経営者:編集長インタビュー 炭井孝志 ケンコーマヨネーズ社長

◇業務用に特化 サラダ市場を創造、拡大

 

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 社名からは、マヨネーズ専門のメーカーを想起させます。

炭井 確かに当社は、町のお総菜屋さんにマヨネーズを供給したことに始まります。しかし、創業直後からマヨネーズを販売するだけではなく、マヨネーズを使ったメニュー提案をしていました。そして時代の流れとともに、新たな素材を見つけて商品を開発し、今は商品数3100超の業務用食品メーカーとなりました。 

 

── 売り上げの内訳は。

炭井 商品別ではサラダ・総菜類が4割、タマゴ類(卵焼き、タマゴサラダなど)が3割、マヨネーズ・ドレッシング類が2割です。

 

── どう商品群を広げたのですか。

炭井 マヨネーズの供給先からサラダ・総菜に関する相談を受ける中、自社で製品を開発するようになりました。たとえば、1970年代には、大手製パンメーカーから「総菜パンにはさむ具材として、長持ちするサラダが欲しい」と要請され、タマゴサラダやツナサラダを開発しました。また、大手ハンバーガーチェーン「マクドナルド」のハンバーガー用ソースも当社が製造しています。

 

── 他にはどんな商品がありますか。

炭井 最近では、コンビニエンスストアの弁当やスーパーの総菜用に、各種サラダやひじきや野菜の煮物、卵焼きなど幅広い食品を供給しています。今でこそ普及したゴボウサラダやパンプキンサラダは、当社が開発したものです。サラダを切り口にして、新たな素材を投入し新たな市場を創っていきます。

 

── 供給先はどこが多いのですか。

炭井 売上高ベースではコンビニが3割、外食産業が3割、スーパーなどの量販店が2割、製パンメーカー・町のパン屋と給食向けで2割です。

 

── なぜ業務用に専念するのですか。

炭井 小売店向けに家庭用商品を供給するのはもうからないからです。家庭用向けは、キユーピーや味の素など一大ブランドがあり、価格競争も激しいです。80~90年代、家庭用を手がけていた時期もありました。その時期は、会社を挙げて小売店に営業しました。そもそも、業務用と家庭用の販売方法は異なるにもかかわらず、 家庭用の売り方を知らないので、収益は真っ赤っか。しかも、人的資源を家庭用の営業に回したので、業務用への営業もおろそかになりました。私はずっと「会社の強みを生かせるのは業務用の世界だ」と思っていましたので、私が社長になった後の2003年に家庭用はやめました。私が社長を続ける限り、家庭用向けはしません。

 

── 供給先の要望も厳しいのでは。

炭井 供給先には鍛えられました。世界的なハンバーガーチェーン、日本を代表する製パンメーカー、最近ではコンビニなど常に厳しい品質、値段を求められてきました。おかげで、常に食品市場のトレンドを感じられるポジションにいられました。供給先の求めることを先読みした結果、当社の強みと言える多品種少量生産ができるライン運用を確立しました。

 

── 強みを持つ商品は。

炭井 タマゴ類です。タマゴの総菜メーカーは通常、養鶏場で割ったタマゴの「液卵」を調達します。液卵はコストが低いのですが、一度熱殺菌が必要なので風味が落ちます。これに対して当社の静岡県の工場では、殻付きタマゴを調達して工場で割って24時間以内に加工します。卵焼きの供給先にも「液卵より格段においしい」と評価されます。殻付きタマゴの調達費は高いのですが、熱殺菌を経ずに割ってすぐに調理できるラインを作り上げたことで、トータルコストは下げられます。

 

── 食品メーカーは、国内の人口減にあえいでいます。

炭井 日本人の胃袋は減っています。しかし、働く人が増えて中食(なかしょく)需要は増えています。また、ゴボウサラダのように今までにない素材の商品を提案することもできます。日本市場全体のパイは広がりませんが、自分たちの市場を広げることはできます。

 

 ◇工場も夕方退社目指す

 

── 3カ年の中期経営計画は今年度が最終年度です。

炭井 18年3月期の連結売上高750億円に向けて順調に推移しています。17年3月期も過去最高益を見込みますが、製品の需要に生産設備が足りていません。目標到達のためには、現在進めている工場の新増設がカギとなります。

 

── 工場の新増設とは?

炭井 19年3月までに総額150億円強を投じて、北海道と神奈川県にサラダ類・総菜類工場を新設し、静岡県の卵焼き工場と京都府のサラダ類工場を増設します。工場新増設には長時間労働を是正する狙いもあります。現在ほぼ24時間フル稼働ですが、長期的には、午前8時~午後5時の稼働でも需要に応えられる体制にしたいです。

 

── 製造業で午前8時~午後5時稼働は成り立つのですか?

炭井 周囲には「その稼働時間ではもうからない」と言われます。しかし、人手不足の時代にあっては工場の労働環境も変えなければなりません。私も法人向けの営業時代、午前8時に出社して、午後5時には退勤していました。朝一番から力の限り働く人が、夕方以降も働けるわけがないのは経験で分かります。今、工場だけではなく、事務部門や間接部門も含めた社内全体で、この時間内で効率よく働ける方法を模索しています。

(構成=種市房子・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 法人向けの営業担当でした。誰よりも早く書類を確認して、電話対応をし、外勤に出ており、それで十分でした。

 

Q 「私を変えた言葉」は

A 山本五十六の「男の修行」です。

 

Q 休日の過ごし方

A ウオーキングか、仕事がらみのゴルフです。昨年から四国八十八カ所巡りも始めました。逆ルートで香川県からスタートして、愛媛県まで到達しました。

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 ■人物略歴

 ◇すみい・たかし

 1953年生まれ。香川県出身。県立高松高校卒業。1978年東京水産大(現・東京海洋大)卒業後、ケンコーマヨネーズ入社。営業畑を皮切りに購買、生産部門を歩み、98年に管理部門部門長、99年に取締役。2000年から現職。

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事業内容:業務用食品

本店所在地:神戸市灘区

東京本社:東京都杉並区

設立:1958年3月

資本金:21億円

従業員数:2957人(連結)(2016年3月現在)

業績(16年3月期・連結)

 売上高:669億円

 営業利益:34億円