
◇2016年4月が最後の追加緩和
白川浩道
(クレディ・スイス証券チーフ・エコノミスト)
日本経済は、アベノミクスの大規模な金融緩和がもたらした為替円安が消費税増税と相まって、国内個人消費に大きな打撃を与えたことはほぼ明らかである。足元ではようやく個人消費が下げ止まりの気配を見せているが、目立った回復を展望できるような状況にはない。多くの国民は、「輸入インフレと増税で物価水準は大きく上昇したが、賃金は上昇しなかった」という“実質所得目減りショック”から立ち直れていない。2016年に日銀が追加緩和に踏み切れば、日本経済にさらなるマイナス影響を与えかねない。

◇消費低迷の主犯は円安
実質所得は足元でアベノミクス始動時の水準を下回っている。ここでは15年7~9月期とアベノミクス始動直前の12年10~12月期のデータを比較してみた(15年7~9月期国内総生産〈GDP〉1次速報値を利用、図1)。まず所定内(定期)給与であるが、5人以上の事業所・総労働者ベースで0・8%減少している・・・・
この記事の掲載号
【特集】日本経済総予測2016
<マクロ編>
2016年はGDPプラス成長
アニマルスピリットで市場開拓
<マーケット編>
株価 日経平均2万3000円も