固定資産税見直しテクニック 課税明細書や評価をチェック 行政と「友好的」に交渉しよう

 固定資産税の大きな特徴は、所得税や法人税・相続税のように、自分が納める税額を自分で計算する申告課税ではなく、我々の所有する固定資産を役所が勝手に評価して、一方的に税額を決めて請求してくる賦課課税であるという点である。役所の仕事に誤りはないだろうと、請求されるままに安易に払っている人は注意が必要だ。なぜなら最近、固定資産税の誤課税が大きな問題になっているからだ。

 

 埼玉県新座市では2014年、市内の一戸建て住宅に対し、27年間にわたり固定資産税を過徴収していたことが明らかになった。所有者が固定資産税の滞納を続けた結果、市は住宅を公売にかけたが、公売で落札した不動産業者の指摘で発覚したという。また、総務省が12年8月に発表した固定資産税の税額修正(税額の誤りなど)に関する全国調査の結果でも、09~11年度の3年間で市町村の97%が税額修正していたことが分かった。

 

 もはや、市町村が我々の資産を評価し、税額を計算して課税してくる賦課課税方式は信用できないということを、我々納税者は認識しなければならない。

 

 ◇「住宅用地の特例」に注意

 

 誤課税が生じる原因の一つには、市町村(東京23区は東京都)の課税当局が、不動産の実地調査(現場を実際に確認すること)をほとんどしていないことが挙げられる。実地に調査もせずに不動産をどう評価しているのかといえば、土地・建物の面積は登記簿、土地の間口や奥行きといった形状は公図に基づいて行われている。登記簿面積と実測が違っても、また公図と実際の土地の形状が違っても、実地調査を行って確認するわけではない。

 

 都は毎年1月1日現在で空撮写真を撮り、家屋の新築や増築、不動産の用途変更などを確認しているが、見落としも当然あるだろう。家屋を解体した後、法務局に滅失登記(建物が存在しなくなったことを登記すること)をしなかったばかりに、実際には存在しない家屋に固定資産税をかけ続けられた話はよく聞く。また、固定資産税はプロにとっても複雑だが、市町村には精通した職員が少ないことも誤課税の原因で、固定資産税には単純ミスもあることを疑ってかからなければならない。

 

 非常に多い課税誤りの一つが、住宅用地の課税標準(原則=評価額)を6分の1とする「住宅用地の特例」を適用していないことだ。前述した埼玉県新座市の例も、住宅の新築時に「住宅用地の特例」を適用しなかった市の単純ミスだった。固定資産税の大きな特徴は、住宅用地に対する軽減が手厚いことで、住宅が建っている住宅用地なら住宅1戸当たり200平方メートルまでの土地の課税標準は6分の1となり、毎年の税額に与える影響は大きい。毎年送られてくる納税通知書と課税明細書をしっかり確認し、適用されていなければ市町村の課税当局のミスを疑う必要がある。

 

 ◇用途変更は申し出る

 

 次は、家屋の利用状況に変化があったときだ。住宅と非住宅(店舗、オフィスなど)が混在する複合物件のような家屋の場合には、「住宅用地率」の知識が重要になる。「住宅用地率」とは、家屋全体の面積に占める居住部分の面積に応じ、土地の割合にどの程度、住宅用地の特例を適用するのかが表のように決められている。例えば、地上5階建て未満の併用住宅では、居住部分が家屋全体の面積の4分の1以上~2分の1未満の場合は、土地の面積全体の半分(0・5)に住宅用地の特例を適用する。

 

 例えば、2階建ての建物(全体の床面積180平方メートル)で商店を営むAさんが、商売の規模を縮小して従来店舗だった2階(80平方メートル)を居宅にした場合を考えてみよう。店舗を居宅に変更後、居住部分の割合は「80平方メートル÷180平方メートル=0・444」となり、先の住宅用地率の表の「併用住宅」の欄では住宅用地率は「0・5」となっている。つまり、用途変更前は敷地の100%が非住宅用地だったのが、変更後は敷地の半分が住宅用地となり、その面積が200平方メートル以下なら住宅用地の特例が適用される。

 

 このような家屋の中での用途変更は、間違いなく当局は把握していない。店舗や事務所といった非居住用から、住居に用途変更した場合は、遠慮なくすぐに課税当局に申し出てほしい。

 

 ◇説明要求は「当然の権利」

 

 自分の物件について疑問が生じたら、行政側にどのように評価されているかを確認したい。行政側も当然、納税者の疑問に答える必要があるが、行政側は誤課税についての納税者の指摘には身構えてくる。多額の税の還付が生じる可能性があるだけでなく、場合によっては責任問題に発展しかねないからだ。固定資産税は納税者にとって極めて分かりにくい税制のため、さまざまな理由をつけて追い返してしまうことすらある。そうした行政側の警戒感を解くためにも、頭ごなしの態度ではなく、まずは「自分の物件がどう評価されているかを勉強したい」という姿勢で臨むほうがいいだろう。

 

 当局から受ける説明では、物件をどう評価しているかの資料をもらう。土地なら「土地現況調査票」。家屋なら「再建築費評点計算書」「基準年別計算書」などで、各自治体によって名称は違うが必ず存在する。ただ、窓口ではこれらの資料を出し渋るケースがある。その場合は、固定資産税が所得税のような「申告課税」ではなく、課税庁側が税額を決める「賦課課税」であり、税額の根拠を知るのは納税者の当然の権利であることを強調してほしい。資料が出てくれば、その内容について説明を受け、メモを必ず取る。資料を持ち帰って専門家に相談する時に有効となる。

 

 固定資産税評価額や税額に不服があり、根拠もあるのに当局がどうしてもそれを認めなければ、各市町村に設置されている「固定資産評価審査委員会」に審査を申し出る制度がある。原則として3年に1回の評価替えの年度に行うことができ、最近では15年度が基準年度だった。ただ、審査申し出は当局が評価した評価額についてのみ認められており、税額の計算の誤りなどそれ以外の行政手続きに対する異議は行政不服審査法の不服申し立てという、別の制度を活用する。こうした手続きを経なければ、裁判所に訴訟を提起できないようになっている。 

 

 とはいえ、最近は課税当局も随時、課税に対する疑問についての相談を受け付けるようになっている。また、評価額や税額の明らかな誤りは、こうした法的手続きによらなくとも訂正することがある。疑問があればまずは当局に説明を求め、当局に誤りがないかどうかを検討させたうえ、それでも納税者の主張が通らなかった場合に審査を申し出る位置づけと理解したい。

 

 ◇還付の期間にも要注意

 

 交渉の末、課税当局が誤りを認めたとして、これで終わりではない。これまで払い過ぎた税金が、いくら返ってくるかが重要だ。地方税法では税の過徴収による還付金は、請求権の消滅時効が5年とされている。そのため、原則は5年間分の税額と、利息などの還付加算金が返ってくる。ただ、各自治体で還付に関する条例が定められており、東京都の場合はおおむね10年、さらには払い過ぎの期間を証明できれば最長20年の還付が可能だ。誤課税があった場合には必ず過去の払い過ぎも請求してほしい。

 

 ただ、課税当局がいつから誤って課税してきたのかを証明できる資料があれば別だが、何年分返すかの交渉は行政側の裁量に任せられているケースが多い。課税当局から有利な裁量を引き出すためにも、友好的に交渉することをお勧めしたい。課税当局がへそを曲げると、「どうぞ裁判にしてください」などという捨てゼリフを吐かれ、それ以上話が進まなくなることがある。

(神野吉弘・税理士)

*週刊エコノミスト2017年4月11日号 「固定資産税の大問題」掲載