◇反対派の大量粛清で内部分裂 共産党の独裁統治劣化リスク
金子秀敏
(毎日新聞客員編集委員)
「西側諸国は、ポスト共産中国にどう対処するかを考える準備をせよ」──。1月末、米『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙に掲載された「中国共産党のたそがれ」という論文が注目されている。
著者はアメリカン・エンタープライズ政策研究所(AEI)のアジア専門家、マイケル・オースリン氏。習近平国家主席が汚職摘発運動を利用して空前の個人独裁体制を作ったが、これはロウソクが燃え尽きる前の輝きだとして、統治の危機が迫っていることに警鐘を鳴らした。
米国では多くの中国専門家が賛同の声を上げた。これまでも中国崩壊論は珍しくない。だが、今回は中国が高度成長のピークを過ぎた段階で提起されたことで、説得力を持った。オースリン氏によれば、中国は現在、共産党の内部分裂が深刻化したという政治的要因、行政当局が大衆からの信頼を失ったという社会的要因、低成長時代が始まったという経済的要因が重なり、「大規模な危機が発生する可能性が次第に高まっている」。すでに「権貴(けんき)」と呼ばれる特権階級だけでなく中産階級の一部まで、個人資産を海外に移転し、海外に移民する用意をしているという。………