2016年

12月

20日

GDP新基準 15年度名目は532兆円 研究費加算等で31兆円かさ上げ

内閣府は12月8日、2015年度の名目国内総生産(GDP)の確報値を532兆2000億円と発表した。算出基準改定の結果、従来の500兆6000億円から31兆6000億円かさ上げされた。安倍晋三首相が掲げる「名目GDP600兆円」の目標達成の追い風となる可能性がある。

 

 GDPを算出する際に使用する国連の「国民経済計算」(SNA)が09年に基準改定されたことを受け、政府が移行を進めてきた。

 

 新基準の大きな変更点は、企業などの「研究開発費」を新たに加えたことだ。これまでは「費用」と見なし、除外していた。改定に伴い工場建設費などと同様に、新しい価値を生み出す「投資」と位置づけた結果、研究開発費だけでGDPを19兆2000億円かさ上げした。このほか、特許使用料などが3兆1000億円、武器輸出関連が6000億円、不動産仲介手数料が9000億円、それぞれ投資として、GDPをかさ上げした。

 

 新基準でのGDPについて、明治安田生命の小玉祐一チーフエコノミストは「予想の範囲内」と見る。政府・与党内で「アベノミクスの政策効果が経済統計に表れていない」と批判する意見があったことについて「従来考えられていたより若干よかったというだけで、全体的に緩慢な景気回復ということに変わりはない」と指摘した。

 

 ◇16年7~9月期は下方修正

 

 一方、内閣府は8日、新基準による16年7~9月期のGDP(季節調整値)改定値も合わせて発表した。物価変動の影響を除いた実質で前期比0・3%増、この状況が1年続いた場合の年率換算で1・3%増だった。速報値(前期比0・5%増、年率2・2%増)から下方修正された。名目GDPは前期比0・1%増となり、年率換算で537兆3000億円と四半期ベースで比較可能な1994年以降過去最高となった。

 

 新基準の安倍政権が目指す「20年ごろまでに名目GDP600兆円」への影響について、小玉氏は「過去にさかのぼって新基準に置き換えるため、過去のGDPも上がり、成長率は底上げされない」と述べ、それほど大きなインパクトはないとした。「数字ではなく物差しの方を変える手法だ。新基準で600兆円に相当するGDPを提示して議論するのがフェアだ」(シンクタンクエコノミスト)との指摘もある。

 

 政府が目指す名目成長率3%が毎年実現すれば、20年度には600兆円を超えている計算だ。しかし3%成長を達成した年は91年度以来なく、目標達成が依然難しいことに変わりはない。

(酒井雅浩・編集部)

この記事に関連する号:『週刊エコノミスト』2016年10月11日号