
◇2015年11月24日特大号
成田範道(在インド翻訳家)
宗教間の争いや宗教に関する言論への圧力など、インド社会で宗教的不寛容が強まっている。その状況を放置する政府に抗議する動きが広がりつつある。
8月末、不合理なヒンズー教の宗教的慣習を批判してきた文学者が殺害されたのをきっかけに、国が支援するインド文芸アカデミー文学賞の受賞者が続々と賞の返還を宣言した。9月末に牛肉を食べたと疑われたイスラム教徒が集団暴行を受けて死亡すると、返還の動きが加速。約40人が返還を宣言している。映画関係者も呼応し、国が主催する映画賞の返還を宣言する者が出ており、著名な分子生物学者も「インドの将来を不安視」しているとして国の勲章の返還を宣言した。
抗議の声はモディ政権に向けられている。与党インド人民党はヒンズー至上主義を掲げる民族奉仕団(RSS)が事実上の支持母体だが、RSSはモディ政権発足以降、イスラム教徒などへの攻撃を強めている。こうした問題にモディ首相は沈黙したままだ。
ところが最近になり、インド準備銀行(中央銀行)のラジャン総裁、IT企業インフォシスの創業者ムルティ氏など、普段はあまり政治的な発言をしない経済関係者や機関が、この問題がインド経済に及ぼす影響に言及し始めた。少数意見として無視できない状況になっている。 (了)
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