ユーロ懐疑論再燃 オランダが離脱議論 求心力失う統合欧州

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小西丹(エイジェム・キャピタル・グループ・ダイレクター)

 

 欧州で共通通貨ユーロへの懐疑的な見方が広がっている。

 

 オランダ下院は2月24日、下院選(3月15日)後に結果いかんにかかわらず、ユーロ離脱の是非について議論することを全会一致で決めた。また、2月19日にはドイツのメルケル首相が記者会見で、共通通貨の問題点を認めたうえで「今でもドイツ(の旧通貨)マルクが流通していれば、間違いなく今のユーロとは異なる価値を有しているだろう」と、公の場で初めて「ドイツ・マルク」に言及。ユーロ参加国が旧通貨名を口にすることすらタブーであった、ギリシャ債務危機が表面化した2010年当時とは状況が一変した。

 

 オランダ下院はまた、ユーロ離脱の是非を議論するための調査を国の最高諮問機関である枢密院に委ねた。右派キリスト教民主勢力(CDA)のオムトジフト下院議員は「ユーロからの離脱か可能なのか、可能であればどのように離脱するのかを調査する」と述べた。

◇ドイツ首相も不満

 

 オランダでは急増する移民問題などを受け、イスラム教徒排斥や欧州連合(EU)離脱を掲げる極右・自由党が支持を伸ばしている。債務危機に陥ったギリシャ支援や欧州中央銀行(ECB)の低金利政策などへの国民の不満も根強く、EU離脱を決めた昨年の英国民投票結果やトランプ米大統領の誕生がEUの結束力を大きく削(そ)いだことも影響した。

 

 メルケル首相はペンス米副大統領との会談後、記者会見に臨み、ドイツの対米貿易黒字が問題視される中で「我々はユーロの価値について問題を抱えている」と言及。ECBの金融緩和によってユーロが安すぎる水準にあると、ドイツ・マルクを引き合いに出してまで述べた。また、「ECBの金融政策はドイツではなく、ポルトガルやスロベニア、スロバキアに合わせるように運営されている」と不満を表明しながら、金融政策はECBの専権事項であるとして、「ドイツ首相としてはどうすることもできない」と自己防衛に回った。

 

 ギリシャをめぐっては現在、債務減免を求めるギリシャや国際通貨基金(IMF)と、それに応じないEUとの間で亀裂が深まっている。ギリシャ支援の議論の行方によっては、フランス大統領選(4~5月)やドイツ下院選(9月)の結果にも大きな影響を及ぼしかねない。ユンケル欧州委員長は今年に入り、EU各国がバラバラになれば、米中などと有利な貿易交渉を進めることはできない、という趣旨の発言をして結束を訴えるが、そこまで言わなければならないのは、それほどまでに追い詰められていることの裏返しでもある。

 

 市場はユーロの先行きを危惧したのか、ユーロ建て金価格は年初から9%超上昇している。北大西洋条約機構(NATO)と同様、冷戦の産物として政治的に作り上げられEUやユーロだが、その政治的求心力を失えば持続不可能になる。

 

(小西丹、エイジェム・キャピタル・グループ・ダイレクター)

 

*週刊エコノミスト2017年3月14日号 FLASH!掲載