
石賀 康之
(JETROイスタンブール事務所)
中国のトルコへの直接投資額が急増している。トルコ中央銀行によると、1~7月には前年同期比約16倍の4億3400万ドル(約520億円)に達し、日本の投資額を初めて上回った。
2002~14年の13年間の中国の対トルコ累積直接投資額は日本の約27分の1にすぎなかったが、最近では大型案件も目立つ。9月には海運関連の中遠太平洋や招商局国際有限公司、政府系ファンド子会社のCICキャピタルから成るコンソーシアムがトルコ3位のコンテナ港、クム港の株式65%を9億4000万ドル(約1100億円)で取得した。金融分野でも昨年、中国工商銀行がテクスティル銀行の株式75・5%を取得し、トルコ市場に参入した。
トルコでは7月、極右団体の抗議行動が発生し、イスタンブール市内の中国料理店が襲撃される事件も起きた。中国当局がイスラム教徒であるウイグル族に対し、ラマダン(断食月)中の断食など宗教行為を禁じた、とトルコ国内で報じられたことがきっかけだ。にもかかわらず、事件後に訪中したエルドアン大統領は習近平国家主席との会談で事件に言及せず、経済関係重視の姿勢を示した。
トルコは堅調な経済成長と急速な都市化の進展でインフラ需要が急増している。治安面など不安もあるが今後も中国の投資に拍車がかかりそうだ。 (了)