野菜の国産化と厨房の自動化を追求 米浜和英 リンガーハット会長兼CEO

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 2017年2月期決算では最終(当期)利益が3年連続で過去最高と業績が好調です。

 

米浜 健康志向や安全・安心という意識が高まる中で、国産野菜を使って手ごろな価格で長崎ちゃんぽんを提供していることが受けているのではないかと思っています。

 

 05年に日本マクドナルド出身の八木康行氏を社長に据えて会長に退いたが、業績が低迷し、08年にトップとして復帰した。

 

── 外部から社長を呼んだ理由は。

米浜 生え抜きの社員が社長をするのはまだ早いと思っていました。社員は私しか経営者を見ていないので、外部の経営者が来れば勉強になると思いました。

── 経営が厳しくなった要因は。

 

米浜 外資系の会社は自分で工場を持たずに外注することが多いですが、そのやり方が当社ではうまくいかなかったのだと思います。また、業績が悪くても社員に同じようにボーナスを出したり、役員の人数を増やしたり、売り上げを確保するためにクーポンを発行して値引きするなどしましたが、それでは利益がなかなか出ません。赤字の店を閉めると、特別損失が出て会計上の見かけが悪くなるため、利益が出ない店が増える状況でした。

 

── 経営トップに戻ってきた時の決意は。

 

米浜 このままでは会社がだめになると思い、08年に復帰しました。もともとモヤシやキャベツは国産でしたが、とにかくおいしいものを提供しようと思い、ニンジンやタマネギ、コーンなど全ての野菜を国産化しました。ただ、コストは上がりました。当初は年間13億円増えるという試算が出ました。

 そこで、それまで外注していた野菜の加工をやめ、土がついたままの野菜を自社の工場に持ってきて、自分たちで洗ってカットするなどで効率化を図りました。それでも年間10億円のコストアップです。値引きをやめる、不採算店舗を閉める、自社工場を生かすという三つを徹底しました。

 

── すぐに効果はありましたか。

 

米浜 10億円も材料費が上がるわけですから、価格に転嫁せざるを得ませんでした。最初はお客さんも簡単には受け入れてくれませんでしたが、テレビ番組で国産野菜にこだわる取り組みなどが紹介されたこともあり、徐々に売り上げは増えました。

 

── 社員への対応は変えたのでしょうか。

 

米浜 ボーナスは業績連動型にしました。まだ達成できていませんが、社員1人当たり売上高1億円を目標にしています。ただし、経営の効率化を進めても、社員の教育費だけは減らしませんでした。マニュアルも大事ですが、マニュアルを執行するための根本的な精神を、しっかり教育する必要があると考えました。

 

 ◇フードコートに出店

 

── 効率化で重点的に取り組んでいることは。

 

米浜 1994年からトヨタ生産方式を勉強して、厨房(ちゅうぼう)の自動化を進めています。

 

当時は「あそこの店はおいしいけど、ここの店はおいしくない」「30分間待たされた」といったクレームが多く、店によって味や量にバラつきがあって短時間に提供できないという問題がありました。中華鍋で4人前をまとめて作っていたので、どうしても味や量にバラつきが出て、混雑時は提供も遅れてしまっていました。さまざまな業種の企業が入会しているトヨタ生産方式の研究会では「1個づくりをしないとだめだ」と指摘されました。1個ずつ作れば味も量も安定するということです。

 

── 自動化の進捗(しんちょく)状況は。

 

米浜 02年ごろから、一定時間でIHヒーター上を鍋が自動で移動していく「自動鍋送り機」や「自動野菜炒(いた)め機」を導入し、リンガーハットの約650店舗全てで自動化しています。作業環境は飛躍的によくなりました。ラーメン屋やうどん屋の厨房は、麺をゆでるので夏は40度くらいになり、湿度も高い。今の形になってからは、厨房と客席の温度の違いは1~2度になりました。1個ずつ作るので味と量も一定になり、素早い提供も可能になりました。

 

 このため、ショッピングセンターのフードコートにも出店しやすくなり、今では約350店舗あります。昔は、中華鍋で作れるようになるには最低でも2~3週間はかかりましたが、今はマニュアルを覚えれば、すぐに作れるようになります。従業員の教育時間も短くなり、パートやアルバイトの人材募集もしやすくなりました。

 

── 価格の戦略は。

 

米浜 西日本では8月にちゃんぽんを520円から540円に値上げしましたが、販売量への影響はほとんどありません。麺の増量が無料なことなどを考えると、500円台で食べられるのはまだまだ安いということだと思います。食材や物流費などが上がる中で、どこかでコストを吸収する必要があります。まずは西日本でテストをして、東日本でも上げるか判断します。

 

── 今後の目標は。

 

米浜 売上高経常利益率10%、国内1000店舗、海外で半分稼ぐ体質にすることを目標に掲げています。日本は人口が減少していくので、ハワイやタイなどに15店舗ある海外事業を拡大する必要もあります。常に先を見て、もっといい品質のもの、もっとお客さんに喜ばれるものを追求していこうと考えています。

 

(構成=松本惇・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 創業時から社長をしていた兄が急死して32歳で社長になりました。1、2年は大変でしたが、株式上場を目指して経営するようになりました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 『NPSの奇跡』(篠原勲著、東洋経済新報社)と、『モノづくりの経営思想』(木下幹彌編著、同)です。この本でトヨタ生産方式を学び、経営効率化に役立てました。

 

Q 休日の過ごし方

A ゴルフをすることが多いです。ウオーキングは休日を含めて毎日しています。

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 ◇よねはま・かずひで

 1943年生まれ。鳥取県出身。鳥取県立鳥取西高校卒業後、前身である株式会社「浜かつ」設立時(64年)から参加。65年に取締役、76年に社長、2005年に会長。06年に代表権のない会長に退き、日本フードサービス協会会長を務めた後、08年に代表権のある会長に復帰。一時社長も兼任し、13年から現職。73歳。

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事業内容:長崎ちゃんぽんなどの専門店を運営

本社所在地:東京都品川区

設立:1964年3月7日

資本金:90億200万円

従業員数:541人(2017年9月現在・連結)

業績(17年2月期・連結)

 売上高:438億4400万円

 営業利益:32億8400万円