
◇崩壊防ぐのに必死の習政権
◇経済成長は鈍化する
遠藤 誉
(東京福祉大学国際交流センター長)
中国共産党による一党支配体制が限界に来ているのは、誰の目にも明らかだ。習近平国家主席も、そのことは十分に承知している。だからこそ、崩壊を避けるために多くの国家戦略を進めている。
中国には、共産党が支配する社会主義国家として、あってはならない激しい貧富の格差と、党幹部が利権集団として暴利をむさぼり人民を苦しめている、という現実がある。党幹部の周りには、コネと賄賂による腐敗天国が出来上がっている。そこで、このままでは「党が滅び、国が滅ぶ」として、2012年11月の第18回党大会で、胡錦濤前総書記も、新しく就任した習近平総書記も「反腐敗」を叫んだ。
以来、共産党は「虎もハエも同時に叩(たた)く」として、激しい反腐敗運動を展開。その結果、13年には18万2000人の党員が、14年には23万2000人の党員が党規約に違反したとして「処分」された。15年には非党員も含め9万2000人が処分されている。この処分には、死刑、無期懲役から数年間の懲役、財産没収など、さまざまな種類と程度がある。習近平政権になってから、合計50万人ほどが何らかの形で腐敗分子として処分されたことになる。
この反腐敗運動を「権力闘争」などと言いたがる人たちがいるが、それは中国の現実を知らな過ぎる故の誤解だ。腐敗を撲滅しなければ、もはや共産党の一党支配が成立しないほど、中国は腐敗が蔓延(まんえん)しており、権力闘争などしている場合ではない。反腐敗で逮捕されることを恐れるあまり経済活動が萎縮し、成長を鈍化させる要因の一つになっているほどだ。………