2017年

4月

11日

基礎から分かる! 固定資産税のキーワード

難解な用語が並ぶ固定資産税。制度を理解するキーワードを平易に解説する。

1 税制編 ◇固定資産

 地方税法では固定資産税の課税対象となる「固定資産」について、(1)土地、(2)家屋、(3)事業用の償却資産──の三つを定義している。「土地」とは宅地や田、畑、山林など、登記簿に登記されている土地。「家屋」とは、住家や店舗、工場(発電所、変電所含む)、倉庫など、こちらも登記簿に登記されている建物が該当する。一方、基礎のない簡易な物置や、支柱と屋根だけで壁のない駐車場などは該当しない。

 

 また、「事業用の償却資産」とは、機械や設備、装置のほか、ボートやヘリコプターなど法人税・所得税で減価償却の対象となる資産を指す(自動車税、軽自動車税の課税対象などは除く)。悩ましいのは、家屋に含めて評価される建築設備と償却資産の区別だ。基本的に、家屋に取り付けられ、家屋と構造上一体となっている設備は家屋に含まれる。そのため、エレベーターや空調設備などは家屋として評価するが、壁掛け型のエアコンや飲食店の厨房設備などは償却資産となる。

 

 固定資産税は市町村税(東京23区は都税)で、市町村が税額を決定する「賦課課税」方式が採られている。償却資産は土地・建物と異なり登記制度がないため、償却資産の所有者に対して申告義務が課せられている。固定資産税は毎年1月1日時点の固定資産の所有者に対して課税し、共有名義の場合は連帯して納税する義務がある。ただし、分譲マンションなどの区分所有の土地・家屋は、区分所有者が持ち分の割合に応じてそれぞれ納税する。

1 税制編 ◇評価額と課税標準

 土地、家屋などの固定資産税「評価額」とは、地方税法で「適正な時価」とされる。納税者に毎年通知される課税明細書では、単に「価格」と表記されていることも多い。そして、地方税法ではこの評価額を原則として「課税標準」とし、課税標準に固定資産税率を掛けることで税額を計算する。固定資産税の計算方法は実はシンプルだ。しかし、この「適正な時価」を計算する必要性から、総務省が「固定資産評価基準」で細かく評価方法を定めており、特に土地、家屋の評価方法は難解を極めている。

 

 また、評価額と課税標準も往々にして一致しない。評価額に対してさまざまな特例や措置を設けることで、課税標準を変動させているからだ。固定資産税は、評価の方法だけでなく、さまざまな特例や措置の計算という、2段階にわたって複雑な仕組みになっている。事業用の償却資産は、所有者が取得した時の価格に、償却資産の耐用年数に応じた減価率を毎年掛けて評価額を下げ、これを課税標準として課税する。

 

 一方、固定資産税の課税標準額が一定額(免税点)に満たない場合は、徴税コストに見合わないという理由で課税しないことになっており、土地は30万円未満、家屋は20万円未満、償却資産は150万円未満が免税点となっている。

 

1 税制編 ◇固定資産課税台帳

 固定資産税の課税対象となる固定資産は、市町村が「固定資産課税台帳」に登録し、この課税台帳に基づき課税する。課税台帳には評価額や課税標準のほか、税額や所有者(納税義務者)の住所、氏名、土地・家屋の属性(土地の地目、地積、家屋番号や床面積など)などが記載してある。土地・家屋の情報は不動産登記がもとになっているが、地目など実際と異なっていることも少なくない。課税台帳の誤りを指摘して修正してもらうことが必要になる。

 

 自分が所有する土地・家屋の評価額や課税標準、税額などは毎年、市町村から納税通知書とともに送られてくる課税明細書でも確認できるが、市町村の役所で固定資産課税台帳をいつでも閲覧できる。また、同じ市町村内であれば、「縦覧」という制度で他の所有者の土地・家屋の評価額を見られ、自分の評価額と比較できる。ただ、縦覧期間は毎年4月1日以降、2カ月程度とする市町村が多く、いつでも見られるわけではない。

1 税制編 ◇固定資産税率

 固定資産税は市町村税であり、地方自治の観点から税率は本来、市町村が自主的に決めるべきものだ。ただ、「市町村間の住民負担の均衡化」を図ることなどを理由に、地方税法で市町村が通常用いるべき税率として「標準税率」が定められ、1・4%とされている。総務省によれば、標準税率を採用している市町村は2015年度、91・1%にのぼり、標準税率未満はゼロ。人口50万人以上の市では100%が標準税率を採用している。

 

 実は、この標準税率は1955年以来、60年以上も見直されていない。一方、固定資産税収は99年度の9・3兆円まで右肩上がりで増加を続け、その後は9兆円前後で推移しており(15年度は8・7兆円)、市町村税収の約4割を占める基幹税となっている。この間、バブルの崩壊などがあったにもかかわらず、固定資産税収が安定しているのは、税率ではなく評価の方法や課税標準を調整するさまざまな措置を導入するなどしてきた結果だ。

 

1 税制編 ◇評価替え

 固定資産税の建前は、毎年1月1日時点の「適正な時価」を課税標準として課税するものだ。しかし、毎年「適正な時価」を評価することは、あまりに実務負担が大きい。そこで、3年ごとに資産価格の変動に対応して評価額を適正に見直す制度が採られており、これを「評価替え」という。直近では15年度が評価替えの年で、次の評価替えは18年度。原則として次の評価替えまで評価額を据え置くが、宅地は大幅な地価下落がある場合、簡易な方法で評価額を修正できる特例措置がある。

2 土地編 ◇固定資産税路線価

 市街化された地域の道路ごとに設定された1平方メートル当たりの評価額で、その道路に接する土地の評価額を計算する基礎となる。現在は国土交通省が発表する地価公示価格の7割の水準になるように設定され、評価替えの年ごとに見直される。15年度の評価替えでは、14年1月1日の地価公示価格の7割の水準を目安に設定された。全国の固定資産税路線価は、一般財団法人資産評価システム研究センターが提供するホームページ「全国地価マップ」で見られる。

 

 土地の固定資産税評価額は、基本的に固定資産税路線価に土地の面積を掛けて求める。ただ、土地は形がいびつ(不整形)だったり、道路に面する間口が狭かったりと、条件が悪く利用価値が低いものがある。固定資産評価基準では、不整形地補正率や間口狭小補正率などを定めており、土地の悪条件に応じて評価を下げることになっている。一方、複数の道路に面する土地の場合は、利用価値が上がる分を評価が高くなるよう加算する。

2 土地編 ◇画地

 土地の評価は登記上の筆ではなく、一体的に利用されている区画ごとに評価する。この区画の単位を「画地(かくち)」という。例えば、2筆の土地の上にオフィスビルが建っている場合は、2筆を一つの画地として評価する。賃貸アパートが建つ土地と、アパート居住者専用の駐車場で筆が分かれているような場合も、同様に一つの画地と考える。逆に、1筆の土地を住宅と店舗として別々に利用している場合は、住宅と店舗部分の土地を分けて評価する。

2 土地編 住宅用地の特例

 人が居住する住宅が建っている土地は、固定資産税・都市計画税の負担を軽減する「住宅用地の特例」によって、評価額に対して課税標準が大幅に引き下がる。住宅1戸につき200平方メートルまでの土地(小規模住宅用地)は、固定資産税の課税標準が評価額の6分の1となる(都市計画税は3分の1)。また、200平方メートルを超える土地(一般住宅用地)は、課税標準が評価額の3分の1となる(都市計画税は3分の2)。この特例が適用されているかどうかは税額に与える影響が大きい。

 

 住宅の完成を年内に急いだり、取り壊しのタイミングを年明けにずらしたりするのは、この住宅用地の特例のためだ。毎年1月1日の時点で住宅が建っていれば特例が適用されるが、更地なら適用を受けられず課税標準が6倍になってしまう。ただ、住宅の建て替えの場合は、すでに新築工事に着手しているなどの要件を満たせば特例が引き続き適用される。

 

3 家屋編 ◇再建築価格方式

 再建築価格とは家屋を評価する際、同じ家屋を評価時に新築するとした場合に必要となる建築費のこと。固定資産評価基準ではこの再建築価格方式で家屋を評価することにしており、家屋の取得時の価格や実際の建築工事費とは異なる。大きくは木造と非木造に分けた上で、屋根や天井、外壁などの部分ごとに評価する(部分別評価)。固定資産評価基準の「再建築費評点基準表」では部分ごとに材質や量などに応じた評点数が細かく決められている。

 

 こうして積み上げた再建築費評点数に、新築家屋の場合はこれに1年分の劣化を補正する経年減点補正率(初年度の賦課期日である1月1日まで1年経過したとみなす)などを適用して総評点を算出。1点を1円としたうえで、物価水準による補正率(東京23区と各地方の物価差を反映した補正)などを加味し、家屋の評価額が決まる。既存の家屋はこうして求めた評価額に、評価替えごとの物価変動分(再建築費評点補正率)や、建築時点からの経年劣化分の経年減点補正率などを掛けて求める。

 

 家屋の評価額が下がらないことがあるのは、経年劣化分を加味しても、評価替えに伴って物価上昇分が反映されるためだ。ただ、家屋では評価替えに伴って前年度の評価額を上回った場合には、前年度の評価額に据え置かれることになっている。つまり、家屋の評価額は前年度から下がらないことはあっても、上がることはない。家屋の評価額が年数を経過しても上昇するのでは、納税者の理解を得られにくいからだ。

3 家屋編 ◇比準評価

 東京23区など都市部では毎年、多くの新築物件が建設され、そのたびごとに部分別評価していては評価の作業が追いつかない。そこで、より簡易に評価するために用いられているのが「比準評価」の方法だ。具体的には、比準評価の基準となる「標準家屋」を定めて部分別評価したうえで、新たに評価したい家屋と標準家屋を使用資材や施工量などで比較。その相違を補正して評価額を求めている。一方、新築件数が少ない地方の市町村では、基本的に部分別評価を採用している。

(編集部)

(監修=古郡寛・税理士)

*週刊エコノミスト2017年4月11日号「固定資産税の大問題」掲載

特別定価:620円

発売日:2017年4月3日


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