2017年

2月

28日

経営者:編集長インタビュー 丸山寿 日立化成社長

◇高機能材料ベースに1兆円企業へ

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 日立化成はどんな会社ですか。

丸山 1912年に日立製作所がモーター用の絶縁ワニス(電気の流れを遮る樹脂)を作ったのが当社の始まりで、62年に分離独立しました。一言で言えば、樹脂を混ぜたり、貼ったり、塗ったり、ひっぱったりして材料を作っている会社です。

 

── どんな製品がありますか。

丸山 例えば、当社が世界シェア約5割を持つ「ディスプレー用回路接続フィルム」という製品があります。絶縁性の樹脂の中に電気を通す粒が入ったセロハンテープのような材料で、スマートフォンで使われています。粒を通じて縦方向に電気を通し、横には逃がさない特性があるため、複数の電極を一括して取り付けることができます。

 そういった材料を、その時々の成長市場に提供してきました。現在の主力は半導体や液晶などの機能材料と、自動車部品や電池などの先端部品・システムで、利益率が高いのは前者、売り上げが安定しているのが後者です。

 

 日立化成は1月25日発表の第3四半期決算で通期の業績見通しを上方修正し、最終利益の見通しを従来の前年同期比9・1%減の350億円から、同2・6%増の395億円に引き上げた。2年連続の最高益更新が視野に入る。

 

 ◇電池が業績押し上げ

 

── 業績好調の原動力は。

丸山 スマホ向け材料と電池部門の成長、原価低減の推進です。中国のスマートフォン、中でも高級スマホ向けの利益率が高い材料の売り上げが順調に伸びています。

 

── 電池市場は。

丸山 電池事業は大きく二つ。一つはリチウムイオン電池用の負極材です。世界トップのシェアを持っています。リチウムイオン電池の需要拡大により調子がいいです。もう一つは自動車用と定置用の蓄電池です。

 

── 蓄電池はどう伸ばしますか。

丸山 業務用定置型蓄電池に強い新神戸電機を完全子会社化・吸収合併し、海外展開に強い台湾神戸電池を完全子会社化しました。この2社はもともと当社のグループ会社です。自主独立の方針で別会社として事業展開してきましたが、現在はニーズが多岐にわたり、事業展開のスピードも加速しています。一緒になり、総合力を発揮しようという方向にこの10年くらいで変わってきました。

 また2017年2月にイタリアの自動車部品メーカー、フィアム社から自動車・産業用の鉛蓄電池事業を買収しました。

 

── 半導体市場での取り組みは。

丸山 半導体製造の後工程でIC(集積回路)チップと回路基板を接着させる「ダイボンディングフィルム」で世界シェア4割を押さえています。半導体はIoT(モノのインターネット)の進展で需要がさらに伸びると期待しています。

 ただし、半導体の世界は非常に動きが速いです。これまでは当社が直接商品を納めるお客様の要望に素早く応えることを重視してきました。しかし、そのお客様が業界の負け組になれば、当社も一緒に沈みます。力を持っている企業を見極め、直接そこに聞きにいく。どんな機能を求めているのか、半導体部品メーカーなど直接のお客様だけでなくその先のお客様と一緒に考えていかなければ生き残れません。

 

── トランプ新大統領の誕生で世界経済の先行きは不透明感を増しています。

丸山 当社もメキシコに工場があるので、気にならないといえばウソになります。しかし、最終的にユーザーにとってどんな価値があるかを見逃さないことが大切です。

 当社は欧州に製造・開発の拠点がありませんでした。伊フィアム社の電池事業の買収は、悲願だった欧州進出の足がかりになるものです。フィアム社を橋頭堡(きょうとうほ)に、自動車や半導体材料につなげていきたいです。

 

 ◇営業利益率2桁へ

 

── 中期経営計画は。

丸山 25年度に売上高1兆円、営業利益率14%超の企業になるという将来像をまず描きました。そして18年度までの3年で営業利益率11%を目指します。野心的な数字ですが、材料技術を基盤に、付加価値の高い製品を持つ当社ならば、十分に達成できると考えています。

 ただし、戦い方は変えなければなりません。成長市場が少なくなる中ではシェアを取っていくしかありません。自前主義を捨てて、他社の技術を使う、M&A(合併・買収)で外部の力を取り込むなどのオープンイノベーションにも取り組んでいます。茨城県つくば市の「オープン・ラボ」という当社の施設に、半導体製造の後工程の機械をそろえ、お客様が材料を持ち寄り装置メーカーなどと一緒に試行錯誤する場として活用していただいています。

 

── 今後の注力分野は。

丸山 ライフサイエンス分野です。再生医療用細胞の開発・受託製造施設を横浜に新設します。米PCT社から導入した技術を使ってがん治療のための細胞培養の受託事業を18年度に始めます。早期に黒字化する見通しです。情報通信、環境・エネルギー、自動車に次ぐ四つ目の柱にするには10年かかると思いますが、やっていきます。

(構成=花谷美枝・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 法務部門にいました。私は契約書を書いていれば幸せな人間。要望を聞きながら契約書を作成するのは本当に面白いです。

 

Q 「私を変えた本」は

A ビジネスではクレイトン・クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』。小説ならば北杜夫の『楡家の人びと』。

 

Q 休日の過ごし方

A 泳いで、走って、本を読んでいます。

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 ■人物略歴

 ◇まるやま・ひさし

 1961年生まれ。長野県立飯田高校、一橋大学法学部卒業後、83年日立化成入社。社長室広報・IR担当部長、自動車部品事業部副事業部長、執行役常務などを経て、2016年4月社長就任。55歳。

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事業内容:機能材料、先端部品・システムの製造販売

本社所在地:東京都千代田区

設立:1962年10月10日

資本金:155億円

従業員数:連結1万9117人、単体6209人(2016年3月現在)

業績(16年3月期・連結)

 売上高:5465億円

 営業利益:530億円