◇周辺国の力関係に影響
◇2015年11月24日特大号
桑原亮(国際協力銀行ドバイ駐在員事務所)
シリアを巡り関係国の駆け引きが続く中、10月30日にウィーンで開かれた米国やロシア、欧州、中東各国によるシリア安定化に向けた外相級協議にイランが初めて参加したことが注目されている。
シリアには9月末、ロシアが過激派組織「イスラム国(IS=Islamic State)」への空爆を始めた。ロシアは「標的はIS」と主張するが、空爆の大部分はアサド大統領率いる政府軍の勢力範囲シリア北西部周辺に集中する。ロシアの標的はISに限らず、ロシアが支援するアサド政権にとって「脅威になるもの全て」というのが実情だろう。
他方で、反政府軍に対する米国や湾岸諸国の支援も順調とは言い難いようだ。真偽は定かでないものの、多くの中東専門家から「反政府軍の中には米国から提供された武器弾薬を売り渡し、その資金を元手に欧州行きの旅費を手にした者が大勢いる」といった話が出てくるほどだ。
イランはロシアと共に、アサド政権を支援する立場。そのため米国は、これまで協議の場にイランが参加するのを拒んできた。しかし、ロシアの空爆や欧州への難民流入などシリア情勢の変化に加え、イランが7月に核開発問題を巡って主要国と最終合意し、対話できる環境が整ってきたことから、米国の姿勢も変化したものと考えられる。
シリアの安定化を巡る各国の動きは地域の利権争いの側面もある。交渉のテーブルについたイランのプレゼンスがどう影響するか、目が離せない。(了)
この記事の掲載号

【特集】世界を飛べMRJ
第1部 MRJテイクオフ
MRJ徹底解剖
インタビュー:ANA/ナブテスコ/住友精密
MRJはどこを飛ぶ? 徹底シミュレーション!!
第2部 日本の空が変わる
日本の空港改革 / 空港設備銘柄
定価:670円 発売日:2015年11月16日