ケーブル網やデータセンターに回帰 庄司哲也 NTTコミュニケーションズ社長

Interviewer 金山 隆一(本誌編集長)

 

── 現在の経営環境は。

 

庄司 1999年に当社がNTTの子会社として誕生してから18年がたち、通信業界を巡る競争関係は変わっています。当社を含めた通信企業が展開するネットワークの上で、グーグルやアマゾンなどのIT(情報技術)サービスが展開されており、米国のシリコンバレーを中心に急成長するIT企業が増えています。

 こうしたなかで、我々は原点に戻って、ネットワーク網やデータセンターなど物理的なインフラを持つ強みを生かしています。

── 御社が持つインフラとは

 

庄司 我々は、190以上の国や地域に通信ネットワークのサービスを展開しています。それを支えるのが海底や大陸を横断する通信ケーブルです。日米間の太平洋、ロシア経由、インド経由などケーブルの長さは28万キロメートル、地球7周分に及びます。

 

 2011年3月の東日本大震災の時には、4本ある日米間の海底ケーブルが3本切れてしまいました。最終的な復旧には半年以上かかりました。この教訓を生かして、当社が運用する船舶としては4隻目となる新しい海底ケーブル敷設船を今年3月に竣工させました。名前は社内で公募し、「きずな」に決まりました。我々の「つなぐことへの使命感」をイメージできる名前になりました。

 

── そのネットワーク網は世界にも通用しますか。

 

庄司 当社は「通信の運び屋」として、世界のトップ3に入っています。例えば、データセンターは、世界で140カ所以上展開しています。保有するサーバーの面積では、自社で使う面積も含めると世界一です。企業にデータセンターを貸し出すことを専門とする2社を含めると世界3位になるかもしれません。

 

 このインフラを、例えば、インターネット上のセキュリティーやクラウドサービスなどに生かしながら、「ICT(通信情報技術)業界における総合商社」のような存在になっていきたいです。

 

 ◇HFT、陰の立役者

 

 NTTコミュニケーションズの設立時を振り返ると、都道府県を超えて行われる長距離通信事業や、国際通信事業などを担う会社として誕生した。当時は黎明(れいめい)期だったインターネット通信も含め、グローバル市場でも自由に事業を伸ばすことができた背景がある。

 

── NTTコミュニケーションズが持つインフラは、どのように使われているのですか。

 

庄司 当社の海底ケーブルは、通信の速さにも競争力があります。日米間をつなぐ「PC─1」という海底ケーブルは通信速度が一番速いと思います。米国のHFT業者(株式などを1000分の1秒単位で売買する高頻度取引業者)から見ると、日米間の通信は我々のケーブルが、一番速く取引を成立させられます。

 

 また、当社はシンガポールや香港などアジアでも競争力のある通信ケーブルを持っています。特に、香港やシンガポールでは、証券取引所の近くにつながっていますので、こちらの通信速度も速いです。いずれのネットワークもいっぱいいっぱいの状況で、増設・増量をしないといけないくらいです。同じケーブルの中で情報を圧縮して送る「多重化」技術で対応していきます。

 

 ◇クラウドは集約へ

 

── 人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット化)の取り組みはどうですか。

 

庄司 例えば、今は言語解析AI「COTOHA(コトハ)」への問い合わせが多くなっています。ユーザーが質問すると、回答することもできます。これをコールセンターやチャットによる顧客対応サービスに使うことができます。

 

── M&A(企業の合併・買収)については。

 

庄司 それぞれの市場から「仲間」を見つけています。欧州・中近東、米国、アジア太平洋地域の3地域に分けて、「足らざるピース」を補完する形でM&Aをしてきました。

 直近では、15年にドイツのデータセンター事業者「イーシェルター」、16年にスペインのクラウド業者「アトラス」も仲間に入りました。現在では、グループ従業員のうち、約5割が海外で働いています。

 

── NTTグループのなかで重複する事業もあります。

 

庄司 持ち株会社のNTTと協議しているのは、まず、クラウドサービスは我々のサービスに集約していこうという議論が出ています。

 

 例えば、グループ会社のなかに、(NTTが10年に買収した南アフリカ企業)「ディメンションデータ」があります。彼らのクラウドサービスを我々のサービスに統合する作業を今年度中に終えます。来年度からは一つのブランドでクラウドを提供できるようになると思います。

 

「OCNモバイル」ブランドの格安スマートフォン事業は、携帯電話大手3社が出す高品質のサービスと、我々のサービスではかなりの違いがあります。また、格安スマホ事業の延長には、将来的にSIMカードを使ったIoTに関する新事業にも生かしていけるものがあると考えています。

 

── 中期的な目標はありますか。

 

庄司 16年度の売上高は1兆2830億円、営業利益は1325億円でした。これを、20年度に売上高1兆5000億円を目指します。そのうち、海外比率は15年度の27%(3500億円)から、40%の6000億円にしていく目標です。

(構成=谷口健・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 日本電信電話の民営化のプロジェクトチームに入っていました。政府や各省庁に、「民営化でこんなによくなる」というシナリオを見せに行っていました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 司馬遼太郎の『坂の上の雲』です。

 

Q 休日の過ごし方

 

A クルマが好きなので、録画したカーレースのビデオを見ます。

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 ◇しょうじ・てつや

 都立青山高等学校、東京大学経済学部卒業後、1977年、日本電信電話公社(現・NTT)に入社。NTT西日本で人事部長、NTTで総務部門長。2012年、NTTコミュニケーションズ副社長(営業担当)を経て、15年6月に社長就任。63歳。

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事業内容:電気通信事業など

本社所在地:東京都千代田区

設立:1999年7月

資本金:2117億円

従業員数:グループ2万1900人、単体6400人

業績(2016年度)

 売上高:1兆2830億円

 営業利益:1325億円