2017年

4月

25日

経営者:編集長インタビュー 木村博紀 朝日生命保険社長

◇医療・介護保険でお客さまの「生きる」をサポート

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 朝日生命はどんな会社ですか。

木村 前身の帝国生命の創業が1888(明治21)年で、来年3月に創業130周年を迎える歴史のある会社です。現在は『一人ひとりの“生きる”を支える~「お客様大好き」企業。朝日生命~』を企業ビジョンに、今後の日本市場を想定して「シニア(高齢者)」「女性」「企業経営者」を三つの戦略マーケットと位置づけ、お客さまが生きていくためのサポートをする商品やサービスを提供しています。

 

── 他社にない強みや特徴は。

木村 成長市場の医療保険や介護保険など(生命保険、損害保険のどちらにも属さない)「第3分野」と呼ばれる保険商品に、同業他社に先駆けて取り組んできました。第3分野を本格展開したのは2003年です。同業他社と比べると、万一の時に備える「保障性商品」のウエートが高く、資産形成効果がある「貯蓄性商品」のウエートは低くなっています。その保障性商品の中でも、第3分野のウエートが高いのが特徴です。

 

── 三つの戦略マーケットを位置づけたのはなぜですか。

木村 日本の将来を想定すると、少子高齢化が進んでシニアのお客さまが増えます。また、働く女性も増えていくと考えたからです。実際にそういう時代になってきています。死亡保障という市場もお客さまにとって大切ではありますが、さまざまなリスクへの備えが非常に重要になるだろうと考え、第3分野に力を入れてきました。

 

── 現在の業績は。

木村 保障性商品の保有契約高(年換算保険料)は長年減少傾向でしたが、14年度に底打ちして反転しています。特に、主力の営業職員を通じた販売チャネルでは、介護保険やがん保険の新契約が好調で、目標としていた営業職員チャネルでの保有契約高反転目標を1年前倒しで16年3月に達成しました。

 

── それは好調ですね。

木村 約1万2000人の営業職員は、保険金の支払いに至るまでアフターフォローもしっかりできるのが強みで、有力な販売チャネルという認識は今も昔も変わりません。東日本大震災でも対面型の営業職員の存在が改めて評価されました。また、保険ショップなどの代理店チャネルも好調に推移しています。ここ数年は、超低金利下で基礎利益(保険関係の収支と運用関係の収支を足したもの)は横ばい基調ですが、保有契約高の純増のペースを上げ、基礎利益が反転するようなシナリオを描きたいと考えています。

 

 ◇認知症保険も発売

 

── どのような商品性が評価されたと考えますか。

木村 お客さまのニーズに沿った商品開発を進めてきたことでしょう。12年4月に介護保険「あんしん介護」を発売しましたが、商品の分かりやすさで業界では異例の「グッドデザイン賞」を受賞しました。保険金の支払い要件を公的介護保険の要介護認定と完全連動させたことで、商品の説明も簡素になりお客さまの理解も得やすくなったのです。昨年4月には認知症に特化した「あんしん介護 認知症保険」も発売しました。家族が認知症になって苦労される人も増えており、こちらも好評をいただいています。

 

── 02年には経営危機に直面しました。

木村 当時は01年の米同時多発テロで株価が下落し、保有する株式の評価損が増加してしまいました。そこで、株式など価格が変動しやすい資産の残高を圧縮し、市場環境の悪化に対する耐久力を付けること、第3分野を中心に保有契約高を増やし地道に収益力を高めることに取り組みました。これが現在の成果につながったと思っています。

 昨年8月には基金(株式会社の資本金に相当)の償却(返済)繰り延べも解消し、資本政策の柔軟性が向上します。今年1月には米ドル建ての永久劣後債を3・5億ドル(約400億円)発行しました。

 

── 運用部門の経験が長いですが、現在の金融環境にどう対処しますか。

木村 運用面では非常に厳しい状況です。ここ数年の日銀の金融緩和の結果、長期金利が非常に低い水準で推移しており、利回りの低い円建て債券を積極的に組み入れることは適当ではありません。為替ヘッジした外貨建て債券のほか、投資信託やヘッジファンドなど「オルタナティブ投資」を組み入れたりして、運用の高度化を進めています。リスクを取りすぎていないかは当然、チェックしています。超低金利が当分、続くことを前提に経営を考えていく必要がありますね。

 

── 他の生保では海外のM&A(企業の合併・買収)や業界再編も起きています。

木村 日本は総人口は減少しますが、シニアや働く女性、単身者は増えていくので、お客さまのニーズにはまだ拡大余地があり、自分たちで国内市場を開拓できると思っています。一方、海外市場は長期的な視点で考え、調査・研究をしていこうという段階です。再編はまったく考えていません。

 

── 4月に新社長に就任しました。

木村 創業130周年という節目の年に社長となります。将来にわたってお客さまに信頼され、社会に貢献できる会社、また従業員が明るく伸び伸びと仕事ができる会社を目指して経営していきたいですね。

(構成=桐山友一・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 1996年の保険業法の全面改正の前後に企画課に在籍していました。生・損保の相互参入など制度が大きく変わり、非常に勉強になりました。

 

Q 「私を変えた本」は

A 童門冬二さんの『小説 上杉鷹山』です。粘り強く改革を進めるところなどが、ビジネスマンとして参考になります。

 

Q 休日の過ごし方

A スポーツジムに週1回以上、通い続けています。もう10年以上になりますね。多少疲れていても汗を流すと、疲れが取れたりリフレッシュできます。

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 ■人物略歴

 ◇きむら・ひろき

 1962年生まれ。和歌山県出身。和歌山県立桐蔭高校、慶応義塾大学経済学部卒業後、84年朝日生命保険入社。取締役執行役員資産運用部門長、取締役常務執行役員経営企画部主計部担当などを経て、2017年4月から現職。55歳。

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事業内容:生命保険業

本社所在地:東京都千代田区

設立:1947年7月

基金総額:2460億円(2016年3月末)

従業員数:1万6461人(2016年3月末)

業績(2016年3月期・単体)

 経常収益:6527億円

 経常利益:148億円