
千葉周
(JICAインド事務所)
インドの衛生環境を整備する「クリーン・インディア・ミッション」の開始から1年が経過した。2014年10月から5年間でトイレの整備や住民の啓蒙活動を行うことで、屋外排せつの撲滅等を目指すというモディ首相肝いりの政策だ。
政府は年間390億ルピー(約720億円)の予算を組み、地方自治体を通じて公衆トイレを設置したり、各家庭へのトイレの導入を進めている。開始1年でこれまでに農村部に800万基のトイレが設置された。
インドは家庭でのトイレ普及率が50%未満にとどまり、人口の約半分が屋外での排せつを習慣としている。このため、インドにおける5歳未満幼児の死因の3位が下痢症であり、主な要因が排せつ物の細菌に汚染された飲食物による経口感染であるとされている。野外排せつは住民の環境のみならず、命にも関わる問題になっている。また屋外排せつ中の女性が暴行を受ける事件が起きるなど、ジェンダー(社会的性差)やカーストの問題と関連する根深い一面もある。
トイレ設置については、民間企業がCSR(企業の社会的責任)の一環として積極的に取り組んでいるほか、NGOによる啓蒙活動も始まっている。官民が総力を挙げているところだが、野外排せつ根絶に向けた道のりは長く、継続的な取り組みが求められている。 (了)