
◇全国1500直営店の強み生かす
◇2015年12月15日号
ゲオホールディングスは、映画やドラマのDVDレンタル、新品・中古ゲームソフト販売を柱とするメディア事業と、衣料・服飾雑貨を中心とするリユース事業(中古品売買)を手がける。メディア事業は全国に約1200店(うち直営1100店)ある「ゲオショップ」、リユース事業は「セカンドストリート」など400店を超える直営店で展開する。2016年3月期の売上高は2720億円、純利益は17%増の86億円を見込む。
── 足元の業績は好調ですね。
遠藤 2011年の東日本大震災のときに、外出せずに家の中での生活を楽しむ「巣ごもり消費」が活発になったことで結果的に収益が上がりました。現在は一服していますが、当時の勢いの余波もあって売り上げは順調に伸びており、5期連続で増収となっています。純利益では2期連続の増益を目指しています。
要因は大きく二つあります。一つはメディア事業における既存のゲオショップの見直しです。ネット動画の拡大などで残念ながらレンタルDVD市場は緩やかに縮小しています。その中で、不採算店を閉めるなどの地道な取り組みの成果が出ています。もう一つは、古着や中古雑貨売買などのリユース市場が伸びている中で、シェアを確実に取れるような出店ができていることです。現在、メディア事業とリユース事業の比率は8対2程度です。
── 主力のレンタルDVDで、他社にない強みは。
遠藤 まずは価格の安さです。私たちは製造小売業ではないので、コンビニエンスストアのおにぎりのように、他店よりいい製品を作るといったことができず、差別化できる点が少ない。そこで値段、その次に品ぞろえの充実度や店舗の立地のよさが差別化のポイントになります。
これには直営店のメリットが生かせます。直営店は中間コストが少ないビジネス形態です。しかも当社の新規出店の多くは「居抜き」で入るため、すでにある設備を利用することで初期費用が削れる分、商品価格を抑えられます。建物も賃貸なので固定費が安く、いい移転先があれば移れる身軽さもあります。お客様にとっては建物の奇麗さよりも、お店に行きやすいことが一番重要です。
── 店舗ならではの強みですね。
遠藤 お客様が商品棚から直接、作品を探せることも大事です。DVDのジャケットを見ながら昔観た映画に巡り合うなど、「作品を探す楽しさ」が感じられる店舗作りを心がけています。市場が縮小しているのは事実ですが、新規参入者も出てきていません。そうした中で、作品の「一覧性」や、棚から直接選べるという利点はもっと活用したいです。
◇業界最安の動画サービスも
── リユース事業はどうですか。
遠藤 中古品市場はレンタルDVDと違って拡大しています。背景には震災以降、モノを大切にしようという消費者の意識の変化があるようです。リユース事業の中心は衣料です
最近は一度着た服を売ることや、古着を買うことに抵抗を感じる人が少なくなったことも追い風です。 全国で400店以上を出店していますが、直営のリユースショップとしては国内最大規模です。ここでも直営のメリットがあります。リユースで不可欠なのは引き取った品物の値決めをする人、つまり目利きです。目利きは既存店で教育する必要があります。仮に新規で100店出店する場合でも、400店あることで100人規模の店員を教育し送り出せます。その意味では高速出店に耐えられる仕組みが備わっています。
── 新規事業は。
遠藤 16年の2月に開始するインターネットを介した動画の定額配信サービス「ゲオチャンネル」があります。エイベックス・デジタル(東京都港区)と組んで、映画やドラマなど8万タイトル以上を月額590円(税別)で提供します。成人向け作品も含めた動画配信で、この価格を打ち出している競合他社はありません。こうしたネット動画サービスは、ネット上での契約の煩雑さや決済システムの分かりにくさから、消費者にとってはハードルが高い面もあります。そこで、ネットのほかゲオショップでも加入契約できるようにします。映像ソフト販売や動画配信では、日本に進出したアマゾンやネットフリックスが確かに脅威です。その中で、店舗でIT(情報技術)リテラシーが高くないお客様にも動画サービスを提供できることは武器になります。
── 店舗向けの新商材は。
遠藤 ゲオショップ全店で中古スマホと格安SIMカードの販売を開始しました。今、スマホを新品で購入すると通信費込みで月々の支払いが約1万円程度になりますが、中古と格安SIMの組み合わせなら月額5000円程度に抑えられ、お客様はその分を他の投資に向けられます。
── どんな会社を目指しますか。
遠藤 店舗が前提のビジネスなので、「近くにこのお店があって良かった」と言ってもらえることが目標です。今までのチェーンストアは、店員のおせっかいが尊ばれなかったきらいがありますが、これからは積極的にお客様をサポートしていくことにこそ価値があると思います。店舗を重荷でなくメリットに変えていくことがゲオグループの使命です。
(Interviewer 金山 隆一(本誌編集長)、構成=大堀達也・編集部)
横 顔
Q 30代前半の頃はどんなビジネスマンでしたか
A 33歳で社長になるまでは東京の事務所でネット関連の部隊を率いていました。社長になった当初は、脇目も振らず仕事をしていました。
Q 最近買ったもの
A 本と服と靴です。本は何でも読みますが、特に歴史モノが好きです。リユース事業をしているので、最近は服に気を使っています(笑)。
Q 休日の過ごし方
A あちこち出かけてウインドーショッピングをして楽しんでいます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
えんどう ゆうぞう
愛知県出身。1996年滝高校卒業。2000年3月早稲田大学政治経済学部卒業後、00年4月日本マクドナルド入社。同年11月ゲオ(現ゲオホールディングス)入社。04年6月取締役就任。11年11月に社長就任。37歳
この記事の掲載号
【特集】銀行の破壊者 フィンテック
ITと金融による金融業界の「産業革命」
金融ビジネスを伸ばすフィンテック
破壊するフィンテック
ブロックチェーンって何?
大手4行はこう攻略する