「証券界の鬼平」退任 東芝立件は持ち越し

証券取引等監視委員会の佐渡賢一委員長(70)が12月12日、9年半という異例の長い任期を終えた。「証券界の鬼平」と恐れられ、最後の事件として東芝の不正会計問題で歴代3社長の刑事告発に執念を燃やしたが、在任中の告発はかなわなかった。

 

東芝について監視委は、2005~15年に社長を務めた西田厚聡氏、佐々木則夫氏、田中久雄氏がパソコン部品の「バイセル取引」を通じて利益水増しを主導したとみて調査を進め、「金融商品取引法違反の立証は可能」との見解をまとめた。

 

だが告発を受理する検察は、部品取引を介して行われた利益水増しについて、こうした手法を禁じる会計基準がなかった点を挙げ、「立件は困難」との姿勢を崩していない。

 

 佐渡委員長は12日の退任会見で、「この事案は、東芝という個別の案件を超えて、証券監視のあり方、検察との関係のあり方など検討すべきいろいろな問題を提起した」と悔しさをにじませた。

 

 検察が「及び腰」との批判を浴びてまで慎重な姿勢を崩さない大きな理由は、世論の動向だ。10年の大阪地検特捜部の証拠改ざん事件以降、国民の検察への目はいまだに厳しい。「無罪判決が出た場合、国民が裁判所の判断を批判する風土はない。無理な捜査で事件を作り上げた、とすべて検察のせいにされる」(検察関係者)。東芝の歴代3社長を立件に踏み切るには、「100%違法だと断言できなければ立件できない」というわけだ。

 

 監視委は通常、検察の了承を得て容疑者を告発する。検察との意見が食い違うなか、佐渡氏は最後まで任期中の告発を視野に入れていたとされる。しかし、検察側から「告発を強行した場合、即日不起訴にする可能性もある」(検察関係者)との意見が漏れ聞こえてきた。検察審査会の判断に委ねるという選択肢は残るものの「福岡高検検事長という検察の最高幹部を務めた佐渡氏が、事件の結末を市民に投げるわけにはいかない」(全国紙社会部記者)と判断したとみられる。

 

 佐渡氏の退任を受け、後任の前広島高検検事長、長谷川充弘氏(63)に、「立証は可能」との報告書が託されるが、告発は容易ではなさそうだ。

(編集部)

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