◇クリントンvs ブッシュ
安井明彦
(みずほ総合研究所欧米調査部長)
米国の2016年大統領選挙に向け、各党が指名候補を選ぶ予備選挙が熱を帯びてきた。出馬表明が相次ぎ、重要選挙区での遊説も活発化している。
民主・共和の2大政党の予備選挙に共通するのは、いずれも名門政治家一族が中心になっていることだ。民主党では、ビル・クリントン元大統領の夫人であるヒラリー・クリントン前国務長官が、圧倒的な強さで独走している。混戦の共和党では、父(ジョージ・H・W・ブッシュ)、兄(ジョージ・W・ブッシュ)に続く戴冠を狙うジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事の出馬が確実視されている。
米国政治において、両家は「王朝(ダイナスティー)」と呼ばれるほどの、抜きんでた存在感を示してきた。米国では、2年に1度のペースで選挙が行われるが、議員選挙を含めると、ブッシュ(父)元大統領が上院選に出馬した1964年以降に行われた26回の選挙のうち、両家からの出馬がなかった選挙は3回しかない。
米国大統領の歴史でも、両家の強さは異常事態といってよい。ブッシュ(父)元大統領がレーガン政権の副大統領となった1981年以降、両家が正副大統領の座になかったのは、オバマ政権の2期だけである。どちらかが16年に大統領の座を射止め、次の20年に再選を果たした暁には、32年間のうち24年にわたって、両家が正副大統領のいずれかを務めることになる。………