◇銀行アナリストから文化財修理に
聞き手=小林剛
(編集部)
文化財修理会社のトップに就いた英国人経営者の目には日本の文化財業界、行政はどう映っているのか。日本の観光業のあり方にも話は及んだ。
◇「若い人を育成するため全員を正社員にした」
◇「東京オリンピック・パラリンピック以降をも見据えた観光戦略を考えることが重要」
── 米金融機関ゴールドマン・サックスから日本の文化財を修理する会社の経営に参画して5年。会社は思うような方向に進んでいますか。
アトキンソン 文化財の修理に携わる会社の一番のポイントは若い人の育成なんです。文化財は何百年という時間的スケールに耐えねばなりませんから、いまの仕事はもちろん、次も、その次の仕事も質が高くなければなりません。それには若い人に技術を受け継いでいく必要があります。私が社長になった時の社員の平均年齢は48歳でしたが、いまは38歳です。年齢が上の社員を切ったのではなく若手社員を増やしたからです。それと、社員の3割ぐらいは非正規雇用だったのを全員正社員にしました。そのため以前は入社して5年たつと7割ぐらいが辞めましたが、いまは離職率はゼロに近い。………