全自動衣類折り畳み機で世界を席巻 阪根信一 セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 さまざまな衣類に対応した世界初の全自動折り畳み機「ランドロイド」を開発した。大きさは高さ220センチ、幅87センチ、奥行き63センチ。1回で約30枚の衣類が投入でき、所要時間は1枚約5~12分。想定価格は185万円程度で来春までの納品を目指す。

 

── ランドロイドが話題ですね。

 

阪根 一部で予約を受け付けており、数百人の購入希望者がいます。

 

── どのような仕組みですか。

 

阪根 目で見て、頭でどのような衣類かを判断しなくてはならないので、カメラによる画像認識機能と、人工知能(AI)を搭載しています。手で畳む機能を実現しているのはロボットアームです。

 

── 衣類の折り畳みに着目したのはなぜですか。

 

阪根 世の中にないもの、人々の生活を豊かにするもの、技術的ハードルが高いものという三つの条件を満たすテーマを探しましたが、思いつくものは特許が取られていたりして、誰かが既に取り組んでいました。ある時、技術系の会社は男性社会なので、男の自分が考えても見つからないと思い、妻に聞いてみたところ、「洗濯物の自動折り畳み機が欲しい」と言われました。関連する特許も出ていなかったので、開発に着手することにしました。

 

── 苦労はありましたか。

 

阪根 2005年から開発を始めて、3年くらいで畳む技術はある程度実現できました。ただ、衣類がぐちゃぐちゃの状態からはなかなかきれいに畳めません。当時、住友電工の技術者から脱サラして起業した父の会社で開発を進めていましたが、リーマン・ショック(08年)が起き、他の事業は縮小している中で、こんな訳のわからないことをなぜ続けているのかという社内の目もありました。それでも11年ごろに技術的なブレークスルーが起き、手応えを感じました。

 

── 注目を浴びるきっかけは。

 

阪根 15年10月に国内最大の家電見本市「CEATEC(シーテック)」で発表してから反響がありました。

 

── 今後の改善点は。

 

阪根 3年間は新しいモデルをつくりません。購入後もAIは機械学習で随時更新してより精度を高めていくので、最初に買っても、3年後に買っても性能は変わらないようになります。10年後にはより普及できるような価格に抑えたいですね。まずは折り畳み専用機を世界中に普及させてから、将来的には洗濯・乾燥機能も備えたものをつくりたいです。

 

 ◇医療機器やゴルフ用品も

 

── 経営者を志したきっかけは。

 

阪根 化学の研究者になるために大学卒業後に留学した米国の大学院ではある程度成果を出せたのですが、上に行けば行くほど、これは勝てないという研究者が大勢いました。でも、技術とコミュニケーションが必要なビジネスなら、勝負になるのではないかと思いました。父の会社はOA機器用の部材の製造など技術系の企業だったので、そこに就職し、社長になりました。

 

── なぜ起業したのですか。

 

阪根 父に外部資本を入れることに賛同してもらえなかったからです。父の会社はBtoB(企業間取引)ビジネスでしたが、将来的にはBtoC(消費者向け)ビジネスで勝負したいと思っていました。そのためには外部資本を入れて会社を大きくする必要があります。祖父が経営していた上場企業が、ホテルニュージャパンの社長だった横井英樹さんに敵対的買収で乗っ取られたため、自分の会社に外部資本は入れないとの思いを父は持っていたようです。

 

── ランドロイド以外にはどのような事業をしていますか。

 

阪根 いびきや睡眠時の無呼吸を治療する機器「ナステント」を14年に発売しました。これまで約6万人に100万本以上が売れました。重症無呼吸患者だった私はCPAP(シーパップ、睡眠中に鼻に掛けたマスクから、圧力を加えた空気を送り込み、気道が閉塞(へいそく)しないようにする装置)で快適に眠れましたが、出張などの際の持ち運びが大変だったので、使い捨てコンタクトレンズのようなものを開発したいと思いました。ナステントはシリコーン製の使い捨てチューブで、睡眠時に鼻の穴に差し込んで利用します。1箱は7本入り(1週間分)で3220円(税抜き)です。

 

── 事業が多彩ですね。

 

阪根 人工衛星にも使われる特殊なカーボン製のゴルフシャフトもつくっています。独自に開発した、スイング中のシャフトのしなりとねじれを測る機械を使い、1本1本オーダーメードでつくります。価格は1本12万~1200万円(税抜き)。尾崎3兄弟らプロゴルファーにも愛用されています。

 

── 関連性のない複数の事業をやっているのはなぜですか。

 

阪根 イノベーションを起こすためには、ニーズからテーマを探す必要があると思いました。持っている知見を生かして何かをやろうとしてもイノベーションを起こすためのテーマは見つからないと気付き、世の中のニーズを優先した結果、バラバラのテーマになりました。

 

── 社名の由来は。

 

阪根 世界中に七つの開発拠点をつくりたいとの思いを込めています。

 

── 今後の目標は。

 

阪根 四つ目、五つ目の商品開発も進めており、特許も申請しています。早ければ1年後くらいに発表できるかもしれません。日本で生まれた技術で世界を席巻したいですね。

(構成=松本惇・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 父が起業した会社の社長に就任しました。会社を成長させるため、組織のマネジメントと対外交渉力を学びました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 松下幸之助さんの本は全て良かったのですが、特に印象に残っているのは『素直な心になるために』や『商売心得帖』です。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 半分は仕事ですが、残りの半分は子供と遊んでいることが多いですね。

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 ■人物略歴

 ◇さかね・しんいち

 1971年生まれ。高槻高校、甲南大学卒業後、米デラウェア大学化学・生物化学科博士課程修了。父が起業したI・S・Tに2000年に入社し、08年に社長就任。11年のセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ創業時から現職。46歳。

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事業内容:ゴルフ用品、医療機器、家電などの製造・販売

本社所在地:東京都港区

設立:2014年7月18日(11年2月創業)

資本金:77億円(資本準備金含む)

従業員数:117人(17年6月30日現在)

業績 非公開