「デモクラシータイムス」の船出 失敗を糧に再挑戦するネットTV=山田厚史・デモクラシータイムス同人

山田厚史(デモクラシータイムス同人)

やまだ・あつし◇1948年生まれ。朝日新聞社で主に経済を担当。元編集委員。96年からテレビ朝日コメンテーターとして「サンデープロジェクト」などに出演。2013年4月、有志とともに「デモクラTV」を、17年に「デモクラシータイムス」を立ち上げる。


「デモクラシータイムス」を4月からユーチューブで仲間と始めた。代表を務めてきた「デモクラTV」は自分なりに幕を引き、一からの出直しだ。

 

 課金方式を見直した。デモクラTVは有料放送で1カ月525円払ってくれる会員が支えだった。安定収入が確保できる半面、視聴者は4000人前後の会員に限定される。

 

 ユーチューブへの乗り換えは順調な滑り出しで、番組によっては視聴者の数がひとケタ跳ね上がった。森友学園と財務省の関係を語った「闇と死角」シリーズは視聴が5万回に迫る勢い。知名度はほぼゼロだが、関連動画やネット検索で視聴者がやってくる。

 

 会員制との違いは視聴傾向にも表れる。デモクラTVの視聴者は、配信される番組を頭から終わりまでしっかり見る人がほとんど。番組は1時間が原則で、土曜に生放送する「デモクラTV本会議」は2時間。けっこう長いが、人によってはアーカイブから引き出して納得いくまで何度も見てくれる。

 

 ユーチューブでは短時間の視聴で去ってゆく。検索に引っかかりやすい工夫も必要だ。キーワードを見出しに入れるのがこの世界の常識。課金する会員制が宅配の新聞なら、ユーチューブの無料開放は駅売りのタブロイド紙と言えるだろう。興味を誘う見出し、初っぱなから引き付ける構成で、忙しい視聴者を捕まえる。

 

 だが、デモクラシータイムスはタブロイド路線でいいのか。はやりのニュースを独自の視点で解説するのが「売りもの」ではあるが、世間の関心は薄くても、伝えたい課題を議論のテーブルに載せる。それが使命の一つだ。

 

 例えば、『沖縄タイムス』と提携して沖縄を本土に届ける「新沖縄通信」は伝え続けることに意味がある。紙が燃えるようにメラメラと広がるニュースを追いながら、くすぶりつづける社会の火だねを粘り強く提起したい。

 

 ◇ユーチューブの無料放送に

 

 源流にあるのは、CS放送「朝日ニュースター」の愛川欽也パックインジャーナルだ。リストラで放送局がまるごとテレビ朝日に身売りされることになり、愛川さんが番組を引き取ってネットで始めた。だが1年しか続かず、やむなく出演者が会社を作って放送を引き継いだのがデモクラTVだった。

 

 4年続いたが、運営母体である株式会社インターネット・ニュース・ジャパンは4月末で清算される。資金繰りの悪化と会計の混乱で、株主総会は「持続不可能」と判断した。

 

 なぜ失敗したか。「4年やっても会員は増えず、このやりかたでは将来はない」「オピニオン重視とメディアとして大きくしたい、という相いれない考えが併存した経営に無理があった」など見方はさまざまだ。

 

 私は、ジャーナリストが片手間に経営するには重い事業だったと思う。やむなく経理出納、会員管理、番組送出システムなどを役員の一人が経営する会社に業務委託した。この会社を掌握できず、不透明な会計処理を是正できなかったのは、代表取締役である私の力不足だと考えている。

 

 デモクラTVは有限会社プライムが営業権を買い、同社による運営で継続される。デモクラTVを支えてきたコメンテーターの多くがデモクラシータイムスを立ち上げた。かつてのお客様からは「会費を1年分払い込んでしまった、どうすればいい」などの苦情が来ている。こうお答えしている。

 

「会員の皆さん、混乱させてごめんなさい。ユーチューブで出直します。当分は無料です。既存のメディアに飽き足らない皆様、どうぞ見てください」

 

*週刊エコノミスト2017年4月25日号掲載