
◇2015年11月24日特大号
齋藤康弘(米国訴訟弁護士)
2012年に破綻したニューヨークの大手法律事務所、デューイ・ルバフの経営陣に対する刑事審判が、10月、陪審員が評決に合意できないことを理由として、結論が出ないまま終わった。
弁護士数1300人を超えた同事務所の転落は、法律事務所の破綻例では全米史上最大のものだった。今回の審判は、同事務所が破綻する以前に、債権者に虚偽の財務データを提出していたことなどを理由に、会長を含む役員3人が検察から刑事訴追されたものだ。数カ月に及んだ審判が評決不能で終わり、検察側は今後、再審判を申請するかどうかの判断を迫られる。
有罪にならなかったのは、訴因が150以上もあって複雑で、陪審員が混乱したためだという。ただ、問題とされた虚偽報告が、刑事事件として一般的に扱われない程度だったという事情もある。それでも訴訟に至ったのは、事務所の一部の弁護士が、個人的な人脈を使い、マンハッタン地検に訴追を促したためだ。内部告発ではない。事務所による破綻後の待遇に不満を持った弁護士たちが、私情で働きかけた側面が強かったというわけだ。
企業による不適切な行為に対する過度な刑事訴追として批判されるなか、それでも検察側は再審判を求めるのか、そして果たして有罪を勝ち取ることができるのか、全米の法務関係者の注目を集めている。 (了)
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