2017年

4月

04日

マンション価値は上がる 築41年でも時価は新築時の6割増し=荻原博子

 マンションの老朽化とそこに住む住人の高齢化の「ダブル高齢化」が進んでいる。10年後、築40年を過ぎて建て替えを検討しなくてはならないマンションは全国で162万戸にもなる。だが、老朽化マンションの建て替えには困難が伴い、今までに成功したのはわずか1万6000戸。それも建ぺい率や容積率に余裕がある公団住宅がほとんどだ。

 

 そんな八方塞がりの中古マンション問題に一石を投じるのが、京都市にある「西京極大門ハイツ(総戸数190戸)」という築41年のマンションだ。

 

 旧耐震基準の物件にもかかわらず、新築時の価格の2~6割増の高値で取引されている。敷地に余裕があるわけではなく、むしろ建て替えると京都市の景観条例に抵触して建物が小さくなってしまう既存不適格物件。入居者も高齢化している。

 

 それにもかかわらず、資産価値が上がっているのは、管理組合が「自分たちの住まいは自分たちで守る」を実践しているからだ。

 

 同マンションは築13年目の大規模修繕で積立金が枯渇し、管理組合は破綻寸前に追い込まれた。これを機に業者任せから住民による自主管理に切り替えた。

 

 1995年の阪神淡路大震災を機に、将来の建て替えに向けた体制づくりに着手。建て替え時には今より広い敷地が必要なため、周囲の土地を迅速に購入できるように3億5000万円の用地買収用の特別会計を設置したが、管理費を値上げせずこの費用を捻出するために取り組んだのが、きめ細かな節約だ。

 

 まず、マンションの工事はすべてインターネット入札にして費用を通常の7割に抑えた。古くなった配水管の取り替え工事では1戸当たりに必要な工事費38万円を組合が配った。こうした工事は工期を決めて行うケースが一般的だが、各戸の事情で工期が大幅に延び予算オーバーになる場合も多い。同組合は1戸当たり38万円を配り、5年間で住民の都合に合わせ工事をしてよいとした。

 

 ◇等価交換で建て替え

 

 その結果、予算オーバーの防止に加え、「自分たちで費用を上乗せしてキッチンを新しくしよう」「バリアフリーにしよう」などの取り組みが相次ぎ、物件全体のグレードがアップした。

 

 このほかにも住民の協力で、電力の一括受電から最新の外張り断熱の導入など省エネ対策を施し、共用部の電気代を年間280万円から60万円まで減らすことに成功。さらに、組合が住民にお金を貸す「リバースモーゲージ制度」や管理費節約で生じた余剰金を住人に返す「管理費還付金制度」など、さまざまな工夫で「なかなか売り物件が出ない人気マンション」を目指し、マンションの価値を高めている。

 

 現在、同管理組合が模索しているのは、建て替えの際の近隣の公団住宅との等価交換だ。用地取得で建て替えのメドは立ったが、現在の場所での新たなマンション建設となると2~3年間はかかる。その間、住民は仮住まいを強いられるため、高齢者には負担が大きい。

 

 そこで、まず等価交換先の公団物件を建て直してもらい、一斉に引っ越した後に、これまでのマンションを取り壊して公団に渡すことを計画している。これなら1回の引っ越しでそろって新居に移れる。

 

 マンションは住民の工夫次第で価値向上も建て直しも可能──「西京極大門ハイツ」はそんな光明を与えてくれる事例だ。

 

(荻原博子・経済ジャーナリスト)

この記事の掲載号 週刊エコノミスト2017年4月4日号

特別定価:670円

発売日:2017年3月27日