防災設備を通じ人命と財産を守る 山形明夫 ホーチキ社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 社名から製品が想像できますね。

 

山形 防災を通じて「人命と財産を守る」という経営理念を掲げ、火災報知機のほか、消火設備を作っています。1918年4月2日に設立し、来年100周年を迎えます。火災報知機は住宅用警報器の設置義務化が2006年に始まり、テレビコマーシャルも流しましたので、知名度はあります。

 

── 野球場でよく看板を見ます。

 

山形 知られていませんが、ドーム球場の消火設備「大規模放水銃システム」を開発しました。火災を感知したら燃えているところを目がけて放水するもので、第1号は東京ドームです。他に名古屋、大阪の各ドーム球場、東京ビッグサイトや幕張メッセといった国際展示場などに設置しています。情報通信分野ではセキュリティーシステムも手がけています。

 

── センサーの仕組みは。

 

山形 主に煙、熱、一酸化炭素(CO)を感知します。米国は全てを一体化したものを求められることがありますが、日本は規格上、それぞれの機能を分けています。例えば厨房(ちゅうぼう)で煙が出やすいところは、COと熱を感知するものにします。

 

── 何台ぐらい出ていますか。

 

山形 一般用、住宅用感知器の台数は国内が232万個、海外が175万個でした。今年は海外の方が多くなるかもしれません。

 

── 情報通信はどんなことをしていますか。

 

山形 一番多いのがセキュリティー分野です。防犯カメラの売り上げ構成が多いです。他の企業にはない事業で、売り上げの約2割を占めています。

 

── 売上高の構成は。

 

山形 売上高(17年3月期)は連結731億円のうち、火災報知設備が69・2%、消火設備12・9%で、防災事業で82・1%を占めます。火災報知設備はビルなど大規模建築物の新築工事で、ゼネコンなど取引先に供給することが多いです。市場は私どもを含めた4社で93%を占めています。

 民間調査機関の調査では、シェアは大規模建築物向けではトップで、住宅用など中小規模の建築物向けでは2位です。

 

 ◇早い海外展開強みに

 

── 生産拠点は。

 

山形 工場は国内が町田(東京)、宮城、茨城で、海外では米カリフォルニア州、英ケント州にあります。

 

── 海外展開はいつからですか。

 

山形 61年にタイへ火災報知機を輸出したのが始まりです。米国へは71年、英国へは86年にそれぞれ進出しました。2012年には英国の受信設備機器メーカーを買収しました。

 海外事業の強化に拍車がかかったのはここ15年ほどです。寡占状態の国内市場で1%の利益を上げるのは大変ですが、海外には伸びしろがあります。

 

── 現地の生産状況は。

 

山形 米、英両国でセンサーを、英国では火災情報の受信機器設備も作っています。英国で買収したメーカーでは、受信機器設備の部品を外注せず、一貫生産しています。人手はかかっていますが、不良品は出さない取り組みをしています。

 

── 他社にない強みは。

 

山形 歴史が長いこともありますが、海外事業の展開を早めに進めたことです。感知器の規格は米国規格と欧州の規格、日本の消防法の規格しかありません。海外事業は現地の規格に合わせて早期に対応することが大切です。私たちは3種類の規格の最も厳しい基準をクリアできる基準を設定しています。海外工場にも適用しているので各国の要望に応えられ、高品質も維持しています。

 

── 売上高に占める海外比率は。

 

山形 海外比率は他社より高く、現在は売上高の14%を占めています。これを20%に引き上げることを目指しています。海外製の低価格の製品はありますが、少々高くても高品質の製品を供給しています。

 

 ◇更新とメンテナンス強化

 

── 他に力を入れていることは。

 

山形 需要がある更新工事に力を入れ始めました。一般機器は大体25年、住宅用は10年サイクルです。これまでは新築工事で競争してきましたが、12年から業績が回復して4年連続増収増益となったのはここが強くなったからです。

 メンテナンスにも力を入れています。今や全体の売り上げの19%を占めるようになりました。メンテナンスによって、安心安全を提供し続けられ、更新の需要にもつながります。製品の開発・販売・工事・メンテナンスと、長期のサイクルに対応して、一度仕事をもらうと、ずっと続けられます。安定した経営基盤になりつつあります。

 

── 未来の防災設備は。

 

山形 海外では避難や弱者に対する考え方が先んじています。日本は非常灯があるぐらいですが、避難指示まで出る報知機のほか、火災発生を感知するだけでなく、さまざまな情報を得られるセンサーも出るかもしれません。

 

── この先どんな会社にしていきたいですか。

 

山形 火災による犠牲者ゼロを目指した世の中づくりに貢献したい。火災で人が亡くなったというニュースを聞くと、痛みを感じます。業務提携やM&A(合併・買収)も考えていきたいですね。

(構成=米江貴史・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 38歳のときに出先の営業所長になりました。人の少ないところでいかに成果を上げるか、という部署経営を経験しました。転換期だったと思います。それがなければ、今の立場にはいなかったかもしれません。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 酒巻久さんの『ドラッカーの教えどおり、経営してきました』です。1冊でドラッカーの良いところが手軽に読めて感銘を受けました。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 1日はプライベートでのゴルフです。もう1日は家族に料理を作ります。酒のさかなになるものが多いです。

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 ■人物略歴

 ◇やまがた・あきお

 1950年生まれ。宮城県出身。県立石巻高校、東北学院大学工学部卒業後、73年ホーチキ入社。宇都宮営業所長、人事部長、取締役管理本部長、専務取締役海外本部長などを経て2017年6月に社長就任。67歳。

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事業内容:火災報知、消火、防犯など各設備の製造、販売、施工や保守管理

本社所在地:東京都品川区

設立:1918年4月

資本金:37億9800万円

従業員数:単体1306人(2017年3月末)

業績(17年3月期・連結)

 売上高:731億1800万円

 営業利益:54億1700万円