「自分たちの生活から不満を発見し、商品開発」大山健太郎 アイリスオーヤマ社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どんな会社ですか。

 

大山 生活用品の製造販売をしています。メーカーでありながら問屋の機能を兼ね備え、量販店に自社商品を直接納入している「メーカーベンダー」は当社ぐらいでしょう。

 当社は需要創造型企業です。マーケットインではなく、ユーザーイン、つまり自分が欲しいと思うものは皆が欲しいと思い、開発します。市場調査はほとんどやりません。我々自身の生活をしっかりと見ます。

 生活の不便を快適に変える商品で奥様方から高評価をいただいてきましたが、ここ3年で家電が売り上げの半分を占めるようになりました。主力は炊飯器や布団乾燥機です。

 

── 会社の成り立ちは。

 

大山 父が東大阪で創業した従業員5人のプラスチック工場を19歳で継ぎ、零細下請けを脱皮したいと養殖用のブイ(浮き)や苗箱など1次産業の資材を手がけました。2000年代にペット用品、園芸用品を売り出しました。09年のLED(発光ダイオード)電球を皮切りに家電に参入しました。

 

── 最大の転機は。

 

大山 1970年代のオイルショックです。会社は破竹の勢いで拡大し、宮城県にも工場を構えていましたが、倒産寸前となりました。オイルショックで前倒しになった需要が止まり、供給過剰で値崩れが起きたのです。

 不況でも利益を出せる会社を作ろうと思いました。値崩れを引き起こす競争のないビジネスをするため、潜在需要を顕在化させることを考えました。園芸用品でガーデニングブームを作り、ペット用品で家畜をファミリーに変えてきました。

 

── LED電球のきっかけは。

 

大山 当初、夜も庭を楽しむために消耗しにくいLED電球を作りました。09年、鳩山由紀夫首相(当時)の二酸化炭素25%削減宣言で、照明がLED電球に切り替わるとみて生産を開始し、11年の東日本大震災後の節電を機に拡大しました。

 

── 家電に参入した理由は。

 

大山 大阪は家電の町、大阪人にとって家電メーカーは憧れの存在でした。それがグローバルの競争に負けてしまった。リストラで技術者があぶれているのはもったいないと思い、受け皿として、13年に大阪R&D(研究開発)センターを作り、採用を進めてきました。

 

── 日本の家電メーカーが崩壊するなかで成長できた理由は。

 

大山 日本の家電メーカーが負けた理由は二つあります。

 一つは、日本のものづくり産業が下請けの多層構造であることです。総合家電メーカーは設計し、部品を組み立てます。便利な構造ですが、各下請けが利益を乗せるので、海外と競争すると勝てないのです。

 もう一つは、創業者からサラリーマン社長に代替わりするとリスクを取らなくなります。商品開発の提案がとがっていても、何層も会議を経て他社の競合製品と比べる中で横並びになります。

 当社は、家電の内製比率が高いことがコスト競争力とイノベーションを生んでいます。そして、私が退いた後も機能するような仕組み作りに力を入れてきました。例えば、週初めに丸一日かけて商品開発のプレゼンテーション会議を行っています。私はじめ30人ほどが参加し、情報を共有しています。

 

 ◇常識の非常識

 

── ヒット家電を生んでいます。

 

大山 1~2人世帯が6割を占めるようになったのに、既存の家電メーカーは横並びで4人家族をベースにした製品を作り続けています。でも、1~2人世帯にとって便利な製品を考えれば、いろいろと出てきます。

 

── 生活の変化という簡単なことに皆が気づかないんですね。

 

大山 大きい製品の方が高く売れるからです。量販店も同じです。生活者を忘れています。でも、あっという間に携帯電話がスマートフォンに変わったように、今日と明日は違うんです。

 世の中には常識の非常識がけっこうあります。我々はお客様が気づいていない不足・不満を自分の生活の中から発見し、変えています。

 

── 今年4月にエアコンを発売し、大型白物家電に参入しました。

 

大山 家電のゴールです。まずエアコンを手がけたのは、省エネ効果が大きいからです。

 家電のシェアは今は単価が低いので数%です。マーケットは大きいですから、1割、3割へ伸ばしていきます。中国と国内で工場をどんどん増やしています。できるだけ内製します。

 

── 設備を抱えることにはリスクもあります。

 

大山 リスクを取ってシェアを取れば、設備の稼働率が上がります。

 ロングセラー商品にあぐらをかくなと言っています。年間1000アイテムを新たに発売しています。メーカーベンダーですから新商品を店頭に並べられます。過去3年間に発売した商品の売上比率が6割を超えています。

 

── 経営目標は。

 

大山 売り上げに対して1割の営業利益と過去3年の新商品比率5割以上です。売り上げ目標は立てません。

 

── 上場はしないのですか。

 

大山 必要がありません。無借金ですし。経常利益の5割程度を償却を含めた設備投資に充て、営業利益の5%を幹部社員に還元しています。

 会社にとって一番大事なのは、社員です。働く社員にとって良い会社を目指しています。

(構成=黒崎亜弓・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A オイルショックを経て、会社の業態転換のため必死で試行錯誤していました。

 

Q 「私を変えた本」は

A 本はあまり読みません。過去のことですから。今、起こっていることをウオッチし、本質を見極めるようにしています。

 

Q 休日の過ごし方

A クラシック音楽を1日5、6時間聴いています。毎朝3キロウオーキングし、週に1度は水泳をやる健康オタクです。

………………………………………………………………………………………………………

 ■人物略歴

 ◇おおやま・けんたろう

 大阪府出身。大阪府立布施高校(東大阪市)卒業。1964年、大山ブロー工業代表者に就任。91年、アイリスオーヤマに社名変更。アイリスグループ会長。72歳。

………………………………………………………………………………………………………

事業内容:生活用品の企画、製造、販売

本社所在地:仙台市青葉区

設立:1971年4月

資本金:1億円

従業員数:3013人(2017年1月現在)

業績(16年12月期・単体)

 売上高:1220億円

 経常利益:110億円