
◇競合はグーグルよりドイツ企業
松尾 豊(東京大学准教授)
AIはすでに産業用ロボットに応用できる水準にある。
2014年1月に米グーグルに買収された英ディープマインドは、ディープラーニングを利用して、インベーダーゲームで「ポイントを多く取れ」という報酬(目的)をAIに与えて、自ら成功や失敗を学習して、時間とともに高得点を取れるAIを作った。米カリフォルニア大学バークレー校は、産業用ロボットに応用した。「凸と凹の部品を組み立てる」という報酬を与えると、試行錯誤しながら学習過程の終盤では組み立て速度を上げることに成功した。
こうした行動の分野におけるAIの発展によって、建設や農業など体を使う作業は、どんどん自動化できる道すじが見えてきた。ものづくりで特にインパクトは大きい。日本にとって一番大事なのは、AIの発展が経済力を高める可能性があることだ。AIで付加価値を付けた機械を海外に売ることができれば、日本のものづくりに競争力をもたらす。
日本には「シリコンバレー企業が覇権を握るのでは」という危機感が根強い。しかし、グーグルは自動運転車の開発で自動車メーカーと組んでいる。頭脳を作る企業と、製造から販売までのルートを持つ企業を比べると、やはり後者に強みがある。グーグルが製造や販売の仕組みを構築するのは難しく、製造業系の企業がAIを取り入れる方が簡単だ。また、AI(ソフト)と機械やロボット(ハード)をうまく機能させるためには、すり合わせが不可欠で、日本の強みを発揮できる。
もちろん、グーグルが医療や自動車などに自社の経営資源を集中投下すると、その分野では存在感を示すかもしれない。しかし、製造業は分野が広い。個別領域でグーグルに勝つことは十分可能だと考える。
結局、グーグルもフェイスブックも収益源は広告だ。そのビジネスモデルから脱却するのは難しい。...
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