特集:驚異の工場自動化 2017年10月10日号

◇世界中の製造業から引き合い

◇関連メーカーは増産ラッシュ

 

 これまでは自動車・電機産業が中心だった工場自動化の裾野が、他産業に急速に広がっている。代表的なのは、食品・医薬品・化粧品の「三品(さんぴん)産業」だ。

 

 味の素の子会社で包装機能を担う「味の素パッケージング」は8月、既存工場の老朽化に伴い、川崎市に48億円をかけて新工場を稼働した。包装工程ではロボットを、集荷には無人搬送車を導入するなど自動化技術を取り入れ、1人当たりの生産性を1・7倍に高めることを目指す。

 

 医療福祉施設で給食サービスを手がける日清医療食品が8月に完工したセントラルキッチン(京都府亀岡市)も随所で工程が自動化されている。医療福祉施設の給食は、減塩、アレルギー対応、カロリー計算など少量多品種への対応が求められ、人手が必要だ。同社は、加熱・冷却工程を自動ライン化し、器具を運ぶのに無人搬送車を導入するなど可能な部分を自動化し、省人化しながら生産量を拡大する方針だ。

 

「三品産業」だけではない。キヤノンが2019年8月の操業を目指すデジタルカメラの製造工場(宮崎県高鍋町)は「精密機器の組み立て工程自動化は困難」という定説を覆した。昨年ドイツで、スポーツ用品大手「アディダス」が本格稼働した「スピードファクトリー」は世界中の製造業の話題をさらった。自動化技術によって少量多品種の靴製造が可能となり、人件費が高いドイツでも、価格競争力を持つ製品を供給することが可能になったからだ。

 

 人手不足に悩む日本、人件費高騰にあえぐ中国、インダストリー4・0を推し進める欧州。地域で事情が異なるものの、世界で同時に工場自動化への需要が高まっている。

 

 製造業の自動化需要に応えるかたちで、FA(ファクトリーオートメーション=工場自動化)、産業ロボット関連企業が、設備増強やM&A(企業の合併・買収)に動いている。「今『供給体制は十分』というFAメーカーなど皆無」(電子デバイス産業新聞・浮島哲志氏)で、うれしい悲鳴を上げている。

 

 垂直多関節ロボット世界トップで、産業ロボット世界大手4社(ファナック、安川電機、独KUKA(クーカ)、スイスABB)の一角・ファナックは、山梨県の本社工場と、茨城県の筑波工場で現在月間6000台を製造できる。同社のロボットは元々自動車産業で広く使われているが、足元では、国内、中国、欧米で自動車以外の産業向け需要も伸びており、供給が追いつかないほどだ。同社は需要は引き続き旺盛とみて、茨城県に約630億円をかけて新工場を建設する。18年8月の生産開始を目指し、最終的には3工場で月間1万1000台まで生産能力を引き上げる。

 

 同じく4大メーカーの一角で、サーボモーター世界トップの安川電機も7月、中国・江蘇省のロボット製造拠点に第3工場を増設することを明らかにした。ロボットメーカーは「これまでは製造業に『ロボットを導入しませんか』と営業していたが、最近は『ロボットを使いたい』という引き合いばかり」と、環境の変化を感じている。

 

 産業ロボットの関節部分の回転や位置決めを精密に制御する「精密減速機」で世界トップのナブテスコは、今年度、約70億円を投じて津工場(三重県)と、中国の工場を増設して、前年度比約20%増産を見込む。自動ラインで対象物を所定の位置に運搬したり、工作機械内の直行運動を司る直動案内機器(リニアガイド)で世界トップのTHKや、リニアガイドとセットで使われることの多いボールねじで世界トップの日本精工も増産体制に入る。

 

 ◇需要にまだ伸びしろ

 

 日本には、世界トップシェアを握る社が多い。日本企業が得意としてきた自動車や電機産業を発展させるため、生産効率化に寄与してきた「縁の下の力持ち」が、今や世界で存在感を示すFA機器や産業ロボットのメーカーに育ったのだ。

 

 工場自動化銘柄は株式市場の一大テーマとなっている。この1年の騰落率はナブテスコが47%、THKは90%超にも達する。半導体や有機EL関連のテーマに一服感が漂う中「工場にはまだ合理化・省力化の余地がある。持続的に注目を集めるテーマ」(奥村義弘ちばぎんアセットマネジメント調査部長)との声は根強い。

 

 たとえば、自動車工場の自動化率は、プレス工程・溶接・塗装では90%以上に達する一方、複雑な作業を要する組み立ては20%にとどまる。業界アナリストは「ファナックや安川電機が複雑な作業をできるロボットを開発している。技術進化次第では組み立ての自動化率はもっと上がる」と分析する。「三品産業」での自動化率はさらに低い。自動化が広がる余地はまだあり、需要に伸びしろがあるのも、関連銘柄の投資妙味だ。

 

 工場自動化の技術は現在がゴールラインではない。改良は刻々と進んでいる。

 

 たとえば、産業ロボットは、現在はライン脇の定位置に配置するのが主流だ。今後は、車輪を付けて、自在に工程間を行き来する自律移動ロボットの開発・研究が進みそうだ。1台のロボットで複数の作業をこなせることから、購入するロボットの台数が少なく、製造現場の省スペース化も可能で、ひいてはコスト低減にもつながる。既にオムロンやKUKAが研究・商用化している。パナソニックはこの市場の拡大を見込んで、広範囲で三次元距離を計測するセンサー3DLiDAR(ライダー)を開発した。

 

 進化した自動化技術に対しては、新たな需要が生まれる。しばらくは「工場自動化の好循環」が続きそうだ。

(種市房子・編集部)(大堀達也・編集部)

 

週刊エコノミスト 2017年10月10日号

定価:620円

発売日:2017年10月2日