
◇「生活を犠牲にして働くか葛藤」
休日も関係なく、深夜までバリバリと仕事をこなす働き盛りの中堅アソシエイト弁護士が、事務所の実務を支えている。事務所の内情や仕事に関するホンネを語り合ってもらった。
── なぜ大手事務所への就職、今の事務所を選んだのか。
A 大手に入ることでいろいろな経験をしたかった。将来の選択肢の幅も広いと思った。
B 大手事務所というと、ギスギスした怖いところという偏見を抱いていたが(笑)、意外に変なプライドの高さやギラギラ感がなく、人間的に親近感の持てる弁護士やスタッフがそろっていたという点が大きな決め手となった。
C 上昇志向の事務所の気風が自分の性質に合っていた。
D 型に当てはめない自由な雰囲気がよかった。
◇移動はタクシーが基本
── この世界に入って驚いたことは。
C 今まで会ったことのないような信じられないくらい優秀な人がゴロゴロ転がっている。
D 顧客の法律知識レベルもとても高い。
B 交通費は通常依頼者に請求するのに、やたらとタクシーを使う。電車のほうが速い場合でも、タクシーを使いたがる。以前、1人で事務所に帰ることがあったので、電車を使ったら、駅で会った友人の企業内弁護士に、「大手なのに」とえらく感動された(笑)。タクシーへの抵抗は薄く、飲み会にもみんなタクシーで向かうのが当たり前になっている。
── 事務所のカラーは。
D 自由放任主義。
A よく言えば、個性の尊重、悪く言えば、放任主義ね。
C 自由であるがゆえに事務所の一体感に欠ける場合もある。まるで動物園のように、さまざまなタイプの人間がいる。
B 忙しいからか、メリハリをつけてよく学び、よく遊ぶという人が多い。
D 規模が大きい割に、組織としての基盤がしっかりしていない。同規模の会社であれば存在するはずの人事部のようなものがなく、若手弁護士の業務状況もすべて自分でコントロールすることが求められているが、それに慣れずに、仕事を受けすぎてしまいパンクすることもしばしばだった。
── 大手事務所の若手はワード、エクセルでの資料作りといった下請け作業ばかりで、生の法律業務に携わるのは5年以上たってからと聞くが、本当か。
一同 そんなわけない。
C 1年目はメインの仕事が法律問題に対するリサーチで、ガンガン生の法律業務に携わっているといえる。3~5年目ぐらいの中堅になると、パートナーとともに契約書の草稿を作成し、契約交渉をしたり、複雑ではない法律問題に関してはパートナーを通さずに回答する。
A 現実的には、入所したての頃は関連する法律をほとんど知らないので、実際に自分の知識・経験として法律を使っていると実感できるのは、5年ぐらいたってからかもしれない。顧客と向き合って仕事をしていると実感できるようになるのも5年目ぐらいからかも。同じ仕事でも下請け作業にとどまるかそうでないかは、その人の力量次第だと思う。
D 中堅になると、リサーチ、依頼者とのやりとり、書面の草稿など、一通りの作業は自分で行う。1年目で依頼者とのやりとりや相手との交渉を完全に任せられるということは少ないが、1年目から会議には出席するし、2~3年目になれば、より主体的に業務に携わることになる。
── 仕事へのプレッシャーが厳しいのでは。
D アドバイスを間違えると取り返しのつかないことになりかねないというプレッシャーがある、上場会社であれば、社会・経済・市場に与える影響が大きいのでなおさらだ。
A 限られた時間で一定の成果を出さなければいけない。
C 仕事が忙しく一つの業務に十分な時間が割けないようなときでも、万が一ミスした場合は、クライアントやパートナーの信用を失う。そういう危機感は常に持っている。
B 自分があまり関与したことがない分野でも、会議の場で即答を求められる場合もある。
◇企業法務弁護士の驚くべき年収
── ズバリ、1年目の年収は。事務所トップクラスになるとどのくらい稼いでいるのか。………
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