FLASH!神戸製鋼の絶対絶命

 

◇泥沼化する名門企業の悪質不正

◇見えない損失と広がる信用不安

 

 神戸製鋼所の品質データ改ざん問題が泥沼化している。不正は10月8日に発表した銅・アルミ5製品のほか、11日に鉄粉など2製品、13日には売上高の35%を占める主力の鉄鋼4製品を含む10製品で検査データの書き換えや検査の未実施が判明した。日を追うごとに不正の範囲が拡大している。

 不正が発覚した製品の納入先企業は、当初の約200社から約500社に拡大した。自動車や航空機、原子力発電所など広範囲に及ぶ。10月17日には米司法当局から販売済み製品に関する書類の提出を求められていることも明らかになり、今後、国内外の顧客企業からリコールや費用請求を受ける可能性が出てきた。神戸製鋼は調査を継続中で、損失がどこまで広がるのか見通しがつかない状況だ。

 

 

 神戸製鋼は2018年3月期に3期ぶりの最終(当期)黒字(350億円、前期は230億円の赤字)を見込んでいた。だが、不正問題の影響が不透明な上、製品チェックを厳密化したことで足元で出荷量が減少しており、3期連続の最終赤字に陥るとの見方もある。

 こうした事態を受けて、金融市場は厳しい見方を強めている。神戸製鋼の株価は10月11日、前日比190円安の878円に急落(図1)。クレジット市場では、日本格付研究所(JCR)が17日、神戸製鋼の格付けを現在の「A」から格下げ方向で見直すと発表。企業の信用リスクを反映するCDS(クレジット・デフォルト・スワップ、5年物)は10月10日、258ベーシスポイントをつけ、前日の4・2倍に急騰した(図1)。

 神戸製鋼は発行済み社債のうち200億円が10月27日に償還期限を迎える。その後も18年1月にも100億円と償還が続く。新規に社債を発行して償還しようにも、「社債の買い手がつかず、かなり難しいだろう」(SMBC日興証券の阿竹敬之クレジットリサーチ課長)。銀行借り入れでしのがざるを得ない。


 だが、借り入れも厳しい状況だ。ある地銀関係者は「コンプラ違反を資金回収の大義名分にする」とも話しており、早期の回収姿勢を強めている。地域金融機関が借り換えに応じなければ、メインのみずほ銀行はじめ主力行が肩代わりするしかない。経営危機企業に見られる「メイン寄せ」が現実味を帯びる。

 また、事態がさらに悪化すれば「資産売却に追い込まれる可能性もある」(BNPパリバ証券の中空麻奈チーフクレジットアナリスト)。すでに一部で報道されている不動産関連会社のほか、主力事業であるアルミ事業(銅とあわせて16年度の経常利益は120億円)も選択肢からはずせなくなる。

◇後手に回る対応

 

 鉄鋼産業に詳しい東北大学大学院経済学研究科の川端望教授によると、製品を納入する個別の企業ごと、製品ごとに要求が細分化されていたと見られ、「それを片っ端から守ることの負担を逃れようとして、不正に手を染めてしまったのではないか」という。

 日を追うごとに不正領域が拡大し、金融市場や取引先が危機感を強める一方で、当の神戸製鋼から緊張感が伝わってこない。神戸製鋼の対応は後手に回っている。10月8日の記者会見に川崎博也会長兼社長が現れずじまい。また鉄鋼事業4製品については、一番早いもので16年には把握し、取締役会も認識していたにもかかわらず、発表は不正発覚後の10月13日だった。危機感を強める関係者とは対照的な神戸製鋼の姿勢こそが、長年不正を組織ぐるみで繰り返せた鈍感力の表れか。

花谷美枝、荒木宏香・編集部)