FLASH! オリンパス元社長らに590億円賠償命令 東芝でも巨額賠償の可能性が大

 オリンパスの粉飾決算事件で、会社に損害を与えたとして、同社や株主が旧経営陣と相続人計18人に損害賠償を求めた訴訟の判決が4月27日、東京地裁であった。大竹昭彦裁判長は、旧経営陣らに総額約590億円をオリンパスに支払うよう命じた。

 判決は、菊川剛元社長らが取締役として本来果たすべき注意義務を果たさなかったとして8人(うち3人は相続人)に賠償を命じ、残る元取締役10人については請求を棄却した。

 2000年に大阪地裁が旧大和銀行経営陣に約830億円の支払いを命じたケース(控訴審で約2・5億円で和解が成立)以来の巨額の賠償命令となった。

 この判決について識者の意見は分かれている。

 青山学院大学大学院で企業会計に詳しい八田進二教授は、オリンパス粉飾事件は、金融商品取引法の改正で財務報告に関わる内部統制が盛り込まれた直後に発覚したため、「日本の資本市場の信頼を揺るがす事件だった。有効な内部統制の構築・維持責任を放棄していた旧経営陣を断罪することで、広く経営者に対して抑止力となることを考えて、このような巨額の賠償命令を出したのでは」と見る。

 上場企業の社外取締役を務め、企業のコンプライアンスに詳しい大手法律事務所のパートナー弁護士は、「裁判官は世論の動向に気を配っている」と分析し、「経営者はそれだけ重大な責任を担っているというメッセージになる」と評価する。

 一方で、企業統治に詳しい上村達男・早稲田大学教授は「オリンパスの元経営陣に責任がないわけではないが、約590億円は多すぎるのではないか」と疑問を呈する。

「企業で問題や損害が発生した場合には、その企業の組織、監査制度、取締役会などさまざまな仕組みが関わっている。企業は多額の資金を扱うが、取締役などの個人がどう責任を負うかは日本ではきちんと議論されていない。個人が生活できなくなるような今回の判決は問題がある」と指摘する。

 企業の内部統制が専門の山口利昭弁護士は別の視点で、「甘い判決」と断じた。「裁判では会社が起こした訴訟と、株主代表訴訟を一緒に審理したが、株主代表訴訟でのみ訴えられた10人の被告人については訴えを棄却している。要するに事情を知らなかった人の監督責任に関しては、かなり寛容な判決になっている。株主代表訴訟の被告人が、果たして監督義務を尽くしていたかについては疑問が残る」と話す。

 オリンパス広報は「現時点では係争中のため会社としてコメントは差し控える」としている。

 

 ◇東芝も同じ裁判長

 

 今回の判決は、他の企業の不祥事にも影響を与える可能性がある。特に注目されるのは東芝の不正会計問題だ。オリンパス事件の判決を下した大竹裁判長は、東芝が旧経営陣5人に32億円の賠償を求めている訴訟も担当している。

 日本の企業法務に精通する久保利英明弁護士は、「東芝訴訟も、明確な証拠を持つ会社が旧経営陣を訴える構図のため、オリンパスの判決のように巨額の賠償額になる可能性は高い」と予想する。

(谷口健、酒井雅浩、大堀達也、河井貴之・編集部)