
◇金融情報提供のインフラとして成長
1995年に証券会社のアナリストリポートを機関投資家向けに印刷・配送まで一手に引き受けるアウトソーシング企業として創業。社名はInternational Financial Information Serviceの頭文字から取っている。
98年から調査リポートをウェブで展開するサービスを開始した。これに加えて事業会社のIR(投資家向け情報)資料、投資信託の目論見書など印刷物の受注も増加している。
── 足元の業績が好調です。
大沢 2014年12月期は連結で売上高37億800万円、経常利益3億9200万円で過去最高益を更新しました。15年12月期は売上高43億円、経常利益5・5億円を見込んでおり、5期連続の増収増益が確実となっています。
── 特色を教えてください。
大沢 投資情報事業、IR事業、証券ドキュメント事業、投信ドキュメント事業の四つを柱に事業を展開しています。金融情報を提供するインフラとして機能する会社として成長してきました。
調査リポートをウェブ上で一括管理・検索・閲覧できる電子書庫サービス「リサーチマネージャー」は業界シェア50%以上を誇る当社の主力商品です。
ウェブ展開と同時に、01年には、証券会社の各アナリストの業績予想平均を抽出したコンセンサスを提供するようになりました。これまで調査リポートの著作権は証券会社にありましたが、コンセンサスの著作権は当社に帰属することとなりました。経営の自由度が拡大し、これが一つの原動力となり、05年にマザーズに上場しました。
── マザーズ上場から10年で今年は東証1部に上場しました。
大沢 四つの事業のほか、金融機関向けにさまざまな文書を印刷するシステムの構築サポートが売り上げに寄与しました。12年にシステム会社のインフォーテックを買収し、システムだけでなく、ビジネスモデルそのものを提供することができるようになりました。
M&A(合併・買収)は当社の事業戦略の一つで、06年には、都内の機関投資家への文書配送に特化していた運送会社を買収し、07年には、トムソン・ロイターから債券の起債情報に強い部隊を買収し、日本関連の資本市場情報を報道するキャピタル・アイとして傘下に収めました。
── 強みは何ですか。
大沢 機関投資家をお客様としていることです。印刷、ネット、システム開発、ビジネスモデル提供などさまざまなかたちでサービスを利用してもらい、お客様との相乗効果でブランドが確立してきました。生損保と信託銀行を中心に約170社にサービスを提供しています。
── 一般投資家向けの金融情報提供にも乗り出しました。
大沢 07年に上場企業の業績予想や決算スケジュールをネット上で無料で見られるサービス「IFIS株予報」を始めました。ヤフーと提携して、「Yahoo!ファイナンス」から接続できます。業績予想は、今期の進捗状況などを天気マークを使ってわかりやすく表示するなど工夫しています。多い時は月間2000万ページビュー(PV)を超えることもあります。14年から投資のトータルリターンランキングなどを掲載した「IFIS投信予報」もスタートさせました。
◇非金融部門も強化
── 新たな事業展開について。
大沢 強みである金融情報サービスを拡充していくとともに、新たなビジネスとして、非金融部門にもサービスを拡大する予定です。
現在、インターネットモールをつくる構想を立てています。そのなかで、素材や文字のデザインを扱っている業者と提携して、ネットプリントとWeb to Print(ウェブ上でレイアウト編集を行い印刷データを生成するシステム)ビジネスを展開します。企業向けに名札、封筒、あいさつ状、名刺、ポスターなどのデザインの提供から印刷までを行うサービスです。海外向けとしては、雑貨などに写真を印刷するサービスを計画しています。この事業は非金融部門の核になっていく予定です。
この実現に向け、15年2月にネットプリントのエンジン(組版や編集が柔軟にできるソフト)を提供するクレオネットワークスからメディアプラットフォーム事業を事業譲渡により取得しました。エンジンを押さえていることは強みだと思っています。
国境をまたがるEC(電子商取引)ワンストップサービスも展開しています。海外に向けて販売したい日本メーカーに対し、ECサイト構築から商品の受注、決済に至るまでの業務全般をワンストップでサポートします。ECの水先案内人のような役割を果たしています。金融部門だけでは事業が膨らまないと考えているため、中長期的には、金融部門と非金融部門の売上高の割合を5対5にしたいと考えています。
── 今後の目標は。
大沢 中期経営計画として、15年12月期に連結経常利益5億円を目標に掲げており、達成できる見込みです。
中長期的な目標として、20年度に売上高100億円、経常利益10億円を設定しています。東証1部に上場した名に恥じない会社にしていかなければならないと思っています。
(Interview 金山隆一・本誌編集長、構成=丸山仁見・編集部)
◇横顔
Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 富士ゼロックスの社員として、米国西海岸に駐在していました。シリコンバレーのITの現場を間近に見て、その経験が独立の契機になりました。
Q 最近買ったもの
A 大手通販サイトで小銭入れを買いましたが、配送に1カ月かかりました。そこから、我々が越境ECのサポートで開拓できる分野はあると改めて確信しました。
Q 休日の過ごし方
A 映画を見て、読書をし、夕方には1時間半散歩。オンラインの囲碁対局も楽しみ、頭をすっきりさせています。
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■人物略歴
◇おおさわ かずはる
福岡県出身。1968年豊津高校卒業。72年北九州市立大学卒業後、富士ゼロックス入社。90年より国際電信電話、93年よりトムソンコーポレーション日本での勤務を経て、95年アイフィスジャパンを設立し現職。66歳。