
◇石油元売りの寡占化招く
石油元売り業界の再編が加速している。この再編に疑問を投げかけるのが中原伸之・元東燃社長だ。
(聞き手=後藤逸郎/桐山友一・編集部)
石油元売り2位の出光興産と5位の昭和シェル石油が昨年11月、経営統合で合意したのに続き、12月には東亜燃料工業時代に私が社長を務めた3位の東燃ゼネラル石油と、首位のJXホールディングス(HD)が経営統合で合意した。日本の石油元売りは、4位のコスモエネルギーHD(旧・コスモ石油)を含め、大手5社の体制から3社となる。しかし、一連の再編には疑問が多い。市場の寡占化を招くような再編を、国が時代錯誤的な産業政策で迫っていることだ。
ガソリンの販売シェアは、JXHD傘下のJXエネルギーが3割強、東燃ゼネラルが2割弱のシェアを持つ。両社が統合すれば5割超の規模となる。競争政策をつかさどる公正取引委員会が両社の統合を認めるかという問題も大きいが、両社にしてみれば何よりガソリン価格を高位に保つことができ、それだけ安定した利益を確保できる。原油価格の下落など経営環境の悪化に直面する元売りにとって、これほどありがたいことはない。だが、それは家計を直撃するだろう。
そもそも安倍政権の政策は、今年4月から始まる電力小売りの完全自由化のように、………
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■人物略歴
◇なかはら・のぶゆき
1934年東京生まれ。57年東京大学経済学部卒、59年米ハーバード大大学院修了後、東亜燃料工業(現・東燃ゼネラル石油)入社。86~94年、同社社長。日本銀行政策委員会審議委員、金融庁顧問などを歴任。
この記事の掲載号
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