国内シェア50%の燃料油基盤に世界へ 内田幸雄 JXTGホールディングス社長

内田幸雄 JXTGホールディングス社長
内田幸雄 JXTGホールディングス社長

◇Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── JXTGホールディングス(HD)はどんな会社ですか。

 

内田 JXHDと、東燃ゼネラル石油が今年4月に経営統合しました。石油業界の地殻変動に対応しようと模索を続けて実現した統合です。

 

 原油を輸入して精製し、ガソリンや軽油などの製品を販売する石油元売り会社は、1970年代には15社ほどありました。2度の石油危機や、規制緩和による競争激化、燃料油が90年代半ばから後半をピークに国内の需要が落ち始めたことなど、たびたび再編の圧力が高まりました。

 

 大きな転機となったのは、99年のエクソンとモービルの合併です。メジャーの2社の合併は誰も予想しませんでしたが、そのくらいの出来事が石油業界には起きていました。2000年代にも1バレル=100ドル台が続いた原油価格の高騰、エクソンモービルなどメジャーの撤退と、次々に経営に直結する問題が起き、各社は対応に追われてきました。石油元売り会社は集約され、現在は4グループになっています。

 

 JXHDは、日本石油、三菱石油、日本鉱業、共同石油の4社が前身。東燃ゼネラル石油は、東燃、ゼネラル石油、モービル石油、エッソ石油が前身だ。

 

 今回、元売りトップのJXHDと、3位の東燃ゼネラル石油の統合で、国内の燃料油販売シェア50%になりました。(メジャーが本拠を置く)EU(欧州連合)で、主要2カ国をどのように組み合わせても、日本の総需要より大きくはなりません。計算上は、英国全体を当社が扱っているようなものです。私の口から「最終形態」とは言いにくいですが、これ以上の統合は難しいのではないでしょうか。

 

── 力を入れている事業は。

 

内田 中核事業3社体制です。主力はJXTGエネルギーで、石油製品を精製し、燃料油から、ペットボトルや合成繊維の原料となるパラキシレン、プロピレンといった石油化学製品の製造、販売まで、幅広く手がけています。今後、燃やさずに石油をどう使うかがますます重要になります。新興国の生活水準が上がればプラスチックなどの需要が増えることになるため、石油化学は確実に伸ばしていかなければならない分野です。

 

 JX石油開発は、石油、天然ガスの探鉱を行っています。地球の資源に付加価値を生み出す事業です。ポートフォリオではなく、事業としている会社では国内三指に入ります。

 

 JX金属は、銅を中心とした非鉄金属のサプライチェーン全体を手掛けています。チリのカセロネス鉱山は、日本企業の100%出資です。精錬から電材加工まで手がけ、みなさんが使っている電子部品には、ほぼ当社の製品が入っていると思います。IoT(モノのインターネット化)は大きなビジネスチャンスですが、今は生産能力を目いっぱい使っても、需要に応えきれていません。まずは生産体制を整えることが喫緊の課題です。

 

 統合で「エッソ」「モービル」「ゼネラル」を含めて四つになったガソリンスタンドのブランドを、19年度中を目標に「ENEOS(エネオス)」に統一することを発表した。

 

── ブランド戦略をどう考えていますか。

 

内田 四つのブランドのガソリンスタンドは全国に計約1万4000店あります。消費者とつながる大切な存在で、一つの会社として認知してもらえるようにすることが重要です。

 

── 統合による具体的な目標は。

 

内田 「アジア有数の総合エネルギー・資源・素材企業グループ」です。そのためには、収益力をどう上げるかに懸かっています。エネルギーは国内で圧倒的な地位になりましたから、それを生かして海外に進出できる経営基盤を作るのが私の役割です。

 17~19年度の中期経営計画で、20年3月期に連結営業利益5000億円を掲げました。製造業で国内を主戦場にしている企業で、5000億円の利益を上げられる会社はなかなかありません。当社はその潜在能力があると思っています。

 

 ◇EV普及はチャンス

 

── 世界で電気自動車(EV)へのシフトが急速に進んでいます。

 

内田 現在、国内に自動車は9000万台登録されています。電気、水素など石油以外を動力にしているのは20万台ほどです。EVがどの程度普及するか、予測はできません。エネルギー業界は社会のインフラで、最初に大きな投資をしますが、企業としては回収しなければならない。どのタイミングで投資するのが適切か、見極めなければいけません。

 いずれにしてもEVが増えるのは間違いない。「増える電気需要をどうまかなうか」ということになり、総合エネルギー企業としての腕の見せどころです。これまで石油業界は、経済規模の発展に伴って成長してきました。今後は技術や社会の変革に合った発展を目指さなければいけません。

 

── 野球部、バスケットボール部を持っています。企業スポーツの意義をどう考えていますか。

 

内田 従業員の一体感の醸成です。いずれも強豪で、活躍は特約店でも話題になり、多くの関係者の融和に大きく貢献してくれています。

 ルールを守って勝つのがスポーツです。企業も法令順守意識を持って、業績で勝ちたい。最終的には利益を上げることが、統合会社の融和にとっても最も重要で、私の大きな使命です。

(構成=酒井雅浩・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 入社は石油危機の1973年。30代は80年代と重なります。規制緩和、湾岸危機と荒波の中で原油の調達を担当し、原油ほどコストと価格の乖離(かいり)が激しいものはないと痛感しました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A パラダイムシフトが起きていることを実感できる本です。大栗博司氏の宇宙論が好きです。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 10分でも、会社のことを何も考えないことでストレス解消をしています。桂枝雀の落語は、突き抜けたばかばかしさが気分転換にもってこいです。

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 ◇うちだ・ゆきお

 1951年生まれ。福井県出身。福井県立高志高校、京都大学法学部卒業。73年日本鉱業入社。2010年JX日鉱日石エネルギー取締役、15年JXホールディングス社長などを経て、17年4月のJXTGホールディングス発足に伴い社長。66歳。

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事業内容:エネルギー事業、石油・天然ガス開発事業、金属事業など

本社所在地:東京都千代田区

設立:2010年4月

資本金:1000億円

従業員数:2万6247人(17年3月31日現在・連結)

業績(17年3月期・連結)

 売上高:8兆1360億円

 営業利益:2984億円

 (注)従業員数、業績は旧JXホールディングスの数字