
鈴木敏之
(三菱東京UFJ銀行グローバルマーケットリサーチシニアマーケットエコノミスト)
米連邦準備制度理事会(FRB)は「年内の利上げ開始」を繰り返してきたが、米国の経済指標が弱いことや、デフレ回避を意識した欧州中央銀行(ECB)ドラギ総裁の追加緩和の意向表明で、難しくなった面があった。
ところが、10月28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明で、12月に利上げする意向があることを表明した。
それでも、ECBの追加緩和の意向表明や、理事会後のECBのコンスタンシオ副総裁の発言は、FRBの利上げを阻む面がある。
第一は、停滞する世界経済への判断である。FRBは9月17日のFOMCで利上げ開始を見送った際に、「世界経済と金融に不安がある」ことを声明に書き加えた。今後、FRBが利上げ開始に進むのであれば、この判断を撤回しなければならない。ところが、ECBがいち早く世界経済の不安を前面に出してしまったため、10月28日のFOMCでは、それを全面削除できず、監視の対象と言い続けている。
ECBによる追加緩和の意思表明が意味するのは、ECBが「今の世界経済停滞は1~2カ月で解消を見込めるようなものではない」と判断していることである。FRBが利上げに進めば、ECBとは異なる判断を持つことになる。
もし、FRBが利上げ開始に進むために、世界経済について強気の見方をすれば、それが外れた時に、「ECBは警戒していたのに、FRBはその判断を誤った」という汚名を残すことになる。
第二は、インフレ目標への忠実さが問われる問題である。....