、同業他社に先駆けて取り組んできました。第3分野を本格展開したのは2003年です。同業他社と比べると、万一の時に備える「保障性商品」のウエートが高く、資産形成効果がある「貯蓄性商品」のウエートは低くなっています。その保障性商品の中でも、第3分野のウエートが高いのが特徴です。

 

── 三つの戦略マーケットを位置づけたのはなぜですか。

木村 日本の将来を想定すると、少子高齢化が進んでシニアのお客さまが増えます。また、働く女性も増えていくと考えたからです。実際にそういう時代になってきています。死亡保障という市場もお客さまにとって大切ではありますが、さまざまなリスクへの備えが非常に重要になるだろうと考え、第3分野に力を入れてきました。

 

── 現在の業績は。

木村 保障性商品の保有契約高(年換算保険料)は長年減少傾向でしたが、14年度に底打ちして反転しています。特に、主力の営業職員を通じた販売チャネルでは、介護保険やがん保険の新契約が好調で、目標としていた営業職員チャネルでの保有契約高反転目標を1年前倒しで16年3月に達成しました。

 

── それは好調ですね。

木村 約1万2000人の営業職員は、保険金の支払いに至るまでアフターフォローもしっかりできるのが強みで、有力な販売チャネルという認識は今も昔も変わりません。東日本大震災でも対面型の営業職員の存在が改めて評価されました。また、保険ショップなどの代理店チャネルも好調に推移しています。ここ数年は、超低金利下で基礎利益(保険関係の収支と運用関係の収支を足したもの)は横ばい基調ですが、保有契約高の純増のペースを上げ、基礎利益が反転するようなシナリオを描きたいと考えています。

 

 ◇認知症保険も発売

 

── どのような商品性が評価されたと考えますか。

木村 お客さまのニーズに沿った商品開発を進めてきたことでしょう。12年4月に介護保険「あんしん介護」を発売しましたが、商品の分かりやすさで業界では異例の「グッドデザイン賞」を受賞しました。保険金の支払い要件を公的介護保険の要介護認定と完全連動させたことで、商品の説明も簡素になりお客さまの理解も得やすくなったのです。昨年4月には認知症に特化した「あんしん介護 認知症保険」も発売しました。家族が認知症になって苦労される人も増えており、こちらも好評をいただいています。

 

── 02年には経営危機に直面しました。

木村 当時は01年の米同時多発テロで株価が下落し、保有する株式の評価損が増加してしまいました。そこで、株式など価格が変動しやすい資産の残高を圧縮し、市場環境の悪化に対する耐久力を付けること、第3分野を中心に保有契約高を増やし地道に収益力を高めることに取り組みました。これが現在の成果につながったと思っています。

 昨年8月には基金(株式会社の資本金に相当)の償却(返済)繰り延べも解消し、資本政策の柔軟性が向上します。今年1月には米ドル建ての永久劣後債を3・5億ドル(約400億円)発行しました。

 

── 運用部門の経験が長いですが、現在の金融環境にどう対処しますか。

木村 運用面では非常に厳しい状況です。ここ数年の日銀の金融緩和の結果、長期金利が非常に低い水準で推移しており、利回りの低い円建て債券を積極的に組み入れることは適当ではありません。為替ヘッジした外貨建て債券のほか、投資信託やヘッジファンドなど「オルタナティブ投資」を組み入れたりして、運用の高度化を進めています。リスクを取りすぎていないかは当然、チェックしています。超低金利が当分、続くことを前提に経営を考えていく必要がありますね。

 

── 他の生保では海外のM&A(企業の合併・買収)や業界再編も起きています。

木村 日本は総人口は減少しますが、シニアや働く女性、単身者は増えていくので、お客さまのニーズにはまだ拡大余地があり、自分たちで国内市場を開拓できると思っています。一方、海外市場は長期的な視点で考え、調査・研究をしていこうという段階です。再編はまったく考えていません。

 

── 4月に新社長に就任しました。

木村 創業130周年という節目の年に社長となります。将来にわたってお客さまに信頼され、社会に貢献できる会社、また従業員が明るく伸び伸びと仕事ができる会社を目指して経営していきたいですね。

(構成=桐山友一・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 1996年の保険業法の全面改正の前後に企画課に在籍していました。生・損保の相互参入など制度が大きく変わり、非常に勉強になりました。

 

Q 「私を変えた本」は

A 童門冬二さんの『小説 上杉鷹山』です。粘り強く改革を進めるところなどが、ビジネスマンとして参考になります。

 

Q 休日の過ごし方

A スポーツジムに週1回以上、通い続けています。もう10年以上になりますね。多少疲れていても汗を流すと、疲れが取れたりリフレッシュできます。

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 ■人物略歴

 ◇きむら・ひろき

 1962年生まれ。和歌山県出身。和歌山県立桐蔭高校、慶応義塾大学経済学部卒業後、84年朝日生命保険入社。取締役執行役員資産運用部門長、取締役常務執行役員経営企画部主計部担当などを経て、2017年4月から現職。55歳。

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事業内容:生命保険業

本社所在地:東京都千代田区

設立:1947年7月

基金総額:2460億円(2016年3月末)

従業員数:1万6461人(2016年3月末)

業績(2016年3月期・単体)

 経常収益:6527億円

 経常利益:148億円 

2017年

4月

18日

経営者:編集長インタビュー 瀬戸健 RIZAPグループ社長

◇「人は変われる」を証明したい

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どんな会社ですか。

瀬戸 「人は変われる」という理念を信じてひた走っています。ジムのトレーナーひとりひとりに情熱が宿っている会社です。

── 前身の「健康コーポレーション」を設立して以来の歩みは。

瀬戸 豆乳クッキーで起業し、せっけんや美顔器に広げ、今の主力はパーソナルトレーニングジムです。変遷しているように見えるかもしれませんが、すべてがつながっています。

 原点にあるのは高校3年の時のことです。体重70キロ超の彼女と付き合い始め、一緒にがんばってやせよう、と走ったり、励ましたりしました。彼女は3カ月で25キロやせたのですが、どんどんきれいになり、内向的だったのが外向的に、散らかっていた部屋も整理整頓するようになりました。きれいになりすぎて浮気されて振られてしまったのですが(笑)、人って本当に変わるというインパクトが強烈でした。

 

── その経験が、どのように事業につながったのですか。

瀬戸 豆乳クッキーは、彼女がお菓子も食べず苦しそうにダイエットしていたことが念頭にありました。無理なくダイエットできる食品を作ろうと考えました。おからは水を含みやすいので少量で満腹になります。

 豆乳クッキーがヒットした後、美顔器の会社を買収すると、なぜ?と言われました。それは、手段を見ているからです。消費者の目的は美しくなって自分に自信を持つこと。クッキーや美顔器が欲しいわけではありません。

 ただ、一人でやるダイエットは挫折する人が多い。どうやったらやせられるかについては情報が氾濫していますが、分かっているのと、やり切れるかどうかは別です。やり切るために愛情を持って寄り添うサービスとして、パーソナルトレーニングジムのライザップが生まれました。

 

── テレビCMが印象的でした。

瀬戸 我々が何を提供する会社なのかを徹底的に追求しました。15秒のCMはライザップに通う前と後の姿のみ。トレーナーも、店舗も出てきません。結果を重視することを伝えました。

「結果が出なかったら全額返金」は我々が緊張感を持つためでもあります。トレーナーはお客様が通わなくなったり食べすぎたりした時に本気で向き合います。するとお客様が本当に変わり、“卒業”を迎える日にとてつもない感動があるから、次のお客様にまた「結果を出します」と言えるのです。

 

 ◇三日坊主市場は広い

 

── 海外展開は。

瀬戸 既に台湾、シンガポール、香港、上海にライザップの店舗を展開しています。

「三日坊主市場」は世界共通ですが、そこに解決策を提示する企業はほとんどありません。国内ではゴルフと英会話の事業を既に始めていて、好調です。ゴルフもスコアにコミットします。

 

── アパレルやインテリアなど、さまざまな業種を買収する意図は。

瀬戸 事業領域は「自己実現」です。経済が成熟し、欲求の段階が上がりました。なくても困らないけれど、自分に自信を持つために人はお金を投じます。あらゆる業種で商品やサービスの目的が変わってきています。かつて服は身を隠し、寒さをしのぐためのものでしたが、今は自分の存在を高めてくれるものです。

 ライザップで10キロ以上やせると過去の服が着られず、自分の外見に興味がなかった男性が服にお金を使うようになります。オーダーメードスーツが好調です。

 

── ジーンズメイトなど買収先は赤字企業ばかりで、「負ののれん」が利益をかさ上げしているとも指摘されています。

瀬戸 いいものを持っていながら、すべての力を発揮できず低迷している会社がたくさんあります。人が変われるように、会社も変われます。

「負ののれん」は会計基準に沿ったもので、すべてオープンにしています。M&A(合併・買収)による利益を除いた本業の利益も伸びています。負ののれんには、赤字がついてきます。黒字に転換できるかどうかが勝負です。

 

── 経営目標は。

瀬戸 事業を通じて世の中に影響を与えたいと思っています。「人が変われる」ことを証明して社会にインパクトをもたらすのは兆円単位の話。2021年3月期に売上高3000億円、営業利益350億円の目標はプロセスとして当たり前のことです。

 今、当社のCMを見て、ライザップに通うのではなく、自分でジムに通う人も増えている。CMはきっかけの提案でもあります。我々は低糖質食を勧めていますが、将来的には摂取カロリーに占める栄養素の割合が変わるでしょう。

 

── 人々が健康になれば、国の医療費も削減できそうです。

瀬戸 我々は会員7万人のデータをもとに、どうすればやせて健康的になれるのかを検証しています。ライザップはマンツーマンでフルスペックですが、コストを抑えた形でサービスを提供することもできます。

 その例として、静岡県牧之原市と提携し、高齢者向けの健康増進プログラムを始めました。プログラム前後の変化を分析します。今後、全国の自治体と進めていきます。我々は結果にコミットしますから、一般的な単価報酬ではなく、健康数値が改善したかなど結果に連動する成功報酬型を考えています。

(構成=黒崎亜弓・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 今も30代ですが、30代前半は人が遊んでいる時にも自己投資していました。本を猛烈に読みました。書かれたことに一つ、二つでもチャレンジすると、失敗を含めてフィードバックがあり、記憶が定着します。

 

Q 「私を変えた本」は

A 『自助論』(サミュエル・スマイルズ)です。すべてを自分の責任として受けとめることを説いています。人のせいにした瞬間に成長のチャンスがなくなります。自分次第で変わると思った方がお得です。

 

Q 休日の過ごし方

A スキーなど社員のレジャーに参加したりしています。

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 ■人物略歴

 ◇せと・たけし

 福岡県出身。福岡県立北筑高校卒業、明治大学商学部中退。2003年に健康コーポレーション株式会社を設立、06年に札幌証券取引所アンビシャスに株式上場。16年に商号変更。38歳。

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事業内容:美容・健康、アパレル、住関連、エンターテインメント等

本社所在地:東京都新宿区

設立:2003年4月

資本金:14億円

従業員数:約4000人(連結、2017年3月)

業績(16年3月期・連結)

 売上高:554億円

 営業利益:50億円

 

2017年

4月

11日

経営者:編集長インタビュー 小堀秀毅 旭化成社長

◇化学技術で多様な社会課題を解決

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 旭化成とはどのような会社ですか。

小堀 創業以来、産業構造の変化に立ち向かい、新事業に果敢に挑戦してきた企業です。現在の事業領域は、素材を扱うマテリアル、住宅、ヘルスケアの3分野です。この3分野を持つ化学会社は世界にも類がなく、ユニークな点と言えます。事業領域は広いですが、化学技術を基礎にしている点では共通しています。環境や健康などの社会課題を、化学技術で克服するという理念で事業を展開しています。

 

── 3事業の内容は。

小堀 マテリアル事業は大きく二つの領域に分けられます。一つはリチウムイオン電池材料のセパレーターや、自動車軽量化に役立つ部品用樹脂など、環境エネルギー関連素材です。もう一つはサランラップや繊維など生活関連です。住宅事業は、「へーベル」ブランドの戸建て住宅と集合住宅建築、それに断熱に優れた建材販売を手がけています。ヘルスケア分野は医薬品・医療機器双方を持つ珍しい業態です。医薬品では骨粗しょう症の薬で高いシェアを占めており、医療機器では心臓除細動器で高い成長率を遂げています。

 

── 祖業の繊維は世界的にも競争が激しいのでは。

小堀 当社の繊維事業は2000年代に選択と集中を進め、キャッシュフローを生み出せて、かつ独自性のある製品に絞りました。インドのサリーなどに使われるベンベルグ、紙おむつや美容パックに使われる不織布、エアバッグに使われるレオナ、機能性下着などに使われるスパンデックスの四つです。事業を絞り込み、用途を見つけたことで利益が伸びました。その結果、繊維事業の営業利益率は10%です。四つの製品とも元気な事業で、どこから増設しようかと悩むぐらいです。

 

── 電池用セパレーター事業も好調ですね。

小堀 セパレーターは世界トップのシェアを持ちます。当社は膜技術に強く、人工腎臓用の中空糸膜や水のろ過用膜も製造しています。その膜技術をセパレーターで展開し、スマートフォン市場の成長に伴い、供給能力も増強してきました。この結果、スマホやパソコンなど民生用電池では、圧倒的なシェアを取りました。これからは、電気自動車(EV)などのエコカー電池向けに取り組みます。2018年以降に世界的な自動車燃費規制が強化されるため、エコカー需要が増えることが予想され、手応えを感じています。

 

── 足元では、住宅事業が不調に見えます。

小堀 住宅事業の16年4~12月期の営業利益は前年度比12%減少しました。15年の横浜のマンションのくい打ち問題では関係者の皆様にご迷惑をお掛けしました。問題発覚直後に宣伝広告を自粛したため、集合住宅の受注は落ち込みました。しかし、昨年4月に宣伝広告を復活したところ、昨秋以降に受注も持ち直しました。「へーベル」ブランドの毀損(きそん)はなかったと考えています。

 

 ◇今後は自動車へ注力

 

── 社長就任と共に開始した中期経営計画の進捗(しんちょく)は。

小堀 中計では25年度のあるべき姿を描き、16~18年を実現のベース作りとなる3カ年に位置づけています。経営指標では、18年度の売上高を2兆2000億円、営業利益を1800億円としています。スタート時は、円高や中国経済減速など厳しい局面が予想されました。しかし、予想より円安方向に恵まれた。また、見立てが厳しかったからこそ、各事業部門が踏ん張り、販売数量増やコスト削減に取り組みました。この結果、1年目としては順調に進捗しています。

 

── 中計では、組織再編にも言及しています。狙いは。

小堀 当社での多角的な事業、多様な人材を結合して、新たな成長を遂げようと掲げています。たとえば、昨年4月、オートモーティブ事業推進室を発足させました。当社の自動車関連製品は、部品用プラスチック、タイヤ用ゴム、人工皮革をはじめとした成長の見込める製品が多くあります。従来、これらの製品を扱う部署は独立して顧客に接していました。しかし、今後はこれらの部門から社員を推進室に集めて、部門横断的にマーケティング戦略を立てていこうという狙いです。

 

── なぜ、自動車に注目するのですか。

小堀 自動車は、安全性、快適性、省エネの向上が求められており、今後も車体・内装とも変化が予想されます。それはビジネスチャンスを意味します。また、需要も安定しています。

 

── 事業領域が広い企業トップとして、気を付けている点は。

小堀 自分の事業さえ成績が良ければいいという人間の集まりでは、グループの総合力は発揮できません。個別事業にとって最適な戦略ではなく、全体にとって最適な戦略を取るという考えを組織内で共有しなければなりません。そのためには事業部門間のコミュニケーションが重要です。コミュニケーションも含めて、私は三つの「C」を大切にするよう社内に伝えています。

 

── 三つの「C」とは。

小堀 まずは法令順守(コンプライアンス)です。くい打ち問題でも厳しく問われました。次にコミュニケーション、そして挑戦(チャレンジ)です。挑戦とは、無理な目標をやみくもに掲げることではなく、変化へのチャレンジを意味します。これこそが旭化成の価値と言えます。

(構成=種市房子・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 化学部門から新規事業の半導体部門へ異動になりました。専門知識を高め、事業を軌道に乗せるためにもがき苦しみましたが、変化への対応の仕方を学びました。

 

Q 「私を変えた本」は

A 会社の先輩から薦められたデール・カーネギー『人を動かす』。人を冷静に見ることを学び、その後ビジネス書を読むきっかけにもなりました。

 

Q 休日の過ごし方

A 気分転換と体力維持を兼ねてのジョギングです。

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 ■人物略歴

 ◇こぼり・ひでき

 1955年生まれ。石川県出身。同県立金沢二水高校、神戸大学経営学部卒業後、78年旭化成工業(現旭化成)入社。電子部品部材などを扱うエレクトロニクス部門を主に歩み、2014年、代表取締役専務執行役員。16年4月から現職。62歳。

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事業内容:総合化学メーカー

本社所在地:東京都千代田区

設立:1931年5月21日

資本金:1033億円

従業員数:3万2821人(連結、2016年3月現在)

業績(16年3月期・連結)

 売上高:1兆9409億円

 営業利益:1652億円

2017年

4月

04日

経営者:編集長インタビュー 森川桂造 コスモエネルギーホールディングス社長

◇上流・下流のバランスで競争力強化

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 石油元売り業界の再編が進む中、2月21日にキグナス石油(東京都中央区)の株式2割を取得する資本業務提携契約の締結を発表した。2020年ごろからキグナスの給油所約500カ所にガソリンなどを供給する。

 

2017年

3月

28日

経営者:編集長インタビュー 楠雄治 楽天証券社長

◇iDeCo(イデコ)とラップ口座を投資の入り口に

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どのような顧客層が多いですか。

楠 口座数は220万を突破しています。そのうち数万人がデイトレーダー(ほぼ毎日取引する利用者)で、大半は週に数回などたまに取引をする層です。預かり資産は4兆円を超え、国内インターネット専業の証券会社のなかでは2位です。

 

── 楽天証券の強みは。

楠 当社の利益基盤となっているデイトレーダー向けだけでなく、積み立てなど長期的に資産構築したい人向けも含め、ほぼ全ての顧客層にサービスを提供していることです。

 最近は、スマートフォン向けアプリで取引する利用者が増えています。FX(外国為替証拠金取引)では約71%、先物・オプション取引では約60%、日本株は約41%にまで上昇しています。FXのスマホ率が高いのは、比較的若い人が多く、株式の取引は年齢層が少し高いためです。

 

 ネット証券業界は、楽天証券の他、業界1位のSBI証券、松井証券、カブドットコム証券、マネックス証券が主要5社だ。業界2位の楽天証券は、1999年創業のDLJディレクトSFG証券が前身。その後、楽天が2003年に子会社化。04年に名称を楽天証券に変えた。

 

── 楽天市場や楽天トラベルなどの「楽天会員」をどう生かしますか。

楠 楽天証券の口座数は現在220万ある一方で、楽天会員は1億1000万人を超えています。例えば、節税効果も高い個人年金である個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」は、投資を積極的に行っていない一般層の開拓に役立つと考えています。60歳まで毎月5000~2万3000円まで(会社員の場合)積み立てられる制度なので、特に30代、40代を中心に働きかけていきます。

 また、16年7月に、おまかせの資産運用サービス(ラップ口座)「楽ラップ」を始めています。投資金額は10万円からで手数料は年間1%未満、利用者数はすでに1万人を超えています。楽ラップの特徴は、世界最大級の運用助言機関の米マーサー社のサービスを使っている点です。アルゴリズム(機械)で運用せず、世の中の動きを見ながら先読みをして投資判断をしています。例えば、トランプ大統領誕生後、債券にウエートを置いていた一般的なラップ口座サービスは悪影響を受けましたが、楽ラップは株式にウエートを置いていたため好影響を受けました。

 

── 楽天銀行との連携は。

楠 楽天グループの各サービスのお客様にも新規の口座開設を呼びかけていますが、楽天銀行から流れてくる人が一番多いです。楽天銀行は現在、577万の口座、約1・8兆円の預金残高を持っています。銀行と証券の口座をシームレス(つなぎ目なし)に連携することで、銀行口座に入金すれば、そのまま投資資金になるような口座間の連携サービスを提供しています。

 例えば、楽天証券はATMカードを発行していません。ただ、楽天銀行の口座を持つ人がコンビニで楽天銀行の口座におカネを入れれば、投資で必要な時にこれを使えるようにするサービスも提供しています。反対に、楽天証券の口座に現金ができれば、そのまま自動的に楽天銀行に移動できるサービスもあります。

 

── その他の利用者開拓は。

楠 約600人の独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)と契約しています。当社と契約するIFAには元証券営業マンも多く、中には自分の顧客を抱えている人もいます。彼らには当社のサービスを紹介してもらうので、私どもの販売代理店のような位置付けです。

 IFA経由で獲得した口座数は1万6000まで伸び、その預かり資産は2000億円を超えました。彼らは独立系なので、所属する証券会社の都合で営業しないことが差別化要因です。

 

 ◇香港とマレーシアへ

 

── 「フィンテック(金融と技術の融合)」分野の取り組みは。

楠 楽天グループとしては、フィンテック技術を持つ欧米企業などに対して15年11月から100億円規模の投資をしているところです。私もこのファンドの投資判断をする委員なので、フィンテックの最新情報は入ってきます。楽天証券のサービスをいかに充実させるか、競争力のあるものにするか、便利にするかを念頭に、自社で開発できるものはするし、ベンチャー企業などから取り込むこともしていきます。

 フィンテックを実際に活用することも意識しています。16年8月には、分散型台帳を実現する画期的な技術として注目される「ブロックチェーン」を使った本人確認システムを、ソラミツ(東京・港区)というベンチャー企業と共同開発を開始しました。高いセキュリティーのシステムを構築していきます。

 

── 海外戦略はどうですか。

楠 FXでは香港と豪州シドニーに拠点を置いています。香港が中国本土の顧客の窓口となり、豪州で口座を開設するためです。豪州ではレバレッジ(少ない資金でも大きな取引ができる仕組み)の規制がないため、例えば、100倍とか200倍のレバレッジも可能です。これで中国市場の開拓を狙います。

 また、マレーシアにも進出します。現地の証券大手ケナンガと、5対5の出資比率でネット証券会社「楽天トレード」を作りました。この合弁会社を作るために、政府との交渉など2年かかりました。まもなくサービスを開始します。

(構成=谷口健・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 31歳で米国に留学し、帰国後はコンサルティング会社に入りました。36歳で前身のネット証券立ち上げに参画しました。

 

Q 「私を変えた本」は

A もともとはシステムエンジニアでしたので、チャールズ・ワイズマンの『戦略的情報システム』には影響を受けました。

 

Q 休日の過ごし方

A 海外出張も多いですが、フィットネスクラブで汗を流したり、月に1回はゴルフもします。

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 ■人物略歴

 ◇くすのき・ゆうじ

 広島市立基町高校、広島大学卒業。1996年、米国でMBA取得後、ATカーニー入社。99年、DLJディレクトSFG証券(現・楽天証券)入社。2006年4月に楽天証券COO、同年10月に社長就任。54歳。

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事業内容:インターネット専業の証券会社

本社所在地:東京都世田谷区

設立:1999年3月

資本金:75億円

従業員数:340人(2016年9月)

業績(16年3月期)

 売上高:550億円

 営業利益:246億円

2017年

3月

21日

経営者:編集長インタビュー 江尻義久 ハニーズホールディングス社長

◇「価値あるものを安く」日中両国で婦人服店展開

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どんな会社ですか。

江尻 カジュアル着からお出かけ着まで婦人服を10~50代の幅広い層を対象に展開しています。製造から小売りまで一貫して手がける「製造小売り(SPA)」と呼ぶ手法を用いていますので、トレンドを素早く捉え、顧客のニーズにタイムリーに応えることができる点が強みです。

 

── 3月1日に持ち株会社制に移行しました。

江尻 国内市場の縮小が見込まれ、価格競争が激しくなるなど将来の不確実性が高まっています。また当社の事業分野も広がりました。

 そこで、持ち株会社の傘下にそれぞれの事業に特化した子会社を置くことで、各子会社が担当事業に専念できるようにしました。グループ全体の経営効率化が狙いです。

 

── 足元の販売状況は。

江尻 衣服に対する消費者の優先順位が下がり、アパレル業界全体が苦戦しています。その逆風の下でも、当社は16年4月から17年2月まで11カ月連続で顧客数が増えました。

 ネットを通じた販売も好調です。すでに展開するアマゾンのほか、スタートトゥデイが運営するファッション通販サイト「ゾゾタウン」でも3月から展開を始めました。ただ、ネット通販の売り上げの伸びは大きいものの、当社の売上高全体の2~3%にすぎません。業界では一般的に、ネット通販の割合は7%程度と言われますので、まだまだです。

 

 ハニーズの2017年第2四半期(16年6~11月)の売上高は前年同期比7・6%減の269億6200万円だった一方、当期純利益は同15・4%増の4億円だった。

 

── 1978年に前身の有限会社エジリを設立したきっかけは。

江尻 もともと家業の帽子専門店がいずれ立ち行かなくなると考え、より需要の見込める婦人服を手がけることに決めました。

 当初は80年代に全盛だった「DCブランド」の一つ、「ハニーハウス」のフランチャイズチェーン店として、仙台市などいわき市外に展開先を広げていきました。おしゃれと評判でしたが少々値段が高かったため、思うように売れない時期もありました。品ぞろえを徐々に広げるなどした結果、販売も軌道に乗り、92年には設立時に掲げた「設立15年後に100店舗」を達成しました。

 

── 順調ですね。

江尻 ところが翌93年にバブル崩壊の影響に襲われました。個人消費が伸び悩み、当社の売れ行きも落ちました。そこで展開先を広げ、商品価格を下げると同時に、従来の駅前中心から郊外店に重点を移しました。93~2000年の7年で当時130店のうち主に駅前店など110店を閉店する一方、郊外を中心に120店を開店したほどです。

 

── 商品価格をどう引き下げたのですか。

江尻 98年に一大ブームになった1900円で買えるユニクロのフリースを見て、生産体制を中国にシフトすることに決めました。本格的に生産を始めたのは01年からです。

 中国は生産だけでなく、市場の大きさも魅力です。そこで06年に上海に1号店をオープンしました。

 ただ、中国店はいまだに収益モデルを確立できていません。足元では日本と同様、郊外型店舗への移行期にあります。加えて、不動産価格が高騰し、店舗運営コストが高どまりしています。今17年5月期は50店を出店すると同時に、不採算店舗を70店撤退する予定です。中国の直営店舗は16年11月末時点で461店です。様子見の状態です。

 生産面でも、人件費が当初の2倍超の1人当たり月額7万円に上がりました。中国から日本への輸入には関税も10%上乗せされます。そこで東南アジア諸国連合(ASEAN)の比重を徐々に高めています。

 

 ◇進出決断の日

 

── ASEANの生産体制は。

江尻 ミャンマーで12年に現地子会社を設立し、工場を稼働しました。すでに二つの工場を運営し、計約4000人が勤務しています。生産量は年600万着に上りますが、日本の販売量の2割程度にすぎません。

 ASEANではこのほか、バングラデシュやベトナム、インドネシアなど現地企業への委託生産も行っており、生産量が当社全体の生産量の3分の2を占めるまでになりました。

 

── ミャンマーの民政移管は11年3月でしたから、早い段階での進出ですね。

江尻 実は、ミャンマーの工業団地側と工場設置の調印を交わした翌日の11年3月11日に東日本大震災が起きました。現地側からも社内からも進出の見送りムードが高まりましたが、進出に必要な2億5000万円の送金をすぐに決めました。震災によって当社の物流機能も止まり、生活物資が不足するなど、大変でした。しかし、ミャンマー進出は5年、10年の長期的な視点に立って決めたこと。実行するべきだと決断しました。

 

── 決断は正しかったですか。

江尻 生産体制の構築には時間がかかりましたが、現在は1着当たりの平均販売価格が日本国内で生地の生産や縫製を行っていた80年代当時の約4900円から、約1400円まで下がりました。にもかかわらず、当時に比べ顧客数が増えましたので、粗利率は58%に上ります。当社は「価値あるものを安く」がモットーです。強さを再び取り戻すための準備がようやく整ったと思っています。

(構成=池田正史・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 20代に遊んだ分、30代は一心不乱に仕事をしました。休んだのは元日だけ、ということもあるほど仕事一筋でした。

 

Q 「私を変えた本」は

A 『商業経営の精神と技術』をはじめ、流通専門誌『商業界』が主催する故・渥美俊一先生の勉強会で読んだ本が今でも血肉になっています。「利益は顧客のためにある」という言葉が印象に残っています。

 

Q 休日の過ごし方

A 土曜日はゴルフ、日曜日は囲碁をして過ごします。ゴルフはシングルで、囲碁は5段です。

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 ■人物略歴

 ◇えじり・よしひさ

 1946年生まれ。福島県出身。福島県立磐城高校卒業。69年早稲田大学卒業後、家業のエジリ帽子店入社。78年に有限会社エジリ(現・ハニーズホールディングス)を設立し、専務に就任。86年のハニーズへの社名変更と同時に現職。70歳。

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事業内容:衣料・服飾雑貨事業

本社所在地:福島県いわき市

設立:1978年6月1日

資本金:35億6600万円

従業員数:連結7103人(2016年11月末現在)

業績(16年5月期・連結)

 売上高:582億2500万円

 営業利益:28億2100万円

2017年

3月

14日

経営者:編集長インタビュー 新芝宏之 岡三証券グループ社長

◇「対面」「ネット」「地域」で強い証券会社に

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 会社の強みは。

新芝 2023年に創業100周年を迎える「伝統」と、ネット証券で創業10年の岡三オンライン証券という「革新」的な部分を併せ持っていることです。岡三証券グループは、対面販売を行う証券会社としては国内大手5社に次いで6番目、ネット証券としても7番目の規模です。対面とネットの両方で上位に名を連ねているのは、当社だけです。

 

── 市場環境をどう見ますか。

新芝 現在は「インセキュア」、つまり非常に不安定な時代に入っています。各国で格差が問題になり、資本主義の存在意義も問われています。背景にはデジタルプラットフォームなどIT(情報技術)の進展によるグローバリゼーションの大きな波があるでしょう。つまり、企業や個人が国を超えて活動する時代になり、これまで経験したことのない変化が起きているのです。

 そうした不安定で先の読めない時代なので、社員には「投資アドバイスのプロになれ」と言っています。

 

 持ち株会社の岡三証券グループの下に、対面販売とコンサルティングビジネスの中核企業の岡三証券、ネット専業の岡三オンライン証券のほか、岡三にいがた証券、三晃証券、三縁証券などの地域証券、海外拠点の岡三国際、資産運用に特化した岡三アセットマネジメントなど10社を擁する。さらに業務資本提携先の証券ジャパン、丸国証券も合わせた多角的なビジネス展開は、日本の証券業界の中でも独自の存在だ。

 

── 4月から新しい中期経営計画が始まります。

新芝 持ち株会社の岡三証券グループとしては、より長期的な目標として、グループ全体でROE(株主資本利益率)10%を安定的に達成できる体制を目指します。

 また、現在のグループ全体の顧客口座数は68万口座、預かり資産は4・5兆円ですが、創業100周年に向けて23年4月までに「100万口座」「預かり資産10兆円」を目標に掲げています。ただ、数字を追うのではなく、あくまで顧客本位の結果として数字を達成することが理想です。「目的」と「手段」を逆転させないよう、社員に心がけさせています。

 

── 今年、岡三オンライン証券を子会社化した狙いは。

新芝 ネット証券は1990年末ごろに各社がいっせいに創業したのに対し、2006年創業の岡三オンライン証券は最も後発の方でした。しかしながらプロの個人投資家に評価され、売買高でネット証券の上位に食い込みました。半面、一般消費者をうまくとりこめず、規模感が出ないことが課題でした。裾野を広げるためには、資金的・人的に経営資源を投入した経営強化が必要と判断し、この改革を進めるために完全子会社化しました。また、株取引をネットで行う人が年々増え続ける中、岡三証券グループが100年を超えて生き残るためには、ネット証券というパーツは不可欠になります。

 

 ◇iDeCoに期待

 

── 対面販売はどうですか。

新芝 対面にはネットにない強みがあります。ネット証券は本屋に例えればネット通販サイトのようなものです。欲しい商品はすぐに買える半面、派生商品や関連ジャンルの広がりを知ることに限界もあります。その点、対面は街の本屋さんのようなもので、欲しい商品以外も目に飛び込んできます。販売員が幅広く商品を説明してくれるので、自分に合った商品選びが可能です。中核の岡三証券や地域証券では、対面の強みを生かした販売を行っていきます。

 

── 個人型確定拠出年金(iDeCo)にも力を入れていますね。

新芝 対面証券では運営管理手数料を業界最安に設定しています。iDeCoは国が普及を後押ししており、優遇税制もあって加入者の増加が期待できます。ここでも対面販売が生きます。まだiDeCoを知らない顧客に、来店時に紹介すれば、「セレンディピティ」、つまり「予想外の発見」を与えることもできます。

 

── 海外戦略は。

新芝 香港に拠点を置く子会社の岡三国際のほか、海外の証券会社7社と提携しています。また、ロンドン、ニューヨーク、上海の3カ所にリサーチセンターも設けています。各拠点のネットワークにより海外マーケットの最新情報を随時収集します。

 

── 今後の経営戦略は。

新芝 「多様性」を重視した戦略を取っていきます。「バイオダイバーシティー(生物多様性)」という言葉があります。一本の木よりも林、林よりも森の方が生命力が強く自然に繁殖していきます。つまり、多様な形態を抱えていた方が強いのです。

 これは証券業界にも当てはまります。証券業務に加え資産運用や市場調査を行う会社があれば相乗効果が出ます。この点、当社グループでは、子会社の岡三アセットマネジメントに約170人の資産運用部隊がいます。岡三証券内には市場調査部隊のアナリスト約80人、商品設計部隊が約150人いて、傘下の地域証券会社が個別に対応できない業務を補っています。一方で各地域証券は、中央部隊の成果を、それぞれが特化している地域で生かします。

 これからの証券業界は中央集権と地方分権の両方の強みを生かすことが生き残りのカギになると見ています。そのためにも多様性を確保することが重要だと考えます。

(構成=大堀達也・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 米国への留学を終え、業界アナリストとして復帰しました。その後、経営改革プロジェクトに携わりました。1998年に当社の加藤精一元会長が日本証券業協会会長に就いた時、秘書として出向しました。山一証券破綻など激動の時代に業界全体を見る仕事ができたことが大きな経験になりました。

 

Q 「私を変えた本」は

A 「バリュー投資の父」ベンジャミン・グレアムとその弟子デビッド・ドッドの共著『証券分析』です。

 

Q 休日の過ごし方

A ジョギングを楽しんでいます。

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 ■人物略歴

 ◇しんしば・ひろゆき

 1958年生まれ。東京都立小松川高校、早稲田大学商学部卒業後、81年岡三証券グループ入社。98年日本証券業協会に出向し会長秘書。2001年取締役。常務執行役員、専務執行役員などを経て、14年4月社長就任。岡三オンライン証券会長も兼務。

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事業内容:証券ビジネスを中核とした投資・金融サービス業

本社所在地:東京都中央区

創業:1923年

資本金:185億8900万円(連結、2016年3月)

従業員数:3536人(連結、16年9月)

業績(16年3月期・連結)

 営業収益:829億2700万円

 経常利益:173億9600万円

2017年

3月

07日

経営者:編集長インタビュー 尾賀真城 サッポロホールディングス社長

◇もう一度、ビール回帰へ

 

 ◇Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 貴社の強みは。

尾賀 サッポロラガービールのラベルには、「JAPAN'S OLDEST BRAND(日本で一番歴史あるブランド)」とあります。作り方から追求し、原材料の麦やホップを独自に品種改良して作るなど、創業時からこだわりと責任を持ち続けています。

 2003年に持ち株会社体制となり、酒類、食品・飲料、外食、不動産の4本柱で事業を展開してきました。「黒ラベル」「エビス」や、老舗ビアホールを運営する「サッポロライオン」、グループで運営する商業施設「恵比寿ガーデンプレイス」(東京・渋谷)などがわれわれの財産です。

 

 1876年に政府の開拓使が北海道札幌市に前身である日本初のビール醸造所「開拓使麦酒醸造所」を設立した。そこで作られた「札幌ビール」が社名の由来だ。ビールのラベルに描かれている星マークは、北海道開拓使の記章でもある北極星を表す。

 

── 業績は。

尾賀 16年12月期の連結決算は、売上高が前期比1・5%増の5418億円、純利益が同55%増の94億円でした。17年12月期も増収増益の見通しです。苦しい時代もありましたが、いろいろとやってきた成果が表れつつあると思います。祖業のビールは、黒ラベルやエビスなどの販売が伸びています。ここ2年ほど、ビールに焦点を当ててやってきたことが成果に結びつきました。

 新たに投資してチャレンジしてきた事業も少しずつ育っています。11年にポッカコーポレーション、16年にみそを製造・販売する宮坂醸造を買収しました。06年のカナダのスリーマンビール買収は一つの転機になりました。スリーマン社はこの10年で販売高1・5倍、営業利益2・8倍と順調に推移しています。

 また、焼酎や洋酒の分野に参入しました。ラムブランド「バカルディ」などを有するバカルディジャパンと提携することで、扱う洋酒の種類が増えました。お客様に総合的にお酒を提供することができるようになったことが大きいです。

 

── 業績寄与の不動産事業は。

尾賀 札幌、恵比寿、銀座など立地のよいところに賃貸オフィスや商業施設を保有しており、賃料収入など安定した収益が上げられる事業なので、きちんとやっていきたいです。

 

── そのほかの海外事業は。

尾賀 サッポロUSAの販売量も伸びています。米国ではサッポロがアジアのビールメーカーで最も売れています。アジアでは、べトナムに工場を作って5年が経過しました。需要が高い業務用ビールに注力し、黒字化することが一つの課題です。

 

── 力を入れている食の分野は。

尾賀 ポッカの代名詞でもあるレモンは飲料のフレーバーとして使われることが多いです。「レモンでできることはポッカが全部やる」ということを追求していきたいと思います。例えば、産地の違いがどう製品に表れるかなど、掘り下げることができていない部分もあると思います。

 

── M&A(合併・買収)戦略は。

尾賀 分野に限らず、互いに価値を高められる相手ならば、可能性はいろいろあります。これからの時代はあらゆる角度から事業を考えていかなければなりません。

 

 ◇支持される商品を

 

── ビールに回帰する理由は。

尾賀 発泡酒、新ジャンルを初めて作ったのはサッポロです。開発した1990年代半ばから00年代前半はデフレで、物の低価格化が進んでおり、なるべく手に取ってもらえるように、いろいろな商品を作りました。

 その結果、他社を含めて競争となり、本来われわれが持っているブランド価値が希薄になったと感じました。お客様が求めることを考えた時、もう一度、ビールだと思いました。

 

── 消費者のニーズをどう分析していますか。

尾賀 酒類が多様化する中で、お客様にとってビールの位置づけが変わってきました。30年前は「どこに行ってもビール」でしたが、今では乾杯後の2杯目からは他のお酒、多くても3杯は飲まないのが現状です。

 ですから、提供の仕方や商品開発を工夫する必要があります。例えば、ゆっくり嗜(たしな)むビールなど、2杯目に飲んでもらえるようなビールを開発しなければなりません。シーンに合わせた選択肢が増えるとビールの幅も広がっていくと思います。

 

── ビール系飲料で4位のシェアをどのように伸ばしていきますか。

尾賀 シェアを高めればすぐに利益に結びつくとは限りません。今よりも当然上を目指しますが、シェアはお客様に選ばれた結果だと思っています。現場が絶対に負けないという意識を持ち、お客様の嗜好(しこう)を捉えていかなければなりません。

 

── 今後の目標は。

尾賀 20年に売上高6400億円、営業利益340億円という目標を掲げています。営業利益は300億円を上回ったことがないので、達成すれば初となります。ビール、飲料、食品などでそれぞれ何をするか考え、数字につなげていきたいです。

 サッポログループは「個性輝くブランドカンパニー」を目指しています。各事業が輝き、ビール会社なので基本的に楽しい、味のある会社にしたいといった思いがあります。

 それにはどうしていけばよいか。例えば、プレミアムビールといえばエビスしかない、北海道に行ったら絶対に「サッポロクラシック」だというように、圧倒的に支持され、「いいね」と言ってもらえるものを作る会社にしていきたいと思います。

(構成=丸山仁見・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A バブル絶頂期で池袋エリアを担当していました。毎日、深夜に帰宅するくらい営業に奔走していました。

 

Q 「私を変えた本」は

A 司馬遼太郎の『坂の上の雲』『竜馬がゆく』です。明治時代の群像劇をわくわくしながら読みました。

 

Q 休日の過ごし方

A 時間があれば妻と旅行に出かけています。

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 ■人物略歴

 ◇おが・まさき

 1958年生まれ。東京都出身。国学院久我山高校卒業。82年慶応義塾大学卒業後、サッポロビール(現サッポロホールディングス〈HD〉)入社。主に営業・マーケティング部門を歩む。2009年サッポロビール執行役員、13年同社社長、HD取締役兼グループ執行役員などを経て、17年1月HD社長に就任。58歳。

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事業内容:酒類、食品・飲料、外食、不動産

本社所在地:東京都渋谷区

設立:1949年9月1日(1876年9月創業)

資本金:538億8600万円

従業員数:連結7858人(2016年12月末現在)

業績(16年12月期・連結)

 売上高:5418億4700万円

 営業利益:202億6700万円

2017年

2月

28日

経営者:編集長インタビュー 丸山寿 日立化成社長

◇高機能材料ベースに1兆円企業へ

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 日立化成はどんな会社ですか。

丸山 1912年に日立製作所がモーター用の絶縁ワニス(電気の流れを遮る樹脂)を作ったのが当社の始まりで、62年に分離独立しました。一言で言えば、樹脂を混ぜたり、貼ったり、塗ったり、ひっぱったりして材料を作っている会社です。

 

── どんな製品がありますか。

丸山 例えば、当社が世界シェア約5割を持つ「ディスプレー用回路接続フィルム」という製品があります。絶縁性の樹脂の中に電気を通す粒が入ったセロハンテープのような材料で、スマートフォンで使われています。粒を通じて縦方向に電気を通し、横には逃がさない特性があるため、複数の電極を一括して取り付けることができます。

 そういった材料を、その時々の成長市場に提供してきました。現在の主力は半導体や液晶などの機能材料と、自動車部品や電池などの先端部品・システムで、利益率が高いのは前者、売り上げが安定しているのが後者です。

 

 日立化成は1月25日発表の第3四半期決算で通期の業績見通しを上方修正し、最終利益の見通しを従来の前年同期比9・1%減の350億円から、同2・6%増の395億円に引き上げた。2年連続の最高益更新が視野に入る。

 

 ◇電池が業績押し上げ

 

── 業績好調の原動力は。

丸山 スマホ向け材料と電池部門の成長、原価低減の推進です。中国のスマートフォン、中でも高級スマホ向けの利益率が高い材料の売り上げが順調に伸びています。

 

── 電池市場は。

丸山 電池事業は大きく二つ。一つはリチウムイオン電池用の負極材です。世界トップのシェアを持っています。リチウムイオン電池の需要拡大により調子がいいです。もう一つは自動車用と定置用の蓄電池です。

 

── 蓄電池はどう伸ばしますか。

丸山 業務用定置型蓄電池に強い新神戸電機を完全子会社化・吸収合併し、海外展開に強い台湾神戸電池を完全子会社化しました。この2社はもともと当社のグループ会社です。自主独立の方針で別会社として事業展開してきましたが、現在はニーズが多岐にわたり、事業展開のスピードも加速しています。一緒になり、総合力を発揮しようという方向にこの10年くらいで変わってきました。

 また2017年2月にイタリアの自動車部品メーカー、フィアム社から自動車・産業用の鉛蓄電池事業を買収しました。

 

── 半導体市場での取り組みは。

丸山 半導体製造の後工程でIC(集積回路)チップと回路基板を接着させる「ダイボンディングフィルム」で世界シェア4割を押さえています。半導体はIoT(モノのインターネット)の進展で需要がさらに伸びると期待しています。

 ただし、半導体の世界は非常に動きが速いです。これまでは当社が直接商品を納めるお客様の要望に素早く応えることを重視してきました。しかし、そのお客様が業界の負け組になれば、当社も一緒に沈みます。力を持っている企業を見極め、直接そこに聞きにいく。どんな機能を求めているのか、半導体部品メーカーなど直接のお客様だけでなくその先のお客様と一緒に考えていかなければ生き残れません。

 

── トランプ新大統領の誕生で世界経済の先行きは不透明感を増しています。

丸山 当社もメキシコに工場があるので、気にならないといえばウソになります。しかし、最終的にユーザーにとってどんな価値があるかを見逃さないことが大切です。

 当社は欧州に製造・開発の拠点がありませんでした。伊フィアム社の電池事業の買収は、悲願だった欧州進出の足がかりになるものです。フィアム社を橋頭堡(きょうとうほ)に、自動車や半導体材料につなげていきたいです。

 

 ◇営業利益率2桁へ

 

── 中期経営計画は。

丸山 25年度に売上高1兆円、営業利益率14%超の企業になるという将来像をまず描きました。そして18年度までの3年で営業利益率11%を目指します。野心的な数字ですが、材料技術を基盤に、付加価値の高い製品を持つ当社ならば、十分に達成できると考えています。

 ただし、戦い方は変えなければなりません。成長市場が少なくなる中ではシェアを取っていくしかありません。自前主義を捨てて、他社の技術を使う、M&A(合併・買収)で外部の力を取り込むなどのオープンイノベーションにも取り組んでいます。茨城県つくば市の「オープン・ラボ」という当社の施設に、半導体製造の後工程の機械をそろえ、お客様が材料を持ち寄り装置メーカーなどと一緒に試行錯誤する場として活用していただいています。

 

── 今後の注力分野は。

丸山 ライフサイエンス分野です。再生医療用細胞の開発・受託製造施設を横浜に新設します。米PCT社から導入した技術を使ってがん治療のための細胞培養の受託事業を18年度に始めます。早期に黒字化する見通しです。情報通信、環境・エネルギー、自動車に次ぐ四つ目の柱にするには10年かかると思いますが、やっていきます。

(構成=花谷美枝・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 法務部門にいました。私は契約書を書いていれば幸せな人間。要望を聞きながら契約書を作成するのは本当に面白いです。

 

Q 「私を変えた本」は

A ビジネスではクレイトン・クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』。小説ならば北杜夫の『楡家の人びと』。

 

Q 休日の過ごし方

A 泳いで、走って、本を読んでいます。

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 ■人物略歴

 ◇まるやま・ひさし

 1961年生まれ。長野県立飯田高校、一橋大学法学部卒業後、83年日立化成入社。社長室広報・IR担当部長、自動車部品事業部副事業部長、執行役常務などを経て、2016年4月社長就任。55歳。

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事業内容:機能材料、先端部品・システムの製造販売

本社所在地:東京都千代田区

設立:1962年10月10日

資本金:155億円

従業員数:連結1万9117人、単体6209人(2016年3月現在)

業績(16年3月期・連結)

 売上高:5465億円

 営業利益:530億円

 

2017年

2月

21日

経営者:編集長インタビュー 宮下直人 総合車両製作所社長

◇ステンレス車両の先駆けとして進化させる

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 会社の成り立ちから教えてください。

宮下 当社は、2012年にJR東日本が東急車輛製造を買い取って設立し、14年JR東日本新津車両製作所の車両事業を経営統合、新津事業所(新潟県)としました。JR東日本は鉄道の国内需要が人口減少で縮小するなかグローバルな展開を目指し、車両製造を第4の柱に位置づけました。

 鉄道事業が背景にあるので、例えば海外に進出する時、メンテナンスや運行、駅ナカまでパッケージとして展開することができます。その意味で社名に「総合」とつけています。

 

 ◇車両のシステム端末化

 

── 強みは何ですか。

 

宮下 東急車輛は日本で初めてステンレス製車両を製造した会社です。約60年前に、当時の社長がブラジルでアメリカ製のステンレス車両をみて、「これだ」と製造を指示しました。ステンレスはさびないので清掃が楽になり、塗り替えも不要です。美観性にすぐれ、重さも今はアルミ車両並みになっています。JR東日本は通勤車両をステンレスに替えてきました。

 いま一番力を入れているのが、オールステンレスの通勤車両「サスティナ」です。ブランディングすると同時に共通プラットフォームにより製造コストを下げています。

 鉄道車両は顧客の鉄道会社のニーズに合わせてカスタマイズするため、少量生産でコストがかかります。一方で安さも求められ、収益が出にくいのがジレンマでした。ボディーの部品や電装品はこれまで顧客ごとにバラバラのため発注単位が小さかったのですが、どこまで共通して仕入れ規模を大きくできるか取り組んでいます。

 

── 鉄道会社傘下である利点は何ですか。

 

宮下 鉄道会社にとって保守のコストダウンは必須です。線路や架線の画像を走りながら撮る車両を開発しました。山手線に投入されているE235系です。車両のトラブルを把握して地上に送ることもできます。

 従来は例えば月に1度線路を点検し、限度値を超えていれば取り換えていましたが、日々撮影するビッグデータを分析すれば、取り換え頻度を下げることができます。

 鉄道車両はシステムの端末になりつつあります。地上の管理システムと車両との連携は、事業者とともに開発した方がかゆいところに手が届く機能になります。

 

 ◇輸出の勉強代

 

── この5年間のチャレンジは、何ですか。

 

宮下 東急車輛時代に赤字のため中断した新幹線の製造を再開しました。それが北陸新幹線E7系です。72両を納入しました。高速車両は技術力を維持するために必要です。採算はまだ厳しいですが、新幹線は社員にとって特有の求心力があります。

 輸出も円高で採算が見合わず04年に中断していましたが、再開しました。第1号が昨年8月に開業したタイの都市鉄道パープルラインです。海外向け「サスティナ」を63両納入しました。

 

── 輸出の手応えは。

 

宮下 途中で何度もくじけそうになりましたが、完成にこぎつけたことは自信につながりました。欧州基準に合わせるため、設計を何度もやり直しました。

 一番大変だったのは計5万ページに及ぶ文書作成です。設計思想から細かく書かなければなりません。日本流では何から何まで文書に書かなくても良い製品はできると考えます。設計費が通常の倍かかりました。高い勉強代を払いました。

 

── 高くついた勉強代をどう生かしますか。

 

宮下 いい案件を探しています。東南アジアが一番のマーケットでしょう。欧州も広いですから、大メーカーの手が回らないニッチな案件を狙います。

 ただし、日本のやり方を認知させていかなければなりません。欧州規格に合わせるのではなく、日本の規格を打ち出すべきです。

 

 ◇ハイブリッド世界一

 

── 技術面で新たな取り組みは、ありますか。

 

宮下 サスティナのハイブリッド車両ですね。海外で特に注目を浴びています。ディーゼル発電機と蓄電池を積んで非電化区間を走ります。ハイブリッド車両は環境に優しく、初期の設備投資や保守のコストが下がります。

 既に29両が営業運転しています。当社が世界で一番多くハイブリッド車両を作っているメーカーではないでしょうか。蓄電池を積み、架線のあるところではパンタグラフから電気をとるタイプの車両もあります。

 

── 今後の経営目標はどんなものですか。

 

宮下 13年に、10年後は売上高1000億円という目標を掲げました。16年3月期は430億円で目標はまだ高いところにあります。海外比率を4割まで高めていきます。

 社内の課題としては、製造や設計など部門の壁を越えて、一体感をどう作るかです。ただ、モノ作りは、自分たちの仕事が目に見える形となり、社員のプライドやモチベーションにつながるのがいいところですね。

(構成=黒崎亜弓・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A JR東日本で車両の故障や事故を担当していたら、「事故対応が得意だから」と広報に。非常に鍛えられました。上司には「軸足をJR内部ではなく、外に置け」と教えられました。JR以外の民鉄がお客様である今に生きています。

 

Q 「私を変えた本」は

A 『失敗学のすすめ』(畑村洋太郎著)です。日本人はメンツを守るために失敗を水に流そうとするので同じ轍(てつ)を踏みがちです。失敗を分析し、繰り返さないことが大事だと教えてくれました。

 

Q 休日の過ごし方

A ゴルフですね。

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 ■人物略歴

 ◇みやした・なおと

 東京都出身。都立西高校卒業、東京大学大学院機械工学専攻修了。1979年国鉄入社。JR東日本安全対策部長、常務取締役を経て、2012年4月より現職。63歳。

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事業内容:鉄道車両製造

本社所在地:横浜市金沢区

設立:2012年4月

資本金:31億円

従業員数:1112人(2016年4月現在)

業績(2016年3月期)

 売上高:430億円

 営業利益:マイナス11.9億円

2017年

2月

14日

経営者:編集長インタビュー 辻庸介 マネーフォワード社長

◇家計と企業のおカネをダイエット

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 金融とIT(情報技術)の融合である「フィンテック」を使ったベンチャー企業として注目されています。現在の事業は。

辻 主に二つあります。一つは、個人がスマートフォンで使う自動家計簿・資産管理アプリ「マネーフォワード」で、登録ユーザー数は1月に450万人を超えました。

 もう一つが、中小企業や個人事業主向けの「MFクラウド」で、会計や確定申告、経費などをインターネット上で管理するサービスです。この利用者数は、50万ユーザー(法人や個人事業主)を突破しています。

 

 

── 家計簿アプリの強みは。

辻 約2600社の金融機関やクレジットカード会社の情報と連携して、「電気代」や「交際費」など自動でデータを仕分けし、家計の見える化をします。レシートなどをスマホのカメラで撮って、支出内容を自動認識する機能もあります。家計簿を自動で作れるので、支出しすぎている項目や、1年前と比べて資産がどう推移したかなどを楽に確認できるようになります。

 このアプリを使って、月1万1000円以上の収益改善(節約)効果があったという調査もあります。体重を毎日記録するダイエット法「レコーディングダイエット」にも似ていて、おカネを意識することで、おカネの使い方が変わってきます。

 

── どこで収益化しますか。

辻 家計簿アプリでは、三つあります。一つ目が有料版です。月額500円払うと、1年以上前のデータを見られたり、11件以上の口座と連携したりできます。月間平均2万円以上の収支改善につながったというアンケート結果も出ています。

 二つ目は広告モデルで、アプリ内に出る広告を主に金融機関から出していただいています。三つ目は、「マネフォワード・フォー・○○銀行」という形で、銀行と連携した家計簿アプリを提供し、提携企業から利用料をいただいています。今は、住信SBIネット銀行、静岡銀行など8行と提携しています。

 

── 法人向けの「MFクラウド」の料金体系は。

辻 例えば、会計事務所や中小企業、個人事業主など向けに提供する会計サービスは、月額1980円からです。個人事業主向けの確定申告サービスは月額800円、経費サービスは、従業員1人当たり月額500円というようなイメージです。

 

── 最終的に目指す姿は。

辻 おカネのモヤモヤを取っ払って、おカネについて悩まない世界を追求したいです。今は使ったおカネの把握を自動化するところまでは来たので、将来は、投資や保険、子供の養育資金をどうするかなど、現状把握から将来のおカネに関するサービスへと発展させていきたいです。

 

 ◇ロボアドや融資にも

 

 設立は2012年5月。辻社長がソニーやマネックス証券時代に働いた元同僚や友人6人が集まった。いずれも「金融とITが好きなメンバー」(辻社長)。今は、ジャフコやマネックスベンチャーズなど企業の出資を集め、社員数は230人まで拡大している。

 

── 起業当時から家計簿アプリを出していたのですか。

辻 いえ、当初は構想だけで、アプリを出したのは設立から半年後の12年12月です。ビジネスモデルも考えずに始めましたが、13年7月に有料版を開始したところ、契約者が出てきて「このサービスは将来性がありそうだ」となりました。そして、13年11月には、法人向けの「MFクラウド」を開始し、キャッシュフローが出てきたのが15年ごろからです。

 

── 家計簿アプリはなぜ成功したのでしょうか。

辻 よく働いたこともあると思います(笑)。それは半分冗談ですが、当時はスマホが普及するなかで、スマホに特化した家計簿サービスはありませんでした。それと、成功させる“必殺技”はなくて、利用者の話をひたすら聞いて、新機能や使い勝手などすぐに対応しました。

 それが口コミで広がり、アプリ配信サイトでのレビュー(評価)が良くなりました。14~16年まで3年連続でグーグルの「グーグルプレイ・ベストアプリ」にも選ばれ、ユーザー数もまた増えていきました。開発陣を社内で抱えているので、開発スピードはかなり速いと思います。

 

── 銀行などの口座情報をスマホのアプリに出すことが心配な利用者もいます。

辻 当社の信頼の要はセキュリティーです。金融機関出身者が経営陣に多いので、お預かりしたデータは暗号化して厳重に保管して、金融機関並みのセキュリティーをしています。許諾なしに外部に出すことはありえない。そういうことをすると、我々のサービスが終わってしまいます。当社は行動指針を作っていて、「利用者視点」「技術主導」「公平」の三つを掲げています。

 

── 今後の展開は。

辻 当社は15年12月に、投資を自動で指南するロボットアドバイザー(ロボアド)を展開する「お金のデザイン」(東京都港区)に出資しました。資産運用などでどう連携するかも考えています。

 また、融資の新しい与信モデルも構築しています。すでに、法人や個人事業主向けの融資審査をGMOペイメントゲートウェイと始めています。今は9行と話しており、融資でも新しいおカネの流れを作っていきたいです。そして、海外にもアジア諸国から積極的に展開していきます。

(構成=谷口健・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 2009~11年に米国へ留学しましたが、英語が苦手だったのでかなり苦労しました。帰国後、36歳で起業しました。

 

Q 「私を変えた本」は

A インテル元CEOのアンドリュー・グローブさんの『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』。柳井正さんの『経営者になるためのノート』。あとは、藤田田さんの本も好きです。

 

Q 休日の過ごし方

A 休みが取れる日は、テニスをしたり、本を読んだり、子供と遊んだりしています。

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 ■人物略歴

 ◇つじ・ようすけ

 1976年大阪府生まれ。甲陽学院高校(兵庫県)卒、京都大学農学部卒。2011年米ペンシルベニア大学ウォートン校MBA修了。ソニー、マネックス証券を経て、12年マネーフォワード設立。40歳。

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事業内容:家計簿アプリ、会計ソフトなどのITサービス運営

本社所在地:東京都港区

設立:2012年5月

資本金:22億9000万円

累計資金調達額:約48億円

従業員数:230人

 

業績 売上高:非公開

2017年

2月

07日

経営者:編集長インタビュー 大前孝太郎 城北信用金庫理事長

◇地域創生とコミュニケーションのプロ目指す

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 城北信金はどのような金融機関ですか。

大前 若い人にチャンスがある、仕事をさせる会社です。進取の気性に富み、自分で進んで仕事をしたい人には、私が直接判断し、どんどん挑戦してもらっています。

 

── 金融業界についてどのような見方ですか。

大前 私は20年来、国内に銀行が多すぎると考える「オーバーバンキング」論者です。そのため、従来の銀行業務だけでは先行きは厳しく、金融以外のサービスを作り上げ、金融と非金融の2本柱で進んでいかないといけないと考えています。

 

── 例えば、どのような取り組みですか。

大前 一つが、昨年7月に創設した「Johoku Athlete Club」です。オリンピックを目指す7人の女子アスリートとマネジャー2人の計9人を職員として採用しています。顧客の中には、スポーツに非常に関心のある経営者や、一般でもシンパシーを感じてくれる顧客がおり、「ぜひ取引をしたい」と言ってくださいます。金利を引き下げなくても、お付き合いできる状態をなるべく作りたいと思います。

 

── なぜ、スポーツなのですか。

大前 スポーツは、経済・社会・教育的にも非常に重要な分野であり、コンテンツであると考えています。実は北区赤羽は日本オリンピック委員会の強化施設があるアマチュアスポーツのメッカです。女子バレーのスター選手が毎晩食事に来るなど、地域との接点があります。私は文部科学省に対して、アスリートのセカンドキャリアをどうするのか、企業も応分の支援をすべきだと提案していました。そこで、率先して採用したのが、クラブの始まりです。

 

── アスリート職員は、どのような仕事をしているのですか。

大前 銀行業務をしてもらうわけではありません。彼女たちには背負ってきた人生があるし、普通の人には得難い経験をしています。そこで、例えば小学校の総合学習の時間に子供たちに実技を教えたりしています。これはある種のタレント育成、プロダクション業務です。私にとって大事なのは金融そのものではなく、その機能を活用して地域を活性化することです。コンテンツは地域に資するものなら、何でも良いと考えます。

 

── 信用金庫の顧客をどのように取り込むのですか。

大前 2015年4月にポータルサイト「NACORD(ナコード)」を立ち上げました。サイバーエージェントと連携したクラウドファンディング(インターネットを活用した資金調達)機能や、マーケティング支援機能があります。中小企業のプロモーションは誰がやるのか、という問題意識からスタートしました。中小企業はものづくりは得意ですが、売るのは得手ではありません。そこで、一番身近な我々が、広告代理店的なノウハウを積んで、BtoC(企業対個人)向け商品であれば、顧客に届くような仕組みを作りました。

 

 ◇地元企業をプロデュース

 

── 具体的には、どのようなものですか。

大前 「NACORD」の特徴は、資金調達だけでなく、商品購入の場でもあることです。

 例えば、新しいレストランを開業する時に、当金庫のライターが経営者に取材し、美しい写真を撮影して、ポータルサイト上でプロデュースする。そこで、ディナー券などを販売します。台東区根岸にある老舗の洋食屋さんでは、レトルトパックのハヤシライスやローストビーフを販売し、2日間で250万円の売り上げがありました。サービスの利用は無償です。草履やげたを製造する会社なども含め、今、30社くらいが利用しています。

 

── 内閣府の官僚を経験するなど、自身の経歴もユニークです。

大前 内閣府時代に福井県鯖江市で、地元眼鏡フレーム産業の振興を手掛けました。日本の眼鏡フレームの大半は鯖江で製造し、産業集積度では他の自治体に比べて恵まれています。

 しかし、シャネル、ルイ・ヴィトンなどの欧米ブランドのOEM(受託生産)中心でやってきたので、自身のブランド力はありません。そうした中、中国企業の台頭で、どんどんOEMの仕事を奪われていきました。そこで、私は事業をいろいろと仕掛けました。

 代表例で言えば、若者向けのブランドに鯖江でファッション眼鏡を作ってもらい、ファッションショー「東京ガールズコレクション」で、鯖江製であることを公表して、ショーを行いました。モデルが身につけている眼鏡を売るのですが、1日で5000個が完売しました。まさにこの時の経験が、「NACORD」などのビジネスプロモーションの仕事につながっています。

 

── 信用金庫の常識を変えたいと。

大前 いろんな形でコミュニケーションを展開していきますが、「信用金庫」にはこだわりたいと思います。信用金庫は、地域に密着し、エンドユーザーに深く関われるコミュニケーションのプロです。最近は、北区の区長から、観光協会の立ち上げを依頼されています。12年から荒川河川敷の花火大会の実行委員長をやっていますし、今後は、都内で一番大きな音楽フェスティバルを仕掛けようかとも思っています。皆さんがよく知っているアーティストを呼ぶかもしれません。

(構成=稲留正英・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 小渕政権時代に内閣官房で、金融危機対応に追われていました。どっぷり、政策の中につかり、エキサイティングでした。

 

Q 「私を変えた本」は

A 中学の時に読んだ山崎正和さんの『藝術・変身・遊戯』が、私の何かを変えました。芸術の何たるか、という話が新鮮でした。

 

Q 休日の過ごし方

A 音楽が好きなので楽曲制作をしています。エレキギターを弾きながらフュージョン系の作品です。

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 ■人物略歴

 ◇おおまえ・こうたろう

 東京都出身。東京都開成高校、慶応義塾大学卒業。1987年住友銀行(現三井住友銀行)入行。98年内閣官房特別調査員、2001年内閣府参事官補佐、09年城北信用金庫常務理事を経て、15年6月より現職。52歳。

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事業内容:金融業

本部所在地:東京都北区

設立:1921年5月

出資金:302億円(2016年3月期)

従業員数:1988人

業績(2016年3月期)

 経常収益:393億円

 業務純益:82億円

2017年

1月

31日

経営者:編集長インタビュー 八郷隆弘 ホンダ社長

◇世界6極体制を進化させる

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 中国事業が好調です。

八郷 中国企業との合弁会社2社のラインアップを見直した成果が出ています。

 

従来は、グローバルモデルの車種を2社に割り振って販売していました。例えば、「アコード」は広汽ホンダ、「シビック」は東風ホンダが販売していましたが、私が中国生産統括責任者になった時、同じプラットフォーム(クルマの基本構成部分)で二つの車種を作り分け、効率よくラインアップを構成しようと改革を進めてきました。

 

広汽ホンダが日本で人気の小型SUV(スポーツタイプ多目的車)の「ヴェゼル」を販売し、東風ホンダもデザインを少し変えた「XR─V」を販売して人気を得ています。共有部品をまとめて買うことで生産コストを下げ、安定的に120万台を生産できる体制ができてきました。

 

 中国事業の好調は過去の教訓が生きている。2000年代、世界販売は米国頼みで「一本足打法に近かった」(八郷社長)。12年秋、販売の倍増を目指し、世界6極(日本、中国、アジア大洋州、北米、南米、欧州)で開発・生産・販売を一貫して行う「グローバル6極体制」を打ち出した。だが、各拠点の開発現場の負担が増えた結果、人気車種「フィット」のリコール問題も起きた。そこで、グローバル車の開発を強化、それを軸に地域モデルを派生させる改革を行う。その成果が世界各地でヒットした新型シビックだ。

 

── ようやく6極体制がうまく回り始めているように見えます。

八郷 地域専用車とグローバル車へのテコ入れが実を結びつつあります。6極体制の強化の結果、地域専用車は、中国ではSUV、北米ではライトトラック、日本では軽自動車と、地域の需要に合ったクルマが作れるようになりました。

 一方、グローバル車はプラットフォームやデザインを一新しました。特にシビックは前のモデルの評判がよくなかったため、世界展開できるようモデルチェンジを早めました。

 

── 今後の世界戦略は。

八郷 地域専用車を強化すると、グローバル車の派生モデルが増えるため部品数が多くなります。地域専用車の間で共有する部分を増やすなど効率化を進めます。また、グローバルの生産能力555万台に対し販売が498万台とギャップがあります。これを縮小するため、生産に余剰感がある日本と英国から米国への輸出を増やすなど、6極で連携を強化しています。これが奏功して、米国の販売は堅調です。

 ただ、16年は英国の欧州連合(EU)離脱問題や米大統領選でのトランプ氏勝利などもあり不透明感が高まっています。環境の変化を見極めて効率向上を図っていきたいです。

 

── 16年度の業績見通しは。

八郷 下期は想定為替レートを1ドル=100円にしています。新興国通貨の影響でマイナスの部分もありますが、ドル・円だけで見れば1円円安になると営業利益は年間120億円改善します。業績は上振れを見込んでいます。

 

 ◇グーグルと自動運転で提携

 

── 環境規制や自動運転という大きな変革の波にどう対応しますか。

八郷 ホンダは「二つのゼロ」を目標に掲げています。すなわち、地球環境にやさしいゼロエミッション(排ガスを全く出さない)車、交通事故ゼロを実現する自動運転です。

 ゼロエミッション車は、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)などの手法がありますが、電動化の方向を見据えて開発を進めます。

 

 一方、自動運転は、まず渋滞時や夜間の走行でドライバーの負担を軽減する運転支援から始めます。

 その先の完全自動運転は、人工知能(AI)が重要になります。AIのハードではなく、クルマをどう制御するかといったソフトの部分は、自動車メーカーとしての経験が生きるので内製化する価値があります。このためソフトエンジニアの教育にも力を入れていきます。

 

── 他社との提携やM&A(合併・買収)は。

八郷 ウィンウィンの関係が築けるなら前向きに考えたいです。これまでも技術の進展に応じて電子制御やバッテリーで優れた技術を持つ企業と提携してきました。今後はAIなど自動運転に必要な技術を持つサプライヤーと付き合っていかなければなりません。16年12月にはグーグルの子会社で自動運転開発を専門とする「Waymo(ウェイモ)」と提携しました。自動車業界は課題が多いので、必要であれば他のメーカーとの協業も考えます。

 

── 自動車以外の分野は。

八郷 15年に事業化した自家用飛行機「ホンダジェット」は長い目で大事に育てていきたいです。また、ロボット事業は、歩行補助の医療用ロボの取り組みを拡大させます。

 F1レースは、16年度の成績は苦戦したものの、着実に前進しています。勝たなくてはやる意味がないので、17年度は表彰台に立てるレベルに持っていきたいです。

 

── 大企業であるホンダを、今後どう指揮していきますか。

八郷 ホンダはモビリティーの楽しさを知る現場の人間を中心にモノづくりをしてきた会社です。人々の生活に役立つと同時に、操る喜びがあるクルマを実現するという思いを社員が共有することが大切です。

 自動運転を極めてもホンダらしいクルマができるとは思いません。クルマ離れが進む中、クルマの楽しみをどう作り上げるか、若い社員に考えさせたいです。

(構成=大堀達也・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 本田技術研究所で2代目CR―Vや米国向けオデッセイの開発に当たっていました。開発が楽しくて仕方ありませんでした。

 

Q 「私を変えた本」は

A 『孫子に経営を読む』(伊丹敬之著)は経営の勉強になるので、今も読み返しています。

 

Q 休日の過ごし方

A 気分転換のためにクルマやバイクでドライブに出かけます。

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 ■人物略歴

 ◇はちごう・たかひろ

 1959年生まれ。神奈川県立相模原高校、武蔵工業大学(現東京都市大学)卒業後、82年ホンダ入社。中国生産統括責任者、常務執行役員、専務執行役員などを経て、2015年6月社長就任。57歳。

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事業内容:四輪車、二輪車の生産・販売、金融サービス事業

本社所在地:東京都港区

設立:1948年9月

資本金:860億円(2016年3月末現在)

従業員数:連結20万8399人、単体2万2399人(16年3月末現在)

業績(16年3月期・連結)

 売上高:14兆6011億円

 営業利益:5033億円

 

 

2017年

1月

24日

経営者:編集長インタビュー 来島達夫 JR西日本社長

◇「山陰・山陽の魅力を豪華列車で発信します」

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 2015年春に北陸新幹線が金沢まで開業しました。人の流れはどう変わりましたか。

来島 初年度は東京からのお客様が予想の2倍を超え、3倍に増えました。北陸が注目され、関西から北陸への特急利用客も増えています。

 今は北陸新幹線の上越妙高から金沢までが当社の運行ですが、敦賀、そして大阪まで延伸される予定です。新幹線は保有する鉄道建設・運輸施設整備支援機構に貸付料を30年間にわたって収入から返済していくスキームで、営業努力により利用が想定を上回った分は当社の収益になります。北陸と関西、さらに山陰、山陽との交流を促進していきます。東京と大阪がつながれば東海道新幹線の代替軸にもなります。

 

── 今年6月17日には豪華寝台列車「瑞風(みずかぜ)」が走り出します。

来島 鉄道の旅の魅力を訴えるために打ち出しました。基本は1泊2日で京都・大阪と下関の間を山陰経由あるいは山陽経由で片道運行します。料金はロイヤルツインで1人当たり27万円です。2泊3日で一周するコースもあります。

 山陰、山陽の自然や歴史、食材を味わっていただきたい。立ち寄りの観光地では新たに見どころを発掘してもらっています。沿線の工芸品を車内の随所に取り入れています。沿線の魅力を発信し、瑞風以外でも訪れる機会につなげていきます。

 

── 一生に一度は乗ってみたい。

来島 より気軽に長距離の列車の旅を楽しみたいというニーズに応えるための検討も始めています。

 

── 海外展開は。

来島 国内で打つべき手はまだありますが、私たちの経験を海外で生かす道も模索してきました。15年12月にブラジルの都市鉄道事業に、出資の形で参画しました。技術協力の要素を含んでいます。ブラジルはバスとマイカーが中心で、公共交通としての鉄道は需要があります。まずはブラジルですが、今後、各国の事情を見ながら考えていきます。

 

 ◇安全を根幹に

 

── 社長就任まで4年間、福知山線列車事故ご被害者対応本部長を務めました。その経験をどう生かしますか。

来島 安全性向上は経営の根幹だと認識しています。ご遺族の方々、けがをされた方々の思いに向き合い、私自身が取り組まねばという覚悟です。乗客死傷事故ゼロを基本に据え、昨今はホームや踏切の事故を減らす指標を掲げて取り組んでいます。

 

── 事故から10年以上たつなかで、風化を防ぐ手立ては。

来島 事故後に入社した社員が1万人を超えました。事故の悲惨さを語り継ぐことはもとより、教育訓練によって技能を向上させることを意識しています。研修センター内には事故について学ぶ鉄道安全考動館があります。全社員、グループ会社も含めて事故の教訓を共有しています。

 

── 18年3月までの5年間の中期経営計画は、2年目で収益目標を達成し、計画を上方修正しました。

来島 国内需要増のほか、インバウンド(外国人旅行客)の伸びが大きく、鉄道業を中心に収益が伸びました。財務指標のみならず、安全面や事業創造の目標達成に向けて、着実に進めていきます。

 

── 次の経営計画の方向性は。

来島 当社は発足から30年がたちます。この先の30年を意識して、グループ全体が向かえるような、ありたい姿を明確にしたうえで、一定の期間の数値目標や事業戦略として組み立てたい。人口減や高齢化、過疎化がいっそう進み、厳しい環境ではありますが、成長の可能性は持っていると思っています。

 

── 鉄道とは別の事業も拡大しています。

来島 収益基盤を持続的に確たるものとする必要があります。流通、不動産を中心とした生活関連のサービス事業を重視するとともに新たな事業開拓にもチャレンジしています。

 流通では、駅ナカやホーム上の店舗をセブン─イレブンに転換し、売り上げは1・5倍近く伸びました。不動産ではエリア外にも展開して収益を底上げするため、関東で物件を持つ三菱重工業の不動産子会社に70%出資することを決めました。ホテル事業では、既存のホテルブランドとは別に、ハイクラスの宿泊特化型ホテルを大阪・梅田に建設中です。

 16年3月期の連結売り上げは鉄道業とそれ以外の比率が64対36でした。22年度には6対4まで鉄道業以外の比率を高めたいと考えています。

 

── 16年12月にベンチャーキャピタルを立ち上げました。狙いは。

来島 出資そのものが目的ではありません。技術進化が激しくなるなかで、当社の事業に生かせる技術やノウハウを開拓できればと考えています。スピーディーに動いて成果を共有するため新会社を設立しました。

 

── 鉄道以外の比重が増すなか、グループの全体像をどう描きますか。

来島 鉄道を軸にすることは変わりません。流通や不動産、ホテル事業は鉄道と親和性があります。鉄道をコアに連携する業態の集合体です。

 西日本に住む企業グループとして、地域と一緒に生きていきます。当社だけがもうかればいいというものではありません。地域があって、当社があります。西日本エリアが活性化するために、瑞風はじめ当社がお役に立てることがあると思っています。

(構成=黒崎亜弓・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A JR発足とともに30代がスタートしました。人事部勤労課の副長の立場で労働組合との窓口を3年間務めました。労使関係のルールがないなか試行錯誤でトラブルもありましたが、経験として大きかったと思います。

Q 「私を変えた本」は

A 城山三郎さんの『少しだけ、無理をして生きる』です。自然体では自分の力が伸びない。少しストレッチした目標のもとで常に自分を高めていくという趣旨の章が好きです。

Q 休日の過ごし方

A 最近はジョギングで汗を流しています。

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 ■人物略歴

 ◇きじま・たつお

 山口県出身。下関西高校、九州大学法学部卒、1978年国鉄入社。JR西日本広報室長、人事部長等を経て、2016年6月より現職。62歳。

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事業内容:運輸、流通、不動産業

本社所在地:大阪市北区

設立:1987年4月

資本金:1000億円

従業員数:4万7456人(連結)

業績(2016年3月期・連結)

 売上高:1兆4513億円

 営業利益:1815億円

2017年

1月

17日

経営者:編集長インタビュー 荻野調 財産ネット社長

◇金融投資を民主化したい

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 創業の動機を教えてください。

荻野 財産ネットはフィンテックのベンチャーですが、当社の考えるフィンテックとは「ファイナンス」と「ネットビジネス」の融合です。

 その視点で、大手銀行のネットバンキングなどを見ると、振り込み画面にしても一昔前の作りです。

 一方、アマゾンなどネット通販サイトは非常に使いやすくできています。アマゾンは客単価が数千円、粗利が1割程度、実益は数%でビジネスを回しています。客単価が数千円で回るネットビジネスのノウハウを、株式投資などで数十万円がやり取りされる金融で展開すれば、大きな利益が出せると考え創業しました。

 

 ◇株価動向の予測精度は80%

 

── ターゲット層は。

荻野 資産が3000万円から1億円の人たちです。日本に1000万世帯あり、金融資産は合計500兆円という最大のボリュームゾーンになっています。ただ、富裕層は黙っていても金融機関が寄ってくるので資産ポートフォリオを組めるのに対し、ボリュームゾーンの人々は資産を増やすために株式やFX(外国為替証拠金取引)を始めるのが一般的です。ところが、知識がなく損失を出すケースが多いのです。富裕層との間に情報格差があります。

 また、株や投資信託を買いに証券会社や銀行に行っても、他社の商品を比較検討できない上に、個人情報の提供が必要で、気軽に買えません。実際、証券会社の口座数は2300万ありますが、その多くは使われていません。

 そこで、資産を増やすための方法や有用な情報を提供し、匿名でも簡単に金融商品を比較検討できるサービスを作ることで、金融商品の敷居を低くしたいです。

 

── 具体的なサービスは。

荻野 株価・為替予報サイトの「兜予報」です。スマートフォン向けアプリケーションを含め実際に使っているアクティブユーザー数は月に3万~5万人います。

 兜予報は経済ニュースの相場への影響を可視化します。株では上場企業3000社を対象にしていますが、ニュースが株価に織り込まれるまで1時間程度かかる中小型株が中心です。機関投資家ではなくデイトレーダーに勝算がある時価総額100億~1000億円の銘柄です。

 株価の予測精度はおよそ80%に達します。その秘訣(ひけつ)は大きく二つあります。一つは、メディアや企業が発信する多数の情報のうち、株価に影響のあるもののみを抽出する、当社独自のキュレーション(情報選択)のノウハウです。ニュースの99%は株価に影響がありませんが、残り1%未満に株価を動かす情報があります。これはデイトレーダーが欲しがる情報と言えます。

 もう一つは、抽出した情報が株価にプラスとマイナスのどちらに影響するかを投票するアナリストの存在です。当社専属と外部の約20人の経験豊富なアナリストが集まると、80%以上の確率で株価の方向性を予想できるようになります。人とシステムの強みを融合したサービスです。

 

── どう収益に結びつけますか。

荻野 兜予報では、予測を提供するだけでなく、すぐに証券会社サイトに移動して実際に売買できる仕組みになっています。ユーザーが移動した時点で当社に手数料が入ります。その意味ではネット証券とは競合でなく、共存関係が築けます。

 日本にいる30万~50万人のアクティブトレーダーのうちデイトレーダーは5万人です。少なく見えますが、彼らがネット証券の7~8割の売り上げを占めています。ネット証券は大手5社で3000億円規模なので、デイトレーダーだけで2000億円の売り上げを生んでいます。仮に1万人のデイトレーダーが兜予報ユーザーになれば、中堅証券会社並みの400億円市場で課金ビジネスができることになります。

 

── 「兜予報」の他には。

荻野 2016年夏にサービスを開始した「資産の窓口」です。中流層をターゲットに長期的な資産運用を支援します。匿名性を重視し、年収、年齢、金融資産、ローン残高、株・FXでの収入、不動産の6項目を入力するだけで家計のバランスシートや貸借対照表を割り出し、そこから資産ポートフォリオの将来予測を立てます。

 資産の窓口は、トレーディングをする時間のない人や、兜予報ユーザーの受け皿にもなります。資産の窓口で投資信託の運用が選択肢に挙がったら、そこで各社の商品を比較検討できます。ユーザーが投信会社のサイトに移動したら当社に手数料が入ります。

 

── 検討中のサービスは。

荻野 兜予報のノウハウにより、株価に影響を与えるニュースが出てから、株価に織り込まれるまでのタイミングが高い精度で予測できるようになりました。これはヘッジファンドが最も欲しい情報の一つです。これを「株価織り込み時間予測エンジン」として商品化し、キュレーションによって無駄な情報を除いたデータとともにヘッジファンドに提供するサービスを開発中です。

 

── 今後の経営目標は。

荻野 17年度に単月黒字化を目指します。当社のサービスが利用されるようになれば、これまで情報を持っていた富裕層しか恩恵を受けられなかった金融商品で、日本の大半を占める中流層も資産を増やすことができるようになります。「金融投資の民主化」を実現したいです。

(構成=大堀達也・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A ソニーで数多くの新規ビジネスの立ち上げに携わった後、IT企業では一転、事業の撤退・整理を経験しました。ビジネスの「生き死に」を見たことは大きな経験です。

 

Q 「私を変えた本」は

A 小学生の時に図書館の本をほとんど読破しましたが、多くの本は古代の大哲学者から近代の作家までパターン化されていると悟りました。今は技術書しか読んでいません。

 

Q 休日の過ごし方

A 子供と一緒に料理を作るのが楽しみです。

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 ■人物略歴

 ◇おぎの・しらべ

 1973年生まれ。早稲田大学高等学院、東京大学卒業後、ハーバード大学で修士号取得。98年タイタス・コミュニケーションズ入社。ソニー、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、グリーを経て2015年に財産ネットを設立し社長に就任。

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事業内容:金融情報サービスの提供

本社所在地:東京都港区

設立:2015年3月

従業員数:25人

兜予報の月間アクティブユーザー数:3万~5万人

 

2017年

1月

10日

経営者:編集長インタビュー 磯崎功典 キリンホールディングス社長

◇ビール通じて地域活性化の一助に

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── キリンと言えば日本で知らない人はいないビールのブランドです。

磯崎 当社はビールの製造販売からスタートしましたが、目指しているのは事業を通して世の中の社会課題を解決することです。

 

たとえば、今年、ビールの主力ブランド「一番搾り」では47都道府県ごとに、ラベルや風味を変えた商品を発売しました。ビールを通して、忘れかけた古里やゆかりの地を思い出してもらい、地域の活性化に役立てたいのです。全国9工場で、47の商品を製造しています。工程上、手間もかかります。しかし、「面倒くさい、嫌だ」と言っていては、成熟市場では生き残れません。かつては、全国一律の製法で同じ商品を提供することに価値がありました。しかし、今はお客様は商品に個性を求めています。

 

── 他の取り組みは?

磯崎 健康面での取り組みもやっています。プリン体や糖質をカットした発泡酒などを発売しています。また、グループには医薬・バイオ企業「協和発酵キリン」もあり、パーキンソン病や乾癬(かんせん)向けの薬も開発販売しています。

 

── 事業別のポートフォリオは。

磯崎 営業利益で見ると、飲料・ビール・ワインなどの国内事業、ビールが中心の海外事業、医薬・バイオの3分野でそれぞれ3分の1ずつです。

 

── 2016年から3カ年の中期経営計画の初年度です。手応えは。

磯崎 中計では三つの課題を指摘しました。(1)ビール事業の収益基盤強化、(2)国内飲料・ブラジル事業など低収益事業の再生・再編、(3)医薬・バイオケミカル事業の飛躍的成長です。まずビール事業に言及しているのは、当社の元々のDNAだからです。ビール事業が盤石でないと次の手も打てません。国内をはじめ、ブラジル、豪州、フィリピン、ミャンマーなどで展開しています。

 

── 国内のビール事業の現状は。

磯崎 国内ビール消費は1994年をピークに下がり続けており、成熟市場と言えます。どこに市場があるのか、どこに市場を創るか、を考えるのが重要です。14年からはクラフトビールにも力を入れており、製品販売や飲食店運営で市場を創っています。今年10月には米国・ニューヨーク州でクラフトビールを製造する「ブルックリン・ブルワリー」との資本業務提携も公表しました。

 

── クラフトビールの魅力は。

磯崎 これまでは日本人はビールと言えば、琥珀(こはく)色の苦いタイプばかりでした。このため、若者は「ビールは苦い」と言って離れていきました。しかし、クラフトビールは製法上、ラズベリーやチョコレートなど今までなかった風味を付けることも可能です。私もキリン醸造のパクチー風味クラフトビールを飲みました。話題の素材・パクチーの風味が濃く、お勧めです。若い人は、多少高くても、こうした個性あるビールを飲んでくれます。日本では、クラフトビール消費量は、ビール類全体の1%しか占めませんがいずれは3~5%に持っていきたいです。

 

 ◇ブラジル事業は急回復

 

── 海外ビール事業では、ブラジルキリン社が不振で、15年の最終赤字の元凶となりました。

磯崎 ブラジル事業は急速な勢いで回復しています。私が15年3月に社長に就任して最初に訪問した国がブラジルです。当時のCEO(最高経営責任者)と話して「何も市場を分かっていない」と感じ、後任を外部から招きました。現CEOは市場を熟知しています。製品ラインアップは大きく変えていませんが、売り上げが伸びました。CEOが、お客様を見て何をすればいいのかを考えるという当たり前のことを、非凡なレベルで実行したからです。

 

── 国内飲料会社「キリンビバレッジ」の状況は。

磯崎 国内飲料は過当競争で、過去には営業利益率1・5%(15年実績)と厳しい状況でした。しかし、生茶のリニューアルなどが奏功して今年は5%近いところまで行きそうです。しかし、海外の飲料メーカーは10%です。5%に満足せず、さらに収益性を上げていきたいです。ただ、その目標を達成するには自社の努力だけでは困難です。他社との提携などでコストシナジーを発揮せねばなりません。コカコーラと提携も協議しており、もう一段高い収益性を目指します。

 

── 世界市場では、首位のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)が、2位のSABミラー(英国)を買収し大きな変革が起きています。海外戦略は。

磯崎 豪州は日本同様、成熟市場なのでクラフトビールの割合を増やしていきます。ミャンマーやフィリピンでは、市場の主流となっている、標準的な価格で消費も多い商品の魅力を訴えつつ、高付加価値路線のプレミアム商品も投入していきたいです。

 

── 経営で気を付けていることは。

磯崎 若手社員がおっかなびっくりになっています。何をするにもリスクはつきものです。失敗したら怒るのではなく「もういっぺんやってみろ」と言えるのがリーダーです。今年、社長直轄の事業創造部を創設しました。キリンらしくない、未来を変える事業アイデアを考えるのが仕事です。部長は、かつて缶チューハイ「氷結」の開発にもかかわった45歳の女性で、グループでも若手の部門長です。成果は楽しみですが、私が干渉してはダメで、遠くから見守ります。

(構成=種市房子・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代のころはどんなビジネスマンでしたか

A 米国留学をしました。言葉が通じず苦しいこともありましたが、見るもの、聞くもの全てが新しく、行ってよかったです。

 

Q 「私を変えた本」は

A 『イノベーションのジレンマ』(クレイトン・クリステンセン)。

 

Q 休日の過ごし方

A 出身地の神奈川県小田原市にミカン畑を所有しており、毎週とは言えないまでも、せん定や草取りをしています。今年も40本から2トンを収穫しました。

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 ■人物略歴

 ◇いそざき・よしのり

 神奈川県出身。小田原高校、慶応義塾大経済学部卒業。1977年キリンビール入社。キリンホテル開発、フィリピン・サンミゲル社出向などを経て2008年経営企画部長、10年常務取締役、12年、キリンビール社長。15年3月から現職。63歳。

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事業内容:飲料、食料、医薬品

本社所在地:東京都中野区

設立:1907(明治40)年2月 ※2007年7月に持ち株会社化に伴い商号変更

資本金:1020億円

従業員数:3万9888人

業績(15年12月期:連結)

 売上高:2兆1969億円

 営業利益:1247億円

2016年

12月

27日

経営者:編集長インタビュー 山本明弘 広島市信用組合理事長

◇融資こそ地方創生のロマン

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 投信や生命保険は一切販売せず、預金と融資に特化して業績を伸ばしている金融機関が広島にある。純利益28億円は県内の上場企業47社と比較しても14番目だ。

 

── 広島市信用組合とは一言でいうとどんな金融機関ですか。

山本 中小零細企業に特化した相談しやすい金融機関、リスクテークをする金融機関です。他者に負けないスピードがあります。

 

── スピードとは。

山本 基本的に融資の決済は3日で判断します。支店長と得意先係は毎日融資先を歩き、会社の技術力、成長性、経営者の人間性まで見て、財務状況を常に頭に入れています。この日ごろの活動があればおのずと答えは早くなるのです。

 

── 大口融資となれば本店の決済も必要では。

山本 私は毎朝5時20分に出社し、34支店の支店長日誌すべてに目を通します。6時45分から約1時間の役員会議を開き、融資先を含め、あらゆる情報を共有します。パートを含め職員445人すべての顔が見える。だから即決できるのです。

 

── なぜ融資に特化できるのか。

山本 投信や生命保険を一切販売していないからです。それをやれば職員が説明のために準備や余計な時間が取られる。しかも投信はお客様に損をさせることもある。だから投信や保険は一切販売しないのです。

 もう一つは不良債権をバルクセール(まとめ売り)で徹底的に処理してきました。これをやったおかげで職員は不良債権処理の後ろ向きの仕事に時間が割かれることがない。

 

── バルクセールの実績は。

山本 2001年以来、件数にして2550件、累計で560億円の不良債権を処理してきました。お客様とじっくり話し合って進めたため、トラブルはゼロです。この結果、問題企業の2割弱が再生しました。

 

── 不良債権は激減しましたか。

山本 現在の不良債権比率は2・64%。全国比較でも良好な数値ですが2年前から少し増えました。というのも従来7000万円以上の赤字・繰り越し欠損・債務超過の融資先の査定を今期から4000万円に下げました。基準を厳しくして引当金を積んでおけば、どんな金融危機が来ても対応できるという判断です。

 

 9年前から法人と大口融資先を対象に財務状況などを載せたディスクロージャー誌を職員が手分けして配布するローラー作戦を開始した。その数は1万5000軒。地元では「シシンヨー」の愛称で呼ばれ、この対面の活動が「投信も保険も売らないから安心」と新たな預金の獲得につながるという。

 

── リスクを取る金融機関とは。

山本 取引して2年以上が経過した法人に、最高2000万円までの事業性融資をカードローンで提供しています。金利は9・5%ですが、担保は求めません。もう一つは住宅ローン。年収が300万円前後の人でも人間をよく見て25~30年、1500万~2500万円の住宅ローンを提供しています。金利は2・5~3・5%。多少金利が高くても「家が持てた」と喜んできちょうめんに返済していただけます。

 

 ◇格付けは全国で3位

 

── 今期の業績見通しは。

山本 本業の利益を示すコア業務純益は83億5000万円、当期純利益は29億5000万円で、いずれも過去最高を見込んでいます。

 

── 財務状況は。

山本 自己資本比率は今期末で10・15%を達成する見込みで全国265の信用金庫、153の信用組合の中で3位となるシングルA(日本格付研究所)の格付けです。当組合は社債を発行していませんが、この強固な財務体質で顧客が安心し、大口の預金獲得も可能となるのです。

 

── しかし信組の融資対象は従業員300人以下か資本金3億円以下の事業者に限定されています。

山本 だからこそまだまだ取引していないお客様がたくさんいるのです。地域の金融機関はいま再編や分野統合、異業種連携が活発ですが、それ自体が目的になり、握手をして終わりということになりかねない。

 

 大事なのはその後の経営です。当組合は3年前、広島大学と提携しているバイオ医薬ベンチャーに1億円の融資をしました。この会社が大手製薬会社と提携し、上場も視野に入りました。過去には現在上場している信販会社や大手流通企業に融資してきた実績もあります。誰も振り向きもしない赤字の会社を独自の眼力で見つけ将来にかける。それこそが地域の創生につながる融資のロマンではないでしょうか。

 

── 収益はどう還元しますか。

山本 現在も支店のリニューアルを続け、お客様の利便性を図っています。懸賞金付きの定期預金で預金総額に対し0・3%程度の利益還元もしています。この「ハッピードリーム定期」の残高は2000億円になりました。10月には新入職員の初任給を1万6000円アップしました。地域、法人、預金者、組合員、そして職員に利益を還元するのが我々の役目です。

 

── 課題は何ですか。

山本 人材育成、それしかない。私の後任を含め、職員全員を融資大好き人間に育てていくこと。もう一つは女性の登用です。すでに28人の支店長代理が女性で、42人の女性係長もいます。育児休暇後の復帰率は100%。これも続けていきたい。

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 35歳で支店長になり、融資のことで絶えず本部の審査部と大げんかしていました。担保がなくても「私が確かめたから大丈夫だ」と日々、格闘していました。

 

Q 「私を変えた本」は

A 本ではないですが、新人の頃、得意先係で経験した挫折からの教訓「お金は貸すものではなく、使っていただくもの」という顧客目線の経営哲学です。

 

Q 休日の過ごし方

A 土曜日は半日だけ仕事をします。日曜は完全休養して、ドライブに行ったり、妻と小旅行しています。

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 ■人物略歴

 ◇やまもと・あきひろ

 山口県出身。県立宇部高校、専修大学経済学部卒業。1968年広島市信用組合入組。2001年専務理事、04年副理事長を経て、05年6月より現職。71歳。

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事業内容:信用組合

本社所在地:広島県広島市

設立:1952年

出資金:185億円(2016年9月30日現在)

職員数:414人(16年9月30日現在)

業績(16年3月期)

 コア業務純益:82億7300万円

 当期純利益:28億6600万円

2016年

12月

20日

経営者:編集長インタビュー 辻範明 長谷工コーポレーション社長

◇大手がやりたがらない分野にこそ存在意義

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 「マンションのことならわかるんだ」というCMが印象的です。

辻 マンション造りの企画、開発、設計、建設、販売、管理とすべてに携わっています。ゼネコンは主に工事までですが、管理を担うことで、住み心地や間取りの使い勝手のよさといった顧客からの評価を直接聞くことができる。それを次に生かして、より安心、安全で快適なマンションを提供しています。

 

── マンションに特化しています。

辻 当社施工の第1号マンションは1968年着工です。当時マンション価格は高く、ごく一部のお金持ちしか買えませんでした。価格を抑え、品質は高い一般向けを普及させようと取り組んできた結果、「民間の日本住宅公団(現都市再生機構〈UR〉)」という評価をいただくまでになりました。施工数は累計59万戸、全国のマンション戸数の1割に当たり、国内最多です。

 

── 受注も多いそうですね。

辻 今期の受注は、大手不動産会社を中心に約2万3000戸の見通しです。

 実はCMについて、株主から「大手デベロッパーのようにかっこいいものを」と指摘を受けました。しかし当社は請け負う側なので、大手のブランドイメージを超えることが狙いではありません。建設会社として、真面目にやっているということを伝えたかった。出演しているボクシングの元世界チャンピオンの内藤大助は、以前私の直属の部下でした。ほかの出演者もほぼ全員が社員です。製作費を抑えるという理由が大きかったのですが(笑)、結果的に社員のやる気にもつながりました。

 

── 低価格と安定した品質で「マンションのユニクロ」とも呼ばれています。

辻 建設の現場を担う協力会社のおかげです。当社は設計から施工まで行っており、工事のやり方が常に一定です。そのため当社の手法に慣れた会社と長く付き合うことができ、結果的にコストを抑えることができます。また、現在当社が施工中のマンションは約3万9000戸あり、うち半分は今年度に竣工(しゅんこう)します。常に2年先まで見据えて仕事ができるので、腕のいい職人を確保しておけるのです。そのサイクルによって、どこにも負けない品質を保っているという自負があります。

 

 バブル期にデベロッパー路線で多額の負債を抱え、倒産危機に陥った。金融機関の支援を受けて経営再建に取り組み、2007年3月期に過去最高の連結経常利益630億円を計上したものの、リーマン・ショックで再び資金繰りが悪化するなど多難続きだった。

 

── 苦しい時期を乗り越え、3期連続の増収増益です。

辻 繰り返しになりますが、協力会社との信頼関係のおかげで、コストを抑えて再建に取り組むことができました。16年3月期は売上高7873億円、経常利益673億円でした。今期の計画はそれぞれ8000億円、840億円です。既築物件の管理、修繕の「ストック市場」に力を入れていますが、経常利益の大部分が新規建設の「フロー」によるもので、そこが課題です。来年2月11日に創業80周年を迎えるため、社員一丸となって過去最高の売り上げを目指しています。

 

── 好調の要因は。

辻 東京五輪やアベノミクスの影響で、大手ゼネコンが公共事業や民間の高層ビル事業にシフトし、大規模マンションを手がけられる会社が減ったことが大きい。関東圏のシェアをみると、今年4~9月の供給数1万6737戸のうち、当社の施工数は6419戸と38・4%を占めています。1棟100戸以上の大規模物件では、シェア55%です。マンション専業として、力をつけてきたことが生きていると思います。

 

 ◇ストック事業も柱に

 

── 超高齢社会に入り、マンションの空室問題も深刻化しています。新しい社会状況にどう対応しますか。

辻 ストック市場が鍵になります。また、国が「空き家の有効活用」を打ち出しており、リフォーム需要が見込めます。

 建て替えにも積極的に取り組んでいきたい。建て替えは基本的に区分所有者の全住民の合意が必要で、取り付けるのに10年かかることも珍しくありません。手間がかかり、デベロッパーは手をつけたがらない。当社はこれまで、33棟の建て替え実績があり、国内トップです。

 そのほか、現在首都圏、近畿圏を中心に41カ所、約2500戸を展開している介護マンション事業にさらに力を入れていきます。

 

── 他業種から参画して成功が見込めますか。

辻 簡単に事業として成立するとは思っていません。しかし、介護は日本にとって喫緊の課題です。国を挙げてもっと真剣に考えるべきです。施設を造って運営し、失敗も経験としながら、10年後には国に提言できるような企業を目指したい。

 マンションは完璧で当たり前ということもあり、顧客からのクレームが絶えません。オフィスビルなどと比べて利益率も低く、専業の会社が育ってきませんでした。そんな中、当社は大手がやりたがらないことに取り組んで、存続してきた企業です。他社と同じことをやるだけでは、「長谷工」という会社は存在意義がないと思っています。その思いで、介護も必ず事業の柱に育てます。

(構成=酒井雅浩・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 30代半ばで京都支店の支店長を任され、部下が200人いました。種をまいた飛び込み営業が次々に結果につながり、寝ずに酒を飲んでも数字が出て、「天下無敵」とうぬぼれていた時代です(笑)。

 

Q 「私を変えた本」は

A 本ではないのですが、組合活動に携わり、膝を突き合わせて人と向き合うことの大切さを学んだことです。

 

Q 休日の過ごし方

A ゴルフです。取引先がほとんどなので、休みとは言えません。純粋な休みは年に片手(5日)もありませんが、妻の買い物に付き合っています。

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 ■人物略歴

 ◇つじ・のりあき

 岡山県出身。金光学園高校、関西大学法学部卒業。1975年長谷川工務店(現・長谷工コーポレーション)入社。99年取締役、2010年代表取締役副社長、長谷工アネシス代表取締役社長などを経て、14年4月より現職。63歳。

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事業内容:マンション建設

本社所在地:東京都港区

設立:1946年8月

資本金:575億円(2016年9月30日現在)

従業員数:2380人(16年9月30日現在)

業績(16年3月期・連結)

 売上高:7873億円

 営業利益:687億円

2016年

12月

13日

経営者:編集長インタビュー 長門正貢 日本郵政社長 2016年12月13日号

◇地方自治体と同じ感度で地域のニーズに応える

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 日本郵政の2016年9月中間連結決算は最終(当期)利益が前年同期比3割減でした。

長門 前年同期には(子会社の)日本郵便で保有株式の売却による特別利益があったことなどを勘案し、もともと厳しい営業計画を立てていました。その意味では順調という評価ですが、日本郵政グループの経営課題が凝縮して現れた決算でもあります。

 

減益要因は大きく三つ。一つ目は、上場に伴って日本郵政が保有するゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式11%を売却し、日本郵政に帰属する純利益がその分、減少したことです。

 

ゆうちょ、かんぽの株式は今後も売却するので、この減少分をどう補っていくかが課題です。二つ目は、日銀が16年1月に導入を決めたマイナス金利政策の影響で、ゆうちょ、かんぽの運用益が下がっています。三つ目は日本郵便の業績が落ちていること。株式売却の特別利益がなくなったほか、(15年5月に買収した豪物流事業の)トール・ホールディングスが期待通りの業績を上げられていません。

 

── どう対処していきますか。

長門 一つはゆうちょ、かんぽの運用の深掘り(収益力の強化)です。ゆうちょの保有資産は他の銀行に比べても内容が良く、まだリスクを取ることが可能です。そこで、未公開株ファンドやヘッジファンド、不動産というオルタナティブ(代替)資産への投資も始めました。こうしたオルタナティブ投資を含め、サテライト・ポートフォリオ(社債、外国証券、株式など)の残高は16年9月末現在ですでに64兆円と、中期経営計画(15~17年度)の最終年度の目標60兆円をクリアしています。

 

── リスク管理も重要ですね。

長門 ゆうちょの運用部門では15年、元ゴールドマン・サックス証券副社長の佐護勝紀氏を副社長とするなど、積極的に専門人材を外部から採用する一方、16年1月には「リスク管理部門」を新設し、担当の専務を置くなどしてリスク管理も強化しています。かんぽはゆうちょほど運用の切迫度は高くないため、取り組みはゆっくりですが、方向性はゆうちょと同様です。こうした手をすでに打っているので、いずれ収益は底上げされるでしょう。

 

 官民挙げた15年11月の上場時、日本郵政、ゆうちょ、かんぽとも売り出し価格を大幅に上回る初値を記録し、市場は大きく盛り上がった。しかし、16年に入って世界経済への懸念が広がると、一転して下落基調に。着実な株価上昇に対する株主の期待は高い。

 

 ◇タンス預金を動かした

 

── 3社の上場で初めて株を買った個人も多いと聞きます。

長門 郵便局には145年の歴史があり、141年前からは貯金も集め出しました。かんぽは16年10月、100周年を迎えています。こうした歴史に親しみを覚えていただき、中にはまさにタンス預金となっていた聖徳太子の旧1万円札で、株を買った人もいたと聞きます。郵便局は全国津々浦々に2万4105局(16年9月末)あり、ゆうちょ、かんぽは国内最大の銀行、保険会社です。郵政民営化は一大国家プロジェクトで、非常に国民から期待されている仕事だと感じます。

 

── 手数料収入確保も課題です。

長門 ゆうちょでは、三井住友信託銀行などと合弁で設立した運用会社「JP投信」が16年2月、投資信託の新商品の販売をスタートしました。誰にでも分かりやすく損をしにくい商品を開発したのですが、そのうち1商品はマイナス金利の影響で販売をあきらめました。ただ、国内全体の投信残高は落ちている中で、ゆうちょでは1兆1628億円(16年9月末)へと増えています。

 

市場環境の悪化もあり簡単に投信の残高は伸びませんが、16年は準備期間と位置づけています。お客様にまずは投信口座を開いてもらおうと、営業現場に口座開設のインセンティブをつけることも始めました。また、10月からは、ATM(現金自動受払機)の口座間送金を4回目以降から有料としましたが、できるだけお客様にご迷惑をおかけしない範囲で手数料収入を増やしていきたいと考えています。

 

── トールはどう立て直しますか。

長門 天然資源の豊富な豪州で、資源価格の下落がトールの業績にも影響しています。しかし、日本国内の市場では収益機会が減っており、成長するアジア太平洋地域で勝負していかなければならず、トールの買収はそのために打った手の一つです。(日本郵政の提携先の)イオンが扱う豪州のタスマニアビーフを日本に輸送する際にトールを使ってもらうなど、収益向上や経費節減の取り組みを現に始めており、業績立て直しに向けて行動で示していきたいですね。

 

── グループ43万人の従業員にどのような意識改革を訴えますか。

長門 カスタマー、コミュニティー、カンパニーという「3C」のための意識を浸透させたいと思っています。お客様はやっぱり神様で、顧客のニーズがあるところに仕事があります。また、郵便局は地域に根ざしており、地方自治体と同じような感度で地域のニーズを捉え、それに応えていくことも大切です。さらに、企業として競争力がなければ評価もされません。数字に厳しく、事業の選択と集中を通していい業績を求めていきます。皆が同じ方向を向いて進むため、3Cを言い続けるつもりです。

(構成=桐山友一・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 米南部ヒューストンで、資源関係の顧客開拓のため興銀の事務所を立ち上げました。その後、中国で初のプロジェクトファイナンス案件を担当し、涙が出るほど楽しかったです。

Q 「私を変えた本」は

A 『アメリカにおける秋山真之』(島田謹二著)です。『ニュー・エンペラー 毛沢東とトウ小平の中国』(ソールズベリー著)は読み物として絶品です。

Q 休日の過ごし方

A 土曜午前はジム、午後は老人ホームに入った母と散歩。日曜はひたすら雑誌や新聞を読んでいます。

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 ■人物略歴

 ◇ながと・まさつぐ

 東京都出身。学習院高等科、一橋大学社会学部卒業。1972年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。みずほコーポレート銀行常務執行役員、富士重工業副社長、シティバンク銀行会長などを経て、2015年5月にゆうちょ銀行社長。16年4月から現職。68歳。

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事業内容:日本郵政グループの経営戦略策定

本社所在地:東京都千代田区

設立:2006年

資本金:3兆5000億円

従業員数(常勤):25万876人(16年3月末現在・連結)

業績(16年3月期・連結)

 売上高:14兆2575億円

 営業利益:9662億円

 

2016年

12月

06日

経営者:編集長インタビュー 呉文精 ルネサスエレクトロニクス社長 2016年12月6日号

◇買収で自動運転やIoT分野を強化

 

◇Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 半導体業界におけるルネサスの特徴は。

 半導体の中でも、人間の頭脳に相当する「マイコン」を中心に設計・製造する日本で唯一の会社です。三菱電機、日立製作所、NECの三つの会社の半導体部門が一緒になってできました。半導体を含めた日本の電機業界は、製品のデジタル化が進むなかで、新興国の追い上げに苦戦しているところが多い。当社は、積極的にマーケティングして、特定の分野で付加価値のある製品を作っていきたいと考えています。

 

── 米半導体のインターシルを買収しました。

 シナジー(相乗効果)は非常に明確です。我々は汎用(はんよう)のマイコンに強い。彼らは電圧制御用の半導体やアナログ信号をデジタル信号に変換するミックスシグナル半導体に強い。車が自動運転になると、どんどん電力を消費します。だから、省電力、低発熱で車を制御する電圧制御用の半導体の存在が低燃費につながります。

 

また、ミックスシグナルについては、現実の世界をマイコンが判断するためには、レーダーやカメラ、圧力センサーなどからのアナログ情報をデジタルに転換し、マイコンで演算後、再び、アクチュエーター(駆動装置)にアナログ情報として戻す必要があります。買収で当社はその両方を手に入れました。

 

── 2011年の東日本大震災時は、工場の被災で、世界の自動車生産に影響を及ぼしました。

 ご迷惑をお掛けしましたが、それだけ当社が必要とされていることの表れだとも思います。自動車用のマイコンでは世界トップシェアですが、実は売り上げや利益は自動車向け以外からの方が多い。例えば、プリンターやエアコン、冷蔵庫用のMCU(メモリー制御装置)でも世界トップシェアです。難しいことをする頭脳部分なので、他社の半導体では簡単には置き換えできません。この教訓を受け、今年の熊本の震災では熊本工場が被災しましたが、5年前と比べはるかに早く復旧しました。

 

── 製品のポートフォリオは、今後、どのようにしていく考えですか。

 当社の売り上げは、分野別では自動車向けが全体のほぼ5割弱を占めます。残りは産業機器やオフィス機器向けです。しかし、特にどちらに比重を置いていくか考えていません。自動車は主要顧客がはっきりしており、戦略や技術は明確です。ただ、自動運転などの分野は、自動車メーカーと共同開発してから量産に至るまで費用が先行し、収益化するのに時間がかかります。一方でプリンター向けなどのビジネスは、今日の収益につながります。そのバランスを考えながら経営する必要があります。

 

だから、モノをインターネットにつなげる「IoT」、白物家電、オフィス機器、通信基地局などの産業向けは積極的にやっていこうと思います。携帯電話やゲーム機向けなどの浮き沈みが激しいところは撤退の方向です。

 

 ◇人工知能をチップに

 

── 自動運転やIoTへの具体的な対応は。

 両方とも非常に面白いと思いますが、ある意味、太平洋にこぎ出すような話で、片っ端から手がけるわけにはいきません。自動運転は、車単体ではなく、車同士、あるいは車と街が通信していくようになると、規格の標準化が非常に大事になってきます。日本はここが得意でないので、「ガラパゴス」にならないよう、注意しながらやっていきたいと思います。

 

IoTで今注力しているのは、ユーザーの近くにサーバーを分散し、通信遅延を短縮する「エッジコンピューティング」や人工知能をチップに埋め込む「エンベデットAI(人工知能)」の分野。例えば工場の機械で異常な振動が出て、すぐに止めないといけない場合、いちいち、クラウドのサーバーまで戻り、命令を受けていたら、間に合いません。だから、チップの中にAIの膨大なデータを埋め込む。そうすると、指先に頭脳があることになり、末端だけで物事を判断できます。今後、こうした分野に力を入れようと思います。

 

── 今後の買収の計画は。

 まずは、インターシルの買収後の統合をしっかりとやり遂げます。今後の買収については、IoT、製造業の高度化を目指す「インダストリー4・0」、自動運転がキーワードになります。無線・通信の分野、あと暗号化などのセキュリティー技術は面白い。将来的には、エクイティファイナンス(新株発行を伴う資金調達)を視野に入れながら、次の買収を考えていきたいです。

 

── 成功する経営のコツは。

 本社の大きな戦略、意思決定のプロセスや基準を明確に示すことです。右なら右と決めたら、そちらの方向で自信を持って進む。やると決めたら優勝を狙うことです。また、グローバル経営に踏み出すのですから、海外の人の立場を理解できないとうまくいきません。

 

── 産業革新機構が筆頭株主です。出口戦略については。

 産業革新機構が保有する当社株について、コメントする立場にはありません。ただ、私から革新機構に申し上げたいのは、ルネサスはマイコンという半導体の頭脳部分を持っている唯一の日本企業と言うことです。こういう産業を日本に残せるかどうかは、重要です。

(構成=稲留正英・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 日本興業銀行(現みずほ銀行)のニューヨーク支店にいました。帰国後は興銀証券で、グローバル債券の引き受けや資源開発のプロジェクトファイナンスを担当しました。

 

Q 「私を変えた本」は

A ジム・コリンズの『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』です。データに基づいているので、学んだことが多いです。

 

Q 休日の過ごし方

A あるようでありません。今の仕事が非常にチャレンジングなので…。

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 ■人物略歴

 ◇くれ・ぶんせい

 東京都出身。神奈川県栄光学園、東京大学法学部卒業。1979年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年GEフリートサービス社長、08年カルソニックカンセイ社長、13年日本電産副社長を経て、16年6月より現職。60歳。

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事業内容:半導体の設計・製造

本社所在地:東京都江東区

設立:2002年11月

資本金:100億円

従業員数:1万9160人

業績(2016年3月期・連結)

 売上高:6933億円

 営業利益:1038億円

2016年

11月

29日

経営者:編集長インタビュー 落合寛司 西武信用金庫理事長 2016年11月29日特大号

落合 寛司 西武信用金庫理事長

 

◇「雨の日に傘貸す」協同組織金融機関目指す

 

Interviewer 金山 隆一(本誌編集長)

── 西武信金はどのような金融機関ですか。

落合 「利用者保護」が基本理念である協同組織金融機関の働きを最大限に追求した、コンサルティング機能を持つ金融機関です。顧客の課題を徹底的に解決します。

 

── なぜ、「コンサル」なんですか。

落合 日本は今、二つの大きな変革期にあります。まず、世界経済の主役が先進国から新興国に変わりました。二つめは少子高齢化です。このような変革期は、これをチャンスにできる企業と、ピンチにする企業がはっきりと分かれます。だから、コンサルが必要です。 

── 具体的にはどのように課題解決を支援しているのですか。

落合 例えば、中小企業の半分が海外進出で失敗しています。そこで、当金庫は、ベトナムの工業団地に出資をしています。団地には、進出した中小企業へのコンサル機能があり、材料の購入や現地社員の採用などについてアドバイスします。また、人材のマッチングもしています。一例を挙げると、中小企業にベトナム人の留学生を紹介し、3年間徹底的に教育したうえでベトナムに社長候補として送り込んでもらいます。

 

── 国内向けは。

落合 取引先を紹介するビジネスマッチングが一番多いです。年間6500件紹介しています。企業が一番欲しいのは売り上げです。だから、紹介すると、多くの顧客は元気になります。また、変革期ですから、企業はビジネスモデルを変える必要があるので、その支援をしています。ただ、経営者には、「自分で変えないでください」と話しています。

 

── なぜですか。

落合 会社を良くしようと一生懸命努力した結果が、今ですから。だから、第三者の専門家に見てもらうのです。当金庫は、東京大学や中小企業診断協会など外部の組織と連携し、3万人のネットワークがあります。ゴルフのフォームと同様、欠点や長所は第三者が一番よく分かります。

 

── 不動産賃貸向けの融資も前年比17%増と大きく伸びています。

落合 地域を活性化するためです。これから、不動産は「持たざる」時代に入ると考えています。少子高齢化で東京などの一部都市を除いて、日本の不動産価格は下がるでしょう。不動産は賃貸が中心になる。だから、遊休不動産を持っている人に、賃貸物件用の貸し出しをしています。

 これは、資産管理対策にもなります。日本の相続税率は世界最高の55%です。何もしなければ、保有不動産の半分以上が税金に消えます。だから、例えば、八百屋の店舗の上に賃貸物件を作ってもらいます。家賃が入れば、本業も強化できます。

 

◇「ブティック」目指した

 

── 業績はどうですか。

落合 2016年3月期は、貸出金が1232億円増えましたが、今年

度は1600億円伸びそうです。預貸率は昨年度は76%ですが、今年度は現時点で78%。なぜなら、顧客が元気だからです。元気になれば食欲が出るように、企業もお金が必要になります。不良債権も減ります。昨年度の不良債権比率は1・74%と、業界平均の6%の3分の1以下です。前期の当期利益は74億円ですが、日本で初めて正常債権に42億円の引当金を積んだので、それを除くと、実質的に110億円強になります。

 

── 正常債権になぜ、引当金を積んだのですか。

落合 顧客を潰さないためです。リーマン・ショックのような大きな経済変動が訪れると、中小企業はすぐ赤字になります。債務超過になると「破綻懸念先」に分類され、貸し出しが実行できなくなる。ですが、あらかじめ、引当金を計上していれば、いざというときにお金が貸せる。要は「雨の日に傘を貸す」真の協同組織金融機関を目指すための体制を作っているのです。

 

── なぜ、ほかの金融機関はまねができないのですか。

落合 我々は「百貨店」ではなく、「ブティック」を目指しました。メガバンクが一番不得意なのは、顧客の戸別訪問など、手間がかかることです。しかし、非効率な戸別訪問もコンサルにより付加価値を高めると「効率」に変わります。ただ、そうは言っても、これを運営する従業員が元気でないと、実現できないので、人事制度を改革しました。

 

── それは、いつからですか。

落合 私が理事長に就任した2010年以降です。徹底的に個人の潜在能力を生かす体制にしました。まず、年齢による定年を無くしました。60歳を過ぎても、昇進や昇格は今までと全く同じで、自分が能力の限界を感じるまで勤められます。中途採用も年齢の制限はありません。これまで採用した人の最高齢は70歳です。他の金融機関で肩たたきにあった55歳くらいの人も結構入庫しています。今、どんどん出店しているので、この人たちは1〜2年で支店長になります。また、新人も支店長のポストを目指して立候補し、社内の試験に合格すると、いきなり支店長になれます。

 

── ITを活用した金融サービスの「フィンテック」の取り組みは。

落合 決済サービスを提供するベンチャー企業の「コイニー」(東京・渋谷区)と業務提携しました。スマホでクレジットカード決済ができるので、これを、地域の商店街に導入しようと考えています。2020年に東京でオリンピックがあるのですから、商店街に免税店があってもよいはずです。

 

◇横 顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 金融業に必要なコンサル業務を職場内や顧客に提供する仕組み作りに努力していました。

Q 「私を変えた本」は

A 本ではないですが、小学校の時、同級生の女の子の死をきっかけに、二度と無い今を真剣に生きようと考えました。「前向きな心」が大好きな言葉です。

Q 休日の過ごし方

A ガーデニングをしています。面倒を見ればすぐに結果が出るのが好きです。

(構成=稲留正英・編集部)

 

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 ■人物略歴

おちあい かんじ

神奈川県出身。神奈川県立津久井高校、亜細亜大学卒業。1973年西武信用金庫入庫。2002年常勤理事、05年専務理事を経て、10年6月より現職。66歳。

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事業内容: 金融業

本店所在地:東京都中野区

設立: 1969年6月

資本金:1173億円(2016年3月期・連結)

従業員数:1192人(9月30日時点)

業績(2015年度)

 経常収益:317億円

 

 当期利益:74億円

2016年

11月

22日

経営者:編集長インタビュー 新野良介 ユーザベース社長 2016年11月22日号

新野良介 ユーザベース社長 

 

◇ビジネス情報プラットフォームの世界標準目指す

 

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── ユーザベースはどんな会社ですか。

新野 日本発のビジネス情報のプラットフォームとして、世界に通用するものを作り出すことが目標です。

 

インターネットの普及に伴い、一般ユーザー向け情報プラットフォームは、グーグルなどの検索エンジンからフェイスブックなどソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)へと劇的に変わりました。

 

一方でビジネス情報に目を転じると、使いやすいものが少ない。例えば、世界企業の中での時価総額ランキング一つとっても調べるのは大変な作業です。業界における企業の位置づけなど重要な情報なのに収集が難しいというストレスを、技術革新によって解決したいのです。

 

── ユーザベースが考えるビジネス情報とはどのようなものですか。

新野 株価や為替、企業の合併・買収(M&A)といったものだけではありません。例えば、ある企業へのインタビュー記事を読んだことがきっかけで志望する学生がいます。そうした自分の人生で下す決断に影響を与えるような経済情報です。

 

2002年に大手商社に入り食品部門を担当していた新野氏は、プレゼン向け資料の作成に膨大な時間がかかることを疑問視、ユーザー側に立った情報プラットフォームの必要性を感じていた。外資系証券会社に転職後、梅田優祐氏(現ユーザベース共同経営者)と意気投合し、08年、数人の仲間とマンションの一室でユーザベースを立ち上げた。翌09年には「SPEEDA」(スピーダ)の提供を開始。創業8年目の今年10月21日には東証マザーズに上場を果たす。

 

── 主力の情報プラットフォームの内容を教えてください。

新野 法人向けのスピーダと、子会社が運営する一般向けニュースサイト「NewsPicks」(ニューズピックス)の二つです。法人向けと一般向けの両方のプラットフォームを持つことが当社の強みです。

スピーダが提供する情報は、(1)世界200カ国以上、上場・非上場合わせ約380万社の企業情報、(2)550のカテゴリに分類した業界情報、(3)企業のM&A情報の3種類です。各社がどんな戦略を取っているかといった情報を集約して表示します。株式トレーダーに特化したデータベースのような狭い範囲の経済情報でなく、より広い範囲を対象とした基礎リサーチのツールとして顧客に認知されています。

一方、ニューズピックスの特徴は「ソーシャル」、つまり一方的なニュース配信でなく利用者も情報を発信できる点です。一人一人が発信者になれるのがネットの強み。例えば、利用者の意見それ一つでは影響力は小さいですが、それに同意や反対意見を加えることで、世論が形成されていくこともあります。

 

── 配信するビジネス情報はどう集めていますか。また、差別化は。

新野 スピーダは経済データを配信している国内外の約50の企業と提携しています。情報を提供してもらうと同時に、相手が持つ情報のマネタイズ支援も行います。加えて、自社独自のコンテンツも作っています。ニューズピックスも自前の記者がいます。

既存の法人向けサービスを見ると、データ量で勝負しているものが多く、一般向けのさまざまなプラットフォームほど使い勝手がよくないと感じていました。そこで「ユーザビリティー」(利用者の使いやすさ)に価値を転換し、ほとんどの情報はスピーダで取れるという「ワンストップ」を目指しました。

スピーダは企業情報の地図のようなもので、例えば、ある国のある業界を知りたいとき、企業のデータやニュースのほか、さらに深い情報を得たいときに、誰にアクセスすればいいかといった情報も提供します。

 

◇アジアでトップを目指す

 

── 売り上げ構成は。

新野 16年12月期は、およそ30億円の売り上げを見込んでいます。うち20億円がスピーダ、10億円がニューズピックスという内訳です。スピーダの加入ID数は国内外で約1400。売り上げの9割は国内で、残り1割が海外です。業種別に見ると一般企業が35%、銀行、証券会社、コンサルティング会社といった、プロフェッショナルファームが65%です。

 

ニューズピックスの収益源は主に三つあります。一つ目は現在、約2万人の会員がいる月額1500円の有料サービスで、これが3分の1を占めます。二つ目は企業のブランド広告、三つ目はニューズピックスを使った求人サービスです。

 

── 海外展開を含め、今後の戦略を教えてください。

新野 スピーダにとって最大の市場は、経済規模が圧倒的に大きい米国だと考えています。ただ、競合するプレーヤーも多く競争も激しいので際立った力が必要です。

現在、アジア市場でシェアを伸ばせているのは、日本のビジネス情報でナンバーワンという位置づけを取れたことが大きいと思います。スピーダの試用版への海外からの問い合わせでは、香港、シンガポールに次いで多いのが米国です。つまり、アジア情報でナンバーワンになることが米国に進出する際の最大の差別化要因になります。まずはアジア市場を押さえることが、次の展開につながると考えています。

(構成=大堀達也・編集部)

 

◇横顔

 

Q 20代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 30歳までに起業することが目標だったので商社に入り、起業がしやすい小さい商材を扱う生活産業分野で経験を積みました。

Q 「私を変えた本」は

A リカルド・セムラー著『セムラーイズム』、ケネス・クラーク著『ザ・ヌード』、共和政ローマ期の政治家カエサルの自伝『ガリア戦記』です。

Q 休日の過ごし方

A ジムに通っています。

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 ■人物略歴

 ◇にいの・りょうすけ

 1977年生まれ。暁星国際高校、慶応義塾大学卒業後、2002年三井物産入社。UBS証券を経て08年にユーザベースを設立し、共同経営者に就任。

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事業内容:ビジネス情報プラットフォームの運営

本社所在地:東京都渋谷区

設立:2008年

資本金:23億300万円

従業員数:178人(8月31日時点、ニューズピックス含む)

業績(2015年12月期・連結)

 売上高:19億1500万円

2016年

11月

15日

経営者:編集長インタビュー 大野直竹 大和ハウス工業社長 2016年11月15日号

◇「戸建ての心」で顧客と長い付き合いをする

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 現在の主力事業は何ですか。

 

大野 もともとは戸建てを中心に出発しましたが、今では、賃貸住宅・商業施設・事業施設の建設・運営をするコア3事業が連結売上高の6割以上を占めるようになりました。しかし、「戸建ての心」は忘れていません。戸建ての特性は、「顧客の夢を我々が預かる」こと。建物の完成後も、何十年も顧客とお付き合いします。この「戸建ての心」を持って、賃貸住宅・商業施設・事業施設を展開しています。

── どのように「戸建ての心」を生かしているのですか。

大野 たとえば、賃貸住宅はどんなに大きなものでも2~3年で完成します。しかし、オーナーは住宅を貸して家賃収入を得ることが目的ですから、我々の役割は建物の完成で終わるわけではありません。オーナーには賃貸事業がうまくいくかが最大の関心事です。そのため、たとえば、入居者からアンケートをとって、どのように建物を評価しているかを検証しながら次の商品開発に生かしています。これは戸建てメーカーでなければなかなかできない発想です。

 

── オーナーにはどう対応していますか。

大野 当社はオーナー会を作って、建物の完成後も経営がうまくいっているかをチェックします。仮に部屋が空いてしまった場合は、募集を掛け、空き部屋がゼロになるまでお付き合いします。オーナー会は全国に2万人の会員がいますが、時々「大和ハウスほど面倒見が良い会社はない」と言ってくれます。我々としては大変うれしい言葉です。

 

── 商業施設はどのような経緯で始めたのですか。

大野 今から40年ほど前、創業者の石橋信夫が、自動車社会の到来で消費者が車で商業施設に行って買い物をする時代になることを予想し、事業をスタートしました。最初は土地を購入して建物を造るやり方でしたが、それでは創業間もない企業は資金負担できません。そこで、道路沿いに土地を持っている地主と、店を持ちたいテナントを仲介する仲人の役をしていきました。我々が地主から建物の建設を請け負い、テナントには毎月の賃料を払ってもらう。地主は自分の土地を売ることなく、資産として運用できます。

 

── どんな会社がテナントですか。

大野 有名なところでは、「ユニクロ」のファーストリテイリングの郊外店舗の8割は当社が手がけています。紳士服の青山商事やコンビニエンスストア、ドラッグストアと非常に多くの顧客がいます。「とにかく長いお付き合いをする」ことが基本です。

 

── テレビコマーシャルで「物流施設の大和ハウス」というイメージも定着しています。

大野 物流施設などが主体の、新たな手法を用いた事業施設は15年前から開始しました。食材を加工できる食品物流倉庫やeコマースで即日配送に対応する物流倉庫と、倉庫の役割はどんどんと変化しています。当社の強みは、相場より少し低い賃料を提供しながら、テナントと長期契約を結んでいることです。テナントの8割は長期です。我々のやり方が正しいと思ったのは、2008年のリーマン・ショックの時。圧倒的な業界ナンバーワンの外資系企業が経営破綻しました。しかし、当社のテナントは長期契約でしかも優良企業ばかりなので影響は最小限でした。

 

 ◇売り上げ目標は前倒しで

 

── リーマン・ショック前の営業利益は900億円弱でしたが、16年3月期は2400億円強です。

大野 商業施設、事業施設などは時代を先取りしていたと思っています。私は営業本部副本部長、本部長を経て社長になりましたが、就任する1年前から、事業拡大へ手応えを感じていました。まず、地方での営業をかなり重視しました。関連事業も賃貸住宅・商業施設・事業施設のコア3事業を助けるような形で伸びてきました。人事もさまざまなことを考え手を打っています。

 

── 18年度を最終年度とする中期経営計画が始まりました。

大野 消費税率の10%への引き上げを前提に計画を組んだので、今では、少し保守的な目標ではないかと思います。政府・日銀の低金利政策も追い風となり、18年度の目標売上高3兆7000億円は、前倒しで達成したいです。コア3事業とその周辺事業で伸ばしていきます。たとえば、当社の建設した賃貸住宅を管理している大和リビングは、インターネット配信などの付帯ビジネスによって売り上げを伸ばすことができます。

 

── 米住宅会社スタンレー・マーチンの買収を発表しました。海外展開はどうですか。

大野 最終年度に2000億円を目指しています。国内での人員配置で手いっぱいで、海外への人材の供給が足りないなか、がんばってもらっています。今までは中国の分譲マンション開発が中心でしたが、これからは米国での賃貸住宅事業や、東南アジアでの事業用のレンタル工場やレンタル倉庫などを伸ばしていきたいと考えています。

 

── 社内でのコミュニケーションをどのようにとっているのですか。

大野 私は営業本部の副本部長と本部長を合わせて7年ほど務めました。当社には全部で80以上の支店がありますが、そのほとんどの支店長とはツーカーの間柄です。だから、何か問題があった時は、コミュニケーションが電話1本で可能です。支店に出かけると、社員たちと酒を酌み交わします。とにかく、現場の声を聞くことがものすごく大事です。これは、「戸建ての心」を持つこととも通じます。

(構成=稲留正英・編集部)

 

 ◇横顔

Q 社長業とは

A 世の中をしっかり見ながら明確な考えを持ち、自分自身に収れんしていく存在です。

Q 「私を変えた本」は

A 司馬遼太郎の『坂の上の雲』。『ノルウェイの森』の村上春樹も好きです。

Q 休日の過ごし方

A 映画や野球、芝居を見たりと、できるだけストレスのかからない過ごし方をしています。

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 ■人物略歴

 ◇おおの・なおたけ

 愛知県出身。愛知県東海高校、慶応義塾大学卒業。1971年大和ハウス工業入社。2000年取締役、07年副社長を経て、11年4月より現職。68歳。

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事業内容:戸建て・賃貸住宅、商業・事業施設の建設・運営

本社所在地:大阪市北区

創業:1955年

資本金:1617億円

従業員数:3万9736人(2016年6月末現在・連結)

業績(16年3月期・連結)

 売上高:3兆1929億円

 営業利益:2431億円

 

 

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