2017年

2月

07日

河野太郎・前消費者担当相インタビュー「福島事故処理に託送料充てる愚」

福島事故処理の賠償などを託送料(電力会社の送電網の利用料金)に上乗せすることは「おかしい」と批判する河野氏に話を聞いた。

(聞き手=松本惇/後藤逸郎・編集部)

 

── 消費者担当相時代の2016年7月、託送料について報告書を出した。

 

河野 託送料が高いがゆえに電気料金も高くなっている。自由化して競争を促すなら託送料金を下げるべきだと考えた。

 (内閣府の第三者委員会の)消費者委員会で審議された結果、託送料金の査定などに改善が必要な点があることがわかった。消費者庁は経済産業省に託送料はおかしいと言った。

 そもそも05年に使用済み燃料の再処理費用を託送料に上乗せした。1回限りだと言っていたのに、(今回の上乗せの)前例にするのはおかしい。

 電力自由化で発送電を分けるとなっているにもかかわらず、託送料で取るというのは発電会社の分の費用だ。発電会社の費用を、間に入る別会社が負担するという構造はおかしい。電力自由化の精神にももとる。

 託送料は国会の議決も経ない。全く関係のない費用を上乗せするならきちんと国会で議決しろと。

 

 ◇経産省は資本主義を否定

 

── 電気料金への消費者庁の意見具申が無効化されないか。

 

河野 経産省にとって、託送料に上乗せするのが、一番邪魔が入らずにできる。ほとんど電力会社の下請けのようになってしまった。

 

── 賠償費用が膨らめば、電気料金が永遠に引き上げられないか。

 

河野 福島事故の費用は今回の試算で収まらない。中間貯蔵施設の費用は想定の何倍もかかった。

 国民からカネを出させるが、東京電力の株主や融資している金融機関は守られている。現状は、経産省が資本主義を否定しているのと同じだ。

 

── 経産省は原発を稼働させれば電気料金が下がるという。

 

河野 全くおかしな話だと思う。原発が安いなら、廃炉費用を他の人に負担してもらう必要はない。なぜ、コストが高い事業を資本主義のルールに反してまで助けなければならないのか。経営判断で(原発が)よいと思って始めたわけだから、その経営判断にかかるコストは自分で負担するのが当然だ。

 東電を減資させればその分の国民負担が減る。やることをやって国民負担というのは仕方がない。株主と金融機関だけ守っておきながら、「国民に負担してください」は全く筋が通らない。経産省が原発を助けたいなら、世耕弘成経産相が「それはおかしい」と言わなければならない。

 

── 託送料上乗せのどこが問題か。

 

河野 今回の方式では、コストが下がっても託送料は下げない。経産省が自慢げに言う。それは違う。たくさん取りすぎているのだから、精査して消費者に還元しなければ。消費者庁は、コストが下がっているのに、託送料を下げないのはおかしいと経産省に言うべきだ。

 

── 東電の賠償は、政府が交付国債で支援し、東電株売却益で回収するという。

 

河野 廃炉が続く状況で、いくらコストがかかるか分からない。まだまだ費用が膨らむという株式会社の株価がそんなに上がるのだろうか。

 

── 賠償・廃炉費用には国費を投入してオールジャパンで取り組むべきだと考えるか。

 

河野 税金を投入するのか、どこまでを電力料金で負担するかという議論はあると思うが、少なくとも今のスキームではだめだ。結局、東電をいかに生き延びさせるかという考えが根底にあるから処理策がゆがんでいる。

 自民党の議員で、電力や原子力の仕組みをきちんと理解している人が少ないのだと思う。理解している人の大半は東電寄りだったりする。自民党の部会で「新電力と契約している人は所得が高い」と平気で言う。どこから聞いたのかと思ったら、経産省が想定問答を作っていた。経産省にそんなデータがあったら持ってこいと言ったら、「ありません」と。議員が資本主義の原則とは何かをきちんと考えなければならない。

(河野太郎・前消費者担当相)

*週刊エコノミスト2017年2月7日号掲載