◇2016年はGDPプラス成長
◇アニマルスピリットで市場開拓
中川美帆/大堀達也/荒木宏香
(編集部)
2016年の日本経済は、緩やかに持ち直す可能性が高い。中国経済の減速で伸び悩む海外を尻目に、国内は堅調な内需が景気を底支え。17年4月実施予定の消費増税の駆け込み需要の押し上げ効果が加われば、比較的安定した経済環境が整う。
民間シンクタンクなど20社の予測を集計したところ、16年(暦年)の物価変動を除いた実質国内総生産(GDP)は全社がプラス成長を予測(表2)。平均は1・06%増だ。消費や設備投資が緩やかに回復して、転換点の年になるとの見方が強い。
内閣府が12月8日に発表した15年7~9月期の実質GDP改定値は、年率換算で前期比1・0%増加した。
ピックアップ
エコノミスト臨時増刊号

エコノミスト臨時増刊2015年12月31日号
2015年12月14日(月)発売
定価1000円(税込み)
保存版!読んで役立ち 見て知的に楽しい
Part1 マネー激流 2016世界のGDP、株式、為替予測
Part2 激動の資源・エネルギー&物流 原油安の激震
Part3 波乱の中国 中国経済が越えるハードル
Part4 中東と世界の紛争 テロどこで起きる/南シナ海緊張
Part5 ITと新産業 グーグルグループがひと目で
経営者:編集長インタビュー

沓掛 英二
野村不動産ホールディングス社長
◇未来につながる街づくりに挑む
野村不動産ホールディングスの足元の業績が好調だ。2016年3月期中間決算は売上高約3000億円、営業利益約400億円経常利益約370億円で増収増益、通期で過去最高益を更新する見通しとなった。沓掛英二社長は「当社の努力半分、外部要因の後押し半分」と謙遜するが、11月策定の中長期経営計画は25年3月期までに営業利益を倍増させる目標を打ち出すなど、攻めの姿勢を鮮明にしている。
── 20年の東京五輪に向けて不動産は好調が続くと見られています。
沓掛 外国人投資家と話す機会があったのですが、今まで以上に熱気を感じました。人口減による市場の縮小を悲観する人もいますが、それについてはちょっと待ってと言いたい。
50歳以上の人口は今後10年間で首都圏(1都3県)だけで100万人以上増加すると予測される超成長市場です。その中心の団塊世代は、時間とお金があって、子どもに老後の面倒をかけたくないと考える傾向があります。
ワシントンDC

◇法人税が高い米国
◇納税地移転への規制を強化
堂ノ脇 伸
(米州住友商事会社ワシントン事務所長)
米国のルー財務長官は、米企業が節税を目的に納税地を国外に移転する「タックス・インバージョン」(納税地変換・課税逆転)に対し、規制を強化する方針を11月19日に打ち出した。
米国の法人税率は35%と先進諸国の中で最高水準にあり、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で数少ない全世界所得課税(海外で得た所得も課税の対象とすること)の採用国だ。このため、企業の国際競争力の点で不利だという不満が米ビジネス界で強い。1990年代から2000年代前半にかけては、多くの米企業が法人税を免れる目的で、バミューダやケイマンといったタックスヘイブンにペーパー会社の親法人を設立していた。